清水理史の「イニシャルB」

ちょっとだけ生活が変わるかも? Aterm WG2200HPの「見えて安心ネット」

土曜日 14:00

古い無線LANルーターをAterm WG2200HPに入れ替え。
自分のPCとスマートフォン、妻と娘のスマートフォンそれぞれを接続。
流行りのWi-Fiの見える化機能「見えて安心ネット」を設定。
家族それぞれの端末を登録し、名前を設定する。
設定後に画面をチェックしてみると、自分の端末に加えて、
さっそく、妻がタブレットをつないでいることが確認できた!
どの機器がつながっている=誰が使っているのか、がわかるのは新鮮。

日曜日 11:00

ちょっとした空き時間にミニ家族会議。
本人と相談しつつ、娘のスマートフォンとPCがつながる時間を決める。
夜は23時までと粘られるも、土日外出前の7:00からと交換条件で、なんとか夜間は禁止に。
結局、「こども安心ネットタイマー」機能によって、平日14:00-22:00、土日は7:00-22:00を許可することで落ち着く。

同日 21:30

娘から、明日提出の課題をPCから印刷できないとクレーム。
そういえば、プリンターを無線LANにつなぐのを忘れていた。
すぐに接続して、見えて安心ネットにも「プリンター」という名前で登録。
すばやくやったつもりが、22:00を少しだけオーバーしてしまった。
何か言いたげな娘を横目に、昼に決めた時間制限をさっそく例外設定。
一時的に娘のPCの接続を許可して、印刷だけ終わらせてもらう。
「もっと早くやっておいてよ~」の文句はもちろん無視。

月曜日 16:00

娘のスマホが無線LANにつながったというメッセージがスマホに届く。
どこにいても、娘が無事に帰宅したことがわかるのは、やっぱり安心。
こっそり設定していたことに、少しだけうしろめたさを感じるものの、GPSで逐一追跡するよりマシと自分自身を納得させる。
思春期の娘の気持ちを考えると、「子どもの監視」はこれくらいゆるやかなほうがいい。

同日 21:00

帰宅後に「見えて安心ネット」の状況をチェック。
一覧に、記憶にない端末があり「あれ?」と思ったが、「接続失敗」なんて表示されていてなんだか怖くなる。
どうやら接続用の暗号キーがわからず、接続できていない様子。
ひとまず、近所の人が間違えて接続しようとしたんだろうと考え、「不正な端末」として接続を拒否する設定にしておく。

火曜日 6:00

妻が自分のスマホに届いたメールを見て「?」という顔をしている。
タイトルは「未知の端末を検知」。
昨晩、不正な端末の処理をした後に、こっそり買ったWindows 10 Mobile端末を無線LANに接続したことを後悔する。
娘の帰宅通知と一緒に、未登録の端末が接続されたときに自分と妻の両方に通知が届くように設定していたのだが、そのことをすっかり忘れていた。
「あー、大丈夫。なんでもない。設定間違えたかな……」とあやふやに答えて、そそくさと会社に向かうことにした。

「見えて安心ネット」という新しい価値

 実際の家族ってのはもっと殺伐としているものだ、というまっとうな意見はさておき、今時の無線LANルーターってそんなことまでできるのかと、驚いた人も少なくないのではないだろうか。

 もちろん、ここまでできる製品は限られている。似たような機能を搭載した製品はいくつかあるが、先に触れたような細かな制御ができるのは、NECプラットフォームズの「Aterm WG2200HP」に搭載されている「見えて安心ネット」だけだ。

 無線LANルーターと言うと、今までは設定のしやすさはもちろんだが、どちらかというと通信スピードや通信距離が重視される時代だった。家中のどの部屋にも電波が届くか? 動画が快適に見られるスピードが実現できるか? という視点で製品を選んでいた人も多いことだろう。

 もちろん、速く、遠くまで届くことは今でも重要だが、もはやそれは当たり前だ。

 NECプラットフォームズの「Aterm WG2200HP」も、4ストリームMIMOのIEEE 802.11acに準拠した最大1733Mbps対応のWi-Fiホームルーターとなっており、その性能は高く評価されている。同社のハイエンドモデルとなるAterm WG2600HPに比べると、CPUなどの処理能力が若干劣るが、その分、価格はリーズナブル(実売1万3000円前後)。それに加えて、「見えて安心ネット」という「安心」に相当する新しい価値を無線LANルーターに搭載してきた。

NECプラットフォームズのAterm WG2200HP

「見えて安心ネット」で何ができるのか?

