山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

迷惑電話サービス「呼死你」が話題となり問題視 ほか~2016年10月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にも分かりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

迷惑電話サービス「呼死你」が話題となり問題視

 数秒だけコールされる電話が1分間に3~5回繰り返され、5分間で40回もの電話がかかるという迷惑電話サービス「呼死你」がニュースに取り上げられ話題となった。相手に嫌がらせ電話をかけることができるアプリが出回っている。違法だとは弁護士はコメントしているが、呼死你を指名した法律ルールは不在で氾濫している。

 北京晨報によると、同紙記者が探し当ててインスタントメッセンジャーのQQを通してサービス利用を申し込むと、1日50元との提示があり、週額プランや月額プランで値引きが行われるという。また、アプリはさらに安く1日30元で、週額・月額だとやはりさらに安くなるという。一方で呼死你のターゲットとなった場合は、呼死你解除サービスがあり、100元を払えばなぜか止まるという。同紙記者の取材に対し、業者は「解除の方法は企業秘密だ」と答えた。

セキュリティアプリユーザー数は4億5000万

 CNNIC(China Internet Network Information Center)は、中国ネットユーザーのセキュリティについての意識についての調査レポートを発表した。それによると、セキュリティアプリユーザー数は4億5000万で、利用率は72.6%。アンチウイルス機能のほか、クリーナー機能や迷惑電話防止、データ通信量監視機能が最もよく使われている機能だという。

 詐欺メール・電話や、悪質なソフトウェアが多数で回っているが、52.7%が自身になんら損失がないと認識、8.9%がデータ通信費用や電子マネー類の経済損失をしていると認識していると回答。自身のスマートフォン・携帯電話の安全について38%が「安全」と回答、12.8%が「安全ではない」と認識。また、56.2%がアプリの権限について気にしていないとした。中国で情報を収集していると問題となっている偽携帯基地局については、58.9%が「聞いたことがない」、25.2%が「聞いたことがあるがどんなリスクがあるか分からない」とした。

root化したAndroidやJailbreakしたiOSのユーザーは少なからずいるようだ

 筆者自身の経験では、Google Playが利用できない中国では、中国で著名なメーカー製のスマートフォンでは安全だと認定したアプリだけをそろえたアプリストアを用意しているため、それを利用するか、または百度の「91」など著名なアプリストアを利用すれば比較的問題に遭遇することはない。しかし、ウェブサイトから直接アプリのパッケージをダウンロードすると、スパイウェアなどが入ることが非常に多い印象がある。以前の本連載記事では、公衆充電スタンドを利用したところ、アプリをいくつか入れられて挙動が非常に重くなったというニュースを紹介した。無料のスマートフォン向けサービスも、何かよくない代償があると構えたほうがいいだろう。

偽基地局押収の報道

自転車のシェアサービス「Mobike」「ofo」が注目、騰訊も参入か

 今秋より、スマートフォンの自転車シェアサービス「Mobike」や「ofo」に注目が集まっている。市内では赤い車体のMobikeが、大学内では黄色い車体のOfoが、大都市でよく見るようになった。スマートフォンでQRコードを読み取り、GPSで至近に駐輪された自転車を発見し、電子マネーで利用額をプリペイドチャージし利用。規定外の場所に駐輪すると信用ポイントが減って、0になると利用不可となる。つまり、今の中国のスマートフォンがらみのサービスをあわせた自転車シェアサービスだ。利用額はMobikeが30分で1元、ofoは走行距離にあわせた半従量課金で最大2元と非常に安い。

 IT系ニュースでも、今年ホットな新サービスとしばしば取り上げられていたが、インターネットの雄「騰訊(Tencent)」が「WeBike」という自転車シェアサービスを“社内用に”リリース。過去に騰訊は微博や微信やQQをはじめ、様々な人気サービスを模倣しては軌道に乗せただけに、自転車シェアサービスを後発でリリースし、元祖のサービスを乗っ取るのではないかと噂されている。

人気の自転車シェアサービス「Mobike」

上海で電子マネーしか受け付けないスーパーが登場し話題に

 上海で、生鮮野菜や輸入商品を扱うスーパー「盒馬鮮生」が、現金や「銀聯」の支払いを受け付けず、スマートフォン向けの電子マネー「支付宝(Alipay)」のみを受け付けるとして話題となった。特に上海の都心部では支付宝や微信支付(WeChatPay)ユーザーが多く、スーパーのレジでスマートフォン上のQRコードを店員に見せて支払う人が目立つが、それしか受け付けないという店は珍しい。

