山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

ロシア、中国とのネット提携が進む。GFW技術の輸出も ほか~2016年11月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にも分かりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

ロシア、中国とのネット提携が進む。GFW技術の輸出も

 ロシアが進めるネット環境「Red Web」に中国サイバー万里の長城(GFW)の技術が導入されたと、英「ガーディアン」紙が11月29日に報じた。ロシアではLinkedInが11月より利用できなくなっている。このニュースは、「参考信息網」など複数の中国メディアも引用して伝え、「網易(NetEase)」では数千のコメントが書き込まれた。

 先んじて10月末、中国とロシアにより、ネットメディアの発展について討論し、交流を深める「2016中ロネットワークメディアフォーラム」が広州で開催された。これは2016~2017年を「中国ロシアメディア交流年」とし、5月にロシアのサンクトペテルブルクで開催されたフォーラムに続くもの。1回目も今回も共通した目標は、中国とロシアのネットワークメディアの国際的発言力・影響力の向上を目指すというもので、中国とロシア両国のネットメディアの発展と提携について、および既存メディアの発展についての2つを特に討論した。また、ネットメディアの技術交流や資源の共有などで両国が提携を行った。6月にはプーチン大統領が北京で、インターネット空間の発展を中国と進めていくと聯合の発表を行っている。

中国開催の「第3回世界インターネット大会」

 中国著名インターネット企業トップと、世界の著名インターネット企業幹部や、アフリカ諸国をはじめとした外国のIT担当大臣などを一堂に集めた「第3回世界インターネット(互聯網)大会」が11月16日~18日に浙江省烏鎮で開催された。

 今回も各国のインターネットの主権は各国が持つべきという理念を訴え、また、百度の自動運転車をはじめとして、5G、VR、AR、ドローン、遠隔医療など最新の技術が紹介される場となった。

 初開催となった2年前のインターネット大会では、会場内だけインターネットの制限がなくなったことが話題となったが、今回はそういった話はなかった。大会には、サイバー万里の長城(GFW)の父と呼ばれる方濱興氏が参加。方氏は「ずいぶん前にGFWから離れた」とコメントした。

「ネット安全法」発布、海外のデータ転送にもルール

 11月7日、中国政府より「ネット安全法」が発布された。来年6月1日より施行される。中国のメディアによると、ポイントは「ネット主権の原則の明確化」「ネット製品とサービス提供者の安全義務の明確化」「ネットワーク運営者の安全義務の明確化」「より進んだ個人情報保護規則」「情報設備の安全保護制度設立」「情報設備における重要なデータの海外への転送の規則の設立」を挙げる。

11月11日のECセール「双十一」、売り上げは1日で3兆円強

 11月11日は「双十一」と呼ばれるオンラインショッピングセールの日。今年のこの日はB2Cサイト(「宝網」はC2Cサイトなので含まず)全体で、1770億4000万元の売り上げを記録。ECサイト別では、多い順に阿里巴巴系の「天猫(Tmall)」が68.2%の1207億元となり、以下、「京東(JD)」が22.7%、家電量販店系サイトの「蘇寧易購」が2.2%となった。なお、天猫の売り上げの81.87%はスマートフォンなどモバイルインターネット経由だった。この後、11月から12月にかけて、黒五(ブラックフライデー)、ECサイト「唯品会」周年記念キャンペーン、阿里巴巴が仕掛ける12月12日の「双十二」があったが、双十一の売り上げ額が圧倒的だった。ちなみに2015年のデータは、天猫1サイトだが、912億元だった。

 昨年同様にドローンを活用した商品配達を京東がアピールしたが、あくまでアピールだけで実際、実用はされておらず、いくつかのサイトがVRを活用した商品検索を提供したが利用者の反応が薄いなど、新技術の反応はいまいち。ただ、物流面でスマート化が行われるなど、技術導入による実用面での効率向上は消費者の目の届かぬところであった。

 販売価格別では、単価の高い家電(20.4%)、スマートフォン(12.1%)が上位となり、以下、ケア商品(8.0%)、ベビー/マタニティ(6.1%)、化粧品(4.0%)と続いた。中国のネット販売で強いスマートフォンメーカーの小米(Xiaomi)が1日の売り上げが12億9500万元で1位となり、同社の「紅米4A」が1日で100万台超売れたという。小米のネット販売の強さが際立った。

