清水理史の「イニシャルB」

品質は? サービス内容は? 
月額1000円以下で維持可能なMVNO通信サービスを比較(後編)

 昨日の前編に続いて、各MVNOサービスを比較していく。前編ではサービスの仕様などを比較したが、後半では実際の使い勝手や、筆者の自宅での速度比較の結果などをご紹介する。

使い方はほぼ共通ながら、アプリに違い

 使い方に関しては、どのサービスもほぼ同じだ。端末のスロットにSIMカードを差し込み、設定画面でAPNを登録すればいい。iOS端末の場合、LTEで通信するには、オプションとなっているLTEの項目にも同じ情報を登録する必要があるが、設定としては簡単なので、迷うことはないだろう。

 装着後、スマートフォンやタブレットのステータスバーでLTEで通信できていることを確認し、ブラウザーなどで実際にインターネットにアクセスしてみるといいだろう。

Android端末の設定。APNに指定されたユーザー名やパスワードなどを登録する。OCNのみサインアップ時に取得したユーザーIDを個別に指定する
SIMフリー版iPad miniの設定例。iPad miniでは、3GとLTEの設定項目(さらにテザリング時)が別項目となっているため、両方に同じIDを登録し、LTEを有効にしておく

 なお、IIJmio、BB.exite、日本通信、DTIでは、速度の切替え(クーポンの有効/無効)を手動で切替えることが可能となっている(楽天は購入した転送量は自動的に有効化さオフにはできない)。

 BB.exciteはブラウザーからサービス設定ページにアクセスして切替える必要があるが、IIJmio、日本通信、DTIはスマートフォンやタブレット向けのアプリを利用して速度を切替えることができる。

日本通信のTurbo Charge。オンにすると稲妻が光る凝ったデザイン
IIJmioクーポンスイッチ。スライダーでオンにした後、必ず「適用」をタップする必要があるので注意
DTIの3G Unlimited。回線が混雑しているときは、リミットを外していいかどうかというメッセージも表示される

 高速なインターネットアクセス環境が手元にある場合はブラウザーでもいいが、100〜200kbpsの端末自身で、ブラウザーから速度を切替えるのは、結構、時間がかかるため、アプリを利用できるサービスを選ぶ方が、実際の運用は楽だ。

 特に、日本通信とDTIは、アプリから追加の転送量を購入することも可能となっている(IIJmioのアプリは切替えと残量表示のみで購入はウェブから)。今後は、こういったアプリの利便性についても、ぜひ競い合って、向上させていって欲しいところだ。

IIJmioでは、クーポンはウェブサイトで購入する
BB.exciteでは、アプリではなくウェブサイトから転送量の購入や切替えを実行
楽天ブロードバンドでは、ウェブから転送量を追加購入できるが、切替えは不可

実効速度は? 音声通話には使えるか?

 さて、肝心の通信速度についてだが、注目したいのは、速度制限が解除されたの実用性、また多くの利用者によって混雑が発生している場合の速度だろう。

 以下は、各SIMをNEC製のスマートフォン(Medias N-07D)に装着して、Speedtest.netで速度を測定した結果だ。

【ベンチ結果:制限のない時】


IIJmio OCN BB.excite 日本通信 楽天
ブロードバンド
DTI
最大速度 上り 112,500 112,500 112,500 112,500 112,500 7,200
下り 37,500 37,500 37,500 37,500 37,500 5,700
制限なし(夜間) 下り 1,638 5,426 2,994 2,239 4,267 1,498
上り 583 2,032 1,790 2,100 1,467 368
ping 261 74 178 119 74 231
制限なし(早朝) 下り 12,365 10,318 10,839 6,198 5,453 2,685
上り 2,021 1,396 2,152 1,938 608 390
ping 89 83 77 61 112 353
【ベンチ結果:速度制限時】


IIJmio OCN BB.excite 日本通信 楽天
ブロードバンド
DTI
制限時速度 200 200 200 150 100 100
制限時(夜間) 下り 236 235 217 61 89 94
上り 273 297 250 41 111 72
ping 168 102 131 136 100 326
制限時(早朝) 下り 306 249 208 134 89 107
上り 275 256 263 187 157 120
ping 94 81 101 119 105 236
【音声通話の品質】

IIJmio OCN BB.excite 日本通信 楽天
ブロードバンド
DTI
LINE音声
050plus
  • ※速度はkbps。
  • ※測定には、MEDIAS N-07Dを使用。

 クーポンなどを利用し、速度制限がない状態では、サービスや時間帯による差はあるものの、どのサービスも数Mbpsの実効速度が得られており、実用性という点はまったく問題ない。

 実際、ウェブを閲覧しても、通常のスマートフォンやタブレットと同じようにわずかな時間でページが表示され、動画なども快適に再生することができた。基本的に高速なモードで接続されているときは、どのサービスも快適に使えると考えて良いだろう。

 ただし、制限がかかった状態での品質は、結構、明暗が分かれる結果となった。今回の計測は、あくまでも筆者宅という限られた環境での計測となるため、この結果がサービスそのものの品質を完全に表すわけではないが、それでも、IIJmioの品質は他に比べて高い傾向が見られた。

