清水理史の「イニシャルB」

ワイヤレスディスプレイでContinuum アダプタ3製品をチェック

 Windows 10 Mobileの目玉機能の1つとして話題になっている「Continuum」。現状、国内メーカー端末ではワイヤレスで画面出力をするしか選択肢がないが、その遅延をヒドイと嘆く前にチェックしておきたいポイントがある。

初見はショック

 最初に断っておくと、Continuumをストレスなく使いたいなら、有線でディスプレイを接続できる端末が登場するのを待った方がいい。

 「いや、今すぐホシイ」というなら、せめてキーボードとマウスは有線(USB)でつなぐべき。

 「ケーブルなんて大嫌い」というのであれば、多少のガマンは覚悟する必要はあるが、せめて遅延の少ないアダプタを選んでおきたい。

 先日、筆者の手元にもトリニティのWindows 10 Mobile端末「NuAns NEO」が届いた。もちろん、その目的はContinuumで、スマホでデスクトップ並の作業環境、がどれほど現実的なものなのかを試してみたかったのが購入理由だ。

 しかし、実際にContinuumを使ってみたところ、「うーん……」とうならされてしまった。

 詳細な構成は後述するが、とにかくマウスがひっかかりまくりで、少し動かすだけでもマウスポインターが画面上をポンポンと跳ねる――。スタートボタンをクリックしたつもりが無反応で、数秒後にスタートメニューが表示される――。

 まあ、とにかく使い物にならない。

 ネット上のレポートを見てみると、多少、遅延はあるようだが、そこまでヒドイという評価もない。どこに問題があるのか? といろいろ試してみた結果、ポイントはアダプタの性能、そして5GHzで接続することの2点だった。

Windows 10 Mobile搭載のNuAns NEO
ワイヤレスディスプレイでContinuumに対応する

3製品で接続を試す

 すでに、僚誌PC Watchで笠原氏がレポートしているように(記事はこちらhttp://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/20151201_733046.html)、同端末で採用されているSnapdragon 617では、ワイヤレスディスプレイでの画面出力のみがサポートされており、有線(Display Port)での出力には対応していない。

 このため、NuAns NEOにディスプレイを接続するには、別途、Miracastに対応したワイヤレスディスプレイアダプタが必要となる。

 現状、販売されているワイヤレスディスプレイアダプタはいくつか存在するが、NuAns NEOでの利用が推奨されているのは、Actiontecのワイヤレスディスプレイアダプタ「ScreenBeam Mini2 continuum」となる。

 上記製品は、2月11日発売で、本コラム執筆時点では間に合わなかったため、今回は、同等の製品となる「ScreenBeam Mini2(ファームウェア5.3.9)」を入手した。

 また、これに加えて、筆者の手元にあったNETGEARのPTV3000(2.4GHz/5GHz)、ソニー BRAVIA KDL-24W600A(2.4GHz)も利用した。

ActiontecのScreenBeam Mini2
BRAVIA KDL-24W600A

 まず、試したのがテレビ内蔵のMiracast機能だ。筆者宅で利用しているBRAVIA KDL-24W600Aは、無線LAN機能(2.4GHz)を内蔵しており、テレビ側の無線LAN機能とWi-Fi Direct機能を有効にすることで、スマートフォンの画面をワイヤレスで表示できるようになっている。

 実際に、NuAns NEOからContinuumでの接続を試してみたところ、取りあえず接続は問題なくできた。

 ただし、接続後、NuAns NEOの画面を操作してマウスカーソル(ワイヤレスマウスパッドのように使える)を移動させると、かなり反応が悪い。ワンテンポ、どころか2テンポくらい遅れて画面が書き換わる印象で、なかなか思うように操作できなかった。

 例えば、宿泊したホテルのテレビが運よく、この製品で、アダプタなしでContinuumを利用できる環境にあったとしても、おそらくこれで文書を作成したり、プレゼンを作成するというのは、事実上、不可能と考えていいだろう。

 ちなみに、PC接続で遅延を計測してみたところ0.3秒前後と、やはりかなり大きかった。2.4GHzにしか対応していないことを考えても、この組み合わせでの利用は非現実的だ。

BRAVIA KDL-24W600A。本体にMiracast機能を搭載
PCで画面を出力し、ミラーリングの状態でストップウォッチを動作。時間で遅延を判断できる。0.3秒前後
NETGEAR PTV3000

 続いて試したのがNETGEARのPTV3000だ。かなり前に発売された製品で、現在は入手が困難だが、2.4GHz/5GHzに対応しており、機能的には最新製品と遜色(そんしょく)ない。

 接続に関しては、結果的に問題なかったが、端末から接続開始してから実際に画面が表示されるまでに若干時間が長い印象があった。

 また、画面の動作もBRAVIAほどひどくはないが、やはり若干の遅延が気になる。ワンテンポと言うほど遅くはないが、イメージとしてはフレームレートの低い動画を見ているような感じで、マウスカーソルを素早く動かすと、スムーズさに欠ける印象があった。

