記事検索
バックナンバー

第436回:ついにRTMとなった「Windows Home Server 2011」〜2TB越えのRAID環境での動作を検証する


 マイクロソフトからWindows Home Server 2011がついに登場した。従来のバージョンからどのような点が進化したのか、実際に利用する際にどのような点に注意すれば良いのか、その動作を検証してみた。

古くさいサーバーの概念を打ち破ることを期待

 Windows Home Serverの最新版となるWindows Home Server 2011がついにRTMとなった。DSP版としての店頭での販売やハードウェアに組み込んだ形での提供はもう少し先になると予想されるが、4月5日から、TechnetおよびMSDNでの日本語版の提供が開始されており、すでにダウンロードして利用することが可能となっている。

Windows Home Server 2011。4月5日から、日本語版がTechnetとMSDNからダウンロード可能となった

 今回のWindows Home Server 2011に限らず、NASなどにも言えることだが、家庭や個人の情報ツールが、PCだけでなく、スマートフォンやタブレットなどと多様化しつつある現状を考えると、これまで単純なデータの保存先だったサーバーやNASの位置づけというのは、今後、変わってくる可能性が高い。

 もちろん、クラウド上のサービスがスマートフォンやタブレットの基盤であることは間違いないが、これらと同様の、もしくはそれ以上のサービスを提供したり、クラウドとクライアントを結びつけるローカルのハブ的な存在として考えると、ホームサーバーやNASは面白い存在になってくるはずだ。

 そういった意味では、今回、そのプラットフォームから思想まで、完全にリニューアルされたWindows Home Server 2011は、そのリッチな機能と柔軟性の高さから、多様化する家庭のIT環境に一石を投じる存在となりうる可能性を秘めている。

 もちろん、実際にそうなるかどうかは、家庭への普及状況やAdd-inの増加による機能拡張の状況次第と言えるが、Windows Home Server 2011のような存在の製品の登場によって、PC、スマートフォン、クラウド、そしてローカルサーバーが密接に連携し合う新しい世界が訪れることは十分に期待できる。

 個人的には、新しいWindows Home Server 2011によって、クライアントサーバーモデルを連想させる、古くさく、単純な「サーバー」という概念が打ち破られることを期待したいところだ。

 

何が変わったのか?

 では、実際の製品について見ていこう。Windows Home Server 2011(以下WHS2011)は、従来のWindows Home Server(以下WHSv1)の後継となる最新の製品だ。

 ベースとなるOSが、従来のWindows Server 2003からWindows Server 2008 R2(64bit版、SP1適用済み)となり、パフォーマンスや信頼性、セキュリティの面で、大幅に基本機能が向上している。

ベースとなるOSはWindows Server 2008 R2となった

 正直なところ、従来のWHSv1は、古いOSに機能を追加することでリーズナブルな価格を実現した製品というイメージがあったが、これによって名実ともに最新のOSのファミリの一員となったことになる。

 おかげで、インストール要件は多少上がってしまったが、現状のCPUのラインナップやメモリの価格を考えると、決して敷居が高い要件ではない。インストール要件は1.4GHz以上のCPUとなっているものの、筆者が試したところ、Athlon II NEO N36L 1.3GHz(デュアルコア)を搭載したHPのMicroServerにもインストールできたため、手軽に利用できるだろう。

 なお、地味だが、Windows Server 2008 R2になったおがけで、ファイル共有のパフォーマンスも高くなった。もちろん、PCの性能によっても異なるが、SMB2.1同士の組み合わせとなるWindows 7などから利用すると、ファイルの読み書きが非常に快適だ。前述したように、WHS2011には単純なファイルサーバーから脱却して欲しいという思いもあるが、こういった底力もしっかりと備えているあたりはさすがと言えそう。

 続いて、機能面だが、WHS2011の柱となる機能はと、従来のWHSv1さほど大きな違いはない。つまり、ファイル共有、メディア共有、バックアップ、リモートアクセスの4つが基本的な機能となる。

