清水理史の「イニシャルB」

監視映像をクラウド上に録画 タイムラプスも生成できる「SpotCam HD Pro」

 防水防塵対応で、双方向音声通信可能で、しかもクラウドへの録画に対応。台湾のSpotCam社から登場した「SpotCam HD Pro」は、コンシューマー向けながら、なかなか充実した機能を持ったネットワークカメラだ。筆者宅の玄関監視カメラ2代目として導入してみた。

玄関先の録画に

 屋外向け、となると途端に、値段が高くなり、筐体がゴツくなり、設備が複雑になり、選択肢も狭まるネットワークカメラ。

 そんな屋外向けネットワークカメラを家庭でも手軽に扱えるようにしたのが、今回取り上げるSpotCamの「SpotCam HD Pro」(国内代理店はプラネックス)だ。

SpotCam HD Proのパッケージと本体、同梱品

 実売価格はAmazon.co.jpで2万7489円(1月31日現在)と、低価格化が進むネットワークカメラの中では安いとは言えないが、以下のスペックの通り、IP65(塵埃の侵入なし/あらゆる方向からのノズルによる噴流心でも有害な影響なし)の防水防塵性能を実現しており、屋外での使用が可能となっているのが特徴となっている。

 参考として防水防塵性能なしのモデル(SpotCam HD)のスペックも掲載しておくが、サイズが一回り大きいものの、動作温度も屋外使用を想定したマイナス10℃にまで対応しており、価格差に帯する機能差を考えると、屋外で使用しなくても、こちらを選ぶメリットが見えてくる。

表1:スペック
  SpotCam HD Pro SpotCam HD
サイズ 直径5.4cm×高さ14.8cm(スタンド直径7.5cm) 直径4.8cm×高さ14.8cm(スタンド直径7.5cm)
重量 275g 236g
解像度 最大720p(1280×720)/30fps 最大720p(1280×720)/30fps
映像圧縮方式 H.264 H.264
画角 110度 110度
音声 スピーカー/マイク スピーカー/マイク
夜間撮影 赤外線LED×12 赤外線LED×12
防水防塵 IP65 -
動作温度 −10℃〜50℃ 0℃〜50℃
通信方式 IEEE802.11n/b/g(20MHz) IEEE802.11n/b/g(20MHz)
価格(Amazon.co.jp) 2万7489円 2万4800円

 以前、本コラムでも取り上げたが、筆者宅では以前、玄関先に置いたボックスに定期的に配送してもらうタイプのお弁当を契約していたものの、ある日、中身だけ食べられ、弁当箱だけ丁寧に返却されていたという事件があった。

 それをきかっけに、監視カメラの必要性を実感し、玄関先にカメラを設置し、常に映像を録画するようにしてきたが、設置したカメラは屋内用で、しかも録画にNASを使っていた。

 今回のSpotCam HD Proの購入は、これをきちんと屋外用に置き換えることに加え、録画先としてNASではなく、クラウドを活用しようというのが、その狙いだ。

 SpotCam HD Proでは、撮影した映像を同社のクラウドストレージに保存可能となっており、無料プランであれば1日分の録画を保管可能になっているので、NASなどの保存先がない場合でも気軽に導入できるだろう(有料プランは3日間で39ドル/1年、7日間で59ドル/1年、30日間で199ドル/年)。

スマホのみでセットアップできる手軽さ

 それでは、製品を見ていこう。本体はスペック表でサイズが直径で表されていることからも分かる通り、円筒系のデザインとなっている。本体前面のカメラ部分が丸く浮き出ており、背面のスイッチ類の部分が削られているが、見た目はまさに筒のようなイメージだ。

 カラーはつや消しのブラックで、控えめで高級感があるものの、実際に設置してみると予想以上に地味だ。壁など、設置場所の色にもよるが、場合によっては周囲の風景と同化して目立たない可能性もある。監視目的でカメラを設置する場合、設置されていることがひと目で分かる派手さもある意味必要なので、できればホワイトとブラックを選べるようにしてくれると、設置場所によって選びやすいのでありがたい。

 インターフェイス類はほとんどなく、背面には、音声出力用のスピーカーの穴と電源アダプタ接続用のコネクタ、Wi-Fi動作モードを切り替えるためのスイッチしか用意されない。

 ネットワークへの接続は、無線LAN(IEEE802.11b/g/n、20MHz幅)となっており、有線LANでの接続には対応しない。ネットワークカメラの場合、設置場所が多岐にわたるため有線での接続は考えにくい。無線LANのみで問題ないだろう。

音声出力用のスピーカーを背面に内蔵
スイッチ類もシンプル
電源アダプタ。設置場所に柔軟に対応するためケーブルも若干長め(3メートル前後)

 セットアップは、PCからも可能だが、スマートフォンのみでも可能になっている。「SpotCam」アプリをインストール後、まずはユーザー登録を実行する。アカウントとメールアドレス、パスワードを入力するだけの簡単なもので、メールでのアカウント認証を実行すればすぐに登録が完了する。

