GPSサイコンの最高峰「ガーミンEdge 800」はここがスゴイ
Edge 800 |
「Edge 705」「Edge 500」と続いたガーミンのサイコン(サイクルコンピューター)に昨年秋、新ラインナップ「Edge 800」が投入された。カラーディスプレイのタッチパネル式で、これまでのシリーズを踏襲しながら細かな改良を加えた、現時点で最強のGPSサイコンである。
Edge 800の登場まで筆者は旧式の「Edge 305」を使用していた。速度、ケイデンス(1分間のクランク回転数)、距離、心拍が計れるコンパクトなGPSサイコンで、日々のトレーニングにはまったく支障はなかった。実際、それで3万kmほど走り、何もトラブルがなく「自分にはこれで十分」とさえ思っていたのだ。
しかし、昨年秋に開催されたイベント「サイクルモード」に出展されたEdge 800に触れ、考えが改まった。カラーディスプレイの鮮明さ。グローブをつけていても反応する感圧式のタッチパネル。そしてこれから紹介する数々の機能……。物欲はひしひしと高まった。なんとかしていち早く手に入れたい。しかし高いのだろうなぁ。他の機材で一杯一杯なのに、手に入るわけないじゃん、と。
しかし朗報が訪れた。イギリスの通販サイト「Wiggle」をチェックしていたら、発売前のEdge 800が予約を受け付けていたのである。お値段、当時のレートで4万5000円ほど。心拍バンドやケイデンス/スピードセンサーはEdge 305から流用できるから、素のまま買えばの値段であるが、これは安い!
地図機能のついていない廉価なスタンダード版のEdge 500でも3万円ぐらいである。海外通販と日本の代理店システムの価格差はご存知の読者も多いと思われるが、欲しい物をどこで買うかは消費者の勝手である。購入後のケアは自力でやるのが前提だが、筆者は物欲の誘惑に負けて海外からの購入を決めた。
●地図ソフトはどうしようか?
マウントしてみると、95mmのステムサイズにぴったりだった |
我が家にEdge 800が届いたのは昨年11月中旬。いそいそとセットアップし、起動させてみた。心なしか、以前の305に比べてGPSの掴みが速い。筐体サイズもコンパクトで、あまり大きさを感じられない。マウントしてみると、95mmのステムサイズにぴったりであった。500から導入されたゴム式のマウントシステムも頑丈で、これなら悪路で吹っ飛ぶ心配もいらない。
起動させてみて、第一の印象はディスプレイのワイドさである。705のディスプレイを一回り大きくしたそれは、走行中の確認にも耐えられそうだ。なによりもタッチパネル。指先ひとつで、さまざまな操作がいとも簡単に行え、レスポンスも上々だ。よっぽど手指が大きな人でなければ、ミスタッチをすることもなかろう。初めてiPhoneを手にしたときのような興奮がよみがえってきた。
次に行ったのは、本体に地図をインストールすること。買っただけの800には地図は付属していない。日本の地図を入れるべく、いくつかの地図ソフトから筆者が選んだのは、UUD製作所の「日本全国デジタル道路ナビV3.0」だ。他にも選択肢はあるが、ダウンロード版で1万3650円という値ごろ感に惹かれた。日本の地図と言えど、マップに表示されるのは日本語ではなくローマ字だ。本体のインターフェイスも含め、日本語にこだわる人も多いと思うが、筆者にとってはそう大きな問題ではない。
メイン画面。およそ70の項目から自分に必要なものを任意に選べ、3画面にそれぞれ最大10の項目を表示させることができる | 地図表示画面。上部に道路名と方角が示され、その下のデータも好みに応じたアレンジが可能だ | メニュー画面。わかりやすいアイコンで操作がしやすく、その後の階層もすっきりしている |
●「ルートラボ」のデータを使ってナビ
この時点で支払った金額は6万円ほど。それに見合ったパフォーマンスを見せてくれるのか? 筆者はまず、湘南を経て三浦半島の三崎港までのツーリングを予定した。Edge 800のナビ機能をチェックしようと思ったのである。
参考にしたのは、Yahoo! JAPANの「ルートラボ」にアップされていた「尾根幹~湘南」というコースである。ルートを800に移植するのは簡単だ。ルートラボのGPXデータをPCにダウンロードし、PCに接続した800の「NewFiles」フォルダーに放り込むだけ。本体を起動すると、自動でガーミン用のfitデータに変換されて「Courses」フォルダーに格納、メニュー画面のコース内に表示されるようになる。
さて、スタート。東京都府中市の自宅から尾根幹(南多摩尾根幹線)までは、ナビを起動させずに他のサイコン機能を確かめる。走行データを表示するレスポンスに問題はまったくない。新しいサイコンをつけると心が弾むのか、自然とクランクを回す脚も速くなる。305を使用していたときはケイデンス値が瞬時に表示されず、いったん間を置くようなことがあったのだが、そうした心配はまったくいらなくなった。
鎌倉街道に入り、いよいよナビゲーション開始。自分の位置を示すアイコンが、ルートを描くピンクの線をなぞるように走ればいい。画面上部には「heading Kamakurakaido」と表示される。交差点で曲がるときには、アラート音とともに曲がる方向への案内が表示される。たとえば道を間違えたりしたら、それを知らせるメッセージがあらわれる。確かに日本語表示のほうが楽だし、ローマ字表示は文字数が多くて見にくいという難点もある。しかし、常時画面を見つめて走っているわけではない。そのへんは人それぞれの好みにもよるだろうが、車のナビと異なり自分で走る自転車は、その程度の機能で十分だと思う。
実際、三浦半島からの帰路はオートナビ機能(地名などへの誘導)を試してみたのだが、車のナビのように正確無比なものではなかった。どう考えても方向と違う道を指示されたり、一度違った道に入り込んで復帰を試みたときはナビの信頼性に「ん?」という疑問が浮かんだのも確かである。そもそも性能の問題なのか、それとも地図の問題なのか……。日本の正規代理店「いいよねっと」の日本語版にコンパイルされている地図ソフト「マップソース」を試したことがないので、そのへんは不明だ。
ナビ画面。ピンク色のラインで走る方向を指示 | 交差点を曲がるときは、大きな矢印とアラート音でナビ | ナビのコースから外れると、ルートを再計算して回復の指示を表示する |
●「Garmin Connect」でログを管理する
次に筆者が試走したのは、日々のトレーニングコースである多摩川サイクリングロード。普段、東京都国立市~狛江市の区間を2往復して70kmを走っている。練習のつもりで走っているから、もちろんタイムも計測している。そこで活用したかったのが、705や500にも搭載されている「Virtual Partner」。いわば仮想の供走者。過去の自分のタイムと競争し、その優劣をリアルタイムに表示する機能だが、800ではモーショングラフィック化している。これは非常に面白い。自転車乗りならばわかると思うが、誰に勝つわけでもなく、自分の心が負けないように走りたいという気持ちがある。この機能はまさにその気持ちを沸き立たせるものだ。
そのほかにも、旧機種と同様にラップ計測、標高変化をリアルタイムに見せる画面、パワーメーターへの対応など、ホビーレーサーからプロにまで対応する、いたれりつくせりの機能を装備。初期ファームでは外部給電が困難だったが、新ファームウェアでは外部バッテリーにも対応するようになった。満充電でおよそ14時間ほどのバッテリーリミットが解消されたため、長距離ライドも安心だろう。防水性能も高く、筆者が新潟までツーリングした際、雨に降られてもまったく問題は生じなかった。
視覚的に楽しいVirtual Partner画面。タイムと距離の差も表示される | 標高グラフ画面。峠を攻めるパスハンターにとっては、もってこいのリアルさ |
さて、このように走った後は、やはりログの確認が楽しいものだ。ガーミンは現在、ログ管理に2つの方法を提供している。1つはWindowsおよびMac OS向けソフト「Garmin Training Center」。もう1つはウェブサイト「Garmin Connect」だ。どちらも好みによるが、せっかく新しいデバイスを使っているのだから今回はクラウド式の後者を紹介しよう。
Garmin Connect |
本体をPCに繋いでログをアップロードすると、自動的にアクティビティーを作成してくれる。走行した経路のマップのほか、速度や獲得高度、ケイデンス、消費カロリー、気温などが、数値とグラフによって表示される。各アクティビティーにはメモも書き込め、カレンダーや総計にまとめられるので、トレーニング管理やツーリングの記録にもってこい。今月は何km走った……などと達成感を味わうこともできるだろう。日々のタイムに喜んだりヘコだり、それもまた自転車乗りの定めである。
最後になるが、Edge 800の日本語版は今年3月、前述した「いいよねっと」から発売された。地図ソフトをはじめ、ハートレイトモニターなど付属品すべて込みで価格は7万9800円。自己責任で安く海外から個人輸入するか、アフターケアも含めた安心を選ぶか。それはあなた次第である。
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2011/8/18 06:00
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