第170回:新11aに対応したUSBアダプタでより柔軟な利用が可能に
NECアクセステクニカの「Aterm WR7850S ワイヤレスセット(SU)」



 NECアクセステクニカから、新11a対応のUSB接続タイプの子機「WL54SU」が付属した「Aterm WR7850S ワイヤレスセット(SU)」が発売された。デスクトップPCの無線化などに便利なUSB子機だが、利用時にはいくつかの注意点もある。そのあたりをふまえてレビューしていこう。





PCカード接続クライアントと同等の実力

Aterm WR7850S ワイヤレスセット(SU)

 一時期、店頭ではあまり見かけなくなっていたUSB接続の無線LANクライアントだが、最近になって再び店頭に並ぶようになってきた。USB 2.0が当たり前のように使えるようになったおかげでもあるが、おそらくデスクトップPCを無線LANで接続したいというニーズが少しずつ増えてきたからだろう。

 今回、NECアクセステクニカから発売された「Aterm WR7850S ワイヤレスセット(SU)」も、そんなニーズに応えた製品だ。新11aに対応したIEEE 802.11a/b/gのUSB接続クライアント「WL54SU」が同梱されており、ノートPCはもちろんのこと、デスクトップPCなどさまざまなプラットフォームに対応できる製品となっているのが特徴となっている。

 とは言え、付属する子機が異なるだけで、基本的な構成は、以前、本コラムでレポートしたAterm WR7850Sと変わらない。そのため、今回はWL54SUの実力を主に検証していくことにしよう。

 まずは、性能面だが、その実力は同社製のPCカードタイプの子機「WL54SC」とほぼ同等だ。以下の表のように、アクセスポイントとクライアントを同一フロアに設置し、FTPによる速度比較をしてみたが、ほぼ同等の速度での転送ができた。もちろん、各モードで若干の速度の違いは見られるが、これくらいの差であれば誤差の範囲と考えて良いだろう。

製品名通信方式get/put値FTP速度
WL54SCIEEE 802.11gget27.56Mbps
put26.68Mbps
IEEE 802.11aget29.52Mbps
put25.96Mbps
WL54SUIEEE 802.11gget27.63Mbps
put28.09Mbps
IEEE 802.11aget27.24Mbps
put28.23Mbps
※FTP速度は同一フロアにて測定
※アクセスポイントにはAterm WR7850Sを使用
※アクセスポイント側でSuperA/Gは圧縮なしで有効に設定
※クライアントには富士通 FMV-Biblo MG(PentiumM740、RAM1GB、HDD100GB、Windows XP Home Edition)を使用
※サーバーにはAthlon 64 3000+、RAM1GB、HDD160GB、FedoraCore4、vsFTPdを使用
※XPのコマンドプロンプトからFTPによる計測を3回実行し、その平均を記載している
表1:PCカードタイプとUSBタイプ子機の性能

 個人的には、IEEE 802.11bの時代(USB1.0の時代)の印象から、USB接続のクライアントにあまり良いイメージがなかったのだが(特に性能面)、WL54SUに関しては、PCカードタイプのクライアントに性能が劣るようなことはないと考えて良さそうだ。さすがに有線LANと比較すると遅いのは致し方ないが、実効で20Mbps後半の速度を実現できていることを考えると、メールやWeb中心の一般的な使い方であれば、デスクトップPCを有線ではなく無線で接続するという選択肢も悪くないだろう。

 もちろん、NECアクセステクニカ製品ならではの使いやすさも健在だ。接続方法もPCカードタイプと基本的には同じで、付属のCD-ROMからドライバをインストール後、音声付きのガイドに従って接続するだけでいい。また、同社ならではの「らくらく無線スタート」を利用した接続設定も用意されており、本体のボタンを押すだけで暗号化を含めた接続設定を手軽に行なうことが可能だ。