 UIからして、大幅な変更となっているため、すべての機能の紹介を追うことはできないのだが、主な違いをまとめると以下のようになる。

【WHS2011と従来のWHSv1の違い】

API 説明
ベースOS Windows Server 2008R2 SP1(64bit) Windows Server 2003(32bit)
ファイル共有 ワークグループ+ホームグループ
DE廃止(NTFS、フォルダ移動サポート)
シャドウコピーの有効化
ワークグループ
Drive Extender
シャドウコピー無効
メディア共有 DLNA1.5/2.0互換 Windows Media Connect 非対応フォーマット拡充とトランスコード配信
バックアップ&リストア OSを含めたフルバックアップ(スケジュール設定可)
32bit/64bit両対応リカバリディスク
ファイルとフォルダのバックアップ
32bit用リカバリディスク
リモートアクセス カスタマイズ可能なリッチなUI
Silverlightによるストリーム配信
スマートフォン用UI
ベーシックなUI
クライアントアプリ カスタマイズ可能なスタートパッド コネクタソフトウェア
アドイン 開発が容易に(SDKも公開) 開発難易度高
インストール要件 1.4GHz 64bit Processor
2GB RAM
160GB HDD
1GHz PentiumIII以上
512MB RAM
80GB HDD

 実用性という点では、メディア共有の互換性が高くなっているのが大きなメリットで、従来のWHSv1は、DLNA対応テレビやPS3などで動画などを再生するために、別途、DLNAサーバーソフトをインストールしたりと、一工夫必要だったが、WHS2011では、標準の機能でほとんどのクライアントに対してメディアを配信可能となっている。

 しかも、クライアント側が未対応のフォーマットについてはリアルタイムにトランスコードして配信することも可能となっており、画質が若干低下してしまうケースがあるものの(調整も可能)、互換性などをさほど意識せずに利用できる。

 メディアの配信については、リモートアクセス時にも利用可能となっており、Silverlightを利用することで外出先から自宅の動画や音楽などを再生できるようになっている。もちろん回線速度にも異存するが、このスムーズさと、どのようなフォーマットのファイルでも意識せずに配信できる手軽さは、一度体験してみることをおすすめしたい機能だ。

 リモートアクセスに関しては、スマートフォン向けのUIも用意されており、やはり単純なファイルサーバーから一歩脱却したという印象だ。

メディアサーバ機能は互換性が向上し、より使いやすくなった
動画や音楽などを外出先から再生することも可能
スマートフォン用のUIも利用可能

 

DEがなくなったが……

 変更点として、1つ避けられないトピックとしては、DE(Drive Extender)がなくなったことも上げられるだろう。

 もちろん、これはWHSv1に対するビハインドとなるわけだが、個人的には、DEがなくなったことは、あまり気にならない。

 ディスクの増設が簡単なこと、選択したフォルダのみの複製によってRAIDのようなロスのない冗長性を確保できることは確かにDEの魅力であるが、その一方でDEならではのパフォーマンスの低下などの問題もなくなったことになる。

WHS2011の管理をするためのダッシュボード。HDDの管理ではDEがなくなり通常のNTFSによるディスク管理となった

 大切なデータを保管する場所である以上、冗長性を確保するための工夫は必要だが、最低限のデータの保護は、サーバーのバックアップとシャドウコピーによって確保することができる。それ以上の冗長性が必要なら、OSやチップセットのRAID機能を利用するという手もある。

 むしろ、DEという決め打ちの冗長性だけでなく、その制約から解放され、ユーザーやメーカーがある程度自由に方式を選べるようになったことのメリットの方が大きいだろう。

 ちなみ、RAIDについては、OSの機能を利用するのがコストパフォーマンスの点で優れていると言えそうだ。以下は、HP MicroServerを利用し、OSのRAID5(パリティ付きストライプセット)とLSI Logic MegaRAID SAS 9240-4iを利用したRAID5のパフォーマンスとCPU負荷の違いだ(HDD Samsung 2TB×4で構成。OSは別ドライブから起動)。

HP MicroServerを利用し、OSのRAID5(パリティ付きストライプセット)を利用したRAID5のパフォーマンスとCPU負荷

 

LSI Logic MegaRAID SAS 9240-4iを利用したRAID5のパフォーマンスとCPU負荷

 MegaRAID SAS 9240-4iはキャッシュメモリが未搭載で、RAID5のパフォーマンスもあまり高い製品ではないこともあり(RAID0やRAID1などは高速)、パフォーマンスに大きな違いはない。

 CPU負荷に関しては、やはりOSのRAIDは高くなる傾向があり、特にグラフの後半が跳ね上がって40%近くにまで達していることからもわかる通り、書き込み時に大きな負荷がかかる。

 よって、当然、外付けのRAIDカードなどを利用するメリットはあるのだが、その価格(2万円台後半)を考えると、OSのRAIDでも良いのではないかという結論になりそうだ。SandyBridgeなど、より高性能なCPUを搭載したPCで構成すれば、この負荷もあまり気にならないので、コストパフォーマンスとしてはこちらが上だろう。

 

2TB越えにはEFIマザーが必須

 このように、今回のWHS2011では、RAIDを利用するケースも増えると思われるが、ブート領域として利用する場合は、2TB越えの対策が必要になるので注意した方がいいだろう。

