山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

Apple、中国ユーザーの一部データを中国本土のサーバーへ〜2014年8月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

Apple、中国ユーザーの一部データを中国本土のサーバーへ

 Appleは中国電信(China Telecom)の保有する中国のサーバーにiCloudなどパーソナルデータの一部を保存し始めた。これが報じられると「中国の特殊なネット事情から、当局の要請などにより個人情報が見られるのではないか」と心配する声が、海外のメディアはもちろん、中国国内のネットの反応からも多数出てきた。一方でAppleからはこうした声を聞いてか「中国国営だから個人情報の漏えいについては問題ない」「強固なセキュリティで管理されている」「他国と同じように扱う」「より高速に安定してサービスが利用できる」というコメントを出している。

 今年に入って中国のWeb2.0サービスのネット管理は目に見えて強化されていて、外国のサービスは軒並みアクセスできなくなっている。iMessageについても6月に情報産業省にあたる信息和工業化部が、「iOS用のiMessageが、ネット検閲の管理下にない」と指摘。7月にはCCTV(中国中央電視台)がFrequent Locations機能について非難したほか、iCloudが突然利用できなくなるなど、不安定な状況にあった(当連載バックナンバー参照)。

Appleサーバーが中国に置かれることに多くのユーザーが不安の声を上げた

中国政府、Windows 8に続きSymantec製品やKaspersky製品も不買へ

 中国政府は、政府内で調達可能なセキュリティソフトについて、中国政府正規版ソフト購入サイト「正版軟件採購網」で発表。「キングソフト」「360」「江民」「瑞星」「冠群金辰」の5社19製品を採用することを発表した。セキュリティ上の不安を理由に、SymantecやKasperskyなど、外国産セキュリティソフト導入は行わないという。

 先だって中国政府は政府内のWindows 8の調達禁止を通達しており、国内製品でまかなう動きが強まっている。Windows 8の政府内導入は禁止しているが、Windows XPをサービス終了後も使い続けるユーザー向けのセキュリティ製品「360XP盾甲」は購入可能なリストに含まれている。中央政府の一部のPCでWindows XPが使い続けられているならば、セキュリティ面は大丈夫なのだろうか。

「LINE」利用率は0.5%、「微博」は注目ニュースチェックサービスへ

 CNNIC(China Internet Network Information Center)は、各種SNSの利用状況についての調査結果「2014年中国社交類応用用戸行為研究報告」を発表した。

 インターネット利用者(6月末時点で6億3200万人)の33.7%が、「QQ空間」「人人網」などのSNSサイト(QQ空間はブログとも解釈できるが、この調査ではSNSとしている)と、「QQ」「微信(WeChat)」などのメッセンジャー、マイクロブログ「微博(Weibo)」の3つをすべて使い、26.2%がSNSとメッセンジャーを利用、21.1%がメッセンジャーのみを利用。

 よく利用するサービス/サイトは、「QQ」(インターネット利用者の72.5%)、「微信」(同55.3%)、ブログ「QQ空間」(同54.0%)、「新浪微博」(同21.7%)、「騰訊微博」(同20.1%)となった(騰訊微博は7月に開発を終了、今後の新規サービスはないと発表している)。ちなみに「LINE」は0.5%、「Skype」も0.5%、「WhatsApp」は0.1%。

「LINE」の認知はネットユーザーの1.8%と低い

 微博の利用用途(複数回答可)については、「話題のニュースのチェック」(75.8%)、「興味のある人をフォロー」(62.1%)、「情報のシェア、転載」(58.3%)、「写真の送信」(48.8%)、「音楽動画視聴」(45.8%)、「メッセージ送信」(42.1%)となり、知人のフォローは行っているけど、「知人同士のやりとりのツール」よりも、「ニュースをキャッチして拡散するツール」として使われる傾向が強いという結果に。微信や既存のオンラインニュースサービスと比較しても、多くの人が注目しているニュースをチェックするために微博は最もよく使われている。やや乱暴にいえば、「微博利用者≒ネットの話題のニュースをチェックする人」というわけだ。