 初期設定では、SpotCamを自宅内の無線LANアクセスポイントに接続することからはじめる。標準では、背面のスイッチが「AP」となっていることからも分かる通り、SpotCam自身がアクセスポイントとして動作するようになっているので、スマートフォンから「SpotCam-HD」というSSIDに対して接続する。すると、SpotCamの接続先を設定できるので、自宅のアクセスポイントのSSIDやパスワードを入力する。

 設定が済んだら、最後にSpotCamの背面のスイッチを「Client」モードにすれば、自宅のアクセスポイントに接続して準備は完了。カメラの映像をスマートフォンから確認できるようになる。

アプリでユーザー登録を実行
APモードのSpotCam自身に接続して、接続先のアクセスポイントを登録
設定が完了すると映像を確認できる

 この手の製品の場合、通常はWPSなどで自宅のアクセスポイントに接続後、ネットワーク上のカメラを検索して設定するという流れが一般的なので、少々、独特となるが、特に手間取ることなく分かりやすい設定方法だ。

 カメラ映像は、アプリ、もしくは「https://www.myspotcam.com/」にアクセスしてPCから確認できる。

 映像はクリアで、なかなか見やすい印象だ。赤外線のおかげで夜間でもはっきりと映像を確認することができる。パン・チルトはできないので、定点観測が基本だが、玄関先の監視やペットの見守りなどといった用途には十分な性能だ。

 若干、気になったのはマイクの性能だろうか。初回設置時は、周囲の音の状況に合わせて自動的にボリュームが調整されたのか、マイクから音声をほとんど拾わなかったのだが、設置し直したところ、きちんと音声を拾うようになった。また、マイクのボリュームを上げるとノイズが結構気になる傾向も見られた。

 なお、マイクを使って音声を拾うことができるだけでなく、本体のスピーカーを使って、PCやスマホに向かって話した声をカメラ側で再生することもできる。こちらから話しているときは、ハウリング防止のため、カメラ側のマイクがミュートされるため、トランシーバーのような一方向通信になるが、ペットの監視などの目的では、単に映像を見るだけでなく、気軽に声をかけられるのもメリットだ。

PCからもブラウザで映像を確認可能
夜間の撮影も可能

クラウドを利用する3つメリット

 映像の録画は、冒頭でも触れたようにクラウド上で実行される。標準では無効になっているので、MySpotCamのページから無料プランを有効化すると自動的に録画が開始される。

 録画された映像は、カメラのライブ映像のページから参照可能となっており、ライブ映像の下に表示されるタイムラインの任意の場所をクリックすると、その映像を再生できるというしくみだ。タイムラインにマウスカーソルを合わせるとサムネイルも表示されるので、再生したい場面を探すのにも苦労しない。

 標準では分単位のタイムラインとなっているが、時間や日などにスケールを変更することもできる。また、単純に映像を拡大表示するだけなので画像は粗くなるが、ズームによって画面の一部を拡大することなどもできる。ビューアーの使い心地はなかなか快適だ。

タイムラインの過去の部分をクリックすると録画した動画が表示される。サムネイルも表示可能
タイムラインを時間単位に変更することも可能
画質は粗くなるがズームも可能

 映像の参照や録画にクラウドを利用するメリットは、3つある。1つは、もちろん、ローカルにストレージを持たなくて済むことだ。映像の録画用にSDカードを用意したり、別途NASを準備する必要がないため、手軽に録画データを保存できる。

 また、ファイルを意識しなくて済むメリットも大きい。通常、ネットワークカメラの映像は数十MB単位に分割された保存されるケースが多い。SDカードなどへの録画方式だと、このファイル管理が面倒なのだが、SpotCamの場合、過去の映像はタイムラインをさかのぼるだけなので、ファイルをまったく意識せずに済む。

1日分の動画に加え、タイムラプス動画や切り出した動画を3時間分保管できる

 2つ目は、共有が簡単にできることだ。MySpotCamでは、メールアドレスを指定してほかの人と映像を共有することが簡単にできる。招待を送信し、相手がMySpotCamに登録すると初めて映像を参照できるようになる。

 ローカルのカメラに対してDynamicDNSでアドレスを割り当て、ポートを解放するといった手間やセキュリティ上のリスクを冒すことなく、しかもURLを知る誰にでも解放するわけではなく、メールアドレスをアカウントとして登録したユーザーだけに公開できるわけだ。

 この方法は、非常によくできている。例えば、学習塾などで子供の様子を保護者に見せたい場合などでも、会員全員で同じIDやパスワードを共有する必要はない。会員それぞれが自分でアカウントを取得し、そのアカウントごとに視聴をコントロールすることができる。

