趣味のインターネット地図ウォッチ

第119回:iPhoneのGPSを使い倒すアプリ2選/全国25万カ所のバス停検索サイト


電子国土基本図と数値地図のビューアーアプリ「FieldAccess」

 暑さも和らいで登山には最適な季節となってきたが、山登りで気を付けなければならないのが道迷いによる遭難だ。紙の地図とコンパスを携行するのはもちろんだが、これらに加えて自分の現在地を手軽に調べられるGPS機器を備えておくと、さらに安全性は高くなる。

 登山用のGPS機器といえば、以前は単体のハンディGPSやGPSロガーが主流だったが、最近ではiPhoneやAndroidスマートフォンを使う人も増えてきた。こうした用途でおすすめなのが、今回紹介するiPhoneアプリ「FieldAccess」だ。

 FieldAccessは、国土地理院がインターネット上で提供する「電子国土基本図(地図情報)」を閲覧できるアプリ。価格は350円で、App Storeからダウンロードできる。

 電子国土基本図(地図情報)とは、日本全域を覆うベクトル形式の基盤データで、これまで紙の地図として提供されてきた2万5千分の1地形図に替わる新たな「基本図」として位置付けられている。PCからは電子国土ポータル(http://portal.cyberjapan.jp/)において閲覧できる。

東京駅(電子国土基本図)新宿駅(電子国土基本図)高尾山(電子国土基本図)
北アルプス(電子国土基本図)槍ヶ岳(電子国土基本図)剣岳(電子国土基本図)

 FieldAccessでは、電子国土基本図(地図情報)を閲覧できるほか、GPSをオンにすると現在地が画面中心に表示されて、GPSで取得した高度なども表示される。カーナビのように、移動中にヘディングアップで地図を回転表示させることも可能だ。

 地図上に目印となるピンを立てたり、表示状態をブックマークとして保存する機能もある。また、磁北線(コンパスの磁針が指し示す北のことで、本当の北とは少しずれている)を地図の中央または左・右寄りに表示させることもできる。磁北線は登山で読図を行う場合に欠かせないものなので、これが自動で引けるのは便利だ。

 さらに、PCからトラック(軌跡)ファイルを読み込んで地図上に表示させることも可能。トラックファイルの形式はGPXで、「ルートラボ」や「ヤマレコ」などのルート共有サイトから取得することもできる。

 GPSログの記録も可能で、地図画面の下にあるトラックボタンを押すとログの記録が開始される。いったん記録を開始すると、終了するまでは、ほかのアプリに切り替えてもバックグラウンドで記録することが可能だ。記録したログはiPhoneのローカルに保存できるほか、iTunes経由でPCに転送することもできる。保存したトラックは緑色のラインで表示され、画面下部に高低図も表示される。

 なお、電子国土の規約上の問題で、FieldAccessには地図データそのものをiPhoneのローカルに保存する機能は搭載されていないが、地図データを一時的にキャッシュとして保管する機能がある。キャッシュについてはすべての縮尺のキャッシュファイル総数が5000個を超えないように、古いものから削除される。このキャッシュ機能をうまく活用すれば、限られたエリアであればインターネットに接続しなくても地図を閲覧できる。

磁北線を表示可能地図上にはピンを立てられる上部に緯度・経度を表示可能
軌跡と高度グラフを表示可能設定画面

 また、これとは別にFieldAccessには国土地理院が発行している地図データ「数値地図」を閲覧する機能も搭載されている。対応しているのは、「数値地図25000(地図画像)」の1図葉ずつダウンロード販売されているデータで、日本地図センターのサイト(http://www.jmc.or.jp/)で入手できる。価格は1図葉につき170円。ダウンロードは、PCのウェブブラウザー上で購入してiTunes経由で転送するか、iPhoneのSafariで直接購入することも可能だ。数値地図ならばiPhoneのローカルにインストールできるので、インターネットが使えない環境でも地図を閲覧できる。

 iPhoneをハンディGPSとして使うためのさまざまな機能を搭載したFieldAccessを使って、登山やMTBツーリング、トレイルランなどを楽しんでみてはいかがだろうか?

