山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

対Appleコントロールへの布石か、iOSのiMessageにも警告 ほか〜2014年6月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

対Appleコントロールへの布石か、iOSのiMessageにも警告

 情報産業省にあたる信息和工業化部は、「iOS用のiMessageが、ネット検閲の管理下にない」と指摘。「人気のインスタントメッセンジャーのQQや微信(WeChat)をリリースしている騰訊(Tencent)と比べて、Appleはネット検閲に関する協力に消極的で、ポルノやその他違法なメッセージ送信などの犯罪活動が行われる心配がある」という。

 Androidに関しては、先月の記事でも紹介したように、天安門事件を前にGoogleのサービスがすべて利用できない状況になっている。また、それ以前からNexusなど一部機種を除いてGoogle Playがインストールされていない。iPhoneやiPadなどもAndroid搭載機器のように変わっていくのだろうか。

ネット接続で利用されるAndroidデバイス

セットトップボックス、官製OS化へ

 中国の映画・テレビ・ラジオの監督管理を行う「広電総局」が、セットトップボックス向けOS「TVOS 1.0系統」をリリース。セットトップボックス各社に、同OSインストール義務化の通達を行った。これにより健康的なインターネットテレビ環境ができるという。AndroidベースのTVOSの最大の特徴は、root権限で利用できなくなることで、自由にTVOS向け以外のアプリをインストールできなくなる。

 愛奇藝や優酷土豆など、セットトップボックスやインターネットテレビ向けのコンテンツを配信する企業は、国家の政策規定に従うとコメントしている。

 また、広電総局は6月16日、ニュースメディアの記者が、ジャンルを超えた専門外の事件を報じたり、サイトを開設するなどして執筆することを禁じる通達を出している。中国は「言論の自由」があることをアピールしてはいるが、矛盾していると矛盾を突く意見も。一連のニュースから広電総局のイメージは悪い。古い頭の政府関係各所が介入することで、インターネットの発展が阻害されるという意見に多くの同意が集まった。

さまざまなセットトップボックスが販売中

iOSデバイスユーザー、地方都市が全体の半数を超す

 アプリ開発者向けサービスを提供する友盟(umeng)は、モバイル機器とインターネットについてまとめた「2014年Q1移動互聯網報告」を発表した。それによると、アクティブに利用されているモバイル機器は7億8000万台で、地方都市や中小都市での利用が58%を占める。

 ネットに接続するモバイル機器の数は調査ごとに増えているが、目立った点では、セットトップボックスの接続数が3カ月で1.5倍増えて700万台超となったことや、4Gを利用するデバイスが1月〜4月で2.8倍になったことが挙げられる。またiOSに関して、地方都市・中小都市でのiOSの利用デバイス数が大都市のそれを上回った点が挙げられる。iOSデバイスの普及の勢いが地方で強いわけだ。iOSのJailBreak率は減少傾向で全体の14.2%となった。

アクティブなiOSデバイス

 また、調査会社のiResearchが中国のアプリ配信事情についてまとめた「2014年中国手机応用商店市場季度監測報告」によると、iOSに関してはApp Storeが最も人気のiOS向けアプリ配信サイトとなったが、Androidに関してはGoogle Playは人気ではなく、キャリアやハードウェアメーカーが提供するものもそれほど人気ではなく、百度などポータルが提供するものが最も人気であるとのこと。

人気別アプリマーケット

 ダウンロードされたアプリは、多いものから「画像、映像」(29.0%)、「生活、地図」(20.0%)、「ユーティリティ」(17.0%)、「インスタントメッセンジャー」(16.9%)、「電子ブック、学習」(7.7%)、「テーマ、壁紙」(6.2%)、「オフィス」(3.0%)となった。先の友盟の調査によれば、SNSやニュース、ビジネスアプリの利用者が昨年末に比べ60%前後増えたほか、オンラインショッピング、ゲーム、ユーティリティ、チャットアプリの利用者も50%程度増えたという。