ほかの人と映像を共有できる。招待された人はMySpotCamに登録する必要がある

 3つ目は、クラウド上のコンピューティングパワーを使えることだ。具体的には、録画した映像からタイムラプス動画を生成したり、特定の部分だけ切り出す簡単な編集ができる。

 例えば、タイムラプス動画を生成する場合であれば、MySpotCamで「動画の生成」をクリックし、「低速度撮影」を選択して、映像に使用する時間を指定する(1日プランの場合は最大1日のみ)。これでサーバー側で映像が自動的に処理され、完成後に「My動画」に映像が表示される。

 試しに筆者宅で買っているペットの犬の様子を動画にしてみたが、ほとんどの時間を寝て過ごしていることをあらためて実感した。植物の成長を記録する、などといった使い方をしても面白いだろう。

タイムラプス動画などをサーバー側で作成できる

カメラの公開には要注意

 このほか、ほかのSpotCamユーザーが公開している動画も参照可能で、秋葉原の様子や台湾の同社のオフィス、鳥の卵、台湾のジュース屋さんなど、いろいろなところに設定されているカメラの映像も楽しむことができる。

 もちろん、自分のカメラを公開することも可能だ。カメラ設定は、すべてMySpotCamから変更可能になっており(ローカルの設定画面は利用しない)、ここからカメラをオン/オフするスケジュールやナイトビジョンのオン/オフ、音声の録音、映像や音声をきっかけにしたアラートメールの送信などが可能となっている。

カメラの設定もすべてクラウド上で実行する
公開された映像を参照できる

 ちなみに、本コラムを執筆しているタイミングで、各所に設置されたネットワークカメラの映像を閲覧可能なサイトの存在が話題になった。主な原因は、パスワードが未設定、もしくは標準設定のままになっていることとされており、設置者の意識の低さが課題とされている。

 本製品についても同様のリスクがあるかどうかを考えてみよう。

 まず、前述したように自らが公開した場合、これは誰でも見ることが可能になるので、不用意に設定しないことが大切になる。公開設定画面には利用条件が表示され、それに同意することが求められるが、公序良俗に反する映像を配信しないなどが中心で、公開することのリスクについては適切に説明されておらず、ヘルプを表示すると、ようやく何が公開されるのかが表示されるのみだ。ヘルプの文言を利用条件よりも先に明記し、ユーザーに不用意に公開させない工夫が必要だろう。

 続いて、IDやパスワードについてだが、本製品は、先に話題となったサイトの製品群と異なり、機器本体では設定などを管理しない。このため、例えば初期設定の管理者アカウントがadmin/passwordなど、簡単に類推されるようなものになることはありえない(前述した初期設定でメールアドレスと共に自分でパスワードを設定する)。

 また、映像の視聴、設定ともにクラウド上で実行するので、公開設定しない限りは、IDとパスワードが未設定になることもない。

 では、リスクはまったくないのかというと、もちろんゼロではない。例えば、友人に映像を公開しようとした場合、相手もMySpotCamへの登録が必要になるが、その際、パスワードに単純な文字列などを指定されてしまえば、そのアカウントの不正利用によって映像が流出する可能性は否定できない(共有を停止すればそのアカウントでの閲覧は禁止できる)。

 とは言え、例えば子供向けの習い事教室などで保護者向けに映像を公開するようなケースで、公開用のIDとパスワードを不特定多数にばらまくといった、現在よく行われている運用よりもはるかに安全性は高く、さほどリスクになるとは考えにくい。

 このほか、クラウドサービスのMySpotCam側に脆弱性があれば、ID流出や映像の不正閲覧などが可能になる可能性もあるが、そこまで心配するならネットワークカメラそのものの利用を避けた方がいいだろう。

 まとめると、自ら公開した場合は当然リスクを覚悟する必要はあるが、そうでない場合、先のサイトで公開された製品群とは製品そのもののしくみが異なるため、同じようなリスクにさらされる可能性は高くないと考えていいだろう。

自らも公開設定すればカメラの映像を公開できる

用途の広がりが期待できる製品

 以上、SpotCam HD Proを実際に使ってみたが、当初は屋外設定可能な低価格のカメラくらいにしか思っていなかったものの、クラウドにデータを保存できるメリットが意外に多く、実に使い勝手の良い製品と言える。玄関の監視などはもちろんだが、ペットの監視、店舗や教室の公開などの顧客向けサービスなど、その用途は広がりそうだ。

 また、ほかのユーザーが公開したカメラをMySpotCamから参照できるのも面白い試みで、さらに機能が発展して、ほかのユーザーとのコミュニケーションなども可能になれば、SNS的な使い方に発展させることも不可能ではなさそうだ。

 ネットワークカメラは、手軽なようでいて、これまでの製品はやはり録画した映像の取り扱いや外部からの利用が意外に面倒だった。また、リスクもあった。その点をうまくクラウドサービスによって解消した製品と言える。まだ荒削りな部分もあるが、なかなか完成度の高い製品と言っていいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。