ブロードバンド推進協議会は23日、ヤフー株式会社の喜多埜裕明取締役Yahoo! BB事業部長兼社長室長を講師に、「インターネットビジネスとYahoo! JAPAN」と題した講演を開催した。
● ブロードバンドで増えたユーザーは、「初心者」「高齢者」
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ヤフー株式会社の喜多埜裕明取締役Yahoo! BB事業部長兼社長室長
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冒頭にまず、インターネット環境について述べ、「国内ネットユーザーは2003年12月で約4,500万人になった。ヤフーの利用者も2001年の2,000万人から約3,500万人に増加した」という。ページビュー(PV)も1日2億PVから6億PVに増加。ユニークブラウザ数では6,000万に達している。
ユーザーの内訳については「初心者が増えた」とし、「特にYahoo! BBが原因だ」と分析。「Webサイトだけでなく、街頭や店頭での販促の影響か大きいのではないか」という。ブロードバンドの比率は、2003年1月でナローバンドユーザーとの比率が逆転。なお、喜多埜氏によれば、「一般的には、ブロードバンドユーザーとナローバンドユーザーの逆転が起きたのは、2003年3~4月。Yahoo! JAPANは、Yahoo! BBユーザーが多いためブロードバンド率が高まるのが早かった」としている。
ブロードバンドユーザーが増加するのに伴って、利用時間帯も変化。「2003年7月時点では21時がピーク。しかし、ブロードバンドが普及する以前の2000年12月時点では、23時がピーク。おそらくテレホーダイの影響だろう」と喜多埜氏。「インターネットって体に良くないよね、と言い合ったものだ」と当時を振り返った。「ブロードバンドユーザーの増加は、サイトの滞在時間も増加させた。2000年9月には1時間程度だった滞在時間が、約3時間になっている」。
カテゴリ別の利用率に関しては、45歳以上の伸びに注目。1996年では5.9%だったが、2003年10月には11.0%に増加した。また、ネットに対する接触時間も「60歳以上の方が年を追うごとに増えている」という。「触るまでは大変だが1回設定してしまえば、リタイアしたユーザーは時間がある」とし、今後は「高齢のユーザーを念頭においてサービスを展開する」方針だ。ユーザーの性別や職業も、「1996年のころは9割が男性で、4割が技術職。それが、2003年10月には女性が半数近くになり、職業も偏りがなくなってきた」とし、「一般的なユーザーが多くなった」としている。
なお、2004年1月末時点でのYahoo! BBユーザーは382万世帯。プレミアム会員は368万ID。Yahoo!IDを持つユーザーは約3100万IDで、IDを持たずに利用する一般ユーザーは3562万人。喜多埜氏は「まだ、Yahoo! BBユーザーは利用者の1割。『何で、もっと加入させられないのか』とソフトバンクの孫社長から怒られる」と語り、今後もYahoo! BBの加入に注力するという。
● 現在は“常時接続環境”の段階、今後は“広帯域接続環境”を目指す
喜多埜氏は国内ネット環境の現状を、「低額・定額の“常時接続環境”が実現した段階」と位置づけ、一般家庭への浸透やテレビなどの家電と同様の地位を占めるステージだという。今後は、動画などの魅力的なリッチコンテンツを利用できる“広帯域接続環境”に移行すると予想。「現在はニュースや株価の確認に利用されているが、広帯域接続環境が実現すれば、娯楽分野の利用も増加するはずだ」と期待を述べた。
ユーザーに対しては、「便利・快適・安心なサービスを提供する」という。便利については、統一的な操作感やサーファーによる独自の検索システムにより、「欲しい情報が確実に手に入る」ことを目指す。また、ダイヤルアップユーザーやISDNユーザーに配慮し、広告容量の制限を実施。ブロードバンドユーザーに対してはバックボーンの設備を増強し、ユーザーの環境に応じて快適に利用できる環境を構築。さらに、カスタマーケアや、「世の中を騒がせてしまうオークションで違法な出品を1秒でも早く削除する」パトロールなどの部署を拡充。詐欺を防ぐエクスローサービスも導入しており、安心に利用できる環境を整備したとしている。
一方広告のクライアントとなる企業に対しては、マスメディアに見劣りしないユーザー数やユーザーの質をアピールする。「多くのユーザーに情報源として認知されており、テレビ、新聞、雑誌、ラジオに続く5つめのメディアであることを訴える」という。
広告事業に関しては、「プランニングから広告、販売、分析といった一連の流れを全部Yahoo! JAPAN上で行ないたい」と意気込みを見せる。「トップページに広告バナーを貼って、『1,000万人がアクセスしました』といったマスメディア的な売り方もできるが、検索結果に広告を出すなど、興味が限られているものを売る場合にもインターネットは適している。ニッチなユーザーにダイレクトに訴求する広告を増やす」としている。
さらに「インターネットは、“欲しいな”と思える広告を見て、その場で簡単に購入できるのも特徴」だとし、物販プラットフォームとしてのYahoo!オークションやYahoo!ショッピングを強調。また、決済サービスであるYahoo!ウォレットに触れ、「登録者は700万ユーザーで月間150億円を決済している」と実績を示した。
● Google利用継続~「米Yahoo!はそれほど影響なし」
このほか、動画配信などでの著作権保護についても言及。ヤフーでは、JASRACと基本契約を締結し、動画配信にはDRM(Digital Rights Management)技術を導入しているという。喜多埜氏によれば、「Yahoo! BB向けに配信すれば、間違いなく国内ユーザー。Yahoo! JAPANで配信する時は、国内だけでなくアメリカや韓国、中国などからアクセスするユーザーごとに版元と著作権の契約を結ぶ必要があるが、Yahoo! BBは国内電話回線を利用しているため、国内ユーザーのみに配信できる。そういう意味では権利の管理が簡単」だとコメント。
個人情報の取り扱いについても、「ほぼ毎日、さまざまなメディアで“個人情報が流出した”と報道されている。ヤフーでは、以前は個人情報をいただいていなかった。ポリシーはそのころと同じで、必要ない情報はいただかない。ただし、いただいた情報については『TRUSTe』に適合するように扱っている」とコメント。迷惑メールやYahoo!オークションの違法出品に関する対策については、「MSNやACCSと提携している。ACCSとの提携については、担当ではないため詳細を申し上げることができないが、MSNと設立した『迷惑メール撲滅連絡会』は現在も水面下で会合を進めている。賛同いただいた事業者もおり、準備が整ったら発表したい」としている。
なお、米Yahoo!では今後独自の検索エンジンを導入する方針だが、Yahoo! JAPANでは引き続き「Google」を利用するという。「米Yahoo!の決定は、米Yahoo!とソフトバンクが2大株主であるYahoo! JAPANではそれほど影響はない」と米本社の圧力を否定。ただし、「検索エンジンについては、絶えず模索している」とし、当面はGoogleを継続するが、その後については不明だとしている。
最後に喜多埜氏は「従来はPVやクリックレートを重視していたが、今後は“適切な情報を、適切な時に、適切な人々に”配信する」と強調。「Yahoo!が企業と消費者を結び、みんなにネットを通じてハッピーになってもらいたい」と述べ、講演を締めくくった。
関連情報
■URL
ブロードバンド推進協議会
http://www.bbassociation.org/
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( 鷹木 創 )
2004/02/23 18:11
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