清水理史の「イニシャルB」

モバイルプロジェクター+バッテリーで使う マウスコンピューター「m-Stick MS-NH1」

 マウスコンピューターからHDMI直差しが可能なスティックPC「m-Stick MS-NH1」が発売された。当初はリビングのテレビにでもつないでおこうかと思ったのだが、せっかくなので、USBバスパワーで動作するモバイルプロジェクターやモバイルバッテリーと組み合わせて、移動プレゼンテーション環境として使ってみた。

何に使うかが悩みどころ

 確か、2009年前後だったろうか。Windows XPを搭載したネットブックが登場し、実際にそれを手にしたとき。個人的には、そんな感覚がよみがえってこなくもない。

 抜群に小さいし、パフォーマンス的、機能的にも、これで十二分と思わせるだけの説得力を持っているものの、いかんせん、どう使うと便利なのかというイメージが湧き上がってこない。

 まあ、この感覚は、今やPCでも、スマートフォンでも、タブレットでも同じだが、あまりにも身近になりすぎたテクノロジーの場合、自分自身の使い方がすでにある程度固定化してしまっているため、その分野で新しい用途への広がりを見せるような変化が起きたとしても、それとどう向き合えば「新しい」のかが、パッとイメージできないのだ。

 想像力不足と言われれば、その通りなのだが、今回も、マウスコンピューターから発売された「m-Stick MS-NH1」を実際に手して、さて、どう使おう? と悩んでしまった。

 m-Stick MS-NH1(以下m-Stick)は、テレビやディスプレイのHDMIポートに直接差し込むことができるスティックタイプのPCだ。

マウスコンピューターのスティックPC「m-Stick MS-NH1」

 似たような製品としては、動画サービス向けのSTBやChromecastなど、テレビの背面を主戦場とする製品が挙げられるが、本製品は、その中でもWindows 8.1を搭載したフルのPCとなっており、前述した機器のように、その用途や利用場所が特定分野に限られていない。

 このため、リビングのテレビにつないでリビングPCとして使うも良し、PC用ディスプレイに差し込んでサブPCとして使うも良し、店頭のデジタルサイネージとして使うも良し、会議室のプレゼン用PCとして使うも良し、外出先で使うモバイル端末として使うも良しと、さまざまな場所、用途に対応できる。

 この万能さが、前述した用途を惑わす原因でもあるのだが、とにかく、これまでになかったサイズのPCが、2万円以下というリーズナブルな価格で手に入るようになったのは、1つの革新と言えるだろう。

まさに手のひらサイズ
HDMI端子を搭載しディスプレイに直結する
側面に電源ボタン、給電用のmicroUSB、デバイス接続用のフルサイズUSB 2.0を搭載
反対側にはmicroSDカードスロットを搭載

電源は2Aを確保しよう

 それでは、実際に製品を使ってみよう。ハードウェアの詳細やベンチマーク結果については、僚誌PC Watchのレビュー(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/20141128_677998.html)を参照してもらうとして、ここでは実際の利用時の注意点などを紹介する。

 接続に関しては、まず、テレビやPC用ディスプレイなどのHDMIポートに接続する。直差しタイプとなっているが、表示機器側のポートのレイアウトやほかのケーブルの接続状況によっては、直差しは無理なので付属の延長ケーブルを利用して接続する。

 おそらく、HDMIが横に2つ並んでおり、かつ片方にすでにケーブルが接続されている場合、ほとんどのケースでm-Stickの本体部分が隣のケーブルと干渉するので、延長ケーブルで接続することを前提に考えた方が無難だ。

 続いて電源を接続する。電源に関しては、m-Stickの本体側面にあるmicroUSBから給電する方式となっており、付属のACアダプタとUSBケーブルを利用して、コンセントから給電する。

電源ケーブルとHDMIの延長ケーブルを接続

 テレビやディスプレイに接続するのであれば、録画ハードディスク用やUSBハブ用のポートから給電したいと考えるかもしれないが、取扱説明書では、故障の原因となるとの理由で、推奨されていない。

