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Illustation:青木光恵
小形克宏の「文字の海、ビットの舟」――文字コードが私たちに問いかけるもの


特別編23
JIS X 0213の改正は、文字コードにどんな未来をもたらすか(6) 改正の影響:MSフォントのデザイン変更とその波紋について

最も社会に影響を与える変更は、例示字体を変更した部分

 前回まで5回にわたって今回の改正の具体的内容をお伝えした。では、これが我々の暮らしにどのような影響を与えるのだろうか。そうした視点で改正の内容を再び振り返ってみると、キーになるのは前回の特別編22で述べたような非互換変更の部分ではない。なぜなら、追加された10字は以前からUCS(≒Unicode)に符号位置を持っており、符号化方法にUnicodeを採用する実装では問題にならないからだ。JIS X 0213の文字セットは、ほとんどUCSの符号化方法で実装が進められているのが現実だ。この非互換変更が問題になるのは、JIS X 0213で定められた符号化方法を実装したシステムのはずだが、幸か不幸かそのような実装はかなり限られる。

 では、現実にインパクトを与えるのはどこかというと、例示字体を変更した部分だろう。これにより関係各社は、自社プロダクトの仕様変更をするかどうかの決断を迫られることになる。となると興味は、どのベンダーが変更をし、どのベンダーが変更をしないかとなる。

 こうした未来の業界地図を一望することができたのが、改正に先立つ2月6日に行なわれたイベント『PAGE2004』(主催・日本印刷技術協会)におけるセッション「拡張する文字コード標準化と実装」だった[*1]

 ここでは、新JCS委員会で幹事を務めた小林龍生氏が司会を担当した他、同委員会の委員であり、規格原案を作成した2002年度WGで幹事を務めたマイクロソフトの阿南康宏氏、あるいはDTP業界で大きなシェアと影響力をもつアップルコンピュータの米本社から木田泰夫氏が出席するなど、改正JIS X 0213の内容をいち早く知ることができるのはもちろん、その実装がどうなるかを占う上で非常に興味深いメンバーが含まれていた。

 最初にマイクを握った阿南氏は、ユーザーの要求を、表外漢字字体表の印刷標準字体が「意識することなく容易に」そして「文字化け・字体化け[*2]することなく」表示、印刷、そして情報交換できることと分析した。その上で、これらの要求を満たすため、搭載フォントの文字デザインを印刷標準字体に置き換えるだけでなく、IMEで優先的に候補表示されるようチューニングすること、さらに印刷標準字体に対応したフォントがOSやアプリケーション上でまず最初に選択されるようになるべきとした。

 他方で情報交換、つまり符号位置を交換しても文字が化けないためには、送受信する双方が文字コードを合意することが必要となる。そのためには自社の対応だけでは限界があり、サードパーティやユーザーコミュニティとの連携が重要であることを訴えた。このために同社は、関連技術情報の開示やパートナー各社との連携を強める意向であることが表明された。



MSフォントの文字デザインを、改正JIS X 0213に合わせて変更

 ここまでは「考え方」の部分だ。では具体的にどのように実装するのか。マイクロソフトは次期クライアント版Windows(以下、本稿ではLonghorn)で、改正されたJIS X 0213の文字セットをフルサポートする。そのためにMS明朝、MSゴシック、MS UI Gothic等のMSフォント[*3]において、以下に挙げる変更を行なう。

  ・TrueTypeからOpenTypeフォント仕様準拠に変更
  ・非漢字約200文字、漢字約900文字を追加
  ・150弱の文字をデザイン変更

さらにLonghornで実装予定の、よりバージョンの高いレンダリングエンジン『Uniscribe』(Unicode Script Processor)により、Windows XPまでは表示不可能だったJIS X 0213の結合文字、アイヌ文字、発音記号などを表示できるようにすることが表明された[*4]。もちろんMS-IMEも、新しいMSフォントと連携して印刷標準字体を優先的に候補表示するようになる。

 以上に加えて、私がマイクロソフトに問い合わせて判明した事実を簡単にまとめておく。新しいMSフォント(以下、新MSフォント)はフォント名を変更しない。また、Longhornではデフォルトで新MSフォントがインストールされるが、ただちに新フォントへ移行できない利用者やシステム向けに、旧来のMSフォントもインストール可能にする。もっともこれは旧フォントか新フォントかの二者択一であり、新旧を併用することはできない。



なぜマイクロソフトは、新MSフォントのフォント名を変更しないか?