 「見えて安心ネット」は、一口に説明するとWi-Fi端末の管理機能だ。

 すでに無線LANを使っている人は少なくないと思われるが、現状、自宅にどんな端末が何台つながっているかを答えられる人は、ほとんどいないだろう。

 「見えて安心ネット」は、このように今まで把握しにくかったWi-Fi端末を「見える化」し、さらにそれを手軽にコントロールできるようになる。

 具体的には以下の機能を利用できる。

・Wi-Fi端末の一覧表示
・端末の識別と接続状況の確認
・端末ごとの接続許可/拒否とスケジュール設定
・端末接続時のメールやアプリへのプッシュによる通知

 単純にWi-Fi端末を見えるようにするだけでなく、見えるようになった端末の制御や状態変化を把握できるようになったことになる。要するに、ただ「見える化」するだけでなく、「見えたから『なんだ』」の「なんだ」に対する回答をきちんと用意した製品ということになる。

 これにより、自宅のネットワークに不正に第三者がアクセスすることを防止したり、生活のルールに合わせて無線LANの使い方を制限したり、システムを使って人の行動を把握したりすることができるようになるわけだ。

「見えて安心ネット」を使ってみよう

 それでは、冒頭の物語の各シーンも思い出しながら、具体的な機能の使い方を見ていこう。

Wi-Fi端末の一覧表示

 まずは、Wi-Fi端末のリストアップだが、この機能は特に何も設定は必要ない。Aterm WG2200HPに端末を無線LANで接続後、PCのブラウザから設定画面にアクセスして「見えて安心ネット」ボタンをクリックするだけでいい。これで、現在、Aterm WG2200HPに接続されている端末がリストアップされる。

 スマートフォンをメインで利用する場合は、あらかじめスマートフォンに「Aterm スマートリモコン」というアプリをインストールし、無線LANに接続した状態で、このアプリを起動する。ネットワーク上のAterm WG2200HPを選択後、「見えて安心ネット」をタップすれば、同様に接続されている端末を確認することができる。

 接続中の端末は濃いグリーン、過去に接続されたが今は接続されていない端末は薄いグリーンで表示されるので、ひと目で状況を確認することができる。

Wi-Fiの見える化に特別な設定は必要ない。設定画面から簡単につながっている端末を確認できる
スマートフォン用のアプリ「Atermスマートリモコン」を使うと手元からWi-Fiの管理ができる
端末の識別と接続状況の確認

 続いて、各端末の詳細な情報を確認してみよう。一覧表示のままでも接続している周波数帯やMACアドレスなどの情報を確認できるが、端末をクリックするとさらに詳細な情報を確認できる。

 Wi-Fi接続状態でSSID、電波強度で接続中の周波数帯および強度のアイコン、暗号化モードや使用チャンネル、最終接続日時なども確認できる。

 「見えて安心ネット」の便利な点は、このような端末の情報に対して説明を追加できる点だ。各自が個別に所有するスマートフォンなら「人」、PCやテレビなら「設置場所」など、説明を追加することで「娘が使っている」とか「リビングで使っている」とか、より詳しい情報を把握できるようになる。

 また、端末の区分として、「おとなの端末」「こどもの端末」「不正な端末」の3種類を選ぶこともできる。簡単に言えば、管理する側が「おとなの端末」、管理される側が「こどもの端末」、そして無条件に接続を拒否したい端末が「不正な端末」となる。

 冒頭の物語で、接続に失敗した不審な端末を「不正な端末」と設定したが、近所の人が間違えて何度も接続を試みるというケースは決して珍しくない。万が一、それが悪意を持って接続しようとしている場合でも、「不正な端末」と設定しておけば、仮に(まずありえないが……)偶然暗号キーが合致してしまったとしても、不正な端末は接続を常に、無条件に拒否できるので安心して利用できることになる。

端末の詳細な接続情報を確認できる
端末の区別や名前を設定しておくと、端末と人や場所を関連付けして管理できる
不正な端末として設定することで、その端末からの接続を拒否できる
端末ごとの接続許可/拒否とスケジュール設定

 おそらく「見えて安心ネット」の機能の中でも、多くの人がもっとも使ってみたいと考えている機能が、この接続をコントロールする機能だろう。

 端末そのものを使用禁止にするわけではないので、子どもがスマートフォンやタブレットを使い続けることを完全に防止することはできないまでも、Wi-Fi接続を不可能にすることで、使用をある程度抑制したり、使い過ぎていることを自ら気づかせることができるようになる。

 設定は先の例の流れで可能だ。あらかじめホーム画面で「こども安心ネットタイマー」が有効になっていることを確認したら、接続を制限したい端末の詳細画面から「スケジュールを設定する」をタップする。

 事前テンプレートから「14時-21時」などを選ぶか、スケジュール表で該当する曜日の時間部分タップして選択すると、その時間の接続許可と拒否を切り替えることができる。直感的な操作なので、はじめてでも迷わず設定できるだろう。

 端末ごとにスケジュールを設定可能なため、高校生の長男と中学生の次男でスケジュールを変えたり、自分の部屋のPCは21時までに制限しつつ、リビングのPCは23時まで利用を許可したり、といった設定もできる。人によって、家族のルールによって、使い方によって、柔軟な使い方ができるのも特徴だ。

