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ネットカフェでのフィルタリング対策、運用のコストと手間が課題

「自遊空間 BIGBOX 高田馬場店」報道向けにシステム公開

 URLフィルタリング技術・製品の開発やデータベースの構築を手がけるネットスターが、ネットカフェ(複合カフェ)業界向けにフィルタリングサービスの販売を開始した。その導入第1号店舗として、ランシステムが10月にオープンした複合カフェ「スペースクリエイト自遊空間 BIGBOX 高田馬場店」(東京都新宿区)に採用された。今回、同店舗に設置したフィルタリングシステムなどが報道関係者に公開され、複合カフェにおけるフィルタリングソリューションの導入事情などが説明された。


149台のPCを1台のヤマハ製ルータでフィルタリング

スペースクリエイト自遊空間 BIGBOX 高田馬場店

ヤマハのビジネスルータ「RTX3000」は希望小売価格が52万2,900円
 ネットスターが提供するのは、ヤマハのビジネスルータ上で動作する企業向けフィルタリングサービス「サイトアンパイア」をベースにしたもの。ルータ配下の端末からサイト閲覧のリクエストがあると、そのURLをネットスターのデータベースサーバーに照合し、閲覧を許可するか遮断するかを判定する仕組み。全端末を一括して制御可能なため、1台ごとにフィルタリングソフトをインストールしたり、データベースファイルの更新を行なうなどの運用コストおよび手間を削減できるのがメリットだという。

 一方、自遊空間は、11月6日現在で直営店・フランチャイズ店合わせて全国に179店を展開する複合カフェの大手。10月19日にオープンしたBIGBOX 高田馬場店は、都内でも最大級の規模だとしており、床面積は560坪、定員は450人だ。1人用の座席が合計134席、最大6人が入れるファミリールームが10室あるほか、ビリヤードやオンラインダーツ、コミック5万冊などを備える。ここに設置されているインターネット接続可能なPC端末149台、持ち込みPC用のLANポート25口を、サイトアンパイアでフィルタリングしている。

 具体的には、ヤマハのビジネスルータ「RTX3000」を2台設置。通常は店内のPC端末149台と、LANポート25口にそれぞれ1台を割り当て、トラブル時には互いにバックアップする構成をとっている。RTX3000には、一般向けにはリリース前となるファームウェアをインストールし、サイトアンパイアと連携しているという。同店舗ではインターネット利用のピーク時であっても、フィルタリングサービスを有効にした状態で、RTX3000のCPU使用率は16%程度にとどまっており、店舗内の全端末をルータで一括して制御しても、負荷やスループット低下の問題はないという。

 なお、自遊空間では、RTX3000の下位機種にあたる「RTX1100」を採用している店舗が多いが、インターネットの利用が多い80店舗ではすでにRTX3000に移行済みで、これにより利用者からのスループット低下などのクレームが減ったとしている。サイトアンパイア自体はRTX1100でも動作するが、ランシステムではパフォーマンス優先ということで、規模の大きい店舗ではRTX1100のままサイトアンパイアを導入するのは厳しいと見ている。


RTX3000などを収めたラック ラックの隣にあるONUの収納ボックス。複数キャリアの光ファイバ回線を引いている

入場システムと連携、18歳未満はアダルトサイトなど遮断

 自遊空間では会員制を導入しており、初めて利用する際には身分証を提示して会員証を作成する必要があるが、それ以降は、入場手続きから座席(ブース)の選択、料金精算まで、出入口に設置されたタッチパネル式端末でセルフサービスで行なえるようになっている。これにより、週末の多い時で1日に1,000人以上の利用者をさばいている。

 フィルタリングサービスはこの入場システムと連携しており、18歳未満の会員が利用する座席の端末に対してサイトアンパイアのフィルタリングが自動的に有効になる仕組みだ。具体的には、アダルトサイトのほか、ワンクリック詐欺サイトや自殺サイトなどもフィルタリングする。該当するサイトにアクセスしようとすると、「このサイトは【フィルタリングソフト】により有害サイトとしてブロックされました」というページが表示され、自遊空間の専用ポータルサイトにリダイレクトされる。

 また、この専用ポータルサイトで利用者向けに配信しているコンテンツも、18歳未満ではアダルトコンテンツを除外したメニューが表示される仕組みだ。

 ランシステムによれば、自遊空間ではアダルトサイトなどが閲覧できないとして、18歳未満の利用者からクレームが寄せられたケースは今のところないという。また、アダルトサイトなどが閲覧できないために、18歳未満の利用者から敬遠され、他の店舗に利用者が流れているというような売上的な影響も見られないとしている。