 こうしたマイクロソフトの対応策の中で最も注目されるのは、同社が新MSフォントをデザイン変更する点だ。これにより150弱の符号位置については、新MSフォントとWindows XP以前に搭載されている旧MSフォントとの間で、包摂の範囲内であるにせよ字体が化ける。

 これは「文字化け・字体化けのない表示・印刷・情報交換を目指す」とする同社の方針と矛盾するように思われるかもしれないが、むしろ彼等にとっては、〈今回の改正で起こり得る字体変更による混乱は、将来の字体の安定のための過渡的な混乱〉(追補規格票 解説 p.39)なのだ。マイクロソフトは新JCS委員会と同様、この実装が普及するにしたがい、混乱は収束に向かうという考え方をとっている。

 ついで目を引くのがフォント名を変更しないことだ。新MSフォントのバージョンは「ver.3.00」になるはずだが、一般にOSやIME、アプリケーションはフォント名は判別しても、そのバージョンまで認識しない。したがって、例えばMS明朝が使われたファイルをWordで開いたとして、そのMS明朝が変更前なのか、変更後なのかをWordはわからない。ところがしかし、もしそのWordがインストールされたシステムに新MSフォントがあったとすれば、ユーザーは「意識することなく容易に」印刷標準字体を使うことが可能になるというわけだ。

 またこれとは別に、多くのWindows対応アプリケーションは、かなりの頻度でフォント名を決め打ちして作られており、デフォルト設定のままなら、まずMSゴシックやMS明朝等を探しにいくという現実がある。こうした状況の中では、仮に旧来からのMSフォントと別に印刷標準字体対応フォントをバンドルしたとしても、ユーザーが意識的にアプリケーション設定を変更しない限り、印刷標準字体対応フォントは利用できない。マイクロソフトは、これでは「意識することなく容易に」印刷標準字体を利用できないと考えた。

 次回で述べるアップルコンピュータの姿勢と比べるまでもなく、文字の形の変更が即座に就業時間の増加につながるような、例えばDTPの世界などから見れば、こうしたマイクロソフトの対応策は大変なハードランディングと映る。もちろん、今回の新MSフォントの変更はJISの改正に基づくものだ。特別編20で既述の通り、変更された例示字体はすべて包摂の範囲内であり、同様に新MSフォントの変更もJISが許容する範囲に収まる。

 しかし、過半のシェアを占めるOSにバンドルされ、多くのアプリケーションでデフォルト選択されるフォントが、フォント名を変えないまま同じ符号位置の文字デザインを変更するとなれば、互換性を重んじる立場からは、話は単純に「JISの仕様通り」とはいかなくなる。それが本当に過渡的なものかどうかは置き、多かれ少なかれ実際に社会的な混乱が発生することは、新JCS委員会とマイクロソフトが等しく認めるところなのだ。



マイクロソフトの対応策の「根拠」

 もっとも、こうした考え方は決してマイクロソフト独自のものではないことには注意したい。例えば2001年度新JCS委員会での配付資料のうち、日本書籍協会が提出した文書[*5]。ここではマイクロソフトとまったく同じ文脈で〈単に印刷標準字体が出せる、使えるというだけでなく、普通に入力すれば(仮に字体のことを何も知らない人が無意識に使ったとしても)まず最初に印刷標準字体が出てくるということ〉とある。おそらく日本書籍協会ならば、今回のマイクロソフトの対応策に両手をあげて賛同するはずだ。私からの問い合わせに答え、マイクロソフトはその根拠として「ユーザの要望」を挙げているが、具体的にはこうしたものが含まれているはずだ。

 じつのところ阿南氏は、かつて2001年度新JCS委員会において、当時発売されたばかりのWindows XPを使い、表外漢字字体表の前文そのものをスクリーンに映し出しながら、そこで「ワープロ等で打ち出せない」として問題にされていた「鴎」「祷」「涜」の印刷標準字体は、すでに1998年時点から表示・印刷可能であり、Unicodeを基本的な文字コードとして使うWindows XPならば、ごく近い将来に1,022文字の印刷標準字体すべてを容易に実装することも可能であるというデモンストレーションをしたことがある[*6]

 このUnicode(≒UCS[*7])を実装の主軸におくという考え方にしたがえば、ごく近い将来JIS X 0221(=ISO/IEC 10646≒Unicode)に、すべての印刷標準字体が収録されるのを待つだけで[*8]、他には特にJIS文字コードを変更する必要がないことになる。次回で詳述するが、実際にアップルコンピュータはこの考え方により、すでに改正JIS X 0213には対応済みとしている。

 しかし、この時のデモンストレーションの結果を阿南氏の言葉により振り返れば、

デモを見ていただいた後の共通の反応は当社が期待していた、「そうか、もう使えるのか!」ではなく、「そんな難しいことをしなくても、なぜ普通に使えるようにならないのか?」でした。

