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第423回:iPhoneへの地デジ配信をVPNやWHSでテスト
アイ・オー・データ機器「テレキング GV-MVP/FZ」


 アイ・オー・データ機器から、地上デジタル放送をiPhone/iPadにストリーム配信可能なUSB地デジチューナー「テレキング(GV-MVP/FZ)」が発売された。製品を入手したので、VPN環境で使えるのか、Windows Home Server上で動作するのかを確認してみた。

地デジのネットワーク配信が可能に

 今週末、バッファロー、およびアイ・オー・データ機器から、地上デジタル放送をiPhone/iPadに配信可能な地デジ/ワンセグチューナーが発売された。

 バッファロー製の「DT-F200/U2W」はダブルチューナー、アイ・オー・データ製の「テレキング」はMPEG4-AVC/H.264ハードウェアトランスコーダ搭載と、それぞれ製品的な違いはあるが、いずれも受信/録画した地デジの映像をネットワーク経由でiPhone/iPadに配信できるという特長を備えている。

アイ・オー・データ機器のテレキング(GV-MVP/FZ)。iPhone/iPadへのストリーミング機能を備えたUSB地デジチューナー

 地デジのネットワーク配信ということでは、先日、「Slingbox PRO-HD」が2月上旬にイーフロンティアから発売されることが発表されており、こちらの期待も高まっているが、今回の両製品は、同じようなことを比較的低価格なPC用USB地デジチューナーで実現できるのが特長だ。

 また、これまでも、DTCP-IP対応のDLNA機器を利用すれば、地デジのネットワーク配信が可能だったが、これは録画した番組の配信に限られていた。これに対して、今回の製品では、録画した番組に加えて、現在放送中の番組もストリーミングで配信することが可能となっている。まさに、ホームネットワーク環境が待ち望んでいたソリューションと言えるだろう。

 今回は、これらの製品のうち、アイ・オー・データ機器の「テレキング」を購入することができたので、実際の動作を検証してみた。特に、購入を検討しているユーザーの中には、VPN環境環境でインターネットから利用できるか、Windows Home ServerなどのサーバーOSで動作させることができるのかが気になっている人も多いだろう。今回は、この点を中心に検証してみた。

TVPlayer/TVStreamを利用

 ネットワークでの地デジ配信と言っても、こんなにカンタンなのか。アイ・オー・データ機器のテレキングを利用すると、その「あっけなさ」に少々驚く。

 もちろん、地デジなので、HDMIなどでディスプレイを接続するなど、利用するPCの環境はある程度整える必要があるが、セットアップ自体は、付属のCDからユーティリティとアプリケーションをインストールし、スティックタイプのチューナー本体をUSBポートに接続。その後、初期設定でチャンネルスキャンを実行するだけとカンタンだ。

必要な設定は初期設定のチャンネルスキャン程度 標準でiPhone/iPadへのストリーム配信が有効になっている

 iPhone/iPadへの配信は、タスクトレイに常駐する「mAgicマネージャ Digital」によって行われるのだが、この機能は標準で有効になっているため、ユーザーはネットワーク配信に関する設定を一切行う必要がないのだ。

 再生側の設定もカンタンだ。iPhoneやiPadからAppStoreにアクセスし、MAKI Enterprise製の再生ソフトである「TVPlayer(iPhone用)」や「TVStream(iPad用)」をインストール。アプリを起動後、サーバーの追加画面を表示すると、チューナーを接続したPCが表示されるので、接続後、チャンネルを選べば、iPhone/iPadに映像が表示される。

 アプリケーションのインストール作業があるので、一瞬というわけにはいかないが、おそらくパッケージを開けてから、30分もかからずにiPhoneでテレビが見られるようになる。

iPhone/iPad側に無料のアプリをインストールして利用する。iPhoneの場合はTVPlayerを利用 iPhoneでの再生の様子。映像は非常にスムーズ 録画した番組の再生も可能

 ネットワークでの配信ということで、サーバー機能を有効にして、ファイアウォールの設定を変更などの手間を想定していたが、こういった手間は一切不要だ。これなら、誰でもカンタンにiPhone/iPadでの地デジ再生環境を整えることができるだろう。

 ちなみに、iPhone/iPadとの通信にはBonjorを利用しており、テレビチューナー用のアプリケーションと一緒にインストールされるようになっている。これにより、iPhone/iPad側からネットワーク上のPCを自動的に検出することが可能になっているわけだ。

VPN環境での利用は可能か?

 このように、手軽にiPhone/iPadでの地デジ環境を実現できるテレキングだが、やはり気になるのはインターネット経由での利用が可能かという点だろう。

 結論から言えば、残念ながらインターネット経由での利用はできない。技術的というよりも、製品の仕様としてできないように制限されているようだ。

 試しに、PPTPサーバー機能を搭載したバッファローの無線LANルーターWZR-HP-AG300Hを利用し、インターネット経由でiPhoneからLANにVPNで接続し、TVStreamが利用できるかどうかを試してみた。

 この場合、VPNでの接続は問題なく完了するものの、iPhoneでTVPlayerを起動すると「Wi-Fi接続が必要です」というメッセージが表示されてしまう。このメッセージは、3Gをオフにし、無線LANのみで接続している場合にも表示されるため、おそらくiPhone側でVPNが有効になっていることを検知して表示していると考えられる。

 アイ・オー・データ機器の製品情報ページを参照すると、「iPhone/iPadはDHCPクライアントとして、パソコンと同じ無線LANにつなぐ必要があります」と記載されているため、一見、VPNで実現できそうに見えるが、実際には利用できないので注意が必要だ。

 インターネット経由でという話であれば、別のソリューションを検討した方が良さそうだ。

バッファローのWZR-HP-AG300HのPPTPサーバー機能を利用してテストしてみたが、うまく接続できなかった クライアント側でネットワーク環境を判断している模様。無線LAN経由でもVPNが有効になっていると接続できない

サーバーOSで利用できるか?