 最近人気が上昇している微信については、使われる機能は「音声チャット」(84.5%)、「文字チャット」(83.3%)、「朋友圏(友人グループ)」(77.0%)、「グループチャット」(61.7%)、「振って知り合い検索」(51.2%)となっている。微信ユーザーの41.5%が、著名人やニュースメディア、広告アカウントやショップアカウントをフォロー。微信ユーザーの間で使われるオンラインペイメントサービス「微信支付」のサービスでは、「電話代チャージ」(32.6%)、「タクシー呼び出しアプリ」(29.1%)が利用率が高かった。

セットトップボックスを再度規制し、ユーザー反感

 昨年よりテレビをスマートテレビ化できる低価格なセットトップボックスがヘビーユーザーの間で人気になっているが、政府の映画・テレビ・ラジオの監督管理を行う「広電総局」が、専用アプリ以外インストールできない官製OS「TVOS」導入をセットトップボックスメーカー各社に迫ったことは先月の記事で紹介した。このため、セットトップボックスからシステムのアップデートの通知があり、アップデートしたら動画アプリが使えなくなり、使い物にならなくなったという声を聞いた。

 セットトップボックスの火付け役である「小米盒子」と「楽視盒子」は広電総局のいいなりに動いたものの、両社のカスタムROMの「MIUI」と「LeTV UI」が「TVOS」とは異なると広電総局が警告。多くのヘビーユーザーが利用していることから、再び話題のニュースとなり、多くのネットユーザーが不快感を示した。8月21日、楽視盒子をリリースする楽視網は、同社株価に大きな影響が起こりうるとして、同社株の売買停止措置をとった。

筆者宅の「楽視盒子」ではネットワークエラーというメッセージが出るようになった

「微信」での時事ニュース配信を規制

 「微信(WeChat)」が市民権を得ている中、8月7日、政府機関の国家互聯網信息弁公室が「即時通信工具公衆信息服務発展管理暫行規定(別名:微信十条)」というインスタントメッセンジャー利用についての規定を発表した。

 新規定の具体的なポイントとしては、公式アカウント管理者は実名登録が必須となること、またインターネットニュース配信資格を持つアカウントのみが、時事ネタのニュースの配信が可能であり、資格がなければ運営を許可しないという点だ。この発表の後日、各メディアがこの規定について解説記事を掲載。「公衆のアカウントだから公衆の意識を」「実名とルールで綺麗なネット情報」「秩序あるネット空間で自由は保護される」と、デマ(と認定された言論)対策であることをアピールした。

「小米」世界シェア5位になるも、ヘビーユーザー離れ

 Stragtegy Analyticsによれば、中国で急成長したメーカー「小米(Xiaomi)」が、中国市場での伸長を受け、スマートフォンの出荷台数で四半期ベースで世界5位に躍り出た。

 小米はキングソフト(金山軟件)の雷軍氏がトップのファブレスのメーカーで、当初は性能はそこそこながら低価格であることからヘビーユーザーから評価され、ヘビーユーザーが食いつくような販売イベントを矢継ぎ早に投入し認知されていった。が、近年は小米を認知・評価したヘビーユーザーからライトユーザーへの口コミが広まるにつれ、同社はパイの小さなヘビーユーザーから、よりマスな一般ユーザーを狙い販売。7月に発売した最新モデル「小米手机4」は、カメラユニット程度の改善程度しか変化はなく、しかしソニーなどの中国国外メーカーに比べればカメラ性能は低いことから、ヘビーユーザーの期待には応えられず、ヘビーユーザーの小米離れが起きている。また、先月の記事でも報じたが、小米が個人情報を無許可で取得していたことが、翌8月になっても問題視された。

小米4

 ヘビーユーザーが利用する有力なIT系サイト「中関村在線」の8月の製品注目度ランキングでは、検索された製品ベスト15製品の中にAppleやSamsung、Huaweiなどがランクインする中、小米製品は1機種もランクインせず、メーカー別でも、AppleやSamsung、Huaweiのほか、LenovoやSonyをも下回る結果となった。