 ゲームアプリは、ジャンル別では「テーブルゲーム」(32.5%)、「アクション」(19.9%)、「スポーツ」(8.6%)、「シューティング」(7.8%)、「育成」(7.5%)の順に多くダウンロードされている。また、先の友盟の調査によれば、大都市と地方都市で趣向が異なり、大都市では「育成ゲーム」「子供向け教育ゲーム」「RPG」が人気であるのに対し、地方都市では「アクションゲーム」「テーブルゲーム」「スポーツゲーム」が人気だった。

 普段利用するアプリの数は「6〜10」(54.4%)が最も多く、「11〜15」(21.5%)、「5以下」(12.7%)と続いた。また、7割がアプリのダウンロードでは無線LANを利用すると回答した。

チャット利用者、6割が有料サービスを利用

 PCでもスマートフォンでも最も人気の利用用途であるチャットだが、モバイルでの利用実態についてまとめた「中国移動即時通訊応用用戸調研報告」が発表された。

 それによると、利用したことのあるソフトでは、騰訊(Tencent)の「QQ」(82.6%)と「微信(WeChat)」(80.2%)の利用率が抜きん出て高く、続いて阿里巴巴(アリババ)がリリースする、ECサイトの「淘宝網(Taobao)」や「天猫(Tmall)」で店側と客側がチャットできる「旺信」(41.7%)が続いた。ほかにも中国国内外のアプリはいくつか出ているが、利用率は低く、iMessageは13.8%、LINEは9.9%にとどまった。

 また、メインで利用しているものでは「QQ」(45.0%)と「微信」(40.0%)で二分した。利用しているチャットアプリの数は「1種類のみ」(23.8%)、「2種類」(41.8%)、「3種類」(21.3%)、「4種類」(4.5%)、「5種類以上」(2.8%)であり、QQと微信をメインに利用し、ほかのチャットアプリは補完的に利用している。

使ったことがあるIM(左)と最も使うIM(右)

 チャットソフト利用者の61%が有料サービス利用者だ。その月額費用は「10元以下」(17.5%)、「10〜20元」(17.8%)、「21〜30元」(10.4%)、「31〜50元」(7.0%)、「51元以上」(8.4%)となる。購入の内容は「(主にアカウントを盗られないための)セキュリティサービス」(36.4%)が最も多く、「携帯電話への通話料金」(27.4%)、「スタンプ」(25.4%)、「関連ネットサービス」(24.0%)、「広告不表示」(22.5%)、「クラウドストレージ」(21.8%)、「アバターのランクアップ」(20.3%)、「オリジナルアバター」(17.5%)、「登録できるチャット相手の上限の増加」(13.8%)となった。中国ではアカウントを盗む事件をよく聞くが、その対策としてセキュリティサービスが人気なのだ。

 人気急上昇の微信、その利用用途はグループチャットの1つ「朋友圏」(66.7%)、QRコードからアクセスする「掃一掃」(57.0%)、「音声チャット」(56.4%)、振って繋がる「揺一揺」(54.0%)、「テキストチャット」(46.1%)、「近所の利用者検索」(44.5%)、「オフィシャルアカウントの登録」(41.8%)、「音声通話」(39.1%)、「ゲーム」(36.9%)となった。微信用ゲームで金を払う意思があるかについては、21%が払ってもよいと回答した。

大手ECサイト「京東商城」記念日を他のECサイトが返り討つ

 6月18日は、家電に強い大手オンラインショッピングサイト「京東商城(jd.com)」にとっては同サイト設立記念日であり、いわゆる「記念セール」を実施している。この1サイトの記念セールに便乗して、他の「天猫(Tmall)」をはじめとした大手ショッピングサイトや、「蘇寧電器」「国美電器」などの大手家電量販店なども対抗して「特別セール」を実施する。6月は伝統的に特に何かあるという月ではないが、上半期の数字を出したいというサイトや量販店が乗っかり、今年は昨年以上に激しくも情け容赦のない商戦日となった。

 記念セールを行う京東商場は去年の倍となる30〜40万台の携帯電話販売を記録したが、対して天猫ではこの1日に100万台を超える携帯電話販売を記録した。話題性はあったようで、中心の京東商場へのアクセス数や同サイトのアプリダウンロード数は天猫を上回っていたにもかかわらず、売上では天猫を大きく下回ったのは、結局のところ価格で負けたから、と分析されている。