 続いて、サーバーOSで利用できるかどうかを試してみた。

 本製品が正式にサポートしているOSは、Windows XP/Vista/7(32bit/64bit)となっているが、サーバーOSで起動させることができれば、ファイルサーバーやバックアップサーバーとして稼働させているPCをテレビサーバーとして活用することが可能になる。

 実際にテストしてみたのは、Windows Server 2003ベースのWindows Home Server、およびWindows Server 2008R2ベースのVailこと次期Windows Home Server Premiumのプレビュー版だ。

 まず、Windows Home Serverだが、結論から言えば、うまく動作しない。インストーラーのOSチェックは、ドライバーやアプリケーションなどの各フォルダから個別にインストールすることで回避できるうえ、チューナー自体も問題なく認識されるのだが、どうしても初期のチャンネルスキャンで失敗してしまう。

Windows Home Serverでは初期設定がうまくできない

 そもそも、Windows Home Serverの場合、HPやAcer、ASUSなどの製品のように、ディスプレイが接続できなかったり、オーディオが搭載されていないケースが多く(チャンネルスキャン時にオーディオ機能が必須。USBオーディオやHDMIオーディオでもOK)、これらの製品で利用するのは難しい。

 もちろん、今回のテストでは、HDMI接続、オーディオ搭載の通常のPCに、WHSをクリーンインストールしてテストしたが、それでもチャンネルスキャンに失敗したので、今後、継続して原因を調査していきたいところだ。

 一方、後者のVailだが、こちらは問題なく利用できた。プレビュー版のVailの場合、インストーラーのOSチェックにも引っかからないようで、Windows 7同様に何の支障もなくインストールすることができ、テレビの視聴や録画、iPhoneへのストリーミング配信もできることが確認できた。

Vailのプレビュー版でテスト。64bitドライバも提供されるため、こちらでは問題なく利用することができた

 実際に試してはいないが、おそらくWindows Server 2008R2でも問題なく利用できるのではないかと考えられる。

 ただし、1つ問題がある。前述したように、iPhone/iPadへのストリーミング配信は、タスクトレイに常駐している「mAgicマネージャ Digital」によって実現されている。このプログラム(本体は「c:\Program Files(x86)\I-O DATA\mAgicTVD\mtvManager.exe」)が起動していないと配信できない。つまり、常にログオンした状態が必要になるわけだ。

 試しにサービスとして起動できないかと、scコマンドを利用してサービスに登録してみたが、残念ながらうまく起動させることができなかった。現状は、自動ログオン+画面のロックで運用するしかないだろう。

操作ラグに慣れが必要

 実際に利用してみた印象としては、思いのほかスムーズで、iPhoneでも普通にテレビが見られる印象だ。もちろん、無線LAN経由なので、電波状況などにも左右されるが、筆者宅の場合は、ほとんど映像が途切れることなく視聴することができた。

 さすがにiPhoneの画面ではサイズが小さいため、細かな部分が見にくく、目も疲れる印象なので、できればiPadで見ることをおすすめしたいが、筆者宅の環境ではiPad版のTVStreamの動作が不安定で、ネットワーク上のPCを検出後、「検査中」と表示されたまま動作が停止してまったため、うまく動作させることができなかった。

 気になる点があるとすれば、タイムラグがあることくらいだろうか。本製品の仕組みとして、PCで受信した映像をiPhone/iPadにストリーム配信するため、映像はリアルタイムではなく30秒前後遅れて再生されるようになっている。

 これ自体は、あまり意識する必要はないのだが、この30秒前後の遅れは、iPhoneからのすべての操作に影響する。最初に映像を再生する場合は問題ないのだが、再生後、チャンネルを変更しようとして、すぐに別のチャンネルを選ぶと「この番組は再生できません」とエラーが表示されてしまう(このメッセージは変更した方が良いと思われる)。

チャンネルの選択画面。視聴終了後も30秒程度チューナーが占有されるためしばらく経ってからでないとチャンネルを変更できない チャンネル占有中は「この番組は再生できません」と表示される

 本製品は、シングルチューナーのため、チューナーが別のプロセスに占有されていると、他の操作ができないのだが、ストリームの場合、iPhoneからの操作終了後も30秒前後、そのままチューナーが占有され続けるため、30〜40秒前後待ってからでないと、チャンネルを変更したり、録画した番組を再生したりと、別の操作をすることができないのだ。

 このため、ローカルのチューナーのように、チャンネルを切り替えてザッピングしながらテレビを楽しむなどという使い方には向いていない。見たい番組をあらかじめ決めておいて、そのまま再生したり、録画しておいた番組を見るというのが主な使い方になるだろう。

 とは言え、放送中の地デジをiPhone/iPadで楽しめるというのは、なかなか画期的な製品と言える。本製品の場合、ハードウェアトランスコーダーを搭載しているため、ストリーミング中のCPU付加も3%前後しかかからなかった(Core i7 860使用)。1万円以下という価格を考えても、普通に地デジチューナーとしても安い価格と言える。1台持っておいて損はない製品と言えそうだ。


関連情報

2011/1/5 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