清水理史の「イニシャルB」
ドラフト2位の技巧派投手 NECプラットフォームズ「Aterm WG2200HP」
(2016/5/2 06:00)
NECプラットフォームズから無線LANルーターAtermシリーズの最新モデル「Aterm WG2200HP」が発売された。4×4の「ライトモデル」と位置付けられる製品だが、接続端末の見える化を実現する「見えて安心ネット」など独自の機能を備えた個性派製品だ。
即戦力ならこちら
球速では劣るが、球種の多さとコントロールの良さでは一枚上手。
NECプラットフォームズから登場した「Aterm WG2200HP」は、野球のピッチャーに例えれば、そんな印象の製品だ。
同社の無線LANルーターのラインナップには、すでに発売済みのフラッグシップとなる「Aterm WG2600HP」が存在する。こちらは、1.4GHzのデュアルコアCPUに、MU-MIMO対応のIEEE 802.11ac、256QAM対応で800Mbpsで通信できるIEEE 11n(2.4GHz)と、まさに剛腕という印象の製品だが、MU-MIMOも256QAMの11nも出番はほとんどなく、まだ実力を発揮できていない状態。
それに比べて、今回登場したAterm WG2200HPは、CPUは控えめの800MHzのシングルコア。MU-MIMOには対応するものの、2.4GHzの11nは256QAMにも4ストリームMIMOにも対応しない最大450Mbps(3ストリーム)と、「スピード」面では少し控えめ。
しかしながら、中継ぎ(中継機能を搭載)もでき、牽制もうまく(接続端末見える化とアラート)、総合力の高い即戦力となっている。
実売価格を比べると、Aterm WG2600HPとの差はわずかとなるため、ハードウェアだけで比べるとAterm WG2200HPのお買い得感は薄く感じられるが、実戦投入後にすぐに結果を出してくれるのは、間違いなくAterm WG2200HPの方となる。
無線LANルータードラフト会議なるものを開催するとすれば、1位は他メーカー含め、どれにするか悩みどころが多いが、個人的には2位指名で固く押さえておきたいのが、このAterm WG2200HPということになる。
WG2600HP | WG2200HP | |
店頭予想価格 | 1万8140円 | 1万7830円 |
CPU | 1.4GHzデュアルコア | 700MHzシングルコア |
対応規格 | 11ac/11n/11a/11g/11b | ← |
アンテナ(5GHz/2.4GHz) | 4×4/4×4 | 4×4/3×3 |
無線速度(5GHz/2.4GHz) | 1733Mbps/800Mbps | 1733Mbps/450Mbps |
新アンテナシステム | ○ | × |
MU-MIMO | ○ | ← |
ビームフォーミング | ○ | ← |
WAN | 1000BASE-T | ← |
LAN | 1000BASE-T×4 | ← |
USB | USB 3.0×1 | USB 2.0×1 |
中継機能 | × | ○(TVモード/高速中継) |
ファミリースマイル | × | ○ |
子供安心ネットタイマー | ○ | ← |
見えて安心ネット | × | ○ |
状態表示ランプ点灯設定 | × | ○ |
アンテナ内蔵のコンパクト
それでは、製品をチェックしていこう。まずは、外観だが、基本的な部分は先に比較したAterm WG2600HPとほぼ同じだ。
Aterm シリーズとしては、ちょっと太めのシルエットとなるが、本体サイズは約35(W)×130(D)×181(H)mmと、なかなかコンパクトな設計になっている。
最近の無線LANルーターは、もはや大きいことに何も負い目を感じないどころか、むしろ大きく、ゴツいデザインの方が主流派を占めるような状況になりつつあるが、やはり日本の住宅事情を考慮すると、コンパクトであることは、それだけで大きなメリットと言える。
いかにも「飛ばすぜ!」という風な外付けアンテナよりも、アンテナ内蔵のおとなしい外見ながら、しっかり電波を遠くまで届けるAtermシリーズの方が日本的とも思える。
今回のAterm WG2200HPには、ハイエンドのAterm WG2600HPで採用されていた新アンテナシステム(アンテナ間の干渉を抑えるピン・ダイポールアンテナ、アイソレーション・アンテナ)が採用されていないため、前述したCPUや対応規格を含め、パフォーマンスという点でトップを狙うような製品ではない。しかし、同社ならではのμSRアンテナとμEBGという技術により、4本ものアンテナをこのサイズに収めたあたりは、いつもながら感心する。
インターフェイス類は側面にまとめられており、モード着替え用のスイッチ、いずれも1000Mbps対応のWAN×1、LAN×4、そしてUSB 2.0ポートが搭載されている。
USBポートも残念ながら2.0となってしまったものの、USBメモリやUSB HDDを接続して簡易NASとして利用したり、USBカメラ(対応機器はこちら)を接続して、外出先から映像を確認するなどといった使い方が可能となっている。
最近では、無線LANルーターを家庭内のファイル共有に使う例も少なくないが、そういった使い方なら十分に対応できる製品だ。
接続端末を見える化
本製品の最大の特徴と言えるのは、新たに搭載された「見えて安心ネット」と呼ばれる無線LAN端末の管理機能だ。