 去年の双十一のセールから変わった点としては、ネットとリアルショップの融合が行われたこと、すなわち、これまでは値段だけを見てECサイトで消費していたのが、リアルショップがECサイトに負けない価格を提示し、人々が商品を実際に見て消費をしたという点が挙げられる。また、越境ECも進んだ。いったん定価を上げておいてセール当日に値段を下げたように見せかけるニセのセール商品を抑えようとルール作りをしたが、後日、中国消費者協会が調べたところ、16.7%の商品でこの手のニセのセール商品があったという。

今年の「双十一」のデータ(群邑調べ)
「双十一」は動画で中継され、お祭りのよう

ネット検閲員に関するデマ流布で6人逮捕

 内モンゴル自治区の51歳の共産党員や北京市の48歳の無職、重慶市の44歳の女性ら6人が、ネット検閲員に関するデマを流布したとして、各地の警察に逮捕された。

 6人は今年6月、ニセの「ネット検閲員賞金一覧表」をネットで配信、8月には中国北部のリゾート地で知られる北戴河でネット検閲員の会議が開かれるとし、ニセの政府決定を流布。さらに「ネット検閲部門の機密情報」なるものを配信しようとしたが、6人の内輪でこれはやりすぎと意見が分かれ、未遂に終わったという。

 これを報じる中国メディアは、6人の実行の背景として承認欲求があるとしている。

「微博(Weibo)」ユーザー3億弱、「微信(WeChat)」ユーザー8.5億

 中国のSNSを代表する、ミニブログの微信(Weibo)は22日に、メッセンジャーなどの騰訊(Tencent)は16日にそれぞれ7~9月の四半期決算を発表、9月末の「微博(Weibo)」や「微信(WeChat)」のユーザー数を伝えた。

 微博は、日に1回以上利用するアクティブユーザー数が1億3200万、月に1回以上利用するアクティブユーザー数が前年同期比34%増の2億9700万人となった。同社上場以来、2年半以上にわたり、四半期ごとに30%以上のユーザー数の上昇を記録。今期はオリンピックの話題で5200万人超が盛り上がったという。今年は実況動画がブレイクしたが、微博でも実況動画を導入。この4半期で利用者が急増した。

 一方、微信では、月に1回は利用するアクティブユーザー数が9月末において、微信では前年同期比30%増、3カ月前に比べ4000万増の8億4600万。「QQ」では、2%増の6億4700万となり、QQの同時オンラインユーザー数は2億5000万に。ブログサービスの「QQ空間」ユーザー数は5億8400万となった。

「微博(Weibo)」
「微信(WeChat)」

中国での5G、早くて2020年に商用化

 中国の5Gの商用化へのスケジュールが発表された。情報産業省にあたる工業和信息産業部によると、「IMT-2020(5G)推進組」の主導で2017年に5Gネットワークテストの第2段階、2018年に大規模なテストネットワークの構築、2019年に5Gネットワークを建設し、早くて2020年に正式にサービス商用化にこぎ着ける予定。中国キャリアほか、NTTドコモなど中国国外企業も研究開発に参加している。

「網易」と「中文在線」、コンテンツを強化に乗り出す

 大手ポータルサイト「網易(NetEase)」の音楽部門である「網易雲音楽」は、1年で2億元を投じてミュージシャンや関係者を育てる「石頭計画」を発表した。網易が発表した「ミュージシャン生存レポート」によると、ミュージシャンが音楽で生計を立てるのは難しく、68%は音楽による月収は1000元以下と低収入であり、1万元以上の収入のミュージシャンは全体の5%以下だという。コンサートなどの機会や、よい機材による録音、情報の拡散などが不足していて、これを補う考えだ。

 また、ネット小説サイト大手の「中文在線」は、ニコニコ動画似の動画サイト「acfun」の運営会社と、アニメゲーム系サブカルサイト「gulugulu」の運営会社を買収した。中文在線は2サイトの情報の拡散力に注目、メディアミックス戦略でコンテンツを広めていくという。

奇虎360と昆侖万維、Operaの買収を完了

 セキュリティベンダーの奇虎360とオンラインゲーム開発の昆侖万維は、ブラウザーで知られるOperaの買収を完了したと発表した。今年2月、奇虎360と昆侖万維は買収を発表していた。

山谷 剛史

NNA所属。中国アジアITライター。現在中国滞在中。連載多数。著書に「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。