清水理史の「イニシャルB」
有線LAN経由でテレビにPC画面をミラーリング エー・リンク「EZCast Pro LAN」
2016年8月15日 06:00
エーリンクから販売されている「EZCast Pro LAN」は、PCやスマートフォンの画面をHDMI経由でテレビなどに出力できるミラーリングデバイスだ。10/100Mbpsの有線LANにも対応ていたり、画面分割による複数機器の映像出力ができたり、Windwos 10 MobileのContinuumにも対応するなどの特徴を備えている。その実力を試してみた。
会議室のテレビに
Windows 10 MobileのContinuum対応も含めたMiracastデバイスとしても使えるうえ、Android/iOS/Windows/MacOS Xのマルチデバイスに対応し、しかも独自の機能による表示した写真への手書き入力や画面分割なども利用できる――。
そう考えると、エー・リンクから販売が開始された「EZCast Pro LAN」は、この手のデバイスとしては非常に機能性の高い製品と言える。
実際に使ってみた限りでは、若干、ソフトウェアの安定性に欠ける部分も見られたが、PCやスマートフォンの画面をテレビに映し出せるデバイスを探している場合は、その有力な候補となりそうな製品となっている。
同社が販売する「EZCast」シリーズには、無線LANのみに対応したHDMI直結タイプの「EZCast Pro」も販売されているが、今回登場した「EZCast Pro LAN」は、文字通り、有線LANにも対応しているのが最大の特徴。
有線LANの安定した通信で画面を出力できるうえ、家庭内LANや社内LANに接続されたPCやスマートフォンであれば、端末型の接続先を変更することなく、手軽に画面を映し出すことができる。
希望小売価格が1万6800円と少々高いこともあり、基本的には法人での利用を推奨したい製品。その分、機能は多彩で、前述した画面分割や手書き対応のほか、発表可否のコントロールや参加者の端末への画面配信など、多彩な機能が利用できるようになっている。
会議室のテレビなどにつないでおけば、会議やプレゼンの際の画面出力が手軽にできるようになることだろう。
ボックス型だがサイズはコンパクト
それでは、製品を見ていこう。本体は、HDMI直結ではなく、ボックス型となっているものの、サイズはコンパクトで、奥行105mm×幅80mm×高さ20mmとなっている。イメージとしては4ポート前後のUSBハブと同等といったところだろうか。
インターフェイスは、背面に画面出力用のHDMI(1.2)、電源用のmicroUSB、そして10/100Mbps対応のLANポートが備えられている。
もちろん、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANも搭載されており、端末から無線LANで直接EZCast Pro LANに接続して画面を出力することも可能。冒頭でも触れたとおり、本製品はMiracastにも対応しているが、この場合は、当然、無線LANでの接続となる。
有線LANを利用するメリットは、主に安定性だ。無線LANの場合、干渉などの影響で頻繁に切断されたり、タイムラグが発生することなどがあるが、有線LANで接続すれば、そういった影響をほとんど受けないため、安定した画面出力が可能となる。
セットアップは簡単で、背面のインターフェースに各ケーブルをつなげるだけでかまわず、本体側の設定は特に必要ない(初回はファームのアップデートが実施される可能性がある)。
画面を出力したい端末には、専用のアプリ(EZCastPro)をインストールする。スマートフォンであればAppStore、Google Play、Windowsストアから、PC向けはエー・リンクのサポートページからダウンロードが可能だ。
ワンタッチで画面出力
画面の出力も特別な設定や操作は必要ない。
たとえば、有線LANで接続されたPCから画面を出力したい場合であれば、PCにインストールしたEZCastProを起動後、自動検出されたEZCast Pro LANに接続。表示されたメニューで「ミラーオフ(現在の状態が表示される)」をクリックすることで、即座(1~2秒)に画面が表示される。
無線LANの場合、突然表示が大きく遅延したり、マウス操作がひっかかるような場合があるが、さすが有線LANらしく表示は極めて安定していた。実際、ストップウォッチを使った計測では、表示の遅延時間は0.2秒ほどで、マウスを動かすと若干の遅れを感じたり、ウィンドウの表示などが実際の描画からは一瞬遅れる印象がある程度となった。これなら、プレゼンなどであれば全く問題のないレベルで動作すると言えるだろう。
