清水理史の「イニシャルB」

800MB/sオーバーのストレージをお手元に Thunderbolt 2に対応したQNAP TVS-871T

 QNAPから、現状の1Gbpsのネットワークの壁をラクラクと打ち破る超高速NAS「TVS-871T」が登場した。リアルタイムの映像編集など、高い伝送速度とレスポンスが求められる環境向けの製品で、10GbEに加え、Thunderbolt 2による20Gbpsの通信にも対応している。SSDとの組み合わせによる驚異的な速度は圧巻だ。

10GbEよりもカンタン

 800MB/s!

 そんな速度のストレージをネットワーク経由で身近に使える時代がようやく到来した。

 もちろん、身近に、と言っても50〜60万円と費用はそれなりにかかるものの、映像編集や3Dなど、特定の分野向けの超高速ストレージが、ケーブル1本つなぐだけのカンタンさで使えるようになったことは、大きな進歩だ。

 QNAPから登場した「TVS-871T」は、Thunderbolt 2に対応した8ベイのNASだ。見た目は通常のNASと何ら変わりはないが、背面に備えられたPCIe拡張スロットに10GbEのネットワークアダプタ、および20Gbps対応のThunderbolt 2アダプタが標準搭載されており、従来の1Gbpsをはるかに超える超高速なインターフェイスを利用できるのが最大の特徴だ。

Thunderbolt 2に対応したQNAPのNAS「TVS-871T」

 本コラムでも、多くのNASを取り上げてきたが、昨今の製品はベンチマークテストを実施してもシーケンシャルで100MB/s近くをマークすることが多く、もはやネットワーク(1Gbps)がボトルネックになる状況となっていた。

 もちろん、実際の環境では1Gbpsのネットワークを複数利用することで、総合的に見て1Gbpsを超える処理性能を有する製品も少なくないが、単一のインターフェイスでは1Gbpsが上限となるケースが多かった。

 このため、NASによっては10GbEのオプションを設定することで、より高速な用途にも対応できるようにしてきたが、10GbEは環境を用意するための敷居が高い。PCに高額なネットワークアダプタを装着せねばならないうえ、スイッチやケーブルも新たに用意しなければならなかった。

 これに対し、今回のTVS-871Tは、もちろん10GbEにも対応しているが、さらにThunderbolt 2にも対応したことで、10GbEの10Gbpsを超える20Gbpsの通信を、しかも現行のMacシリーズに標準搭載されているインターフェイスと、従来のThunderboltと同じケーブルで実現可能になっている。

 Thunderbolt 2は、Windows系ではあまりなじみのないインターフェイスとなるうえ、しかも次世代のThunderbolt 3の話題も見えており、一見、地味に思えてしまうが、Macをプラットフォームとして映像や3Dなどのクリエイティブな業務を生業としている人にとっては身近なインターフェイスで、まさに待ち望んでいたソリューションといえる。

 数十万円規模の投資で、内蔵SATAよりも高速で、しかも複数台のPCから、既存のインターフェイスとケーブルで利用できる大容量のストレージを手に入れられるのだから、その効率の良さを考えれば、特定の用途に関しては、決して高くない投資と言えそうだ。

きちんとNAS

 それでは、製品を見ていこう。本体は、デスクトップタイプのNASで、フロントにはHDDやSSDを搭載可能なベイを8基搭載。各種ステータスを確認できる小型のディスプレイが右上に、左下にはUSB 3.0と電源スイッチを搭載している。

 背面は、1Gbps対応のLANポートが合計4つ、PCIeスロットを利用した10Gbps対応のポートが2つで、合計6ポートのLANを搭載。これらに加え、USB 3.0×2、ディスプレイ出力用のHDMI、そして最大の特徴となるThunderbolt 2を2ポート搭載する。

 ファンは背面に12cmの大型のものが2基搭載されているが、動作音は非常に静かでオフィスなどであれば、まず気になることはない。

 NASとしての性能を追求していくとラックマウントタイプに行き着くが、電源や動作音などを考慮すると、小規模なオフィスにとっては、やはりデスクトップタイプのメリットは大きいと言えそうだ。

正面
側面
背面

 ワールドワイドでは、搭載されるCPUの違いによって2つのモデルが用意されているが、国内で発売されるのは1つだけ。それが、今回、試用したCore i7 4790S(3.2GHz)と16GBのメモリを搭載したTVS-871T-i7-16Gとなる。両モデルが提供されたとしても、本製品の場合、とにかくパフォーマンスが欲しいというニーズで選ぶユーザーが多いと考えられるため、できればより処理性能が高いi7版を選ぶことをオススメしたいところだ。

 機能的には、QNAPならではのQTS 4.2を搭載した通常のNASだ。Thunderbolt 2対応ということで、いわゆる外付けHDD的なストレージを想像するかもしれないが、あくまでThunderbolt 2は対応インターフェイスの1つで、基本的には通常のNASとなる。

 このため、Webページ経由で初期設定ができるセットアップの手軽さはもちろんのこと、Webサーバーやデータベースサーバー、さらに仮想マシンなどを稼働させることができる多機能さも兼ね備えている。もちろん、HDMIでディスプレイに接続すれば、メディアプレーヤーとしても利用可能で、Thunderbolt 2を介したPCでの動画の編集などに加え、HDMI経由で保存した動画を直接再生して確認することなどもできる。

 最新のQTS4.2で新たに追加されたスナップショットによるストレージのバックアップなども利用可能で、NASとしてすでに完成された製品という印象だ。

Thunderbolt 2で利用する

 肝心のThunderbolt 2での利用だが、基本的には背面のポートとMacのポートをThunderboltケーブルでつなぐだけでかまわない。きちんと認識されれば、TVS-871Tから「ピー、ピ、ピ」というBEEP音が鳴り、接続が完了したことが通知される。

