警察庁の総合セキュリティ対策会議は29日、インターネットカフェの匿名性が不正アクセスや自殺予告などに対する捜査の障壁になっているとして、インターネットカフェ事業者に対して利用者の本人確認の徹底などを求める報告書をまとめた。
報告書によれば、2005年中に警察が認知した不正アクセス行為592件のうち、2006年5月末の時点で未検挙のものが277件あり、このうち212件で匿名性が障害となって捜査に進展が見られないという。中でも、インターネットカフェの端末が使用され、当該店舗または当該端末までは判明したものの、利用者に関する情報が存在しないために捜査に進展が見られないものが139件に上っており、インターネットカフェの匿名性が捜査の障壁になっているとしている。
また、首都圏および近畿地方では2006年1月~3月までに、ネットオークションを利用した詐欺事件のうち、インターネットカフェの端末を使用したものを8件認知しているが、このうち2007年2月までに検挙に至ったものは1件にとどまっている。未検挙の理由としては、利用者に関する情報が存在しないものが6件、利用者に関する情報は存在するが端末の使用状況が記録されていないために被疑者を特定できないものが1件。このほか、ネット上の自殺予告に対して、インターネットカフェからの書き込みであったために発信者を特定できなかった事案なども報告されている。
インターネットカフェや漫画喫茶の事業者などで構成される事業者団体「日本複合カフェ協会」では、インターネットの利用時の会員登録や防犯カメラの設置、セキュリティ対策、18歳未満の利用者に対するフィルタリングシステムの導入などを運営ガイドラインとして定めている。ただし、このガイドラインに従うかは各加盟店舗の判断に委ねられており、協会が2005年10月に実施したアンケートでは会員制度を導入している店舗は71.6%で、協会に加盟している店舗の割合も2005年9月現在で推定41.3%にとどまっている。
こうしたことから総合セキュリティ対策会議では、インターネットカフェ等の事業者に対して、利用者の本人確認を確実に行なうとともに、利用者の入店時刻や退店時刻、利用端末に関する情報などを一定期間保存するなど、事業者に対してより一層の取り組みの強化を求めている。また、こうした事業者側の取り組みが進まない場合には、より強力な対策についての検討も必要になるとしている。
さらにネットオークション詐欺については、インターネットカフェ事業者とネットオークション事業の連携などにより、悪用されないための取り組みを共同で進めていくことを要望。また、ネットカフェの端末にキーロガーなどが仕掛けられることを防止するための取り組み、ガイドラインに従った店舗を「優良店舗」として明示する活動の推進、青少年の利用者に対するフィルタリング機能の提供などを対策として求めている。
情報セキュリティ対策会議は、情報セキュリティに関する産業界と警察との連携のあり方などについて検討を行なう目的で、警察庁が2001年から設置している有識者会議。2006年度は、ネット上の違法・有害情報などの通報を受け付ける「インターネット・ホットラインセンター」の運営状況と今後の運営のあり方、インターネットカフェ等における匿名性に関する問題についての議論を報告書としてまとめた。インターネット・ホットラインセンターの運用状況等については、既に2月に報告書が公開されている。
関連情報
■URL
平成18年度総合セキュリティ対策会議 報告書(PDF)
http://www.npa.go.jp/cyber/csmeeting/h18/image/pdf18.pdf
警察庁 サイバー犯罪対策:総合セキュリティ対策会議
http://www.npa.go.jp/cyber/csmeeting/index.html
日本複合カフェ協会
http://www.jcca.ne.jp/
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( 三柳英樹 )
2007/03/29 18:48
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