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“ネットカフェ難民”が流行語にもなった2007年、業界団体会長に聞く


日本複合カフェ協会の会長を務める、メディアクリエイト代表取締役社長の加藤博彦氏
 今年1月、ドキュメンタリー番組「NNNドキュメント'07 ネットカフェ難民~漂流する貧困者たち」が放送されたのをきっかけに、“ネットカフェ難民”という言葉がマスコミなどで使われるようになり、12月に発表された「2007ユーキャン新語・流行語大賞」ではトップテンの1つにも選ばれた。

 また、厚生労働省が8月、ネットカフェをオールナイトで利用する人のうち「住居喪失不安定就労者」が全国で5,400人いるとの推計を発表するなど、ある意味、2007年は社会問題の側面からネットカフェが注目された年でもあった。さらに、健全利用などの観点から、本人確認や青少年へのフィルタリングなど、ネットカフェに対してさまざまな対策が求められる状況にもある。

 ネットカフェの業界団体である日本複合カフェ協会(JCCA)は、そのような2007年をどう見ているのか? JCCAの会長で、静岡・神奈川を中心にネットカフェを運営するメディアクリエイトの代表取締役社長である加藤博彦氏に話をうかがった。

 なお、JCCAの会員企業は賛助会員を含め241社おり、加盟店舗は12月現在、全国で1,383店。JCCAの調査によれば、ネットカフェは全国で約2,800店舗あるとしており、その約半数がJCCAに加盟していることになる。


テレビ番組「ネットカフェ難民」の影響は?

日本複合カフェ協会の声明は、7月17日付で同協会のサイトに掲載されたが、マスコミで取り上げられるようになったのは、それから1カ月以上も経った8月末。厚生労働省の住居喪失不安定就労者に関する調査が公表された際だった
──今年は“ネットカフェ難民”という言葉によって、ネットカフェが注目を集めましたが、JCCAでは、この言葉を使わないよう求める声明を数度にわたって発表しています。

加藤氏:「難民」という言葉を使ってお客様を差別的に見ている点を問題視しています。別にネットカフェが難民を生んでいるわけではなく、ネットカフェはどちらかというと、その人たちを受け入れる立場です。ほかのお客様と別扱いするような“ネットカフェ難民”という呼び方はやめて欲しい。

──番組放送以降、ネットカフェの利用者数や売上などに何か影響はあったのでしょうか。

加藤氏:JCCAの会員企業にアンケートをとったところ、例えば、住居喪失不安定就労者が利用するということで、テナントの賃貸契約にあたってこの業態が嫌がられたという報告や、女性客が減ったような気がするという意見がありました。ただし、統計データがあるわけではなく、「そう聞かれれば、そういう気がする」といった程度です。とはいえ、私も他の業種の方から「商売がたいへんですね」と言われることもあるので、世間の関心が高いのは事実だと思っています。

── 一部報道では、住居喪失不安定就労者が利用しているのを嫌い、利用者が減った店舗もあると報じられました。

加藤氏:風評被害もあったと思いますが、このことだけが理由かどうかは定かではありません。例えば、深夜のお客様が半分になれば、大きな影響があったと思いますが、5%や10%程度減ったとしても、そういうことはよくあることで、季節によっても変動があります。

──番組が放送される以前から、住居喪失不安定就労者の利用に対して何か対策をとるような必要が生じたことはあったのでしょうか。

加藤氏:それはありませんでした。別に犯罪を起こすわけでもないし、店内に居座られてほかのお客様が迷惑するということもありません。よく利用していただいているヘビーユーザーという位置づけですね。(ネットカフェ難民については)ネットカフェを利用しない人たちの中で議論したり、話題になっているだけのような気がします。もちろん、我々のようにネットカフェ業界の人間は気にしますが。


“ネットカフェ難民”が社会問題になっているとしても、都市部だけ

──厚生労働省の調査では、全国のネットカフェで1日あたり60,900人のオールナイト利用者がおり、そのうち5,400人が住居喪失不安定就労者だと推計しています。

加藤氏:そういう方々がいらっしゃるのは事実ですが、社会問題になっているとすれば、都市部だけです。JCCAの会員は郊外に店舗を持つ企業が多いのですが、住居喪失不安定就労者がいるのは都市部だけで、郊外ではぜんぜんいません。そもそも、郊外で生活している住居喪失不安定就労者が少ないのだと思います。あまり騒いで欲しくないというのが正直なところです。

──同じく厚生労働省の調査では、オールナイト利用の頻度が「週5日程度以上」「週3~4日程度」とした人はわずかです。また、オールナイト利用の理由として「現在住居がなく、寝泊まりするために利用」を挙げた人は0.4%で、多いのは「遊び等で夜遅くなり帰れない」(35.8%)や「パソコン・ゲーム・漫画等をオールナイトで利用するため」(33.8%)、「仕事等で夜遅くなり(または朝早く)帰れない(帰るのがおっくう)」(16.3%)などでした。

加藤氏:家に帰らずに夜を過ごす人は昔からいるわけで、それが今はネットカフェを利用するようになったというだけですよね。夜泊まるだけなら1,000円ぐらいで利用できる店舗もあり、きれいなわりには安い。昔はカプセルホテルや映画館、24時間営業のファストフード店などが使われていたと思いますが、多分、料金に対するサービスというか居心地のよさではネットカフェの方が上ということで、利用が増えたのだと思います。

