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第77回:ゼンリン「みんなのナビ」を使ってPSP片手に街歩き

表参道・原宿をめぐるイベント潜入レポート


 ゼンリンが11月19日に発売したプレイステーション・ポータブル(PSP)用のナビゲーションソフト「みんなのナビ」は、GPSレシーバーを付けたPSPをカーナビや歩行者用ナビとして使用可能にするソフトだ。発売からまだ1カ月ということでその内容や使い勝手が気になるところだが、タイミングが良いことに、この「みんなのナビ」を使用した路上イベントが12月19日に開催された。そこで今回は、「みんなのナビ」を使用した感想も含めて、このイベントのレポートをお送りしよう。


「みんなのナビ」の地図画面

街歩きの公開講座にPSPとソフトを貸与

 ゼンリンのPSP用地図ソフトというと、「みんなの地図」シリーズが有名だが、これは歩行者向けという性格が強く、本格的なカーナビ機能は搭載されていなかった。今回発売された「みんなのナビ」には交差点での右左折時の3D表示やジャンクションランプガイドなどのカーナビ機能が搭載されて、歩行者用ナビとしてだけでなくカーナビとしても使いやすくなった。

 PSPを持っているユーザーは、「みんなのナビ」とオプションのGPSレシーバー「PSP-290」を手に入れるだけで、PSPをカーナビとして使えるわけだ。両方合わせて実勢価格1万円2000~3000円くらいで収まるわけだから、これはお得である。ちなみにカーナビと歩行者用ナビはモードによって分かれており、歩行者用の「徒歩モード」にすると現在地を示すアイコンが人型に変わり、マップマッチングが使用されなくなる。


徒歩モードにすると、現在地のアイコンが人型になる

 今回開催されたイベントは、この徒歩モードの機能を生かしたもので、タイトルは「原宿表参道みんなで街歩き」。渋谷を拠点に公開講座を行っているNPO法人のシブヤ大学とゼンリンとのコラボレーションにより実現した無料講座だ。内容は、原宿および表参道を街歩きして、テーマごとに街にかかわる人を訪ねるフィールドワーク授業。数百人の応募があり、この中から抽選で選ばれた30名が参加した。参加者にはPSPおよびGPSレシーバー、そして「みんなのナビ」がそれぞれセットで貸与された。

PSPを持ってテーマごとに街めぐりを開始

 テーマは「カフェ」「ギャラリー」「歴史」「会社訪問」「住民」「不動産」の6つ。当日はまず“表参道研究家”の松井健二氏が講師となって街歩きについて解説し、その後にゼンリン事業開発本部・事業開発部の藤尾秀樹氏が「みんなのナビ」の使い方を説明した。

シブヤ大学の講座会場

 藤尾氏は「みんなのナビ」の楽しさとして、「安心して『迷える』楽しさ」を挙げた。「検索したルート通りに歩くことにこだわらず、細い路地や知らない道にもどんどん踏み込んでください」と語り、「みんなのナビ」があれば常に自分の現在地を確認できるので、安心して街歩きを楽しめるとアピールした。また、現在地の地名を確認できるメリットなども挙げて、街を覚える楽しさを味わってほしいと語った。

 その後はテーマごとに各班に分かれて街歩きを開始。外に出て参加者がまず行ったのは、GPSの測位だ。PSPのGPSレシーバー「PSP-290」にはSiRF社のSTAR IIIという高感度のGPSチップが使用されており、性能は高い。建物が密集した都市部でも、それほど待たないで測位できた。もちろんナビゲーションは徒歩モードに設定。貸与されたPSPには、あらかじめ訪問先が登録してあるので、登録されているスポットを選択するだけですぐにナビゲーションが開始される。簡単な操作ですぐにルート検索できる。

ソニー「nav-u」と同じエンジンを使用

 筆者はまず歴史チームに同行した。最初の到着地は明治通りから少し奥に入った中にある隠田神社。まだ参加者も機器の使い方に慣れていないせいか、途中の分岐点で少しまごついたこともあったが、すぐに案内ルートに復帰して無事、到着した。

 隠田神社は規模はそれほど大きくはないものの、創建年代がわからないほど歴史が古い神社だ。境内にはシブヤ大学のスタッフおよび地元の歴史に詳しい人が待っており、隠田神社の歴史や町並みの移り変わりについて解説した。