というものだった。ここまで述べたマイクロソフトの対応策には、こうした苦い経験も踏まえられていると考えるべきだろう[*9]

 ここで思い出してほしいのは、表外漢字字体表は常用漢字表など他の国語施策のように内閣告示訓令ではなく、法的裏付けを欠く審議会答申でしかないという事実だ。つまり以上の検討から浮かび上がるのは、マイクロソフトは表外漢字字体表の正統性や影響力を最大限度に強めた解釈をし、それに基づいた実装を目指したということになる。そしてこうした姿勢は、例示字体を「あえて」変更し、非互換変更を「あえて」行なった改正JIS X 0213の原案作成者、新JCS委員会の姿勢にぴたりと重なる。

 報道によるとLonghornは一部機能を縮小した上で2006年内の発売を目指すが、現実的には2007年前半が無理のないスケジュールと言われている[*10]。これが正しければ、新MSフォントが世の中に出回るようになる「Xデイ」は2006年以降、おそらくは2007年前半、つまり約3年後ということになる。

 次回は、引き続きPAGE2004にフォーカスを合わせ、その席上で発表されたアップルコンピュータの対応策について考える。これと今回説明したマイクロソフトの対応策をあわせ考えれば、「Xデイ」以降、Longhornとこれ以外のほぼすべての実装との間に、いわば「字体の壁」というべきものが出現することがわかるはずだ。やれやれ。

追記
4月1日付でJIS X 0213:2004の正誤票が発行された。以下のURLより入手できる(PDF)。

http://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/JIS/html/jp/errata16/errata
0404/jis_x_00213_000_000_2000_am_1_2004_cor_1_200404_j_ch.pdf

「JIS X 0213 Mail List」(http://wakaba-web.hp.infoseek.co.jp/jisx0213-ml.ja.html)におけるUCHIDA Akira氏の投稿による。同氏に感謝。

[*1]……このセッションの主催者としての報告は、以下のURLを参照。
「拡張する文字コード標準化と実装――JIS X 0213:2004の発行と、文字コードの実装と実用化」(http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?StoryID=7632
[*2]……「字体化け」とは耳新しい言葉だが、フォントが変わることにより包摂の範囲内で文字の形が変化することを指すようだ。この説明からも明らかなように、これ自体はJISの仕様の範囲内。従来の「文字化け」という言葉が、判読できない化け方も含んでいたのに対し、前述のケースだけを弁別する必要から生まれた言葉だろう(注5の日本書籍協会提出資料を参照)。もっとも阿南氏のような使い方からは、暗に「でもJISの仕様なんですよね」と言っているように聞こえて、私にはどうも居心地が悪い。

そんな私の素直な表現としては、これはどうしたって「文字化け」だ。そもそもDTPの世界で使われるCID/OpenTypeフォントに限って言えば、JISの例示字体との違いは微細なデザインの違いの範囲に収まっており、今回の例示字体変更ほどの大きな揺らぎはなかったのが現実だ。そういう世界で仕事をする私にとっては、いくらJISの仕様の範囲内の「字体化け」であっても、それは混乱を生む「文字化け」なのである。

しかし、本稿は概念や用語の「メートル原器」として、基本的にはJIS X 0208/JIS X 0213に拠って書かれている(例えば「例示字体」)。そうでもしないと内容が恣意に流れてしまうからなのだが、この立場からすれば、JIS X 0208/JIS X 0213で区別している違いを逆手にとったような用字用語は、やはりできないことになる。

したがって本稿では、心の中の素直な表現とは反するが、以下「字体化け」という新奇な言葉を使うことにしたいと思う。

なお「字体」については、特別編20の注1を参照していただきたい。
[*3]……Longhornに搭載される日本語フォントについては、本田雅一氏が『PC Watch』5月9日付の記事「本田雅一の週刊MOBILE通信――WinHEC配布版Longhornインストールレポート」(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0509/mobile241.htm)で、『MEIRYO』なる新しい日本語フォントが追加されるべく開発中と報じている。これによれば〈字母も従来とは異なる新しいものに変更〉とのことで、もしもこのプロジェクトが現実だとしたら、やはり改正JIS X 0213に適合した文字セットと考えられる。本田氏に問い合わせたところによれば、マイクロソフトはこの『MEIRYO』をLonghorn発売前に配布するかどうかも検討しているとのことだが、もしも配布されるなら、それはどのような文字セットのものになるか、成り行きが注目される。なお、この件についてマイクロソフトにコメントを求めたところ、「残念ながら現時点でご案内できる情報はありません」とのことであった。
[*4]……JIS X 0213はアイヌ文字として半濁点付きのの片仮名「セ」「ツ」「ト」、および小書きの「ト」「ヌ」「ハ」「ヒ」「フ」「プ」「ヘ」「ホ」「ム」「ラ」「リ」「ル」「レ」「ロ」を収録する。他に鼻濁音の表記用として半濁点付きの平仮名「か」行と片仮名「カ」行、ヨーロッパ諸語のための発音記号付きラテン文字等を収録している。

ところで、これらの文字を表わすUCS符号位置は単一ではない。追補規格票p.21~23を見るとわかるように、これらは1つの面区点位置を2つのUCS符号位置で表わしている。例えば「半濁点付きセ」を示す「1-5-92」ならば、「セ=30BB」と「゜=309A」を結合して表示するということになる。このように組み合わせて1つの文字となるものを「結合文字」と呼び、その表示・編集・印刷には高機能なレンダリングエンジンが必要とされる。
[*5]……「JIS反映審議にあたっての要望(PDF)」(http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/committe/JCS/Jcsnnp-2/JCSNNP-2-04.PDF)、「日本書籍出版協会要望書(PDF)」(http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/committe/JCS/Jcsnnp-3/JCSNNP-3-05.PDF

他に非公開資料なので同委員会の取材ルールにしたがい引用はさけるが、日本雑誌協会、日本文芸家協会、日本印刷産業連合会が例示字体変更を要望する意見を提出している。ただし、これらは意識しないで印刷標準字体を使えることまでは想定してない。しかし文書の内容から、私にはこれらの団体もマイクロソフトの対応策を歓迎するように思える。マイクロソフトの考え方は、決して少数派のものではない。

なお、関連してマイクロソフトから以下のような興味深いページを教えられた。
http://www.city.katsushika.tokyo.jp/aisatu/katu.html
[*6]……2001年6月12日臨時第1回委員会におけるもの。議事録は以下のURlを参照(PDF)。http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/committe/JCS/Jcsnnp-2/JCSNNP-2-02.PDF
[*7]……本稿では国際規格ISO/IEC 10646-1やISO/IEC 10646-2、あるいはその翻訳JISであるJIS X 0221-1等を一括してUCSと呼ぶ。ISO/IEC 10646とUnicodeの関係については、特別編21の注2注4を参照されたい。
[*8]……2001年当時、「CJK統合漢字拡張B」領域を含むISO/IEC 10646-2の審議が最終段階を迎えていた。ここには「叱」の印刷標準字体など、数文字の印刷標準字体が含まれており、これを収録しないと、UCSはすべての表外漢字字体表の文字を表現できなかった。ただし、この制定は単に時間の問題であり、そうなればJIS X 0221として翻訳されるのも規定の方針だ。「ごく近い将来」とはこうした事情を指す。
[*9]……この2001年度時点でのマイクロソフトの考え方は、この時の委員会で配布された資料「表外漢字字体表のJIS文字コード規格への反映について(PDF)」(http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/committe/JCS/Jcsnnp-rinn-1/JCSNNP-%97%d51-16.PDF)で知ることができる。これは〈X0213およびX0221において例示字体・字形は一切変更せず、表外漢字字体表1,022字のうちJIS例示字体が印刷標準字体と「同じ」または表外漢字字体表におけるデザイン差にあたる面区点位置には、例えば「印標」などのマークのみを示し、該当しないものについてはマークとともに印刷標準字体を別掲して参考とする〉というものであった。重ねて指摘するが、これは次回で詳述するアップルコンピュータの対応策と、基本的には同じ考え方に立ったものだ。なぜマイクロソフトは考えを変えたのだろう? これは一考に値する疑問といえる。
[*10]……例えば『ITmedia』2004年4月10日付け「Longhorn、一部機能縮小により2006年出荷厳守へ」(http://www.itmedia.co.jp/pcupdate/articles/0404/10/news008.html)を参照。また『PC Watch』5月6日付け「元麻布春男の週刊PCホットライン――Longhornのリリースは2007年?」(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0506/hot317.htm)では、〈どんなに楽観的に見積もっても2006年末、おそらくは2007年になる〉と予想し、これを踏まえWindows XP Second Editionの可能性に触れている。ただし、注4でも述べたようにJIS X 0213の全レパートリを扱うには、高機能レンダリングエンジンが必要だから、本当にWindows XP Second Editionが発売されるとしても、そこに新MSフォントは搭載されることはないと考えられる。

( 小形克宏 )
2004/06/02

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