清水理史の「イニシャルB」【特別編】

新発想の「自分専用」ゲーミングルーター! 機能を絞り価格を抑えたTP-LinkのWi-Fi 7対応「Archer GE230」
- 提供:
- ティーピーリンクジャパン株式会社
2025年11月25日 06:00
TP-LinkのArcher GE230は、いわゆる「ゲーミング」に分類されるWi-Fiルーターだ。
ゲーミングというと、高性能、高機能、そして派手なデザイン、というイメージがあるが、本製品は、必要な機能を絞り込み、価格を抑えながら、派手になりすぎない範囲でゲーミングらしい演出も楽しめる製品となっている。いろいろな意味で日本人好みと言えそうな1台を検証してみた。
無駄にスペックが盛られてない
TP-Linkから登場したArcher GE230は、新しい感覚で開発されたゲーミングルーターだ。
これまでのゲーミングルーターは、ゲームに求められるシビアな通信性能を実現するためにスペックが重視される傾向があった。空いている6GHz帯を活用するためのトライバンド、4ストリームの豊富な帯域、10Gbps対応の余裕の有線……、といった具合に、豪華なハードウェアで構成されるケースが多かった。
これに対して、今回、TP-Linkから登場した「Archer GE230」は、無線の性能は2882Mbps(5GHz)+688Mbps(2.4GHz)のデュアルバンドと、速度的にはWi-Fi 7のエントリーモデルと同等。有線こそWAN側2.5Gbps×1、LAN側2.5Gbps×1+1Gbps×3と、このクラスとしては豪華だが、全体的なスペックが、そこまで「盛られて」いない。
| 項目 | 内容 |
| 価格 | 1万4800円前後 |
| CPU | クアッドコア |
| メモリ | - |
| 無線LANチップ | - |
| 対応規格 | IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b |
| バンド数 | 2 |
| 320MHz対応 | - |
| 最大速度(2.4GHz) | 688Mbps |
| 最大速度(5GHz-1) | 2882Mbps |
| 最大速度(5GHz-2) | - |
| 最大速度(6GHz) | - |
| チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
| チャネル(5GHz-1) | W52/W53/W56 |
| チャネル(5GHz-2) | - |
| チャネル(6GHz) | - |
| ストリーム数(2.4GHz) | 2 |
| ストリーム数(5GHz-1) | 2 |
| ストリーム数(5GHz-2) | - |
| ストリーム数(6GHz) | - |
| アンテナ | 外部4本 |
| WPA3 | 〇 |
| メッシュ | 〇(EasyMesh) |
| IPv6 | 〇 |
| IPv6 over IPv4(DS-Lite) | 〇 |
| IPv6 over IPv4(MAP-E) | 〇 |
| 有線(LAN) | 2.5Gbps×1、1Gbps×3 |
| 有線(WAN) | 2.5Gbps×1 |
| 有線(LAG) | - |
| 引っ越し機能 | - |
| 高度なセキュリティ | HomeShield |
| USB | USB 3.0 |
| USBディスク共有 | 〇 |
| VPNサーバー | 〇 |
| DDNS | 〇 |
| リモート管理機能 | 〇 |
| 再起動スケジュール | 〇 |
| 動作モード | RT/AP |
| ファーム自動更新 | 〇 |
| LEDコントロール | 〇 |
| ゲーミング機能 | 〇 |
| サイズ(mm) | 266.8×153.1×58.6 |
つまり、ゲーミング=ハイエンド、という従来の図式からは明らかに異なる発想の製品となっている。単純に考えれば、そのぶん、価格を抑えたエントリーゲーミングと考えがちだが、個人的には、もっとターゲットが絞られているのではないかと思える。
例えば、ワンルームで、つなぐのは自分ひとり、同時接続もPCとスマホとゲーム機くらいといった一人暮らしの環境を想定すると、6GHz帯はなくてもいいし、最大速度も2882Mbpsで十分ということになる。ただ、ゲーミングPCは絶対に有線でつなぎたい、ということでLAN側に2.5Gbpsポート(しかも優先制御あり)が用意されている。
いわゆる「こういうのでいいんだよ」という製品で、必要なスペックを絞り込んだおかげで、価格も安く抑えられており、ゲーミングなのに実売1万4800円という価格を実現している。
「自分用ゲーミング」というか「ワンルームゲーミング」というか、日本の利用環境にあった製品という印象だ。
欲しい人には欠かせない外付けアンテナ+消してもいいイルミネーション
それでは実機を見ていこう。
本製品は、今となってはむしろ珍しい外付けアンテナを採用した製品だ。背面に4本のアンテナが搭載されており、利用場所に合わせて方向を調整できる。全方向にまんべんなく電波が広がるアンテナ内蔵型と異なり、スマートフォンやゲーム機など、つなぐ機器の場所が、あらかじめ分かっているケース(前述したワンルーム環境など)で、電波の方向を調整しやすいのがメリットとなる。
デザインは、昨今のシンプルなTP-Link製品とは異なる印象だが、そこまで派手な感じではない。よくよく見ると、表面のパネルが複雑にうねった形状となっており、いかにもコストがかかっていそうだが、「行き過ぎた」派手さがない点に好感が持てる。
もちろん、ゲーミングらしいイルミネーション機能が搭載されているのだが、中央に約6cmのワンポイントの配置のみになっており、思ったより控えめだ。普段は明るさを抑えて色を変える程度にして、夜間は消灯といったように、ゆるやかな変化を楽しむこともできるし、もちろん完全にオフにすることもできる。