無線LAN経由でAterm WG2200HPに接続している機器を一覧表示できるほか、Aterm WG2200HPに機器が接続された際に、そのことをスマートフォンアプリやメールで通知したり、端末ごとの接続制限をすることができる。
一般的な従来型の無線LANルーターでも、接続中の端末を確認することは不可能ではなかったが、閲覧するために設定画面の奥深くの階層にアクセスする必要があったり、その表示がIPアドレスやMACアドレスだったりすることが多く、その状況を把握することは簡単ではなかった。
これに対して、Aterm WG2200HPでは、接続端末の管理用に専用のGUI画面を設けたり、スマートフォン用のアプリ(最終的にはスマートフォン向けのウェブ画面を表示)を用意したりするなど、端末を手軽に管理できるようになっている。
この機能の用途は大きく2通りある。1つはセキュリティ機能としての利用だ。他社製の無線LANルーターでも同様の機能が提供されているが、アクセスポイントに接続している端末を確認できるようにすることで、意図しない端末が接続されてないかどうかを確認するために利用する。
Atermシリーズの場合、標準のSSIDに対して結構複雑なパスワードが設定済みとなっているので、不正アクセスのようなことは考えにくいが、それでも外部にパスワードが漏えいするなどして、第三者が勝手に無線LANを使うようなケースも考えられなくはない。
接続端末を見える化することで、そういった端末をあぶり出すことができるというわけだ。
とは言え、端末は標準ではMACアドレスで管理されるため、画面に表示されたアイコンが、いったいどの端末なのかを探し当てるのは結構苦労する。端末をつなぐ度に、MACアドレスを確認し、きちんと名前などを設定しておかないと、台数が増えてからの管理が難しくなる。
筆者もあやうくプリンターやネットワークカメラを「なんだろうこれ?」と接続拒否の端末に設定してしまうところだった。
どちらかというと、本製品らしい使い方となるのは、もう1つの用途の方だろう。他社製の無線LANルーターにはない機能として、本製品では、端末の接続状況を検知して、メールまたはアプリへのプッシュ通知を送ることが可能となっている。
ちょっとイメージしにくいかもしれないが、在宅確認に活用することができる。たとえば、子供のスマートフォンを通知対象に設定しておくと、子供が帰宅し、自宅のWi-Fiに接続した段階で、Atermがそれを検知してあらかじめ設定したメールアドレス、もしくはスマートフォン向けのアプリ「スマートリモコン」にプッシュ通知を送信してくれる。
最近では共働きの家庭も多く、自宅に一人で帰宅する子供も増えている。GPSやカメラで在宅を確認するのも1つの方法だが、Aterm WG2200HPを使えば、Wi-Fiへの接続でその状況を確認できるというわけだ。
もちろん、端末の接続時間を規制できる「こども安心ネットタイマー」も利用可能となっているため、あらかじめ設定したスケジュールに従って、子供の端末からの無線LAN利用を制限することも可能だ。
極端な話、「子育てのための無線LANルーター」とでも言ったところだ。
海外製の無線LANルーターは、とにかく機能が豊富な一面、それらの機能をどう使ったらいいのかがユーザー任せにになりがちだが、さすが国産製品らしく、具体的な用途に絞り、しかも使いやすく作りこまれている印象だ。
なお、メールやアプリへの通知機能は、Aterm WG2200HPをルーターモードで使用している場合に利用可能だ。ブリッジモードでも上位ルーターがUPnPに対応している場合は利用可能との記載がヘルプにあったが、筆者宅の環境では、上位ルーターがUPnPに対応している場合でも、ブリッジモードから設定を有効化することはできなかった。
単身者にもおすすめ
そう書くと、「ひとり身の俺には関係ない」と思われてしまいそうだが、前述したセキュリティ用途でも活用できるうえ、そもそも無線LANルーターとしての実力も高い。
以下のグラフは、木造三階建ての筆者宅にて、1階にAterm WG2200HPを設置し、各フロアでの通信速度をiPerfによって計測したものだ。1階で900Mbps越え、2階でも400Mbps、3回で200Mbps前後と、なかなか良好な値を示している。
Atermシリーズは、海外製品に比べると速度は控えめという印象があったのだが、本製品では近距離ながら最大速度が900Mbpsとかなり高い値を実現できている。
μEBGなどの独自アンテナ技術との組み合わせによるチューニングのノウハウがかなり溜まってきたのではないか、と推測できる。
安定性に関しても、ブリッジモードながら、十数台の無線LANクライアントを接続した状態で3日間ほど常用してみたが、特に不安定になるような現象は見られなかった。
いずれにせよ、独自の視点で、使いやすさを追求しているあたりは、実にNECプラットフォームズらしさを感じさせる製品と言える。「見えて安心ネット」のような用途がピッタリ当てはまる環境にあるなら、ドラフト2位と言わず、いきなり1位で指名しても損のない製品だ。
1F | 2F | 3F | |
Aterm WG2200HP-Aterm WG2200HP(1733Mbps) | 922 | 404 | 198 |
Aterm WG2200HP-Macbook Air(866Mbps) | 627 | 117 | 63.2 |
※サーバー:mac mini有線LAN接続
※クライアント:mac book air 11 2013(thunderbolt LAN)