PSPを片手に街歩きを開始隠田神社に到着した歴史チーム

 その後、歴史チームと別れた筆者は、今度はカフェチームと合流するべく移動。その際にも、「みんなのナビ」にカフェチームの居場所を住所で入力してルート検索する。グループからグループへの移動なので、本来、参加者が通る道とは違ったルートを通ることになった。原宿界隈は、大通りから一歩裏に入り込むと細い道が密集しており、中には車が通れないような細い路地も数多くある。

 「みんなのナビ」の徒歩モードを使ってルート検索すると、そのような細かい路地も含めて最短ルートを探せる。実は「みんなのナビ」で使われているエンジンは、ソニーのPND「nav-u」の最新機種「NV-U75V」のエンジンと同じものを使用している。このエンジンはゼンリンとソニーが共同開発したもので、ゼンリンが住宅地図を製作する過程で得られたさまざまな現地情報が反映されているという。実際に街を歩いてみなければわからない情報を加味したルート検索を行ってくれるので、細かい路地が密集した都市部のナビゲーションには心強い。


さすがに測位は外れるが、徒歩モードのルート検索ではこのような狭い路地も示される

測位性能の高さとルート検索の速さが魅力

 ビルとビルの間の細い裏路地など、ナビゲーションで示されなければ絶対に通らないような道を通って、無事、カフェチームのランチスポットである神宮前三丁目の「J-Cook」というカフェに到着。ここで昼食を取り、今度はギャラリーチームへと向かった。目的地を神宮前交差点の近くにあるギャラリー「ROCKET」にセット。時間的にカフェチームの到着に間に合うかどうか微妙だったが、「みんなのナビ」には移動スピードを表示する機能があるので、これを見ながら速めに歩くよう意識した。

 実際に使ってみるとわかるが、歩きながら画面上に移動スピードが表示されるというのは、スピードメーターが自分に装着されたような気分になり、意外とおもしろい。ふだんは歩行スピードなどあまり意識しないが、こうして改めて具体的な速度が示されると、自分は他人と比べて意外と早足だったり、遅かったりするのがわかる。目的地までの距離も含めて、到着まであとどれくらい時間がかかるのかがわかるのも便利だ。

 ギャラリー「ROCKET」は裏路地からさらに奥まった場所にあったため、現地に着いてからほんの少し迷ったが、すぐに見つかった。無事、3チームに合流したあとは、渋谷の宮益坂近くにある最初の集合場所に戻った。


2軒目の「J-Cook」に到着3軒目のギャラリー「ROCKET」はわかりづらい場所にあったが、ナビのおかげでなんとか到着

「みんなのナビ」を使った感想としては、測位性能の精度の高さとルート検索の速さが印象的だった。単体のカーナビである「nav-u」と同じエンジンを使用しているだけあって、総合的な性能はかなり高い。位置精度が高いので、ナビゲーション中の右左折の音声ガイダンスもタイミング良く発せられる。

 無線LANを利用して現在地を特定する「PlaceEngine」を使用した場合は少し見当外れな場所を示すときもあったが、見晴らしがいい場所に出ればすぐに正確な位置を表示する。徒歩モードの場合はカーナビモードと違ってマップマッチングを行わないので、この測位性能の高さは使用するにあたって重要だ。

街歩きを楽しむためのツール

 講座の最後には、チームごとに訪問したスポットの発表が行われたが、目的地の住所を誤って登録したためにたどりつけなかったスポットが1件あっただけで、ほかは予定されたスポットには無事に到着できたそうだ。このほかのトラブルとしては、十分に充電されていなかったため、途中でバッテリーが切れてしまったという報告が数件あった。ちなみにバッテリーの使用時間はフル充電からの使用で3~4時間だという。

会場に戻ってチームごとに発表が行われた

 今回は遠方からの参加者もいて、原宿・表参道の土地勘が全くない人も混じっていたが、そのような人が目的地にたどり着くためのツールとして「みんなのナビ」は便利に役立ったようだ。「みんなのナビ」について、ゼンリンの藤尾氏は「緊急用として使うよりは、街歩きを楽しむために活用してほしい」と語った。タッチパネルではないものの、「nav-u」と同じように車に乗っているときも降りてからも使えるナビとして、PSPユーザーには魅力的なソフトと言えるのではないだろうか。

 「みんなのナビ」の良さを体感してもらうために、ゼンリンは今回のような公開講座やさまざまなイベントに対して、機器の貸し出しなどを行っていく予定だ。PSPのユーザーはぜひ注目していただきたい。


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2009/12/24 06:00


碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース、コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。