5分でわかるブロックチェーン講座

ヤフオクが今冬にもNFTの取り扱いを開始、一方でShopifyもNFTの販売機能を追加へ

株式トークンとステーブルコインが証券法に抵触する可能性

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

ヤフオクがNFTの取り扱いを開始へ

 ヤフオクを運営するヤフーが、今冬にもNFTの取り扱いを開始する計画を立てていることを発表した。経営統合を終えたLINE子会社で、暗号資産・ブロックチェーン事業を展開するLVCとの連携により実現する。

 今回の発表によると、ヤフオクで取り扱うNFTはLINE Blockchain上で発行されたものになるという。LINE Blockchainは、LVCが開発・運営する独自のブロックチェーンであり、パブリックチェーンではなくプライベートチェーンに近いものとだといえる。

 LINE Blockchain上で発行されたNFTは、専用の暗号資産ウォレットLINE BITMAX Walletで管理することが可能だ。ユーザーは、LINE Blockchain上でNFTを発行し、LINE BITMAX Walletを通して直接ヤフオクで出品・落札できるようになる。

 LINEによると、NFTの取引には専用のプラットフォームで手続きを行う必要があり、参加ハードルの高さが課題としてあったという。ヤフオクでは、オークションの仕組みを活用し、NFTをより多くのユーザーが気軽に売買できる環境を構築する。

参照ソース


    「ヤフオク!」でNFTアイテムの取引が可能に、今冬開始
    INTERNET Watch

株式トークンやステーブルコインが証券法に抵触する可能性

 米証券取引委員会のゲンスラー委員長が、有価証券を担保にして価値を維持するデジタル通貨は証券法によって規制される可能性が高いとの見解を示した。有価証券を担保に価値を維持するデジタル通貨には、株式トークンや一部のステーブルコインが該当するため、今回のゲンスラー氏の発言は重要なトピックだ。

 株式トークンとは、暗号資産取引所BinanceやFTXが提供する上場株のトークン化サービスである。AppleやTeslaなどの株式を買い占めトークン化し、小額から擬似株式投資ができるようにしたものだ。そのため、株式トークンの価値は確かに株式に連動している。

 一方のステーブルコインは、法定通貨担保型のものに関しては、担保資産が現金以外に債券やコマーシャルペーパーといった資産で構成されているため、結果的に証券に該当する可能性があるという。今年に入り大手ステーブルコインが相次いで担保資産の内訳を公開してきたことを受け、今回の指摘を行なったといえるだろう。

 現状、ステーブルコインは暗号資産として定義されていない国がほとんどだ。ステーブルコインが証券としてみなされるのかどうかによって、DeFiを含む暗号資産市場全体の今後の展開が左右されるため、SECの動きには注視していきたい。

参照ソース


    Prepared Remarks of Gary Gensler, Chair of the Securities and Exchange Commission, Before the American Bar Association Derivatives and Futures Law Committee Virtual Mid-Year Program
    SEC

今週の「なぜ」ヤフオクのNFT取り扱いはなぜ重要か

 今週はヤフオクのNFT取り扱いや米SEC委員長の発言に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】
現状のNFT市場は初心者にはハードルが高いといえる
ShopifyもNFT販売機能を追加へ
NFTの売買以外に本質的な使い方を考え出す必要がある

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

NFT市場の抱える課題

 NFTの特徴は、クリエイターから購入者への最初の販売だけでなく、購入者がまた別の購入者へ次々と販売していくことができる二次流通の機能にある。そのため、ヤフオクのようなオークションサイトとは相性がよく、さらなるNFT市場の盛り上がりが期待できそうだ。

 今回の発表にもあった通り、現状のNFT市場では、販売時に専用のマーケットプレイスへ接続するケースが多く、初心者にとっては低くないハードルが存在しているといえる。具体的には、OpenSeaやRaribleといったマーケットプレイスに対して、MetaMaskなどの暗号資産ウォレットを接続するわけだが、事前にイーサリアム(ETH)が必要だったり高騰するガス代がネックになったりと、課題を上げ出したら切りがない。

 この状況を受け、日本でもNFT市場には大手の参入が目立つようになってきた。LINE以外にも、GMOやメルカリ、マネックスなどが既に参入を発表している。特にメルカリの参入は、フリーマーケット市場ででシェアを奪われたヤフーにとって無視できない動きになったことだろう。

ShopifyもNFT市場に参入

 一方で、このタイミングで参入を発表したヤフオクにも手強い競合は出てきている。今週は、ShopifyがNFTの販売機能を追加することを発表した。

 Shopifyで店舗を作成しているユーザーは、マーケットプレイスを通すことなく独自でNFTを販売することが可能になる。ヤフオクを含め、マーケットプレイスには無数の作品が出品されているため、既に一定の知名度を有するクリエイターであれば販売に繋げることができるものの、新規クリエイターにとっては厳しい状況だといえるだろう。

 しかし、Amazonや楽天といったマーケットプレイスに対してShopifyが行なってきたように、この状況はNFTに限らずECサイト全般で変わりつつあるようだ。Shopifyを通して自身の持つ顧客やファンに対して直接アプローチすることができるため、NFTでも同様の流れは起きる可能性がある。

売買以外のNFTの使い道は出てくるか

 高額落札で一気に知名度を広げたNFTだが、その本質的な価値はまだまだ未知数だといえる。現時点で、ただマーケットプレイスを用意してクリエイターとコレクターを繋いだところで、すんなりと流通が促進されることはないだろう。

 NFTの本質は、デジタルデータに一意性を持たせることができる点にある。そこに価値を見出す人がどれだけ存在するかというのも今後のNFT市場にとっては重要であり、正しい理解が定着するためにも長期的な啓蒙活動は欠かせない。

 税務や会計上の処理を含め規制が未整備であることも事実であり、何か問題が起きる前にある程度の議論は済ませておく必要がありそうだ。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami