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第401回:11n/a同時通信対応「全部入り」無線LANルーター
バッファロー「WZR-HP-AG300H」


 バッファローから新たに登場した「WZR-HP-AG300H」は、従来の11n/b/g(2.4GHz)に加え、11n/a(5GHz)の同時通信に対応したいわゆる「全部入り」ルーターだ。USBハードディスク共有やPPTPなどの多彩な機能を快適な5GHz帯で利用してみた。

5GHz帯のコストはわずか2000円

 本格的な利用も可能なUSBハードディスク共有機能、PPTPやWebアクセスによるリモートアクセス、細かなスケジュール設定が可能なエコ機能など……。無線LANルーターとして、非常に多彩な機能を搭載していることで高い人気を誇るバッファローの「WZR-HP-G301NH」シリーズ。

 そんな同シリーズに、5GHz帯を利用するIEEE802.11n/a対応、それも2.4GHzとの同時通信に対応した新製品「WZR-HP-AG300H」が登場した。

 まさに「待望の」と言っても過言ではない製品で、これまで「全部入り」と言われていた「WZR-HP-G301NH」に、さらに5GHz帯の通信機能が追加されたことで、ようやく真の意味での「全部入り」になったという印象だ。

バッファローのIEEE802.11n/a/b/g同時通信対応無線LANルーター「WZR-HP-AG300H」。USBハードディスク共有やPPTPサーバーなど多彩な機能を搭載した一台
正面 側面

 本コラムでも、これでまでに何度か取り上げているが、2.4GHz帯の無線LANは、アクセスポイントの増加によって、もはや快適な通信ができる状況にはない。特に都市部では、300Mbpsの通信に必要な40MHz幅のデュアルチャネルを干渉することなく確保することなど、到底不可能で、せっかくの最新の無線LAN機器もその実力を発揮できない状況にある。

 これに対して、11n/aが利用する5GHz帯は、言わば“スカスカ”な状況だ。実際に使ってみればわかるが、周囲に同じ5GHz帯を使うアクセスポイントが見つかることは極めて希なうえ、万が一、他のアクセスポイントが見つかったとしても、W52(36-48)、W53(52-64)、W56(100-140)の広大な帯域を選んで干渉しないチャネルを容易に選択することができる。

 現状、2.4GHzにしか対応しない端末がある以上、2.4GHzを使わないというわけにはいかないが、少なくともPCで2.4GHz帯を使うのはあまり効率的ではなく、むしろ5GHz帯を使わないのはもったいない印象だ。

 もちろん、5GHz対応のアクセスポイントを買うとなると、それなりの費用が必要になるが、今回バッファローから発売された「WZR-HP-AG300」の価格は標準価格で1万3600円。従来のWZR-HP-G301NHとの価格差は、標準価格ベースでわずか2000円ほどだ(WZR-HP-G301NH:1万1500円)。

 極端な話、たった2000円の追加コストで5GHz帯の快適な通信環境が手に入るわけだ。それも「全部入り」の多彩な機能と合わせて、というのだがら、これは見逃せない製品だろう。

あらためて実感する5GHz帯の快適さ

 では、実際にどれくらい5GHz帯が快適なのかを実際の例を見ながら検証していこう。

 まずは、以下のグラフを見て欲しい。これは、木造3階建ての筆者宅の1階にアクセスポイントを設置し、各フロアでバッファロー製のユーティリティソフト(クライアントマネージャーV)を利用して、周辺のアクセスポイントの状況を調べたものだ。

筆者宅周辺のチャネルの使用状況。左から1階、2階、3階での結果

 まずは1階の状況だが、この結果は良好だ。日時にもよるが周囲にあるアクセスポイントは1個だけで、干渉はほとんどない。

 しかし、2階に上がるとこの状況が変化する。周辺にアクセスポイントが増え、完全に同じチャネルを使うアクセスポイントも見られるようになる。

 3階に至っては、もはや冗談としか思えない状況で、一体、この近辺に、いくつアクセアスポイントがあるのだと目を疑うほどだ。

 一方、5GHz帯は?というと、見ての通り、我が家に設置したWZR-HP-AG300Hが使っているW52の40chひとつが見えるのみで、他のチャネルはまったく使っている気配すらない。

 もちろん、この差は実効速度にも表れる。以下の結果は同じ環境でPCからインターネット上の速度測定サイト(http://netspeed.studio-radish.com/)を利用して速度を計測した値だ。なお、回線には上下1Gbpsのauひかりを利用し、PCにはThinkPad X200(Core2Duo P8600/RAM4GB/OCZ Vertex 120GB/Intel WiFi Link 5300 AGN)を利用している。

インターネット接続の速度:フロア別に計測した5GHz帯と2.4GHz帯の通信速度比較

 5GHz帯の11n/aでは1階で100Mbpsを超える実測を記録できているうえ、3階でも実効速度で40Mbps前後という高い速度で通信できている。一方、2.4GHz帯の11n/gでは、1階では100Mbps近い速度を実現できているものの、やはり干渉の多い2階、3階へと移動するに従って、速度の落ち込み方が激しくなっている。

 今回のテストでは3階でも10Mbpsの実効速度が確保できているが、周辺で実際に無線LANをした通信が頻繁に行われるような曜日や時間帯では、数百kbps前後の通信しかできないこともある。5GHz帯の安定感と比べると、まさに雲泥の違いだ。

 ここまでの違いがあれば、2.4GHz帯に加えて、5GHz帯が利用できるWZR-HP-AG300Hを選ぶメリットも見えてくるだろう。

 なお、今回のテストでWZR-HP-AG300Hはおおむね安定して動作したが、まれに5GHz帯のSSIDが見えなくなることがあった。

 5GHz帯のクライアントが接続し続けている場合は問題ないのだが、何も接続していない状態が続くと、2.4GHz帯のSSIDしか見えなくなってしまう。見えなくなっても本体のAOSSボタンを押すと再び5GHz帯のSSIDが復活するので、まるで5GHz側のみ省電力モードに移行しているような動きだ。

 個体差なのか、不具合なのかは判断できなかったが、せっかくの5GHz帯なので、もし個体差でなくほかにも例が見られるようであれば、安定性の向上を期待したいところだ。

NAS機能はほぼ同じ

 このように無線LANのアクセスポイントとしての機能がかなり強化されたWZR-HP-AG300Hだが、今回の新製品で、個人的にはもう一つ、NAS機能の強化も期待していた。しかし、この点については、残念ながら従来製品とほぼ同じだった。

USBポートにハードディスクなどを接続することでNASとして利用できる

 もちろん、従来と同じと言っても、他社製品に比べれば完成度は高い。ドライブ単位で共有されるなど、機能的にNASと同等とは言えない部分もあるが、Webアクセス機能やメディアサーバー機能、BitTorrentなどを備えており、単純なファイル共有だけでなく、DLNA対応機器からのメディア再生ができたり、外出先から自宅のファイルにもアクセスできるようになっている。

 パフォーマンスも十分だ。500GBの3.5インチハードディスク(SAMSUNG製)を装着し、XFSでフォーマット後、ThinkPad X200からCrystalDiskMark 3.0dでテストした結果は以下の通りとなった。

 最近のNASは高速化が進んでいるので、できればもう少しスピードが欲しいところではあるが、低価格のNASとほぼ同等といったところで、実用性としては悪くない。家庭で写真や音楽、文書を共有するといった使い方なら、これで十分だろう。

有線LAN接続時のCrystarlDiskMark3.0d(100MB)の結果 有線LAN接続時のCrystarlDiskMark3.0d(1000MB)の結果 無線LAN接続時のCrystarlDiskMark3.0d(100MB)の結果。1000MBはタイムアウトで計測不能

 このようにあまり大きな改善は見られなかったが、唯一、Webアクセスについては、今年の6月にユーザーインターフェイスが改善されたようで、若干、見やすくなった。NAS機能で、Webアクセスを有効にすると、同社が運営する「buffalonas.com」経由で外出先からNASにアクセスできるようになるのだが、このユーザーインターフェイスが新しくiPhoneやiPod Touch、iPad、iモードなどに最適化されている。

 試しに、iPhoneから3G回線を使ってアクセスしてみたが、フォルダの移動なども手軽にできるうえ、ファイルを開いて表示することなども問題なくできた。PDFやエクセルのシートなどを手元のiPhoneから手軽に参照できるのは便利だ。

 PCのデータについては、クラウドに保存するサービスも普及しつつあるが、ローカルでの利便性を考慮すると、こういったNASやルーターをベースにした方法を選ぶのも1つの方法だろう。

buffalonas.com経由でiPhoneからアクセス。ファイルのプレビューなどもできる

ルーター配下でPPTPを利用する

 続いて、本製品の特長の1つでもあるPPTPサーバーについて見ていこう。

 WHR-HP-AG300HのPPTPサーバー機能を利用することで、外出先から自宅や会社へのVPNリモートアクセス環境を手軽に構築することができる。暗号化通信が利用可能になることで、公衆無線LANのFREE SPOTを利用する際なども通信パケットを傍受される盗聴のおそれが軽減できるというメリットがある。