 また、冒頭で触れたように、一時的に例外を許可することもできる。レポートの提出期限でどうしても夜までPCを使わなければならなくなった場合などでも、スケジュールそのものを変更する必要はなく、端末の詳細画面から一時的に使用を許可するだけで簡単に対応することが可能だ。

スケジュール表をタップすることで接続の可否を簡単に設定できる
スケジュールは端末ごとに個別に設定できる。テンプレートを利用したり、設定済みのスケジュールをコピーしたりすることもできる
端末接続時のメールやアプリへのプッシュによる通知

 最後の通知機能は、無線LAN接続のルールとはちょっと違った方向から「安心」を追求した機能だ。

 電車などの公共交通機関や学校、学習塾などで導入が進んでいるが、ICカードなどを活用して通過や到着をメールで知らせるサービスが存在する。その家庭版と考えるとわかりやすい。

 具体的には、特定の端末であらかじめ通知機能を有効に設定しておくと、その端末がWi-Fiに接続した際に、メールもしくはスマートリモコンアプリへのプッシュ通知で、接続したことが通知される。

 子どものスマートフォンを通知対象に設定しておけば、子どもが学校から帰宅し、Wi-Fiに接続した時点で、親にそのことが通知されることになる。両親が共に働きに出かけているような家庭で利用すれば、この通知で子どもの帰宅を確認できるというわけだ。

 機能的には結構高度だが、設定はさほど難しくない。「Wi-Fi通知」機能は、同社が提供するクラウドサービスの「クイック設定Web on Cloud」を利用する。スマートリモコンアプリから、「Wi-Fi通知」の設定を開始し、「クイック設定Web on Cloud」のアカウントを登録する(アカウントを記憶させれば次回以降自動ログイン可能)。

 Wi-Fi通知設定を有効化し、通知先としてスマートリモコンアプリ(登録済みアカウント)かメールアドレスを新規に指定する。

 その後、「見えて安心ネット」で子どもの端末の詳細画面を開き、「Wi-Fi接続通知」で「2回目以降の通知」をONにしておけば、接続の度に通知が送られるようになる。

Wi-Fi通知は「クイック設定Web on Cloud」から設定できる
2回目以降の通知を有効にすると、子どもが家に帰ってWi-Fiに接続したタイミングなど、毎回、接続が通知されるようになる

 多くの人はスマートフォンのGPS機能を使って子どもの所在を確認しているかもしれないが、中学、高校と子どもの年齢が高くなるにつれ、常に監視されることを嫌がる子どもも増えてくる。GPSのような機能はあくまでも緊急用のみと子どもと約束し、普段は、このような機能のみで管理するほうが、子どもにとっても「安心」だろう。

 なお、この機能は冒頭の話でも取り上げたように、認識されていない端末が接続された場合の通知にも活用できる。子どもが勝手にゲーム機を買ってきた、どこから手に入れたのかわからないがタブレットを使い始めた、などといった場合でも、新しい端末を検知して保護者に知らせてくれる。

 もちろん、第三者が勝手に無線LANに接続している場合も、この機能で発見できるが、どちらかというと身内の勝手な行動を監視するのに適した機能と言えるだろう。

無線LANが無法地帯になる前に

 以上、NECプラットフォームズのAterm WG2200HPに搭載された「見えて安心ネット」を実際の利用シーンをからめながら紹介したが、「見える化」という無線LANのトレンド的な機能の中では、もっと完成度が高く、しかも実用的だ。

 ただ見える機能は数あれど、そこから具体的にどうすればいいのかまで、きちんと配慮されているあたりは、「さすが」と素直に関心させられる。

 一見、複雑そうな機能に見えるが、実際の利用シーンに合わせて設定してみるとわかりやすいうえ、設定そのものも、確認して、登録して、制御して、通知できるようにする、と一連の流れの中で設定していくと自然にできるように工夫されている。これなら、女性が管理するのも難しくないだろう。

 現状でもすでに家電など多くの機器が無線LANを利用する環境となっているが、今後は車など今までになかった機器がつながるようになることが考えられる。接続機器が爆発的に増えれば、一種の無法地帯となり、果たして無線LANに何がつながっているのかを把握するのは至難の業にもなりかねない。

 そう考えると、今からWi-Fi機器を見える化し、きちんと管理できるようにしておくことはとても重要だ。子どもの使い過ぎを防止したい、家族が帰宅したことを知りたい、といったように、見える化した「結果」、いろいろな活用の幅も広がってくる。

 IEEE 802.11acの規格も落ち着きを見せ、そろそろ無線LANの入れ替えを検討している人も多いことだろう。実際に買い換える際は、速さや通信距離だけでなく、このような将来の管理や活用まで考えて、製品を検討するといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。