 実際、ソニー製のテレビ(KDL-24W600A)の側面にある録画ハードディスク用のUSBポートを使って給電してみたが、電源が入って、起動時の「mouse computer」ロゴまでは表示されるものの、Windowsのブートプロセスが開始されると、電源が落ちてしまった。

 実際にUSB機器の電流を計測できる機器で、電流の変化を見チェックしてみたのが以下の表だ。

表1:電流の変化


電源オン時 0.3〜0.6A
起動プロセス 0.6〜0.8A
ログオン 0.7〜0.8A
アイドル時 0.5〜0.6A
アプリ起動 0.6〜0.7A
Youtube再生 0.5〜0.6A
IE Fishtank(10) 0.6〜0.7A
IE Fishtank(250) 0.9〜1A
IE Fishtank(1000) 1.1〜1.2A
シャットダウン 0.5〜0.7A
  • ※無線LAN接続済み、タッチパッド付きUSBキーボード接続時

 USBポートは、通常、5V、500mAまでサポートされているため、このようなポートを利用した場合、電源が入ったとしても、起動時に失敗するのも無理のないところだ。高い負荷をかけたときも要注意だが、シャットダウンもほぼ500mAを超えるため、ここでトラブルが発生すると、データが消失したり、OSがクラッシュする可能性もあるので要注意だ。

 なお、後述するように1Aや2A出力に対応したモバイルバッテリーでの動作は可能だが、1Aでは高負荷に耐えられない。カタログ上の消費電力も最大7.4W(1.48A)となっているため、やはり2A出力の電源を用意する必要があるだろう。

今回の計測では、ピーク電流は1.32Aだった。2A出力可能なUSBポートを利用する必要がある

本体USBポート供給電力にも注意

 起動後の初期設定は、一般的なWindows機と共通だが、最初はUSBキーボードとマウスを接続しておくことを忘れずに。

 本製品はBluetoothに対応しているが、当然、初期設定時はペアリングされていないために利用できない。マウスはなくても何とかキーで操作できるが、キーボードはアカウントの作成などのために必須だ。

USBキーボードやマウスは初期設定に必要。Bluetoothキーボードをペアリングするまでのつなぎについでおこう

 もちろん、USBハブなどがあれば、複数のUSB機器を接続可能だが、本体のポートも500mAまでとなっており、USBキーボード+USBマウス+USBメモリ(合計でも250mA前後)であれば問題なく利用できる。しかしUSBハードディスクなどを接続すると、うまく電力が供給されずに動作しなくなってしまう。

 USBハブ、さらにはUSBハードディスクやUSB DVDなどを接続する際は、バスパワーの製品ではなく、セルフパワーのものを用意すべきだろう。

キーボードとマウス、USBメモリ程度ならバスパワー動作のUSBハブも利用可能

 無事にセットアップが完了し、使える環境が整ったら、最初にリカバリ用のUSBメディアを作成しておくことをおすすめする。

 作成方法の詳細は、m-Stickのデスクトップに張り付けられている「操作マニュアル」のP114を参照していただきたいが、基本的にはWindowsの機能を利用して回復ドライブを作成する。コントロールパネルから「回復」で検索し、USBメモリに回復パーティションをコピーしておこう。

リカバリUSBは最初に作成しておくことをおすすめする

 これで、万が一、本体ストレージ側の回復パーティションが破損した場合でも、出荷時状態に戻すことが可能になるし、勢いでWindows 10のTechnical Previewをインストールした場合も元に戻すことができる。

 それにしても、本体サイズに制約があるm-Stickで、USBポートを搭載したことは高く評価したい。こういったUSBメモリを使うシーンで手間がかからないし、前述したようにキーボードやマウスなど、さまざまな機器を接続できる。8インチタブを常用している場合などは、このUSBポートのありがたみが身にしみて感じられる。

Officeで空き容量は半分に

 続いて、必要なソフトウェアをインストールしてみた。個人的にはエディタがあれば十分なのだが、通常はMicrosoft Officeが必要になると思われるので、Office 2013 Professional Plusをインストールしてみた。