実際の利用時はアンテナの向きに注意

 他社製のUSB接続クライアントに比べると、若干、サイズが大きいのが欠点と言える「WL54SU」だが、その代わり、可動範囲が非常に広いのが特徴と言えるだろう。USBコネクタ部は90度折り曲げ可能で、回転も同じく90度まで可能となっている。また、USBコネクタ部分から可動部分までのマージンも多く取られており、USBコネクタが奥まった場所にあるようなケースでも問題なく接続できるようになっている。デスクトップPCなどでは、フロントのパネルを開けるとUSBポートが現れる仕様の製品が多いが、このような場合でも問題なく利用できるだろう。

 ただし、実際の利用時は、このような収まりの良さよりも受信感度を重視すべきだろう。たとえば、以下の表を参照してほしい。これは、筆者宅の1階にアクセスポイントを設置し、3階に設置したノートPCからFTPによる速度テストを実施した結果だ。

製品名アンテナ方向FTP速度(3F)
WL54SC(参考)-14.76Mpbs
WL54SU垂直7.04Mpbs
AP方向調整19.71Mpbs
※アクセスポイントにはAterm WR7850Sを使用
※いずれも新11a(60ch)で計測
※アクセスポイント側でSuperA/Gは圧縮なしで有効に設定
※クライアントには富士通 FMV-Biblo MG(PentiumM740、RAM1GB、HDD100GB、Windows XP Home Edition)を使用
※サーバーにはAthlon 64 3000+、RAM1GB、HDD160GB、FedoraCore4、vsFTPdを使用
※XPのコマンドプロンプトからFTPによる計測を3回実行し、その平均を記載している
表2:設置方法による速度の違い

 注目すべきなのは、WL54SUのアンテナ部分の方向によって速度に大きな違いが現われていることだ。前述したように、今回のテストでは1F(斜め下方向)にアクセスポイントがあるため、垂直方向に電波を飛ばした方が電波の感度が高くなる。このため、WL54SUのアンテナを垂直方向に立てた場合、電波の方向は水平となってしまい、7Mbps前後とかなり遅い速度となってしまった。これに対して、WL54SUのアンテナ部分を可動させ、アクセスポイントの方向へとうまく調整してやると、速度を一気に20Mbps近くまで向上させることができた。

 実際、アンテナの方向を変えると電波の受信感度もかなり良くなる。以下の画像は付属のユーティリティ「サテライトマネージャ」で電波の状態をグラフ表示したところだ。左から右へと時系列に電波強度や送受信レートが変化する様子が描かれているが、途中で電波強度を表す緑色のグラフが変化していることが確認できるはずだ。前半がWL54SUのアンテナを垂直にしていた場合で、後半、受信強度が高くなっている部分がアンテナ部分をアクセスポイント方向へと調整した後になる。20dB前後から、40dB前後へと大幅に感度が高くなっていることがわかるだろう。


WL54SUのアンテナの方向によって受信感度がどれくらい変化するのかをグラフ表示したところ。アンテナをアクセスポイント方向に調整することで大幅に感度を向上させられる

 PCに装着したときの見た目や収まりの良さなどを考えると、ついついアンテナ部分を垂直に立ててしまいがちだが、今回のケースのように電波の受信感度を考えると、必ずしも垂直に立てて使うのが良いとは言えない場合もある。せっかく、幅広い範囲でアンテナ部分が可動するのだから、うまくアクセスポイントの方向に向けるように工夫するといいだろう。





オプションで台座などがあると便利

 このように、WL54SUを利用する場合は、アンテナ方向の調整が1つのポイントとなりそうだ。特に、デスクトップPCのように本体の設置場所が変わらない場合は、初期設定時にグラフを見ながら電波を最も強く受信できる方向に調整しておくといいだろう。


見た目と方向がうまく両立する環境(左)ならいいが、場合によっては飛び出すような感じで見た目が犠牲になる場合もある(右)

 ただ、アクセスポイントの方向によっては、アンテナ部分が水平に飛び出す方向になったり、斜めになるなど、見た目にあまり良くない状態となってしまうのも事実だ(特にPC前面のUSBコネクタに接続する場合)。このため、個人的にはUSB延長ケーブルと台座をセットにしたようなオプション品を提供して欲しいと感じた。


関連情報

2005/11/1 11:03


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。