 RAID構成で2TBを越える場合はもちろんのこと、3TB以上のHDDを利用する場合も同様だが、OSの起動領域として利用する領域が2TB以上の場合、GPTでHDDを初期化する必要があるうえ、GPT領域からOSをブートするにはUEFI起動をサポートしているマザーボードが必須となる。

 UEFI起動については、SandyBridge対応のマザーボードなどでは一般的に採用されるようになってきたが、まだまだ未対応の製品も多い。未対応の場合は、別途ブート用のHDDを用意するか、RAIDのコンフィグレーションでブート用に2TB以下の領域を別途作成しておく必要があるので注意しよう。

 ちなみに、ASRock H67ITX/HT+Intel Core i5 2400sに、前述したLSI MegaRAID SAS 9240-4iで2TB×2のRAID0で構成した環境でテストしてみたところ、電源オン後のブートメニューで「UEFI:xxxx」という項目を選んで、DVDからブートすることで、WHS2011を2TB以上のブート領域にインストールすることができた。

UEFI起動でインストールすることで2TB以上のパーティションにインストール可能 RAIDカードにインストールする場合はインストール時にドライバが必要
4TBのHDDにインストールした状態。GPTで初期化され、100MB+60GB+2TB+残りで構成される

 WHS2011では、インストール時に自動的にパーティションを構成する設定となっているが、この際にUEFIで起動すると自動的にGPTで初期化される(通常のブートではMBRとなりブート不可)。

 ただし、確保される領域は若干特殊で、2TB×2=4TBの構成でインストールした場合、100MBのEFI領域に加えて、60GBがOS用にCドライブとして確保され、残りの領域のうち2TBがデータ用のDドライブとして、さらに残りの1.6TBがEドライブとして第2のデータ領域として確保された。

 つまり、UEFI起動であれば、OSとして2TB以上の領域からのブートも可能だが、領域は2TBごとに分割されてしまうわけだ。

 これは、WHS2011のバックアップ機能の制約によるものだ。WHS2011、というよりもWindows Server 2008 R2のバックアップ機能では2TB以上の領域のバックアップに対応していない。このため、自動的に2TBに分割されるというわけだ。

 もちろん、バックアップ機能を利用しない、もしくは別のバックアップソリューションを考えるというのであれば、WHS2011のインストール後、ダイナミックディスクに変換し、1.6TBのEドライブの領域を開放、Dドライブの領域を拡張することで、3TBを越える領域をワンドライブとして運用することも可能だ。

 数GB単位のデータを大量に保存したいなどといった場合は、リスクを覚悟でこの方法を試すことも可能だが、通常は素直に2TBごとのパーティションとして利用した方が良いだろう。

ダイナミックディスクにすることで2TB以上のデータ領域を構成することも可能 2TB以上の領域はバックアップできなくなるので要注意

 

ぜひWHS2011で「遊んで」みてほしい

 以上、若干、偏った話題ではあったが、Windows Home Server 2011の概要と実際に利用する際の注意点について紹介した。

 あらためていろいろ試してみると、実に「いじり」甲斐があるという印象だ。ライセンスによって利用できる機能などが制限されてはいるものの、実にさまざまなハードウェアやソフトウェア、OSとしての機能が試せるようになっており、今回紹介したRAIDやUEFIなど、いろいろな機能を組み合わせることも可能となっている。

 実は、今回、うまく動かせなかったので紹介できなかったのだが、PogoplugのWindows版ソフトウェアのベータテストなども実施されており、これを利用することで、WHS2011をPogo的に使うこともできそうだ。

 動作するチューナーやソフトウェアは限られているが、地デジチューナーやDTCP-IP対応サーバーソフトウェアを導入して録画&配信サーバーとして利用するのもいいだろう。

 スマートフォン向けのアドインなどを利用して、外出先からバリバリ使うといったことも夢ではない。

 最近、IT系の機器の話題はスマートフォンやタブレット、インターネット上のサービスに集中しがちだが、これらは「いじり」甲斐という点で物足りなく、飽きてしまうのも速い。そんな中、登場したWHS2011は非常に遊べるサーバーだ。

 スマートフォンや家電など、いろいろな機器との連携なども考えつつ、いろいろな用途を探ってみて欲しいところだ。 本稿の公開時点では、また未定だが、そのためのコミュニティなどの準備も進めている。久しぶりに、PCやサーバーをいじり倒すという楽しみを体験してみてはどうだろうか?

 


関連情報



2011/4/12 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