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ソフトバンクと東京科学大学、Wi-Fiアクセスポイントを使って「雪山遭難者のスマホ」を探す位置特定システムを開発

 ソフトバンク株式会社と国立大学法人東京科学大学 工学院 電気電子系 藤井輝也研究室は6月9日、雪山や山岳地帯における遭難者の救助をより迅速に行うことを目的として、「Wi-Fiを活用した遭難者携帯端末の位置特定システム」を開発したと発表した。

 本システムは、携帯端末に搭載されているWi-Fi機能を活用して、遭難者の端末位置の推定誤差を数m以下にする端末位置特定システム。GPSなどのGNSS(衛星測位システム)を活用した位置の特定に、本システムを組み合わせることで、通信圏外のエリアで雪下に埋まった遭難者の捜索時間を短縮することができるという。捜索者は、まずGNSSで遭難者の推定位置を20m四方の範囲内に特定し、その位置に向かって移動する。推定位置に到着後、本システムを利用することで約10分で遭難者の推定位置を半径数mの範囲内に特定することが可能となる。

 ソフトバンクは、2022年に雪山や山岳地域などでの遭難者救助を目的として、ドローンによる無線中継システムによって通信圏外のエリアを臨時にサービスエリア化するとともに、スマホの測位機能を活用することで遭難者の位置情報を取得して捜索関係者に共有するシステム「ドローン無線中継システムを用いた遭難者捜索支援システム」(ドローン遭難者捜索支援システム)を開発した。しかし、このシステムで遭難者を特定できるのは前述した約20m四方の範囲までとなり、その範囲内をくまなく捜索しようとすると、捜索者が横1列に並んで捜索を行って、発見までに数時間を要する場合もある。

 本システムは、ドローン遭難者捜索支援システムで特定した推定位置の誤差範囲内において利用することを基本としている。Wi-Fiアクセスポイント(遭難対応AP)と、モニターとして利用する携帯端末(RSSIモニター)、Wi-Fi指向性アンテナ(指向性アンテナ)で構成されており、遭難対応APに指向性アンテナを接続し、RSSIモニターを指向性アンテナに取り付ける。

 測定では、まず遭難対応APを起動してWi-Fiの電波を送受信し、遭難者の端末とRSSIモニターとの通信を確立する。その後、遭難者の端末は遭難対応APが発する電波の受信電力(RSSI)を測定し、その値を一定間隔でRSSIモニターに送信する。捜索者は、水平面内に指向性アンテナを回転させることで、RSSIモニターに内蔵されたジャイロセンサーで推定した指向方向と受信電力値をもとに、遭難者の端末の方向を推定できる。このような探索を繰り返すことで、遭難者端末の位置を誤差数m以下で特定できる。

 ソフトバンクと東京科学大学は、「ドローン遭難者捜索支援システム」と「Wi-Fi遭難者捜索支援システム」を統合したシステムの実用化を目指すとともに、自治体や公共機関、企業と連携し、災害対策に向けた研究などを進めていくとしている。