 インストールそのものは、通常のPCと同様に済ませればいいのだが、注意すべきはストレージの空き容量だ。

 m-StickにはeMMC接続の32GBのストレージが搭載されており、セットアップ直後は、使用領域が2.67GB、空き領域が22.3GBほどとなっている。

 ここからWindows Updateを実行し、2014年12月16日時点のアップデートをすべて適用すると、空き領域はマイナス2GBの20.8GBほどとなる。

 さらに、Office 2013 Professional Plusをフルインストールすると、空き領域はさらに2GBほど減少し、18.2GBになる。

 まあ、ここまでは許容範囲なのだが、ここからWindows UpdateでOfficeをアップデートすると、一気に空き領域は12.8GBと、Cドライブの合計容量24.9GBの半分ほどとなってしまう。

 購入直後は、32GBのストレージでも余裕、と感じられたのだが、実際に使い始めると、どんどん空き領域が心もとなくなるので注意が必要だ。

 幸い、m-StickにはmicroSDスロットが用意されているので、ここに32GB前後のmicroSDを装着し、ダウンロードやドキュメントフォルダなどを移行し、データを退避させておくといいだろう。セキュリティが心配ならBitlockerで暗号化しておくのも手だ。

データの保存にはmicroSDを活用。暗号化しておけば重要なデータの保存も安心

モバイルプロジェクターとモバイルバッテリーで持ち運び

 一通り、セットアップが完了したので、実際の用途を考えていこう。筆者もリビングではないものの、仕事場のテレビにつないでおくことを一瞬考えたのだが、せっかくなのでモバイル用途での可能性を追求してみた。

 まずは、バッテリーでの動作だ。前述したように、USB給電でm-Stickを動作させるためには2Aの出力があれば問題ない。最近では、タブレット端末向けに2A出力を持ったモバイルバッテリーも増えてきているので、これを利用して動作させてみた。

 今回利用したモバイルバッテリーは、cheero Power Plus DANBOARD mini(6000mAh)。この製品には、1Aと2.1Aの2つのUSBポートが搭載されているため、この2.1A側で安定してm-Stickを動作させることができる。

 これで本体は動作させることができたが、問題は表示環境だ。これも通常なら、GeChicのOn-Lapシリーズなど、USB動作のモバイルディスプレイを選択したいところだが、せっかくなのでプロジェクターを利用することにした。

 USBバスパワーで動作するプロジェクターを探してみたところ、残念ながら、すでに生産終了となってしまったが、パナソニックの「LF-PJ525H」があったので、在庫を探して、これを入手した。

 LF-PJ525Hは標準でモバイルバッテリーでの動作をサポート(明るさを40ルーメンに設定)しており、前述したcheeroの1A側のポートでも問題なく、動作させることができた。

 まあ、自分でも、「やってみたい」という動機だけで実現した環境なので、冷静に考えるまでもなく、非現実的ではあることは理解しているが、こういった極端な使い方もできるのが、m-Stickの魅力と言えそうだ。

モバイルバッテリーとUSB駆動のプロジェクターを使ってモバイルプレゼン環境としてみた
実際の投影の様子。プレゼンも可能だが、普通にPCとして操作できるのでホテルなどでも活用できそう

もっとソリューションを

 以上、マウスコンピューターのm-Stick MS-NH1を実際に使ってみたが、単に小さいだけでなく、パフォーマンスも十分なうえ、USBポートを備えているなど実用性も高い製品だ。同社の直販で19800円という価格から考えても、1台持っておいて損のない製品だ。

 ただ、個人的に使うというよりは、やはり法人向けのソリューションとして販売した方が魅力がありそうな製品に思える。

 オフィスの広さの制限で狭いデスクを有効に使わなければならない場合などに活用できそうだし、最近では、オフィスのフリーアドレス化も進んでいるが、このPCなら使わないときに個人のロッカーに入れておいても邪魔にならない。

 モバイル、ではなく会議室のプロジェクターやテレビに接続する共用PCとしても使えるので、オフィスの設計などを手がける企業と連携すれば、企業のオフィス環境を改善するソリューションとしても提供できるだろう。

 この小さなPCをきっかけに、いろいろなソリューションが登場してくるようになれば、もっと面白いことになりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。