清水理史の「イニシャルB」

スマホからリモートで休止状態をオン/オフ可能
NECアクセステクニカのWiMAXモバイルルーター「Aterm WM3800R」

 外出前に鞄に入れたら、その後は、帰宅するまで鞄から出さなくてもOK。NECアクセステクニカのWiMAXモバイルルーター「Aterm WM3800R」は、従来モデルから小型軽量化を図るだけでなく、手元のスマートフォンからの操作で休止と起動を制御できるなど、使い勝手を大幅に向上させた製品だ。その実力を検証してみた。

小さく、軽く、そして何より使いやすく

 毎日、持ち歩いて、使うことがまったく苦にならない。

 NECアクセステクニカから登場した新型のWiMAXモバイルルーター「Aterm WM3800R」は、使い込むほどにそんな印象が強くなる日常の使いやすさを徹底的に追求した製品だ。

 パッと見て、すぐにわかるように、大幅にコンパクトになった筐体は、従来モデルとなるAterm WM3600R比で約70%ほどになっており、重量もわずか80gと非常に軽い。

 一般的な名刺に重ねて置いてみると、下に敷いた名刺がわずかに余るほどの小ささで、カードサイズよりももう一回り小さく仕上がっている。手に持った印象も、手のひらにのるというよりは、手の内にスッポリと収まってしまう印象だ。

名刺より一回り小さいコンパクトサイズ
正面
側面
背面

 詳しくは後述するが、本製品は、リモートから電源(休止状態)を制御できることから、鞄に入れっぱなしで利用することができる。このため、実際に使う側からすると、実は、そんなにサイズにこだわる必要はないのだが、それでも、ここまでの小型化を実現したことは大きく評価したいところだ。

 しかも、単に小型化しただけでなく、新たに有機ELディスプレイまで搭載しているのだから、開発陣の努力には頭が下がる。

 これまでのAterm WMシリーズは、本体に搭載されたLEDランプを利用して電源や電波状態などを表していたため、慣れていないと情報を把握しにくくかったのだが、今回のAterm WM3800Rでは、これらがわかりやすいアイコンや数値として有機ELディスプレイに表示されるようになった。

 これにより、電池残量を「%」で確認したり、らくらく無線スタートやWPSの無線LAN設定の状況がわかりやすく表示されるようになった。ディスプレイ表示は、他社製のモバイルルーターと比較した際の欠点として指摘されることが多かった機能となるので、この部分が強化されたことで、使いやすくさが大幅に向上した印象だ。

有機ELディスプレイを搭載し、状態を確認しやすくなった

スマートフォンからリモートで休止状態を制御

 使いやすさの向上という点では、新たにスマートフォンからの「リモート起動」に対応したのも見逃せないポイントだ。

 Android向けのアプリである「Aterm WiMAX Tool」に新たに電源制御機能が追加され、アプリからの操作によって、起動中のAterm WM3800Rを休止状態に移行したり、休止状態になっているAterm WM3800Rをアプリからの操作で起動することができるようになった

 Aterm WM3800Rには、電源オン、ウェイティング、休止状態、電源オフという4つの電源状態が存在する。ウェイティングは無線LAN接続が一定時間(10分)ない場合に移行する省電力モードで、WiMAX通信が切断される(無線LAN接続は待機)。一方、休止状態は、WiMAXだけでなく、無線LAN接続なども停止し、最低限の電力のみで動作するモードとなる。

 従来モデルのAterm WM3600Rでも、ウェイティングの状態から無線LANで接続すれば自動的に通常の電源オン状態に復帰するようになっていたが、今回のAterm WM3800Rでは、端末側からの操作で、休止状態から復帰させることができるというわけだ。

 無線LANが停止しているのにどうやってリモートで起動しているのかというと、Bluetoothを利用している。「Aterm WiMAX Tool」を起動すると、自動的にスマートフォンのステータスバーにBluetoothのアイコンが表示されるので、するどい人はすぐにピンと来るかもしれないが、このアプリからBluetooth経由でAterm WM3800Rに働きかけ、休止状態から復帰させているわけだ。

Android向けのAterm WiMAX Toolを利用することで、休止状態への移行と復帰をリモートから制御できる

 残念ながら、現状、Bluetooth経由で休止状態から復帰できるのは、Android向けのAterm WiMAX Toolのみだが、取扱説明書の6-6にも記載がある通り、「リモート起動はスマートフォンのBluetooth機能を用いて手動でも行なうことができます」となっている。

 実際に試してみたところ、iPhone 5でも設定のBluetoothから機器を検索すると「xxxxxx-bt(xxxxxxはSSIDの一部と共通)」という機器が表示されるので、タップしてペアリングを試みると、Aterm WM3800Rを起動させることができた。同様に、PCからもBluetoothのユーティリティを利用して機器を検索すると、リモートから起動させることが可能だ(Windows 8のデバイスからは起動不可)。

