第109回:有害コンテンツから子どもを守れ!(前編)
コンテンツフィルタはどれだけ有効か?
インターネット上のコンテンツをどこまで子どもに見せるか? 社会的に影響の大きな事件の発生により、このような議論が徐々に行なわれるようになってきた。大方の意見はある程度の規制も必要というところに落ち着いているようだが、残念ながら、実際にどのように規制するのかが話題になることはほとんどない。そこで、今回はコンテンツ規制の実態に迫ってみることにした。
●子供のインターネット規制、実際の方法は?
テレビのワイドショーなどでインターネット規制の話題が放送されるたびに、常々疑問に思うことがある。子どものインターネット利用状況を把握する必要性が説かれ、危険だと煽られる一方で、その具体的な対策について語られることがほとんどないことだ。
確かに、現状はまだ子どもがインターネットを自由に利用することの是非を問う段階なのかもしれない。また、システム的にインターネットの利用を規制することよりも、子どもとのコミュニケーションなどといった家庭内の対策の方が重要なのも確かだ。しかし、すでに子どもがインターネットを利用しているという状況にある場合、もはや何の対策もしないというわけにもいかない。具体的にどのような対策が考えられ、その効果がどれくらいあるのかが、やはり気になるところだ。
●対策方法は3種類
というわけで、コンテンツ規制を行なう方法をいくつかピックアップし、その効果を実際にテストしてみることにした。現状、考えられるのは、大きく分けて3種類ある。1つは「プロキシ方式」、もう1つは「ソフトウェア方式」、最後は「ハードウェア」方式だ。
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コンテンツフィルタリングを実現するための具体的な方法は3種類。それぞれ設定方法や効果などに違いがある |
[お詫びと訂正]
初出時、iフィルターの標準価格が誤っておりました。正しくは6,090円です。お詫びして訂正致します。
プロキシ方式は、主にISPなどで提供されているサービスだ。ISPで提供されているプロキシサーバーのアドレスとポート番号をブラウザに設定すると、ISPのサーバー経由でインターネットに接続されるようになり、そこで有害なコンテンツへのアクセスが拒否されるようになる。
ISP側のサーバーでは、アダルトや薬物などに関するコンテンツのリストが常に最新の状態に保たれ、ユーザーが設定などを意識せずに使える点がメリットだろう。なお、今回紹介した@niftyのサービスは会員向けに無料で提供されているものだが、他のISPの場合でも月額数百円程度で利用できる場合がある。
ただし、この方式の場合、プロキシの設定を外してしまうだけで簡単に無効化できてしまうため、強制力はもっとも弱い。Windows XP Professionalを使えば(Home Editionでは不可)、グループポリシーを使って強制的にプロキシを設定、さらにプロキシの設定変更を無効にするなどといった運用もできるが、そこまでするなら別の方法を利用した方が手軽な場合も多い。
プロキシ方式を採用する@niftyのコンテンツフィルタリングサービス。IEの接続タブでプロキシを設定することにより、有害コンテンツへのアクセスが拒否される | 「ファイル名を指定して実行」で「mmc」を起動。スナップインの追加でグループポリシーを選択すれば、プロキシの強制設定や設定変更の禁止などのルールを適用できる |
続いてのソフトウェア方式だが、これはPCにコンテンツフィルタリングソフトウェアをインストールする方法だ。ここではシマンテックの「Norton Internet Security」とデジタルアーツの「i-フィルター」を利用したが、これらのソフトウェアによってインターネットの利用状況が監視され、有害な情報へのアクセスを遮断できる。
コンテンツフィルタリング専用のソフトウェアも存在するが、セキュリティ対策ソフトなどにも機能が搭載されているため、こちらを利用してもいい。また、ISPによっては、月額数百円程度の料金でコンテンツフィルタリングソフトを利用できるサービスを提供している場合もある。
この方式のメリットは、設定の無効化が難しい点だ。管理者権限を持ったユーザーが操作するか、管理者パスワードを入力しないと設定の変更や解除が不可能となっている。ただし、インストールや設定作業が必要になるため、子どもが自分専用のPCを利用している場合はインストールが難しい可能性もある。家族で1台のPCを共有している場合などに有効な方法と言えるだろう。
コレガの無線LANルータ「CG-WLBARGP」 |
最後のハードウェア方式は、ルータなどのハードウェアを利用する方法だ。ここで取り上げたコレガの「CG-WLBARGP」などのように、最近のルータには、URLフィルタリングなどの機能が搭載されており、ルータに設定したURLへのアクセスがあった場合に通信を遮断することが可能になっている。この方法の場合、PCの設定が不要で、ルータ側で設定するだけで、ネットワーク上のすべてのPCに対してフィルタリングを適用できるのがメリットだ。
しかしながら、禁止するURL(もしくはキーワード)をすべて手動で設定しなければならず、URLが一致しない限りフィルタリングが適用できない。プロキシ方式やソフトウェア方式では、特定サイト内の特定のコンテンツだけの閲覧を禁止することが可能だが、そういった運用ができないのが欠点だろう。