なお、画面だけでなく、音声などもテレビ側に出力されるので、動画再生時の音楽なども問題なく出力されるので、ビデオなどを含むプレゼンなども問題なく可能だ。
一方、スマートフォンの場合は、無線LAN経由での接続になるが、この場合2通りの接続方法が可能となる。1つはEZCast Pro LANにダイレクト接続する方法、もう1つは家庭内や企業内の無線LANアクセスポイント経由でEZCast Pro LANに接続する方法だ(無線-有線というルートになる)。
前者の方がパフォーマンス的には優れているうえ、表示方式によっては直接接続が必須となるが、画面表示の度に無線LANの接続先を変更するのは面倒なので、基本的には社内のアクセスポイントにつないだまま、アクセスポイントから有線LAN経由でEZCast Pro LANに接続するほうが効率的だ。
画面表示方法は機種によって異なる。
Andoroid端末は、PCと同じく「EzMirror」機能が利用できるため、端末から接続後(検索に10秒ほど時間がかかる)、「Mirror OFF」をタップすれば、即座に画面が表示される。0.13秒前後と、PCよりもAndroid端末の方が遅延は低く、違和感なく操作できる印象だ。このほか、動画や写真などのコンテンツを指定して画面に出力することもできる。
iOS端末とWindows 10 Mobileの場合、接続するまでは同じだが、EZCast Proアプリから直接ミラーリングすることはできず、アプリからは写真や動画などのコンテンツを指定して表示する方式のみとなる。
画面をそのまま表示するミラーリングは、iOSはAirPlayを利用することになる。ただし、前述したアクセスポイント経由での接続では不可で、無線LANの接続先を直接EZCast Pro LANに変更しておく必要がある。直接接続された状態なら、iOSのメニューからAirPlayですぐに画面出力が可能だ。
Windows 10 Mobileは、もう少し、手順が複雑になる。冒頭でも触れたとおり、EZCast Pro LANはMiracastにも対応しているが、Miracastで動作させるにはモードを切り替える必要がある。接続後、アプリから「Ez Mirror」モードを有効にすると、Miracastでの接続を一定時間(60秒)受け付ける。このタイミングで、Continuumなどを使って接続すると、画面が出力されるという仕様だ。
慣れれば、すぐに接続方法を切り替えられるが、はじめはよくわからないので、もっと丁寧なマニュアルでもあれば助かるところだ。
会議に便利な機能を試す
本製品の最大の特徴でもある会議向けの機能だが、これはなかなか便利だ。
たとえば、画面分割。本製品では、1画面、左右2画面、上下左右4画面に画面を分割し、複数端末から、それぞれのエリアに画面を表示することが可能となっている。
使い方は簡単で、画面を表示したい端末から次々に画面出力を開始するだけでいい。
本製品では、最初に接続した端末(もしくは明示的に指定した端末)がホスト端末として動作するようになっており、後から別の端末が画面を出力しようとすると、アプリ上に表示を許可するかどうかというメッセージが表示される。
ここで「share」を選ぶと画面が自動的に分割され、最大4台まで画面を表示することができる。
ホスト端末を利用すると、画面の分割方法を1画面、左右2画面、上下左右4画面で選択できるが、たとえば4台接続中に2画面にすると2台が自動的に切断されることになるので注意が必要だ。
画面分割と並んで、会議のときに便利な機能が「Air View」と呼ばれる機能だ。これは、EZCastで表示されている画面をアプリ側に表示する機能だ。
たとえば、大きな会議室でプレゼン画面が見えにくい場合などの利用が想定される。参加者もPC、またはスマートフォンにEZCast Proアプリをインストールし、ネットワーク経由でEZCast Pro LANに接続しておけば、「Air View」機能を使って、自分の端末上で現在表示されている画面を確認することができる。
いわば画面配信機能だ。会議というよりは、イベントやセミナーなどで使うと便利な機能と言えるだろう。
なかなか便利
以上、エー・リンクから販売されている「EZCast Pro LAN」を実際に使ってみたが、専用のアプリによって簡単に使えるだけでなく、非常に豊富な機能を備えたミラーリングデバイスと言える。
多機能なため、機能を使いこなすのに、若干、試行錯誤が必要だが、慣れれば目的の機能をすぐに使いこなせるようになるだろう。
画面分割や配信など、決して万人向けの機能とは言えないが、企業などでは使う価値の高い機能と言える。コンシューマー向けと考えると価格は高いが、企業向けと考えれば十分にリーズナブルなので、導入を検討するといいだろう。