24歳以下のネット利用率、7割を超す

 中国のインターネット利用者は若い層に極めて集中しているという傾向があるが、そんな中国における24歳以下のインターネット利用者についてまとめた「2013年中国青少年上網行為調査報告」がCNNIC(China Internet Network Information Center)から発表された。

 それによると、24歳までのインターネット利用者は2億5600万人で、さらにそのうちの88.4%が12歳〜24歳に集中した。24歳までのインターネット利用率は71.8%に。小学生の利用率は低いが、それでも前年比で倍近くに増えている。利用デバイスは「携帯電話」(86.3%)が最も多く、「デスクトップPC」(71.2%)、「ノートPC」(51.2%)と続いた。

 1週間の平均利用時間は小学生が10.7時間、中高生が19.4時間、大学生が25.1時間となった。利用用途で多いのは、小学生は「音楽」(82.0%)、「検索」(73.8%)、「チャット」(73.3%)、「ゲーム」(69.5%)、「動画」(62.6%)、中高生は「チャット」(91.9%)、「音楽」(83.3%)、「検索」(79.3%)、「動画」(76.0%)、「ゲーム」(75.2%)であり、利用用途はエンタメに限定されている。

 大学生では「チャット」(97.7%)、「音楽」(91.3%)、「検索」(91.0%)、「ブログ」(83.0%)、「動画」(81.9%)、「オンラインショッピング」(77.0%)、「微博」(76.7%)、「オンラインバンキング」(70.4%)、「オンラインペイメント」(70.3%)、「メール」(68.7%)、「ゲーム」(63.5%)、「ネット小説」(61.2%)、「SNS」(60.0%)と、SNS方面やEC方面やメールの利用が増えた。

学生のネット利用用途(斜体は、ネット利用者全体より高い利用率を示す)

農村部でのインターネット利用、都市部との差は大きく

 CNNICは、中国の農村部のインターネット普及状況についてまとめた「2013年中国農村互聯網発展状況調査報告」を発表した。2013年末の段階での農村部のインターネット利用者は1億7662万人で、利用率は農村部人口の28.6%。この数字は都市部の2007年の段階とほぼ同等で、現在の都市部の普及率は62.0%まで上がっている。

 農村部のインターネット利用の特徴は、「PCからのアクセス」(60.2%)よりも「携帯電話やスマートフォンによるアクセス」(84.6%)が目立つ点で、PC(73.6%)と携帯電話やスマートフォンによるアクセス(79.6%)が両方高い都市部とは異なる。家でのブロードバンドと無線LANが都市部ほど普及していないため、アプリやコンテンツのダウンロードが容易ではない可能性がある。

 また、利用実態では、インスタントメッセンジャーやブログの利用率が都市部同様に高いものの、例えばオンラインショッピングの利用率は、都市部で55.2%、農村部で31.1%など、全般的にそれ以外の利用用途が都市部よりも10ポイントないしそれ以上低い結果となった。ただその中でも、クーポンサイトやオンライン旅行予約サイトの利用は顕著な伸びを見せた。

農村部(青)と都市部(赤)のインターネット利用者の収入別グラフ

阿里巴巴がMVNOとして通信業に参入

 6月1日より、大手IT企業「阿里巴巴(アリババ)」配下の仮想移動体通信事業者(MVNO)である「阿里通信」が、音声とデータ通信のサービスを開始した。阿里通信は、政府が2013年末にMVNOのライセンスを発行したうちの1社。すべての地域、方式で使えるわけでなく、一部の都市からサービスがスタートし、徐々に利用可能都市を増やしている段階だ。また、W-CDMA方式しか対応していないが、やがてCDMA 2000やTD-SCDMA方式にも対応する。

 阿里巴巴の関連企業らしく、オンラインショッピングサイト「天猫」を活用。サービススタートの段階で認知してもらうべく、7元(100円強)から購入可能だが、そこに10元のボーナスを付けて認知向上に務めているようだ。

阿里通信の利用料金一覧

山谷 剛史

海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。