自遊空間の専用ポータルサイト フィルタリングによる遮断通知ページ

ルータ方式では、大規模店舗ほど運用面でコストダウンに

 これまで自遊空間では、端末ごとにクライアントソフトをインストールする方法でフィルタリングを導入してきた。この方法でも、入場システムと連携するかたちで、座席ごとにフィルタリングの有効・無効を制御することは可能だった。

 ただし、入場時からフィルタリングを有効にするまでには若干のタイムラグが発生。また、エージェントソフトが常駐するためにPCのリソースを消費してしまうほか、PCの起動に時間がかかるなどのデメリットがあったとしている。

 ルータ方式のフィルタリングでは、これらのデメリットが解消されるとともに、運用コストの削減効果が大きいという。クライアントソフト方式ではデータベースファイルの更新を、店舗の清掃時間などに合わせて作業していたが、ルータ方式のサイトアンパイアを導入したBIGBOX 高田馬場店ではデータベースファイル更新に伴う人件費を完全にカットでき、「相当なコストダウンにつながった」(ランシステム)という。

 また、導入時のコストについても、ヤマハ製のビジネスルータをすでに導入していれば、ハードウェアの増設が不要だったこともポイントだったとしている。ネットスターによれば、サイトアンパイアの最小構成は、ヤマハ製の対応ルータで最も安価なモデルが「SRT100」で希望小売価格が81,900円、サイトアンパイアの年間ライセンス料が34,650円(端末が5台の場合)。接続する端末が30~40台以上であれば、コスト削減効果が明確に見えてくると説明している。


青少年だけでなく、大人の利用でもフィルタリング導入を検討

入口に設置されている、会員登録や入場手続きのためのタッチパネル端末

店内の空席状況を表示する大型ディスプレイ
 ランシステムによると、BIGBOX 高田馬場店は学生の利用が多く、女性が4割を占める。年齢層は20代がピークで、フィルタリングの対象となる18歳未満は1割程度。この年齢層の傾向は自遊空間の他の店舗でも同様だという。

 それほど比率が高くない利用者のケアとしてフィルタリングソリューションを導入することについて、ランシステムは「社会のルールを適用することで、店舗に対する両親からの信頼にもつながる」と説明する。

 この背景には当然ながら、青少年保護を目的としたフィルタリングの導入をネットカフェに対して求める流れがあるのは事実だ。フィルタリングの導入を努力義務として求めている条例を設けている都道府県も多く、鳥取県ではさらに踏み込んで、青少年にはフィルタリング導入済みの端末を提供することを義務化する条例改正案をとりまとめている。

 とはいえ、コストや手間からフィルタリングソフトの導入率は1~2割程度にとどまるとの調査データもあり、特に会員制度を採用していない複合カフェでは、年齢によるフィルタリング対策は難しいのが実情だという。

 このような状況の中、ランシステムではさらに今後、18歳以上の利用者についても、アダルト以外の危険なサイトを対象にフィルタリングできるようにすることについて慎重に検討していく方針だ。サイトアンパイアのデータベースではカテゴリごとのフィルタリング制御が可能なため、大人の利用者に対しても、希望に応じてこれらのフィルタリング機能を有効にするようなオプションサービスを提供することは、技術的には可能だとしている。

 現時点では、大人の利用においてもフィルタリングが必要だとする流れはまだないというが、ランシステムでは「複合カフェでは当社がトップ。詐欺サイトなどから大人を保護するという観点で、自遊空間がフィルタリング導入に踏み切れば、業界もその方向へ進むのではないか」と述べる。そのソリューションとして、ルータ方式のフィルタリングサービスが複合カフェ業界のモデルになる可能性もあるとしている。

 なお、ランシステムによると、複合カフェは全国で2,458店あるとされており、このうち1,260店が業界団体の複合カフェ協会に加盟している。加盟店では、年齢確認のための会員制度をほぼ導入しているという。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.netstar-inc.com/press/press071018.html
  スペースクリエイト自遊空間
  http://www.jiqoo.jp/
  ネットスター「サイトアンパイア」サービス概要
  http://www.netstar-inc.com/smb/router/index.html

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( 永沢 茂 )
2007/11/13 20:29

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