確かにゲーミングなのだが、押しがそこまで強くないというか、あくまでも実用性を考慮したうえで、アンテナやイルミネーションを活用できる点が面白い。
有線ポートは、前述したようにWAN側とLAN側の1ポートずつが2.5Gbpsに対応している。LAN側の2.5Gbpsポートは、ゲーミングポートとして優先制御の対象となっており、ここに接続したデバイスの通信が優先される設計となっている。複数の端末が接続されている場合でもゲーム用PCの通信が優先されるのはありがたい。
このほか、側面にUSB 3.0ポートも搭載されており、USBストレージを利用した簡易ファイル共有機能も搭載されている。
機能も豊富
搭載される機能も豊富で、前述したUSB共有機能に加え、VPNサーバー機能、EasyMesh対応、さらに侵入防止や悪意のあるウェブサイトのブロックなどが可能なHomeShieldも搭載されている(IPv6 IPoE接続時およびブリッジモード時は利用不可)。一般的なWi-Fi 7ルーターとして見ても不足のない印象だ。
これに加えて、ゲーミング用の機能として設定画面に「ゲームセンター」という項目が用意されており、QoSを利用したゲームの優先制御、ゲームサーバーへのルートを最適化する機能、対戦型ゲーム用にタイトルを選択するだけでポート転送を簡単に設定できる機能なども搭載されている。
初期設定などは既存のTP-Link製品と同じく簡単にできるように工夫されている上、リモートからの設定なども可能となっている。Wi-Fi 7のMLOは標準で無効になっているが、ゲーミングだからといって、設定が難しいことはなく、既存のTP-Link製品と同じ感覚で、簡単に利用できる。
ちなみに、本製品では工場出荷時の状態では2.4GHz帯と5GHz帯で別々のSSIDが用意されていて、5GHz帯には「TP-Link_XXXX_5G_Gaming」というSSIDが登録されている。高速な5GHz帯をゲーミング用に提供しようという意図だと思っていたが、アプリや設定画面で初期設定を実行すると、「スマートコネクト(2.4GHz帯と5GHz帯を共通のSSIDで利用する機能)」によって、「5G_Gaming」のSSIDが消えてしまう。
個人的には、初期設定でスマートコネクトを有効にする前の、2.4GHz、5GHzのSSID個別使い分け、5GHz用に「5G_Gaming」が存在する設定の方が製品コンセプトに合っている気がする。初期設定でスマートコネクトを使わずに工場出荷時に合わせて使うのも選択肢のひとつと言えるだろう。
総じて、一般的なWi-Fi 7ルーターと比べると、以下のような点がプラスされていることになる。
- 外付けアンテナ
- USBポートのファイル共有
- WAN側2.5bps対応
- LAN側の2.5Gbps優先ポート
- イルミネーション機能
- ゲームセンターで提供される優先制御や統計機能
同じTP-Linkの製品で比べると、無線スペックが同等のArcher BE220よりも実売価格で5000円ほどプラスになるが、こうしたプラス要素を考えると、シンプルに「ちょっと良いエントリーモデル」としても魅力的だ。
有線も無線も実力は十分
パフォーマンスも十分だ。
まずは、WAN、LANともに2.5Gbps対応なので有線の速度を計測してみたが、iPerf3での計測で上り2.15Gbps、下り2.08Gbpsと、十分な速度が得られた。インターネットに10ギガ回線などを導入していれば、2Gbps以上の実効速度を体験できるだろう。
無線に関しては、以下のようになった。いつも通り、木造3階建ての筆者宅で1階に本製品を設置し、各階でiPerf3の速度を計測している。
| 1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 | |
| 上り | 1300 | 494 | 256 | 142 |
| 下り | 1120 | 627 | 458 | 212 |
※単位:Mbps
※サーバー:Core i3-10100/RAM32GB/1TB NVMeSSD/Intel X540-AT2/Windows11 24H2
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
なお、今回は外付けアンテナのメリットを生かして、上方向に電波が届きやすいようにアンテナを調整している。このように環境に合わせてアンテナを調整できるのが本製品のメリットだ。
1階は、2.5Gbpsの有線のおかげで1Gbps以上の速度を実現できている。2階も下りで627Mbpsを実現できているので優秀だ。3階は、入口付近で458Mbps、最も遠い窓際で212Mbps(いずれも下り)なので、十分という印象だ。
前述したように、本製品はどちらかというとワンルームなどの広くない環境で自分専用ゲーミングルーターとしての用途が適しているが、筆者宅のような3階建てでも実用的な速度で通信できるようになっている。
実用性の高いゲーミングルーター
以上、TP-LinkのArcher GE230を実際に使ってみたが、なかなか面白いコンセプトの製品だ。
ゲーミングだからといって、いたずらにスペックだけを詰め込むのではなく、必要とされるスペックに絞り込み、デザインもすっきりとまとめつつ外付けアンテナを実現している点は評価できる。
価格もエントリーモデルのWi-Fiルーターにプラス5000円で買えるほどに抑えられているので買いやすい印象だ。Wi-Fi利用の目的のひとつにゲームが含まれるなら、本製品を選ぶメリットは大きいだろう。
TP-Linkの新型ゲーミングルーター「Archer GE230」は、価格も性能もちょうどいいWi-Fi 7ルーターだった。デュアルバンドの2ストリームとWi-Fiは控えめながら、有線はWANもLANも2.5GbEに対応。エントリーモデルより「ちょっといい」が「ちょうどいい」、そのポイントを紹介する。