──番組放送以降、ネットカフェに行けば安く泊まれるということが広く知られ、オールナイトの利用が増えたということはありますか。

加藤氏:報道があったからか、そういう選択肢があることを知ったからかは不明ですが、利用する人は増えたでしょうね。ただ、それほど変わってはいないと思います。

──厚生労働省が調査をするにあたり、JCCAに協力を打診してきたが、それを断わったと聞いています。

加藤氏:最初に厚生労働省から打診を受けた時、お客様に直接アンケートをとって欲しいと言われました。例えば、「あなたは定職がありますか」とか「住居がありますか」とか。そんなことをお客様に聞けるわけがありません。だから、調査への協力自体をお断りしたんです。

──では、厚生労働省が調査対象とした全国3,246店の中には、JCCAの会員企業の店舗は含まれていないのでしょうか。

加藤氏:協力した店舗もあるかもしれません。JCCAとしては、特に「協力しないように」とは通達していません。ただ、お客様に直接アンケートをとってくれと言われて対応できる店舗はほとんどないのではないでしょうか。店舗のスタッフへのアンケートなら対応できるかもしれませんが、直接お客様に聞くことは失礼でできません。


本人確認、フィルタリング、市場拡大策……2008年に向けた課題

“ネットカフェ難民”については正直なところ、「あまり騒いで欲しくないです」とも
──1月に「ネットカフェ難民」が放送され、12月にはこの言葉が新語・流行語大賞にも選ばれました。2007年はある意味、ネットカフェ業界にとって注目された1年だったと言えますが、何か大きな変化はあったのでしょうか。

加藤氏:報道の影響で売上が落ちているかどうかはわかりませんが、業界全体は過剰店舗ということもあって、成長期から成熟期になった1年だったと思います。

──番組の影響とは関係なく、利用者が減っていると?

加藤氏:市場全体は拡大していると思いますが、新たに出店した数に比例するほどに市場は拡大していないということです。1店舗あたりの利用者数や売上高が減り、経営が厳しくなっているのは事実です。業態そのものが成熟期を迎えているのにこのまま店舗が増え続ければ、業績が上がらずに撤退していくところも出てきます。2006年から2007年にかけて、サービスの複合化でいろいろな業態が現われたのですが、結局、利用のメインはパソコンと漫画ということで、また集約されています。原点に戻っていくような感じですね。

──2008年に向けての課題、あるいはJCCAとしての方向性を教えてださい。

加藤氏:ネットカフェ市場が衰退していくとは思ってません。スクラップ&ビルドを繰り返しながら、店舗の業態が進化していくと思います。例えば、ネットワークゲームがいろいろなと出てきているので、パソコンのスペックを上げたり、回線速度を上げるなど、サービスの向上も進んでいくでしょう。


──ネットカフェに対しては、利用者の本人確認や、青少年の利用にフィルタリングを求める動きがありますが。

加藤氏:フィルタリングや本人確認、深夜の年齢制限などの問題は、会員制をとっていれば、ほとんど解決する問題なんです。警察だけでなく自治体からもいろいろな要望があり、そうしないとクリアできません。全部法律で決められてしまうと、今度は自由度がなくなってしまいます。我々の中で自主ルールを作り、我々の中で守っていこうとして進めているのですが、少し限界が見えてきている。JCCAとしては現在、会員制は努力義務としていますが、会員制をとるということを柱にしてもう一度、協会のやり方を変えていくということになると思います。

──会員制を義務化すると、コストや運用面で運営企業の負担が増えそうですが。

加藤氏:確かに、後から会員制に移行するとコストがかかります。しかし、最初から会員制をとっていればコスト負担はあまり感じません。逆に商売上、固定客の囲い込みや会員分析ができるなど、販促にも役立てようとの意図でやっています。また、会員制であれば、ネットカフェが何か犯罪に悪用された時に追跡でき、利用者を特定できるため、犯罪の抑止効果があります。キーロガーを仕掛けられた事件は、会員制でない店舗を狙ったものでした。

──会員制をとっている店舗が、会員登録のわずらわしさなどから利用者に敬遠されることはないのでしょうか。

加藤氏:都市部では、その場限りの匿名性がいいからといって利用する人がけっこういます。一方、会員制をとっている店舗の方が安心して利用できるというお客様もいます。両方の層をとりこむのは無理なので、会員になってもらえるお客様に利用してもらえて、そうではないお客様が来なくても商売をやっていければいいと思います。

──未成年者の利用者は多いのでしょうか?

加藤氏:未成年者の利用は夏休みなどに集中しており、5%程度です。20代が60%、30代が30%を占めています。今後はシニア割引など、40歳代以上をとりこむ努力も必要でしょう。例えば、ビリヤードを設置している複合店では、シニアのビリヤード倶楽部を支援するところもあります。団塊の世代のサロンとして使っていただけるような方向性もあると思います。

──ありがとうございました。


関連情報

URL
  日本複合カフェ協会
  http://www.jcca.ne.jp/

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( 聞き手:永沢 茂 )
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