 ニュースで話題になった後、「人民幣管理条例に違反している」として、該店は現金での支払いを受け始めた。

3G/4G契約数が9億弱に

 中国の情報産業省にあたる工業和信息化部は、9月末の時点での通信契約数を発表した。

 携帯電話契約数は13億1620万になり、普及率は95.8%となった。携帯電話契約数のうち3G契約数は1億9951万、4G契約数は6億8589万。4Gは年初から4480万増加した。また、携帯電話やスマートフォンによるモバイルインターネットの利用数は10億6359万に。モバイルインターネットの利用が2.2倍増となる一方、ショートメール利用量が減少した。ただし、SIMカードを発行すると、電話用途だけでも4Gカードが発行されたり、ADSLなどのブロードバンド契約で4G SIMカードがセットで発行されるなど、4G契約件数=モバイルブロードバンド利用者数とならないことは注意。

 また、ブロードバンド回線数は2億9167万戸で、うちFTTHは2億1009万。20Mbps以上のプラン加入者がブロードバンド加入者全体の3分の2を占めた。

携帯電話契約数に占める3G/4Gが占める割合(赤)と月別増加数(青)
モバイルインターネット利用数(契約数ベース)。青の単位は億。赤は携帯電話契約数に占める割合
ブロードバンド契約数における8Mbps以上の割合(赤)とFTTHの割合(青)

国慶節の大型連休は、ネットで旅行サービス組み合わせ

 今年の10月1日からの大型連休「国慶節」では、個人のホテルや移動、各種娯楽などのネット予約を組み合わせた旅行が台頭した。TalkingDataによる国慶節の旅行調査レポート「2016国慶黄金周出遊報告」によれば、日本韓国や東南アジアが人気となったほか、ロシア人気も急増した。中国国内外問わず、上海は飛行機による旅行が人気だが、北京ではマイカー旅行の人気と対照的な結果に。

 サイト別では、総合旅行サイトでは人気順に「qunar」「携程(ctrip)」「同程」「阿里旅行」「途牛」に、ホテル予約では「如家」「藝龍(elong)」「Airbnb」「途家」「booking」の順となった。

 今年、中国著名旅行サイトは固定利用者を獲得すべく、続々と金融系サービスを開始。旅行ローンや外貨両替サービスを提供したり、増えたお金を旅費に充てられる投資信託商品を出したり、マイカー旅行人気にあわせてマイカー旅行自動車保険を出したりするなど、「旅行+金融」が旅行サイトの今年の新路線となった。

旅行サイト「途牛網」による日本旅行分割支払サービス

百度の売り上げ、前年比で初めてマイナスに

 百度(Baidu)は10月28日に発表した7~9月の2016年第3四半期で、初めて売り上げが前年比でマイナス(0.7%減)となった。売り上げは182億5300万元、利益は9.2%増の31億200万元。中国インターネット業界の代表的企業は、百度、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent)とあわせて3社でBATと呼ばれているが、百度は阿里巴巴や騰訊に差をつけられたとの報道も。

 2016年9月時点で、百度のモバイル検索のアクティブユーザー数は前年同期比3%増の6億6000万、百度地図のアクティブユーザー数は7%増の3億4800万、百度の電子マネー「百度銭包」のユーザー数は倍増の9000万で、百度のEC関連サービスの総取引額は49%増の194億元。海外向けモバイル向けアプリユーザーは16億で、月間アクティブユーザー数は3億。

 この期間に百度は中国国内の人工知能やAR/VRを対象としたベンチャーキャピタルを設立し、ブラジルのインターネット投資ファンドを開設したほか、人工知能を医療業界に適応した「百度医療大脳」やオープンプラットフォーム「PaddlePeddle」をリリース。また、中国の車メーカー「福田汽車」「長安汽車」と無人運転車開発で提携し、米カリフォルニア州での無人運転者のテスト走行のライセンスを得た。

越境ECなどの商品向けの追跡サービスが登場

 越境ECや自由貿易区の登場でさまざまな外国製品が買えるようになる中、広東省検査検疫局は商品コードをスキャンするだけで、その製品がたどり着くまでの経過をチェックできるシステムを開発した。パッケージについた専用のコードをスキャンするだけで、輸入品の生産、貿易、流通、販売の情報が中国国内外問わず分かるという。ECサイトの「唯品会」など18のサイトが提携する。

ECで富を得る農村「淘宝村」、全土で1000を突破

 ECサイト「淘宝網(Taobao)」で製品を販売して富を得る村「淘宝村」が増えている。阿里巴巴が10月に発表した「中国淘宝村研究報告」によると、淘宝村は2009年には3集落しかなく珍しがられたが、それから急激に増え、今年1000集落を突破した。年商100万元(約1580万円)を超える淘宝村発の販売店は1万1000店舗を突破した。淘宝村は主に浙江省や広東省など沿岸部の農村などに集中して分布している。家々で販売を行っている淘宝村もあるが、企業化した店舗数店にまとめられた村や、発展して物流センターやEC人材育成学校を備えた村も。

「淘宝村」発の人気商品の一例

山谷 剛史

NNA所属。中国アジアITライター。現在中国滞在中。連載多数。著書に「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。