 逆に言えば小米4の評価は低いが、それ以前の評価は高い。騰訊(Tencent)が発表した8月における同社サイトを利用したスマートフォンについての調査結果では、Android端末ベスト5のうち、「小米2S」「紅米」「小米 M3」の3機種がランクインした。

CNNICによれば小米(メーカー)製スマホの利用率はスマホ全体の8.1%

スマホサービスで課金するユーザーが増える

 CNNICはスマートフォンなどのモバイルインターネット利用状況について調査した「中国移動互聯網調査研究報告」を発表。利用用途について再度まとめた(本誌7月23日付記事「中国のネットユーザーは6億3200万人、モバイルユーザーがPCユーザーを超す」参照)ほか、アプリストアの利用状況についてもレポートしている。

 それによると、App Store(16.0%)やGoogle Play(3.2%)の利用率が低い中国では、中国ベンダーのアプリストアである百度系アプリストア(61.3%)や、360手机助手(45.7%)、騰訊計アプリストア(36.0%)が人気。キャリア系アプリストアは数%、メーカーのアプリストアは17.3%と支持を得ていないようだ。

中国ネットユーザーの所有するスマホの数。2台持ちも普通のようだ(CNNIC)
スマートフォンユーザーが利用しているアプリストア

 有料サービスの利用の有無だが、「経験有」は25.2%で、昨年よりも10%強増加した。支払ったサービス/コンテンツ(複数回答可)は、「ゲーム」(62.0%)、「SNS用付加サービス」(33.9%)、「オンライン小説」(30.8%)、「生活系アプリ」(25.3%)、「ニュース系アプリ」(17.6%)、「学習系アプリ」(14.3%)、「時間管理系アプリ」(6.9%)となった。将来については「学習系アプリ」や「生活系アプリ」を筆頭に2、3割のユーザーが課金してもいいという意思を示している。

 好きな課金方法は「一度のみ課金」(47.0%)、「月額年額」(36.6%)、「アプリ内アイテム課金」(29.2%)、「小説コンテンツ課金」(25.7%)、「動画コンテンツ課金」(10.8%)、「壁紙・スタンプ課金」(10.5%)、「音楽課金」(9.8%)となった。アプリ内広告に関しては、「アプリ利用に影響がなければ構わない」(32.4%)、「広告が嫌なのでアプリ利用回数が減る」(29.8%)、「アプリをアンインストールする」(22.4%)、「わからない」(15.4%)という回答に。

毎月のデータ通信利用量(CNNIC)

オンラインショッピングサイトは活況も、ニセモノなど問題山積み

 オンラインショッピングサイトというと阿里巴巴(アリババ)グループの「天猫(Tmall)」や「淘宝網(Taobao)」がよく知られているが、それ以外も活況で新記録が出ている。

 8月18日には大手家電量販店「蘇寧電器(Suning)」が、同社サイト「蘇寧易購」5周年記念を迎えるにあたり、ネットショップの蘇寧易購と、蘇寧電器のリアルショップの双方でキャンペーンを実施。この日、同時オンライン人数は1300万人を記録し、前年比約4倍増となる220万件の注文を受けた。タイムセールでは、家電系サイトながら、利用者の半数が女性だったという。

 また、8月13日には書籍に強いオンラインショッピングサイト「当当網」が上半期の業績を発表。販売額は前年比40%増で、書籍の販売がはじめて半年で1億冊を超え、1億6000万冊に達したとした。特に子供用の本がよく売れたとしている。

 強いオンラインショッピングサイトは伸びが顕著だが、問題もある。CCTVは「毎周質量報告」といいう番組で、ニセシャンプーについて検証。オンラインショッピングサイト数サイトでシャンプーを8本購入したところ、本物は3本だけで、残りは痒みなどの異変が出るニセモノだということが判明した。

 「天猫」を筆頭に「信頼できるオンラインショッピング」へと業界が転換しようとしているが、信頼を売りにしたサイトすらもニセモノを扱っており、ユーザーが安心して何でも気楽に買える状況にはまだならないようだ。

山谷 剛史

海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」などがある。