数値地図のリスト画面高尾山(数値地図)数値地図の図葉の分かれ目

URL
 製品紹介ページ
 http://dendrocopos.jp/fieldaccess/
 FieldAccess(iTunesプレビュー)
 http://itunes.apple.com/jp/app/fieldaccess/id415582637?mt=8

低消費電力を実現したGPSアプリ「GPS-Trk2」

 Field Accessが電子国土基本図や数値地図のビューアーとして使うことを目指したアプリなのに対して、iPhoneをGPSロガーとして活用することを最大限に追究した“プログレード”を称するアプリが「GPS-Trk2」だ。価格は850円で、App Storeからダウンロード可能だ。

 この手のアプリとしては価格が少し高めに思えるかもしれないが、このアプリは普通のGPSアプリとは違って土台からすべて低消費電力に設計されており、スクリーンオフで使うと25時間近くの連続計測を可能としている。これは登山者やサイクリスト、トレイルランナーなどにとっては大きな魅力となるはずだ。

 計測機能としては、指定移動距離ごとに記録する「連続モード」と、指定時間間隔ごとに記録する「定期モード」があり、トラック記録の停止・再開も可能だ。トラック記録の再開については、過去のトラックからも再開できる。

 また、ビル内や地下など、GPS電波が届かないときに誤差が大きくなるポイントをスキップする「トラックフィルター」も搭載している。

コンソール画面計測中は上部が赤色になる計測中の地図画面では精度を円の大きさで表現
コンパス表示設定画面写真サイズや地図のキャッシュ容量なども設定可能

 地図表示機能も搭載している。サポートしている地図はGoogleマップ、Bingマップ、OpenStreetMap、OpenCycleMap(等高線地図)、MapQuest-OSM、MapQuest Open Aerialなど。このうちOpenStreetMap、OpenCycleMap、MapQuestについてはオフライン時でも地図を閲覧できるキャッシュ機能も搭載する。

 iPhoneの内蔵カメラで撮影し、トラックに添付することもでき、KMZ形式で写真とトラックをまとめてインポート/エクスポートすることも可能だ。インポート/エクスポートはメール添付で送受信するほか、ウェブサイトやファイルサーバーを使ってのやりとりも行える。

 指定した時間間隔でトラックやポイントをメールで自動送信することも可能だ。例えば登山中に自分の現在地をサポートチームに送付するといった使い方などが考えられる。

 もちろんほかのアプリが動作中でもバックグラウンドでログを取ることができるので、例えば先に紹介したField Accessを電子国土基本図のビューアーとして使用し、ログの取得はGPS-Trk2で行うといった具合に、2つのアプリを組み合わせて使うこともできる。

 電源の確保が課題となるアウトドアにおいて使用するロガーアプリとしては、低消費電力を追求したこのGPS-Trk2は最有力候補と言えるだろう。うまく使いこなせば価格以上の価値を感じられるアプリだ。

保存したトラックのリストトラックの内容表示トラックの高度表示
トラックの速度表示トラック情報Googleマップ上に軌跡を表示
地図上に各点の情報を表示可能OSM上にも軌跡を表示可能衛星写真
軌跡表示の設定画面

URL
 製品紹介ページ
 http://www.hc-eng.com/intl/ja/
 GPS-Trk2(iTunesプレビュー)
 http://itunes.apple.com/jp/app/gps-trk-2/id380652485?mt=8

全国25万カ所のバス停を検索できるサイト「バス停検索」

 青森県八戸市でシステム開発やウェブサイト制作を手がける青い森ウェブ工房は、全国各地のバス停留所を検索できるウェブサービス「バス停検索」を今夏に公開した。収録されているバス停は北海道から沖縄県まで全国を網羅しており、検索対象は約25万カ所、1700市町村、約1500のバス事業者に上る。

 検索方法は住所を入力フォームで直接指定する方法と、表示中の地図中心部で検索する方法の2種類が用意されており、それぞれ検索範囲を0.5km~50kmまで12段階で指定できる。地図はGoogle Maps APIが使用されている。

「バス停検索」トップページ東京駅周辺のバス停を検索

 検索すると地図上にバス停のマーカーが表示されて、検索ボタンの下に各マーカーを直接指定するためのプルダウンメニューが現れる。このメニューには地図中心からの距離が記載されるので、どれくらい離れているのかがわかりやすい。

 地図上でマーカーをクリックするとウィンドウがポップアップしてバス停の詳細情報が表示される。ここにはバス停の住所や、経由するバス路線のリストが掲載される。経由するバス路線については、ウィンドウ内に表示されるのは3件までで、4件以上の場合は「このバス停留所の詳細情報へ」を再度クリックすると確認できる。

マーカーをクリックすると詳細情報を表示バス停ごとの詳細情報ページ
地図上に表示されるバス停はプルダウンメニューにリスト化される検索範囲は12段階で指定可能
コミュニティバスの情報も収録

 実際に使ってみたが、家の近所のバス停を調べてみたところ、自治体が運営するコミュニティバスの情報までも載っていた。コミュニティバスの場合、大手のバス会社のバス停から離れたわかりにくい場所に停留所が設置されていることも少なくなく、このような検索サービスがあると便利だ。

 なお、スマートフォン上でも検索自体は行えるが、GPSで測位した現在地をGoogleマップ上に反映する仕組みなどは用意されていないので、現在地を手動で探さなくてはならず、少し面倒だ。将来的にはスマートフォンへの対応も期待したい。

URL
 バス停検索
 http://buste.in/search/bus/


2011/9/15 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。