PCもタブレットもまるごとおまかせ! QNAPではじめるデータ管理術

Part.4:AV用途にも使えるファンレス静音NAS「QNAP HS-210」

 QNAPの性能をリビングにも――。QNAPから新しく登場した「HS-210」は、ファンレスで静音性にこだわった新シリーズのNASだ。QNAPならではの高機能なNASとしてはもちろんのこと、AV機器のストレージとしても活用できる本製品を実際に試してみた。

リビング向けにブラッシュアップ

 QNAPから登場した「HS-210」は、ホームデジタルハブとしての利用を想定した新シリーズのNASだ。

 QNAPでは、これまでにも「TS-221」や「TS-212」などホーム&SOHO向けのNASをラインナップしてきたが、今回の製品は「HS」と型番が変更されており、これまでとは明らかに方向性が異なるシリーズとなっている。

 最大の特徴は、そのデザインと静音性だ。同社でセットトップデザインと呼ばれる薄型の形状は、リビング、それもテレビラックに収めることを想定したものとなっており、タワー型の従来製品とは大きく異なる雰囲気を持っている。

QNAPの新型NAS「HS-210」。リビングでの利用を想定したファンレスの静音NASとなっている

 ヘアライン加工されたグレーのアルミ製天板と、ピアノブラックのフロントパネルで構成されたデザインは、シンプルで落ち着いたイメージがあり、実際に手で触れると、とても高級な感覚を受ける。ゴテゴテと余計なボタン類やインジケーターがないのも好印象で、AV機器に混じって設置したとしても違和感はなさそうだ。

 一方、静音性に関しては、ファンレスによって高いレベルが実現されている。本製品はフロントパネルを開くことで、2台のHDDを搭載可能となっているが、複数台HDD搭載可能なNASとしては数少ないファンレスの製品となっており、実際に稼働させたときの静音性も非常に高い。AV用途に特化した製品というわけではないが、大容量を実現しつつ、静音性にも配慮されていることから、大量の動画や音楽データを保存するのに適した製品と言えるだろう。

 スペック的には、QNAPの既存のラインナップの中では、「TS-220」をリビング向けにブラッシュアップしたと考えるとよさそうだ。型番で見ると「TS-212」あたりが近いが、今回の「HS-210」はホットスワップに対応しているため、機能的には上位シリーズにあたるの「TS-22x」シリーズに近い。実際、Marvell 1.6GHzのCPU、512MBのメモリというスペックは「TS-220」と共通で、eSATAポートが省かれている代わりに、USB2.0ポートが2ポートに増え、写真やビデオなどの取り込みに便利なSDカードスロットが追加されている。

 家庭用のNASを選ぶことを考えると、これまでは「TS-219P」や「TS-221」、「TS-220」あたりが候補となっていたが、より家庭での利用に適した製品がようやく登場したという印象だ。

【既存製品とのスペック比較】

HS-210 TS-221 TS-220
CPU Marvell 1.6GHz Marvell 2.0GHz Marvell 1.6GHz
RAM 512MB 1GB 512MB
LAN 1 1 1
USB2.0 2 1 1
USB3.0 2 2 2
eSATA - 2 2
SD Card Slot 1 - -
サイズ(奥行×幅×高) 220×302×41.3 216×102×105 225×102×168.5
消費電力(アイドル/稼働時) 7W/14W 7W/19W 7W/19W

アルミを多用した放熱設計

 では、製品を見ていこう。外観は、前述した通り、薄型のセットトップデザインとなっており、非常にシンプルな構成だ。

 インターフェイス類は背面に配置されており、1000BASE-T対応のLANポート×1、USB2.0×2、USB3.0×2、SDカードスロットに加え、電源ボタンも背面に用意されている。一度稼働させてしまえば、ネットワーク経由でほどんどの制御ができるとは言え、ラックに入れて使うことを考えると、SDカードスロットとUSBのどれか1ポート、そして電源ボタンくらいはフロント側にあっても良かったのではないかとも思えるが、その分、フロントからの見た目は非常にスッキリとしている。

上面
正面
背面

 HDDは、フロント側から脱着する方式となる。マグネット式のフロントパネルを取り外すと、HDDカートリッジが姿を表すので、中央部分の固定用レバーを押しながら引き出すことで取り外すことができる。

 このカートリッジもどうやらアルミ製で、HDDを装着後、通常とは上下逆(HDDの基板側を上向きに本体に装着する形)となる。これにより、HDDケースの底面(基板側)と本体ケースの天板(アルミ製)が密着する形となり、効率よく本体から熱を排出することができるようになっている。

フロントパネルを外すと、HDDカートリッジを取り出すことができる
放熱を考慮したアルミ製で軽量
HDDケースの底面と本体ケースの天板が密着し効率よく放熱できる構造になっている

 実際、長時間稼働させた状態で、本体に触れると上部が暖かくなっているのが確認できる。その一方で、本体底面側は、さほど熱を持っておらず、明らかに上部の方が暖かい。底面や内部に熱をこもらせることなく、うまく廃熱している証だろう。

 試しに、2台のHDDをRAID1で構成した状態で数日間連続運用した状態で、設定画面からHDDの温度を確認してみたが、この季節というこもあり、室温22度の屋内でHDD温度はアイドル時で39度。HDDをフォーマットなど稼働状態でも40度でとどまっていた。ファンなしで、この温度であれば安心して使うことができそうだ。

