清水理史の「イニシャルB」

タイマー設定で休止/起動を自動運用 世界最薄のWiMAXモバイルルーター「URoad-Aero」

 シンセイコーポレーションから発売された「URoad-Aero」は、2013年2月時点で世界最薄(8.4mm)となるコンパクトなWiMAXモバイルルーターだ。しかし、本製品の魅力は、そのサイズだけに留まらない。タイマーを利用した自動休止/復帰機能など注目の機能を試してみた。

AtermWM3800Rと悩む

 どちらも甲乙付けがたい。

 NECアクセステクニカの「AtermWM3800R」か? シンセイの「URoad-Aero」か?

 今、WiMAXモバイルルーターを買うとすれば、どちらかを選ぶことになると思われるが、この2製品はどちらも、それぞれ完成度が高く、優劣を決めにくい。

最新のWiMAXモバイルルーター2製品。どちらも特徴があり、甲乙付けがたい

 AtermWM3800Rは、全体的にコンパクトでありながら有機ELの液晶を備え、スマートフォンからリモートで休止/復帰の操作ができるのが非常に便利だ。

 一方、今回、新たに発売されたシンセイの「URoad-Aero」は、世界最薄を謳う8.4mmの薄さでありながら、最大12時間の連続通信時間を誇るうえ、スマートフォン用のアプリを利用してタイマーによる自動休止/復帰という新機能を搭載してきた。

 正直、どちらを選んでも損のない製品と言えるが、実際に使い比べてみると、毎日の利用時間がある程度決まっているならシンセイ「URoad-Aero」、不規則に接続と切断を繰り返す使い方をするならNECアクセステクニカの「AtermWM3800R」が便利な印象だ。

 個人的には両方のイイトコ取りをした製品が欲しいところだが、無い物ねだりをしても仕方がないので、現状は前述した利用スタイルの違いで製品を選ぶことをオススメしたいところだ。

クレードルまでスタイリッシュ

 それでは、製品を見ていこう。まずは外観だが、触ってみた第一印象としては、「薄い」これに尽きる。

 仕様上の薄さは8.4mmと、iPhone 5の7.6mmには及ばないのだが、全体的に丸みを帯びたフォルムで形成されていることから、端の部分の厚さは7mm弱ほどしかなく、テーブルの上にiPhone 5と並べて、横から眺めてみると、ほとんど同じ厚さに見える。

 最近のスマートフォンは大画面化やバッテリーの大容量化によって、必ずしもコンパクトとは言えなくなってきたことを考えると、ますます、このURoad-Areの薄さが際立つ印象だ。

正面
背面
側面
iPhone 5との比較
iPhone 5よりわずかに厚いだけのスリムボディ

 もちろん、薄くなった影響で、全体的なサイズは幅63.8×奥行き106×高さ8.4mmと、ライバルとなるAtermWM3800Rより、一回り以上大きいが、重さは74gとAtermWM3800Rの80gよりわずかに軽く、容量も若干小さくなっている。

 鞄などに入れて持ち運ぶのも楽だが、この薄さは、何よりスーツなどのポケットに入れて持ち歩くのに適している。

 しかも、本製品の背面カバーは取り外しが可能となっており、開けると取り外し可能な2090mAhのバッテリーも姿を現す。カバーを開けられるようにしなければ、もっと薄くできたんじゃないか? とも思えるが、バッテリーを交換可能にしたことで、長期間利用時のバッテリー性能の低下に対応することが可能になっているのは大きなメリットだ(交換用バッテリーは直販で3500円で購入可能)。

 デザイン的には、全体的に丸みを帯びたラウンドフォルムにソリッドなカラーをまとったシンプルな構成で、非常にスタイリッシュな印象だ。インターフェイス類も、前面にはバッテリー状態や接続状況を示すランプと「Sleep」ボタン、側面に電源ボタンとWPSボタン、microUSBポート、底面にクレードル接続用の端子と、非常にシンプルにまとめられている。

 動作状況がランプ表示のみとなるため、バッテリー残量や電波状態などがわかりにくいのが難点だが、後述するスマートフォン用のアプリ「URoad Magic」から情報を確認できるようになっているため、さほど欠点と感じることはないだろう。

 なお、本製品には別売りでクレードル「URoad-Aero Station(2980円)」も用意される。背面にmicroUSB端子と100BASE-TX対応のLANポートを備えており、URoad-Aeroを装着することで有線LANクライアントからWiMAXに接続する「ROUTERモード」や、光ファイバーなどの自宅の固定回線の無線LANアクセスポイントとして利用できる「APモード」で動作させることもできる。