 この印象は、2.4GHz接続時、5GHz接続時とも変わらなかった。と言っても、本製品はMiracastに2.4/5GHzのどちらを利用するかをユーザーが指定することはできないうえ、接続後もどちらで接続されているかを判断できない。このため、スマートフォン側で2.4GHzのAPに接続した場合と、5GHzのAPに接続した場合の両方で検証してみたが、印象はほとんど変わらなかった。

 計測の結果、遅延は約0.2秒で、BRAVIAより優秀なものの、値としては無視できない印象だ。Continuumで使おうと思えば、ギリギリ許容範囲という印象だが、積極的に使いたいと思えるほどではない印象だ。

NETGEAR PTV3000
PTV3000の遅延は0.2秒前後
Actiontec ScreenBeam mini2

 最後は、推奨品でもあるActiontecのScreenBeam mini2だ。前述したScreenBeam mini2 Continuumではないが、同等のファームウェア(5.3.9)を搭載したモデルとなる。

ScreenBeam mini2の接続画面。5.3.9でContinuumに対応する

 この製品に関しては、利用する無線LANの周波数とBluetoothの有無が評価を分けるポイントとなる。

 最初の印象は最悪だった。NuAns NEOに、Bluetoothのキーボードとマウスを接続し、5GHz帯のAPに接続した状態で、Continuumアプリから接続したところ、素早く接続され、すぐに画面が出力されたまではよかったが、とにかくマウスカーソルがポンポンと飛ぶ状況でまともに操作できなかった。イメージとしては、約2秒に1回マウスがひっかかる印象だ。

 おそらく画面出力に使用する周波数帯の問題だと予想し、5GHzのAPから、2.4GHzのAPに接続を変更してみたところ、この状況はかなり緩和された。ただ、それでもまだときどきマウスのひっかかりがある状況となった。

 明らかにBluetoothが干渉していると考えられる。

 実際、Bluetoothをオフにし、USB経由でマウスとキーボードを接続すると、上記のようなひっかかりは一切発生しなかった。また、前述したBRAVIAやPTV3000でもBluetooth接続のマウスとキーボードを使ったが、こちらもそれほど大きな影響はなかった。

5GHzでインターネット接続した状態で画面出力。Bluetoothマウスがひっかかりまくる
2.4GHzでインターネット接続した状態で画面出力。前半は若干ひっかかりが多いが後半はスムーズに動作する
USBでキーボードとマウスを接続。非常にスムーズ
USB type Cのハブを利用すればUSBキーボードやマウスを接続可能

 正確な資料に当たれなかったため、はっきりとしたことは言えないが、基本的にMiracastの場合、接続可能なアダプタの発見は常に2.4GHz帯を利用し、実際の画面出力には端末が現在接続に利用しているのと同じ周波数を使うと理解していたが、ScreenBeam mini2の場合、必ずしもそうとは限らないのかもしれない。

 ちなみに、端末側では無線LAN接続でどこにも接続しない状態(無線LANそのものはオン)、つまりLTEのみの状態で、Continuumアプリから画面出力することも可能だ。この場合、上記のようなひっかかりも発生しない。

 また、LTE+画面出力の状況で、5GHz帯のIEEE 802.11acのアクセスポイントに接続しようとすると、「○△□(SSID)には接続できません」と表示される(画面出力前は問題なく接続できる)。このことから考えても、標準では5GHz帯を使って接続しているのではないかと推測できる。

 予想や推測ばかりで申し訳ないが、いかんせん確認するすべがないためご容赦願いたい。

 このように、マウスが飛ぶ状況が見られるものの、インターネット接続の周波数帯を変更することで改善できるScreenBeam mini2だが、その実力は高く、遅延は0.1秒前後と、前述した2製品とは比べものにならないくらい優秀だ。

ScreenBeam mini2は遅延があまりない
ScreenBeam mini2を利用したContinuumでの動作例。いろいろなアプリを大画面で利用できる。デモ環境は2.4GHz帯APに接続し、Bluetoothのキーボードとマウスを接続。若干、マウスがひっかかるときがあるものの、画面の表示はスムーズなうえ、キー入力もストレスなくできる

外出先での環境に悩む

 というわけで、いくつかのワイヤレスディスプレイアダプタを使って、Continuumを実際に試してみたが、最新のアダプタは従来製品のような遅延がなくなり、かなり実用的な製品になっていることがわかった。

 ただし、Bluetoothとの組み合わせはあまり好ましくなく、特に画面出力の周波数帯と干渉した際は最悪となる。

 これらの点から考えると、現状のベストは、キーボードとマウスは有線で使うことだ。USB Type Cのハブを使えば、既存のキーボードやマウスを使うことも可能なので、かなり快適に利用できる。

 とは言え、おそらくContinuumを使いたいシーンというのは、出張先のホテルなどで簡易PCとして使う用途だろう。そう考えると、有線のマウスとキーボードとUSBハブを持ち歩くというのも、ちょっと考えにくい。

 どうしても、Bluetoothと併用したい場合は、インターネット接続の周波数帯を変更したり、LTEのみにするなどの工夫が必要だろう。

 Continuum自体は、なかなか便利な機能で、業務のみに使う企業のクライアントなら、これで良いんじゃないか? とも思えるほどだが、現状は、まだ発展途上の技術という印象だ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。