 使い方は非常に簡単で、ルーターの設定画面でPPTPサーバー機能を有効にし、接続に利用するユーザーを登録するだけで良いのだが、この機能を利用するには1つ条件がある。WZR-HP-AG300Hをルーターモードで動作させなければならない点だ。

 しかし、現状、光ファイバーなどのサービスはレンタルで提供されるルーターがすでに存在するケースが多いため、単純に設置するだけでは利用できないのが悩みどころだ。

 このあたりについては、以前に本コラムでWZR-HP-G300NHを取り上げた際にも紹介していたのだが、実際の設定方法がわからないという声も少なからずあったので、簡単に設定について紹介しておこう。

 設定方法はいくつか存在するが、おそらくもっとも簡単なのは回線に接続されているルーターのDMZ機能を利用する方法だろう。

 WZR-HP-AG300Hを本体スイッチでルーターモードに切り替え、WAN側の設定で固定IPを選び、回線に接続されているルーターのLAN側で利用されているIPアドレスの範囲からIPを設定しておく。

 たとえば、回線に接続されているルーターのLAN側が192.168.0.xのサブネットであれば、192.168.0.100などをWZR-HP-AG300HのWAN側に設定しておく(DNSは直接プロバイダーなどで提供される値を設定した方がレスポンスが良い)。

WZR-HP-AG300Hのスイッチをルーターモードに変更する WZR-HP-AG300HのWAN側を固定IPで設定(ルーター側のLANと同じネットワークを指定)

 その後、回線に接続されているルーターの静的NATやポートフォワードの設定で、DMZ機能を有効にし、その宛先に192.168.0.100とWZR-HP-AG300HのWAN側のIPを設定する。これで、インターネットからの通信がすべてWZR-HP-AG300Hへと転送され、PPTPサーバー機能を利用することが可能となる。

ルーターのDMZ機能を利用し、外部からのパケットをすべてWZR-HP-AG300Hに転送(WAN側に設定したIPを指定する)

 実際に試してみたところ、外出先からPCでQZR-HP-AG300Hへと接続できたうえ、iPhone4のVPN設定を利用して自宅にアクセスすることもできた。

同じくiPhoneからPPTPを利用して接続することも可能

 もちろん、NASとして利用した場合のウェブアクセス機能も同様に利用できる。また、LAN内にWindows Home Serverを設置し、UPnPを利用してリモートアクセスの設定をしたところ、こちらも問題なくセットアップでき、実際のアクセスもできたので、他のアプリケーションや機器などの利用も問題ないだろう。

 ただし、この方法の場合、唯一問題になるのがDynamic DNSの設定だ。WZR-HP-AG300HにはDynamic DNSの情報を自動的に更新する機能が搭載されているのだが、WAN側のIPがローカルアドレスとなるため、更新に失敗してしまう。

これを避けるには、DMZではなく、PPPoEブリッジを利用するなど、別の方法での接続を検討するか、ルーターではなく、PCから情報を更新するなど、別の方法を利用するしかないだろう。

DMZを利用する方式の場合、WAN側IPがローカルと判断されてしまうためWZR-HP-AG300HのDDNS機能が使えないのが課題

ユーザーの割り切りも大切

 以上、バッファローのWZR-HP-AG300Hを実際に利用してみたが、本製品に関しては2.4GHz、5GHzの同時通信ができるだけでも、かなりお買い得な製品としておすすめできる印象だ。そのうえ、NASやリモートアクセス環境の構築にも使えるのだから、製品としては文句の付けようがないところだ。

 ただ、ここまで多機能になると、さらに欲が出てくるのも確かだ。

 NAS機能について言えば、もっとパフォーマンスが欲しい。また、フォルダー単位での共有やアクセス制限にも対応してほしい。さらには、RAIDは無理にしても、データのバックアップ機能などにも対応して欲しい……、と際限なく機能を期待したくなる。PPTPサーバー機能によるリモートアクセスについても、よりセキュアで高度な方式のサポートを望む声もあるだろう。

 よって、付加的な機能については、ユーザー側の割り切りも必要だ。NAS機能は簡易的にデータを共有するため、PPTPは自宅や個人事務所などのプライベート用として使うなど、現状の機能の制限を理解し、その範囲内で使う必要がある。

 とは言え、繰り返しになるが、本製品は2.4GHz/5GHz同時通信無線LANルーターとしてだけみて十分に価値のある製品だ。いろいろな付加機能はあるものの、これらを使わなかったとしても、十分にお買い得な製品と言えるだろう。


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2010/8/3 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