 インターフェイスは、Macからは「Thunderboltブリッジ」として認識され、標準では「169.254.xxx.xxx」のIPアドレスが自己割り当てで設定される。そのままでも、Finderから「NASxxxxxx(SMB)(Thunderbolt)」として認識可能だが、固定でIPアドレスを設定することも可能だ。

Thunderbolt 2を搭載したMac miniを接続。ケーブル1本つなぐだけでOK。ケーブルも従来のThunderboltと同じ
Mac側はThunderboltブリッジとして認識される。IPは自動割り当てでも手動設定でもOK

 TVS-871T側では、初期設定時にウィザードが起動し、Thunderbolt 2で利用するための簡単なガイドが表示される。ストレージを構成し、Thunderbolt 2ケーブルをつなぐ、という基本的なものだが、初めて利用する場合は安心だ。

 Thunderbolt 2関連の設定には、専用の画面が用意されており、IPアドレスの設定、およびMacと接続されたThunderboltブリッジのデータ転送量をグラフ形式で確認できる。

 なお、Macから利用する際は、同社が無料で提供するQfinderというアプリを利用してTVS-871Tの共有フォルダーをマウントすることもできる。このツールを利用すると、SMB以外にも、NAS(Final Cut Pro)なども選択できるようになっている。映像編集などに利用する場合は、ここから設定するのも1つの方法だ。NFSは標準では無効になっているが、接続設定によって自動的にTVS-871T側でNFSを有効化できる。

ウィザード形式でThunderbolt 2の接続方法が紹介される
設定は特に必要ない。Macと同じくIPアドレスも自動割り当てでも手動設定でもかまわない
Qfinderを利用して共有フォルダーをマウント可能。NFSも選択可能

 気になる転送速度だが、冒頭でも触れた通り、圧巻の実力だ。

 以下は、ADATAのSP920SS3-256Gを4台利用してRAID5で構成した状態のTVS-871Tに対して、Thunderbolt 2で接続したMac Mini(2014,Core i5/8GB)からBlackmagic Disk Speed Testを実行した際の結果だ。

今回のテストではADATA SP920SS3-256Gを4台利用した
Thunderbolt 2接続でのテスト結果

 ライトで860.6MB/s、リードで732.1MB/sという驚異的な値を実現しており、下に表示されている詳細な項目のすべてにグリーンのチェックマークが表示されている。今回使用したADATA SP920のカタログスペックは、読み込み最大560MB/s、書き込み最大360MB/s(SATA 6Gbps)なので、これを上回る速度が実現できている。

 なお、2ではない通常のThunderboltでの値は、以下の通りだ。Macは2014年モデルがThunderbolt 2搭載の分かれ目になっているため、MacBook Air(2013)を利用して同じ環境で計測してみた。

Thunderbolt(10Gbps)でのテスト

 Thunderboltでも、ライト535.2MB/s、リード513.1MB/sと十分に速いが、やはりThunderbolt 2に比べると、TVS-871Tの性能を生かし切れていない。ベンチマークテストの項目でも一部に「×」マークが表示されてしまった。

 やはり、この製品の性能をフルに発揮されるには、10GbEでも、10Gbps版のThunderboltでもなく、20GbpsのThunderbolt 2が最適だ。

 ちなみに、1Gbpsの通常の有線LANでWindowsからテストした結果は以下の通りとなる。100MB/sのオンパレードは通常のNASとしては、十分過ぎるほどに優秀だが、やはりThunderbolt 2と比べてしまうと、1Gbpsの壁が惜しく感じさせられてしまう。

Windowsから1Gbpsの有線LAN経由でテスト

複数用途に活用できる

 以上、QNAPのThunderbolt 2対応NAS「TVS-871T」を実際に使ってみたが、なかなか強烈な製品だ。秘められていたQNAPのNASの性能が、Thunderbolt 2によって一気に解放されたような印象で、実際に使っていても本当にネットワーク経由でアクセスしているのか? と疑ってしまうような速度でアクセスできる。

 もちろん、さらに高い速度を出そうと思えば、PCIeでSSDを接続する手もあるが、ポイントはNASとして使える点にある。MacからはThunderbolt 2でビデオ編集など特定用途に使いつつ、Windowsからファイル共有をしたり、TVS-871Tをサーバーとして使ったり、HDMI経由でテレビに接続してメディアを再生したりできる。

 専用のサーバー、専用のワークステーションを作りたいなら、PCIeでもかまわないが、さまざまな用途に使いつつ、クライアントにも市販のMacをそのまま使えるメリットは大きいだろう。

 残念なのは、Windows系のPC向けのThunderbolt 2の利用環境はごく限られてしまう点となる。Windowsからも気軽に使えれば、同様に映像や3Dなどの用途、データ分析用の超高速データベースなど、さまざまな用途に活用できそうだ。

 ちなみに、細かな点を1つ指摘させてもらうと、MacとThunderbolt 2の接続が確立されると、そのたびにBEEP音が鳴るのは改善の余地がありそうだ。システム設定のハードウェアにあるブザーの設定でオフにすることも可能だが、エラーなどを含むシステムイベント全体をまとめてオフにする必要がある。エラーなどは確認できるようにしつつ、Thunderbolt 2の音だけ消せるようにしてくれないと、Macを起動したり、スリープから復帰させたりするたびに、この音を聞かなければならない。この点だけは残念だ。

Thunderbolt 2接続が確立されるたび(スリープからの復帰でも)に鳴るBEEP音はオフにできるが、他の警告もオフになってしまうのが難点

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。