 このクレードルは、上部が波打つようなデザインが施されたクリアな樹脂で構成されており、URoad-Aeroを差し込むと、まるで波がゆれる水の中に浮かんでいるかのように見える。こういった遊び心には感心させられるところだ。

背面カバーを開けるとバッテリーが姿を現す。別売りで交換可能
手のひらサイズでコンパクト
別売りのクレードルで有線LAN端末からの接続やアクセスポイントとしても利用可能

タイマーを利用して休止と復帰を自動制御

 機能的な最大の特徴となるのは、何と言ってもタイマー予約機能の「Aeroモード」だろう。

 Android/iOS向けに提供されるアプリ「URoad Magic」を利用することで(PCのブラウザから設定画面経由で設定することも可能)、休止(待機)モードに移行する時間と、休止から復帰させる時間を設定できるようになっており、朝の通勤通学時間に併せて休止から復帰させ、帰宅後に自動的に休止させるといった使い方ができるようになっている。

Android/iOS向けのアプリ「Uroad Magic」
ファームのアップデートなどの操作も可能
タイマーを利用して、自動的に休止/復帰をコントロールできる

 残念ながら1パターンしかタイマーを設定できないため、複雑な制御はできないが、繰り返し設定によって設定したタイマーを特定の曜日に有効/無効化することができるため、会社や学校など外出する時間がある程度決まっている場合は非常に便利だ。冒頭で、「毎日の利用時間がある程度決まっているならシンセイ『URoad-Aero』」と書いたが、その理由は、このタイマー予約機能があるからにほかならない。

 本製品は連続通信でも12時間以上の使用が可能となっており(詳しくは後述)、バッテリー残量をさほど気にせず利用することができるのだが、休止後の連続待機時間は約1000時間と非常に長いため、タイマーを使って使わない時間に確実に休止させれば、利便性はより向上するはずだ。

 個人的には、受電や電源オフを忘れたたときの対策として夜間に確実に休止させることができるのが非常にありがたい印象だ。

 なお、この「URoad Magic」アプリでは、WiMAXの電波状態、バッテリー残量の確認、ファームウェアの更新などの設定に加え、ボタン操作によって本体を休止状態にすることも可能となっているが、手動での休止後、本体を復帰させるには本体前面の「Sleep」ボタンを押す必要がある。

 休止への移行は10秒前後、休止からの復帰は、ボタンを押してから各種通信が復帰するまで15秒前後となるため、まったくストレスを感じることはないが、やはり起動するために本体を手に取る操作が若干面倒だ。

 基本的に、タイマー予約でうまく運用しながら、確実に使わない時間が数時間続く場合のみ手動で休止させるという使い方をするといいだろう。

アプリからリモートで休止状態にすることも可能
リモートからの復帰は不可能。休止からの復帰は本体のSleepボタンを押す必要がある

実測でも12時間以上の連続稼働を確認

 気になる連続通信時間だが、いつものように一定間隔おきにPingとHTTP GETを繰り返すバッチファイルを利用して調査してみたところ、10時08分42秒から22時51分39秒まで、合計12時間42分動作することが確認できた。

 本製品は、薄型化を実現するために、従来モデルとなるURoad-SS10の2260mAhから、バッテリー容量が2090mAhに減っているのだが、従来モデル以上の連続稼働時間をしっかりと実現しているうえ、ライバルとなるAtermWM3800Rの連続10時間も凌ぐ結果を実現している。

 出張などで充電する機会がない状況で長時間使う可能性がある場合は、このスタミナが強い味方になることだろう。

 このほか、機能的にも、ライバル製品との差を埋めてきており、WAN側の通信に公衆無線LANを利用できるモードや、USB接続で充電しながらPCからWiMAX通信できるUSBモードを搭載。いずれも標準ではオフになっているが、URoad Magicから機能を有効にしたり、設定画面から利用する公衆無線LANを登録することなどで利用可能になっている。機能的にはかなり充実した印象だ。

 以上、シンセイのWiMAXモバイルルーター「URoad-Aero」を実際に試してみたが、単に「薄い」だけでなく、よく作り込まれたモバイルルーターと言える。

 個人的には、タイマーの設定が1パターンだけなのが残念だが、日々の生活パターンに合わせて使えるううえ、いざという時でも安心の12時間駆動のスタミナは大きな魅力と言える。

 これからWiMAXモバイルルーターを購入しようと考えている人にとっては、かなり有力な選択肢の1つとなりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。