禁止したいキーワードを登録すると、そのキーワードを含むURLへのアクセスが禁止される。ただし、設定はユーザー任せで、細かな制御も難しい |
●それぞれの方式で判断条件は異なる
では、実際に各方式を利用することで、どのようなサイトが閲覧できなくなるのかを検証してみよう。アダルトサイトや掲示板、ドラッグなどを扱うサイトへのアクセスに加え、検索エンジン(Google)を利用して、「アダルト」などのキーワードを検索したときの結果も検証してみた。また、グラビアや同じドラッグでも「ドラッグストア」のように、判断が難しいサイトにアクセスした場合の動作についても検証してみた。
ジャンル | サイト/検索サービス | URL/検索キーワード | @nifty | Norton Internet Security | i-フィルター | CG-WLBARGP |
アダルト | DMM | http://www.dmm.co.jp | × | × | × | △(設定次第) |
ドラッグ | 合法ドラッグ通信販売 | http://www.kaze.gasuki.com/ | × | × | × | |
掲示板 | 2ちゃんねる | http://www.2ch.net/2ch.html | △(大人の時間NG) | △(大人の時間NG) | × | |
コミュニケーション | Cafesta | http://www.cafesta.com/index.jsp | ○ | ○ | ○ | |
エキサイトフレンズ | http://friends.excite.co.jp/friends/ | ○ | ○ | × | ||
出会い系 | http://furin.misty.ne.jp/ | × | ○ | × | ||
グラビア | sabra | http://sabra.jp/ | ○ | ○ | × | |
sanspo.com | http://www.sanspo.com/ | △(芸能情報NG) | ○ | △(芸能情報OKもアダルト情報NG) | ||
ドラッグストア | 日本チェーンドラッグストア協会 | http://www.jacds.gr.jp/ | ○ | ○ | ○ | |
検索 | 暴力 | ○ | △(性暴力情報センターなど) | ○ | ||
アダルト | △(アダルト関連) | △(アダルト関連) | △(アダルト関連) | |||
ドラッグ | △(合法ドラッグなど) | △(合法ドラッグなど) | △(合法ドラッグなど) | |||
×=遮断、○=閲覧可、△=一部制限 |
結果を見ると、方法によって判断条件が異なる点がよくわかる。もっとも条件が厳しいのは、ソフトウェア方式の「i-フィルター」だ。この製品では、フィルターの設定を対象年齢から選択できるようになっているのだが、「小学生向け」に設定してみたところ、あからさまに有害な情報が掲載されているサイトへのアクセスが遮断されることはもちろんのこと、大手掲示板へのアクセスが完全に遮断されたり、大手ポータルサイトが提供しているユーザー同士のコミュニケーションサービスなどにもアクセスできないようになっていた。グラビアサイトやスポーツ新聞サイトの一部コンテンツなど、判断が微妙なサイトへのアクセスも完全に遮断されるという徹底ぶりだ。同じソフトウェア方式となるNorton Ineternet Securityもほぼ同じ傾向を見せるが、出会い系サイトへのアクセスが可能など、多少は条件がゆるい。
一方、ハードウェア方式は、自分でURLを設定しなければならないため、アクセスの可否はその条件次第となっている。特定サイトのURL、もしくはURLに含まれる文字列を適切に設定しない限り、サイトへのアクセスは制限されない。
というわけで、今回テストしたものの中で、個人的にもっともバランスが良いと感じられたのは、プロキシ方式を採用した@niftyのサービスだ。たとえば、2ちゃんねるへのアクセスは基本的に許可されるが、アダルト関連の話題にはアクセスできないように制限されていたり、スポーツ新聞のサイトの中でも、まれにアダルト情報が含まれる芸能情報にはアクセスできないようになっているなど、細かな制御がなされている。
もちろん、この結果によって、一概にどの方式が優れていると判断できるようなものでもない。最終的にどこまで制限するかは、保護者の判断となるため、家庭のルールにもっとも合う方式を選ぶべきだろう。
●「ダメ」と言われるとさらに見たくなる
さて、以上のようにコンテンツフィルタリングを利用することで、ある程度、有害な情報へのアクセスを遮断することができることがわかった。
しかし、「ダメ」と言われると余計に見たくなるという心理も忘れてはならない。いくらフィルタリングを設定しても、それを解除されてしまったり、制限したことが原因で親子関係に亀裂が生まれてしまえば元も子もない。制限するという直接的な対策もひとつの方法だが、それだけが対策とは言えないだろう。次回、この点について、もう少し、考えてみることにしよう。
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2004/7/13 10:58
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