 ただし、放熱に限界があることから、利用可能なHDDは限定される。最新情報については「HS-210」の互換性リストのページを参照して欲しいが、現状は、Western DigitalのWD Redシリーズ(WD40ERFXなど)、Seagate NAS HDD(ST4000VN000など)が対応となっている。ファンレスという特性を考えると、未対応のHDDを使うことは避けた方がよさそうだ。

2台のHDDを装着した状態で、HDDのフォーマットを実行。そのときの温度を確認したところ40度で安定していた
使えるHDDは、WD RedシリーズかSeagate NAS HDD。今回はWD Redを利用した

HDDアクセス音がかすかに聞こえる程度

 静音性については非常に優秀だ。当たり前だが、ファンが存在しなたいめ、アイドル時は非常に静かで、ほぼ無音と言っていい。内部のカートリッジの立て付けもしっかりとしているため、筐体がカタカタと振動するような低級音が一切無いのも好印象だ。さすがに本体に手を触れれば、HDDが回転していることを感じられるが、底面のインシュレーターのおかげで、床などを通じて振動が伝わることもないので、安心して使えそうだ。

 ただし、やはりHDDへのアクセスが発生すると無音というわけにはいかない。今回利用したWD Redは、そもそもアクセス音は静かな方だが、それでも電源オン後の起動プロセス、ネットワーク上のPCからベンチマークを実施した際などは、「ココココ……」と少しこもった感じのHDDアクセス音が聞こえてきた。

 とは言え、たとえばネットワーク経由で音楽を再生するといったケースでは、耳を澄ませば、たまに「コ……コ……」という単発のアクセス音が聞こえる程度で、アクセス音がほとんど気にならないレベルに抑えられている。

 「HS-210」のHDDカードリッジは、3.5インチと2.5インチのどちらも装着できるようになっているので、完全な無音を目指すのであれば、SSDを装着するというのも1つの手だ。最近では500GBクラスのSSDも3万円前後で入手できるので、「HS-210」なら、これを2台利用して容量的にも許容範囲の無音ストレージを実現することができる。

 家庭内のデジタルデータを集約してテレビやPCで楽しむというカジュアルな方向性はもちろんのこと、構成によっては、よりハイエンドのAV用途にも活用することができそうだ。

フル機能のQTS4.0を利用可能

 一般的に、ホームネットワーク向けやAV向けのNASと言うと、機能が限定されている場合もあるが、そんなことが一切ないのも「HS-210」の良いところだ。

 搭載されているファームウェアは最新のQTS 4.1.0で、これは通常のTS-xxxシリーズとまったく同じものとなる。このため、通常のファイル共有はもちろんのこと、写真や音楽、ビデオをDLNAクライアントに配信するメディアサーバー、iTunesサーバー、Webサーバー、VPNサーバーなどとして機能させることができるうえ、QNAPならではの豊富なアプリケーションを必要に応じてダウンロードして追加することができる。

従来のTS-xxxシリーズと同じファームウェア(QTS4.1.0)を搭載。さまざまなサーバー機能を利用可能なフルスペックNASとなっている
有線LANで接続したPCからCrystalDiskMark 3.0.2fを実行した結果(RAID1構成)。QNAPらしくパフォーマンスも良好

 また、スマートフォン、タブレット用のアプリも用意されており、外出先から「HS-210」のファイルを参照したり、スマートフォンやタブレットで撮影した写真を自動的にアップロードすることなども可能だ。

 なお、「HS-210」には、他のQNAPシリーズと異なり、SDカードスロットが搭載されている。デジタルカメラやビデオカメラのSDカードを装着することで、FileStationから参照できるようになるのはもちろんだが、バックアップジョブを設定しておくことで、SDカードのデータを自動的に特定のフォルダに同期させることもできる。

 デジタルカメラやビデオカメラで撮影が終わったら、そのままSDカードにメディアをセットすれば自動的に撮影したデータをNASに吸い上げることが可能だ。

 さらに、トランスコード機能を利用し、メディアを同期させたフォルダを監視対象として設定しておと、ビデオカメラで撮影されたMTSファイルなどを自動的にスマートフォン向けの240p/360p/720pの3つのMP4ファイルへとトランスコードすることができる。

 つまり、メディアをセットするだけで、バックアップからトランスコードまで自動的にしてくれるわけだ。データを保存し、テレビなどに再生できるNASは多数存在するが、トランスコードまでしてくれるのはQNAPならではのメリットと言えるだろう。

背面にSDカードスロットを搭載。デジタルカメラやビデオカメラのデータを自動的に特定のフォルダと同期させることができる
トランスコード管理でフォルダを監視させておけば、SDカードから同期した動画を自動的にスマートフォン向けにトランスコードすることもできる

リビングに1台

 以上、QNAPから新たに登場した「HS-210」を実際に試してみたが、単に静かなだけでなく、多機能でパワフルなNASを探している人に、うってつけの製品と言えそうだ。

 機能的には、既存のQNAPシリーズと共通となるため、機能的に目新しい点はないが、バックアップの自動同期や自動トランスコードなど、SDカードスロットを備えたおかげで、既存の機能が実際の用途に活かせるようになった。

 今までQNAPはどちらかというと玄人好みの製品であったが、今回の「HS-210」で、少し、一般的なユーザーにも受け入れやすい製品になったのではないかと思える。AV用途にバリバリ使うのも良いが、リビングのテレビラックに収めて、写真やビデオを手軽に保管したり、テレビやスマートフォンから楽しむための機器として活用するといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