 なお、この機能を利用するには、Aterm WM3800Rの設定画面にある「ECO設定」で「リモート起動」を「利用する」に設定しておく必要がある。これでBluetoothが有効になり、iOS端末などから検索することが可能となる。同時に、「省電力状態切り替え機能」が標準でウェイティングになっているので、これを「休止状態」にしておけば、無通信状態が10分続いた場合に自動的に休止状態するようになる。積極的に休止状態を使う設定にしておくといいだろう。

設定画面でリモート起動を「使用する」に設定することで、iOSやPCからもBluetooth経由で起動できる
iOSではBluetoothで表示された機器をタップすると起動できる

 休止状態からの復帰にかかる時間も、従来モデルのAterm WM3600Rの15秒に対して、今回のAterm WM3800Rは約6秒と大幅に短縮されている。このため、Aterm WiMAX Toolなどから起動後、無線LAN接続が復帰し、通信できるようになるまで、待たされる時間もごくわずかで済む。

 この使い方に慣れると、本当に、Aterm WM3800Rを鞄から取り出すことがなくなる。朝、鞄に入れてでかければ、あとは端末からリモートで起動、休止を繰り返すだけで、いつでも好きなときに通信することができる。この使い勝手の良さは、ちょっと感動するほどなので、ぜひ一度体験して欲しいところだ。

電池容量は減っても実稼働時間は心配なし

 気になるバッテリー駆動時間だが、PCから一定時間おきにPingとHTTP GETを連続実行するテストを実施してみたところ、夕方17:58:25の測定開始から深夜2:44:09まで、合計8時間45分44秒の連続通信が可能だった。

 以前、本コラムでレポートした前モデルのAterm WM3600Rの同テストの結果が10時間16分だったので、連続稼働時間は若干短くなったことになる。本体の小型化に伴って、バッテリー容量が2500mAh(WM3600R)から2000mAh(WM3800R)に減っているのが主な原因となる。

 ただし、この点を嘆く必要はない。今回のAterm WM3800Rでは、消費電力の削減が実施されており、休止状態での待機時間が従来の170時間から250時間へと大幅に向上している。

 前述したように、Aterm WM3800Rでは、休止状態への移行、復帰をリモートから簡単に、しかも短時間で行えるようになっている。このため、日常的に休止状態を活用するようにすれば、実質的な運用可能時間を従来モデルよりも大幅に長くすることができるのだ。

 従来のAterm WM3600Rは、わざわざ電源をオン/オフする手間を省こうとすると、朝、電源を入れてから、そのまま電源オンのまま日中利用し、夜に帰宅したときはバッテリー切れで充電が必須になるという使い方だったのに対して、今回のAterm WM3800Rは、リモートから簡単に電源をオン/オフできるため、使う時だけ休止から復帰させ、それ以外は休止させておくという使い方が可能なり、1〜2日は鞄に入れっぱなしで使えるようになった。

 実際、休止状態のまま放置しても、電力の消費はごくわずかで済む。たとえば、100%充電済みの状態から、まったく利用せずに休止状態のまま放置した場合、約21時間後の計測でバッテリー残量は94%、さらに24時間後(合計45時間後)の計測でバッテリー残量は85%となった。

 このため、1日数時間使って、そのままうっかり充電を忘れて翌日になってしまったとしても、翌日もまだ数時間使う余裕は十分に残されていることになる。こういった使い方ができるのは、本当に心強い限りだ。

スマートフォンの充電も可能

 このように、非常に使いやすくなったAterm WM3800Rだが、このほか新たにスマートフォンへの給電機能も搭載した。

 本体の電源をオフにするか、休止状態にしてから、付属のUSB給電ケーブルを利用して、スマートフォンなどを接続すると、Aterm WM3800Rの充電池を利用して、スマートフォンなどに電力を供給することができる。

 本体のバッテリーが2000mAhとなるうえ、標準では本体のバッテリー残量が20%([20%] [40%] [60%] [給電しない]を設定可能)に達した時点で給電を中止する設定になっているため、最近の2000mAhを越えるスマートフォンの充電には物足りないが、いざというときの緊急用として充電できるのはありがたいだろう。スマートフォンへの給電は5V、最大1Aで行われる。

 このほか、従来モデル同様に、公衆無線LANの接続にも対応しており、WiMAXと公衆無線LANのどちらを優先するかをスマートフォン向けのアプリであるAterm WiMAX Toolで切り替えることも簡単にできる。また、別売りのクレードルを利用して充電したり、ホームルーターとして利用することなども可能となっているなど、とにかく使い勝手が抜群に良い。

給電停止電池残量は標準では20%。40%や60%に変更することもできる
別売りのクレードルも提供される

 スマートフォンがLTEなどの高速な通信が可能となり、テザリング機能も使える機種が増えてきたため、PCなどの接続に使っている人も少なくないかもしれないが、やはり長時間の利用には向いていない。その点、Aterm WM3800Rであれば、長時間の利用が可能なうえ、使いたいときに気軽に電源をオンにしてすぐに利用することができる。

 タブレットなど、本体に通信機能を持たない端末を使う機会が増えてきたことを考えても、外出先の通信環境として、ぜひ利用を検討したい製品と言えそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