 IIJmioのサービスは、スペック上200kbpsだが、比較的混雑していると考えられる20時前後の時間帯でも下り236kbps、上り273kbpsと200kbpsを越える速度が実現できているうえ、早朝(6:30)では300kbps越えを記録することも珍しくない。

 ちなみに、冒頭でも少し触れたが、「100kbpsでも200kbpsでも大差ないだろう」とは思わない方がいい。この差は、実は結構大きく、たとえば本連載のバックナンバーの記事などをキャッシュなしの状態がから読み込んだ場合、100kbps前後だと3分以上経過して見るのをあきらめたくなるが、200k〜300kbpsあれば、あきらめる前にページの一部でも表示され、見られる状態になる。感覚的な話で申し訳ないが、この差は「待てる」と「待てない」の境目になるのだ。

 また、PINGの値にも注目して欲しい。要するにこの値が短ければ、ページをリクエストしてからの反応が速いわけだが、IIJmioは混雑していても100ms前後を維持できている。この差は、音声通話系のアプリを使ったときに、大きな違いとして現れる。

 今回、050plusとLINEの音声通話の両方を各サービスで試してみたが、PINGの応答時間が長いサービスでは、これらのサービスを利用した場合に、音声が聞こえない、もしくはひどく遅れて聞こえるという状況が見られ、実用に耐えられない状態であった。

050plusとLINEの音声通話もテストしてみたが、pingの応答速度が遅いと実用にならない印象があった

 もちろん、測定結果は場所や時間によっても変化するため、一概には言えないが、概ね500ms前後になると品質が悪くなり、800msを越えると使い物にならない印象だ。

 このため、利用する時間帯や利用場所などによって、この優劣は変化すると考えられるが、少なくとも筆者宅での調査では、音声通話に使うならIIJmioやOCN、BB.exciteなどを選びたいという印象だ。OCNに関しては、サービス改定前の100kbps上限の期間も、ウェブの表示はあまり速くないのに、音声通話は快適というケースが見られたため、もしかするとプロトコルによって帯域制限の方法を調整しているのかもしれない。

 また、DTIの「ServersMan 050」のように、専用のIP電話サービスを用意している場合もある。同社のネットワークに最適化された音声サービスとなっているため、音声通話を重視するのであれば、音声まで含めたサービスを提供している事業者を選ぶといいだろう。

DTIのIP電話サービス。「ServersMan 050」。回線速度が高くないわりに安定した通話ができる

使いこなしのポイント

 このように、各サービスの違いをポイントを絞って見てきたが、個人的には、品質、サービス内容ともIIJmioが有利な印象で、それにBB.excite、若干使い方に工夫は必要だがOCNが次ぐという印象だ。やはり制限時でも200kbpsを確保できるメリットは大きい。

 ただし、どのサービスを利用する場合にも共通するのは、使い方を工夫することが大切ということだ。

 たとえば、アプリのダウンロードやアップロードは、Wi-Fi接続時にこまめに済ませておくことが需要だ。特に、ゲームなどは、アプリ起動後に、内部でアップデートを実行する場合がある。これが外出先でかかると貴重な転送量をムダに消費してしまうので、外出先でプレイしたいゲームなどは、あらかじめ自宅などで起動して、アップデートまで実行してから出かけるといいだろう。

 ウェブの表示を高速化するアクセラレーターなどの利用も検討するといいだろう。日本通信では、独自のウェブアクセラレーター機能を用意しているので、これを使うのも手だが、Chromeの最新のベータ版( https://play.google.com/store/apps/details?id=com.chrome.beta&hl=ja )などは、SPDY技術を使った独自の圧縮機能を利用可能となっており、画像データを変換してサイズを小さくしてから表示するといった工夫もなされているので(OPERAなどを使うのも手だ)、こういったアプリを使うと、貴重な転送量を節約する手助けになるだろう。

 また、転送量をリアルタイムにチェックし、必要に応じて警告などを表示できるアプリもぜひ利用したいところだ。さまざまなアプリが用意されているので、事前にインストールしておくことを強くお勧めする。

Chrome Betaの設定にある「帯域幅の管理」から「データ使用量を節約」を有効にすると、画像などのデータを変換し、データ使用量の節約とスピードアップを同時に実現できる
使用量をリアルタムに監視できるようなアプリをインストールしておくと有料分の転送量を有効活用できる

 ちなみに、筆者は自宅に設置したSynologyのNASにプロキシのDelegateと画像圧縮のImagemagicをインストールし、自宅にVPN接続した場合のみ、透過プロキシとして動作するように設定して利用している。画像の表示だけであれば、1Mbpsの通信速度と同等の速度で表示できるうえ、転送量量も少なく出来るため、有料の転送量を節約するために役立っている。このあたりは、また機会をあらためて設定方法を解説しよう。

 以上、1000円以下で維持できるMVNO通信サービスを紹介したが、わずかな負担で契約できる一方で、サービス内容が充実してきており、かなり実用的なサービスとなりつつある。サービスの違いをよく確認し、自分の使い方にあったサービスを選べば、古いスマートフォンやタブレットを再活用したり、複数端末の持ち歩きが効率的になるので、ぜひ利用を検討してみるといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