もっと自由に使えるVPS「ConoHa by GMO」を試す
VPS同士をLANで接続~「ローカルネットワーク」機能を試す
(2013/7/31 06:00)
GMOインターネットによる新ブランドのVPS「ConoHa」のレビュー、最終回の今回は、VPS同士をLANで接続する「ローカルネットワーク」の機能を試してみる。
自分専用のLANでVPSをつなぐ機能
ローカルネットワークは、ConoHaのインフラの中に、自分専用のLANを作る機能だ。1つのアカウントで複数のVPSを作っている場合に、それらのVPSの間をLANで接続できる。
たとえば、ウェブアプリケーションをVPSで動かすときに、ウェブアプリケーションとデータベースを別々のサーバーで動かすことはよくある。このような場合に、ローカルネットワークを使えば、ウェブアプリケーションからデータベースにグローバルネットワークを経由せずに接続できる。
ローカルネットワーク相当の機能は、各種IaaSでは提供されていたが、VPSでは少ない。ConoHaでは、VPSを自分で増やせる自由度を特徴としており、ローカルネットワークもそうしたIaaSっぽい柔軟な構成のために用意されたのだろう。
なお、ローカルネットワークは1ネットワークにつき月額2100円。ネットワークのIPアドレスは、「10.0.0.0/24」「192.168.0.0/24」「172.16.0.0/24」の3つから選ぶようになっている。
ローカルネットワークを作ってVPSを接続する
実際にローカルネットワークを使ってみよう。ここでは、WordPressのブログサーバーを例に、リバースプロキシ、ウェブアプリケーション、データベースの3台のサーバーからなる3層構成を組んでみる。3台のサーバーは1本のローカルネットワークにつながっているものとする。
VPSの追加は、1台目を作ったときとまったく同じ手順により数ステップで完了する。追加したVPSは、ひとまずすべて停止状態にしておく。
続いて、ローカルネットワークを追加する。ConoHaのコントロールパネルの左端にある「サービス」アイコンから「ローカルネットワーク」を選ぶ。すると、ローカルネットワークのリストが表示される。ここで「ローカルネットワーク追加」をクリックする。
追加内容としては、前述した3つのネットワークのIPアドレスから1つ選ぶ。そして「確認」をクリックし、確認画面で「決定」をクリックすると、ローカルネットワークのリストに1項目が追加される。
画面左の操作リストの中では、「ローカルネットワークリスト」の下の項目として、追加されたローカルネットワークが表示される。ここをクリックすると、そのローカルネットワークの情報が表示される。
その後で、各VPSをローカルネットワークに接続する。各VPSにはすでにインターネットに接続したネットワークインターフェイス(NIC)があるので、追加のNICでローカルネットワークに接続する形になる。
1台目のVPSでは、前回のレビューでNICを追加してあるので、ローカルネットワークに接続するNICが3つ目のNICとなる。2~3台目のVPSでは、ローカルネットワークに接続するNICが2つ目のNICとなる。
3台のVPSをローカルネットワークに接続してから、再びローカルネットワークの情報を見ると、今度は3台が接続されていることが表示される。
VPSを設定して3層構成でWordPressを動かす
接続が済んだら、3台のVPSを起動する。まとめて起動するには、サーバーリストで目的のVPSにチェックマークを付けてから「起動」をクリックする方法が便利だ。
VPSが起動したら、追加IPアドレスのときと同様に、新しいNICの設定ファイル(2つ目のNICであればifcfg-eth1)をいちから追加する(マルチホーミングの設定はここでは不要)。また、追加したVPSについては、一般ユーザーの追加やSSHサーバーの設定、パッケージのアップデートなどの初期設定をする必要がある。
何台もVPSを設定するとなると、こうした作業を1台1台やっていると大変だし、間違いやすくもなる。こうした複数台のセットアップは、Capistranoのようなデプロイツールや、Chefのような構成管理ツールにまかせたいところだ。筆者は今回、ごく簡単なセットアップのために、構成管理ツールのAnsibleを使ってみた。
将来的には、既存のVPSをコピーする機能や、Amazon EC2のようにコントロールパネルから初期セットアップの設定を指定できる機能があると便利かもしれない。そこまでいかなくても、NICの設定ファイルを生成する方法があると楽になりそうだ(VPSのOSの違いの問題はあるが)。
ローカルネットワークが接続できたら、各VPSの機能をセットアップして、WordPressを動かす。
リバースプロキシでは、Apache httpdのリバースプロキシ機能を設定する。ウェブアプリケーションサーバーでは、PHPとWordPressが動くようにする。データベースサーバーでは、MySQLをインストールしてWordPress用に設定する。ウェブアプリケーションサーバーのHTTPアクセスとデータベースサーバーのMySQLヘのアクセスについては、ひとまずiptables(ファイアウォール)でローカルネットワークからの接続だけを許可した。
設定が完了したら、リバースプロキシのサーバーにウェブブラウザーからアクセスすると、WordPressが動いた。
以上、3回にわたってConoHaを試してみた。「お名前.com」ブランドから新しい「ConoHa」ブランドになって、よりストレートに「Linuxサーバーを自分で設定できる人」向けのサービスとなっていると感じた。
さらに、VPSやグローバルIPアドレス、ローカルネットワークをセルフサービスで追加する機能など、VPSにIaaSの要素を少し取り込んだサービスとなっている。基本的に、VPSは“サーバーのサービス”であり、IaaSは“インフラのサービス”だ。その意味で、ConoHaはあくまでサーバーのサービスを基礎としながら、ネットワーク構成を考えられる部分を取り入れたという位置づけとなっている。
もちろん、普通に1台のVPSとして使うのもアリだ。その上で、いざというときに拡張できるというのが、ConoHaの独自性といえるだろう。手軽な価格で使いはじめ、状況により拡張したい場合にコントロールパネルですぐに追加でき、手続き待ちの時間がないのもConoHaの強みだ。これまでのVPSサービスよりもっと自由な拡張性を求めるユーザーには、まずは使ってみることをおすすめしたい。