地図と位置情報
スマホのカメラをかざすと画像認識で現在地を推定、「東京メトロアプリ」でナビサービスの実証実験
2017年3月9日 06:00
連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」からの派生シリーズとして、暮らしやビジネスあるいは災害対策をはじめとした公共サービスなどにおけるGISや位置情報技術の利活用事例、それらを支えるGPS/GNSSやビーコン、Wi-Fi、音波や地磁気による測位技術の最新動向など、“地図と位置情報”をテーマにした記事を不定期掲載でお届けします。
東京地下鉄株式会社(東京メトロ)と日本電信電話株式会社(NTT)が3月26日まで、東京メトロ表参道駅構内にて、駅構内ナビゲーションサービスと広告サービスの実証実験を実施している。
同実証実験では、東京メトロ公式アプリ期間限定コンテンツとして、NTTのAI技術「corevo」の1つである画像認識技術「アングルフリー物体検索技術」および「2.5D地図表現技術」を活用したもの。表参道駅周辺の目的地を設定し、改札付近の案内看板を撮影することで目的地までの道順をご案内する「かざして駅案内 表参道版」と、駅構内に掲出している特定の広告ポスターを撮影すると特典が受けられる「かざしてGET!」の2つを用意している。
「かざして駅案内 表参道版」は、東京メトロアプリ内の限定コンテンツ「メトロラボ2017」を選択し、「i」マークの付いた黄色い案内看板を撮影することにより、現在位置の特定および方位の推定が行われるサービスだ。推定した現在位置をもとに、そこから最寄りの出口および地上に出てから目的地までのルートを調べられる。
屋内ナビというと、Wi-FiやBLEビーコンなどを使って測位を行うサービスが多い。これに対して今回の実証実験では、ユーザーがスマートフォンのカメラを使って駅構内の掲示物を撮影することにより、その画像を解析することで現在位置の推定が行われる。撮影対象となる「i」マークの付いた案内板は、駅構内の改札付近6カ所に掲示されており、多くの人が目にしやすい場所にあることを利用したサービスといえる。
なお、今回の実証実験では、歩行中にリアルタイムに測位してナビゲーションを行う機能は搭載されておらず、「歩きスマホ」抑止のため、目的地に向かって駅構内で歩行を検知した場合は画面が自動的に消灯となる。
屋内地図はフロア別の2D地図のほか、NTT独自の「2.5D地図表現技術」を採用した地図も用意されている。同技術は、2D地図のデータに、重要な対象物に絞って高さ情報だけを与えることにより、分かりやすい立体表現を目指したもので、階段を上がった先など、現実では見えない先も透視して見通すことができるのが特徴。画面右端の上下送りマークをタップするごとにルートを順に確認することができる。
なお、検索の目的地は、駅の出口のほか、表参道駅周辺の施設を指定することも可能で、周辺施設を目的地としてルート検索した場合は、駅出口に到着後、「到着(屋内ナビへ)」のボタンをタップすることで屋内ナビをスタートさせることができる。
案内板の画像認識の精度については、撮影した看板と提示された看板が異なる場合もあったが、ほかにも候補が示されるので、その中から正しい看板を選ぶことで正確に現在地を把握できる。屋内空間において測位機器を用いない新たな移動支援方法として注目される。