第28回:ホットスポットをどこまで便利に使えるか?
ソースネクストの「どこでも無線LAN」を試す



 ソースネクストから、無線LAN系ユーティリティの第2弾となる「どこでも無線LAN」が発売された。ホットスポットなどでの利用に最適とのことだが、果たしてその実力はどれほどのものなのだろうか? 早速、製品版を手に入れることができたので、レポートをお届けしよう。





複数のアクセスポイントの使い分けが可能

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 今回、ソースネクストから発売された「どこでも無線LAN」は、その製品名、そしてパッケージに記載されている「自宅、会社、ホットスポット圏内に入るだけで自動接続」というコピーが非常に強烈な印象を与える製品だ。正直、製品発売前にメーカーから発表されたリリースを見たときは、以前に本連載でも取り上げた「NetStumbler」が頭をよぎり、果たして不正アクセスの問題が生じないかと疑ったほどだ。

 しかし、実際に使ってみてその疑問は解けた。確かにこの製品を使うことで“どこでも”無線LANが利用でき、「圏内に入るだけで自動接続」可能なのだが、それは街中のアクセスポイントを片っ端から見つけ出して、無条件に接続するというようなものではない。イメージとしては、Windows XPのWireless Zero Configに近く、機能的にもWireless Zero Configプラスアルファという感じの製品だ。

 「どこでも無線LAN」をPCにインストールすると、近くにあるアクセスポイントを検出し、それをリストアップすることができる。これで、画面にある「接続」というボタンをクリックすれば、そのアクセスポイントに接続できるわけだ。このように接続したアクセスポイントには、次回以降、無線LANの圏内に入るだけで自動的に接続可能となる。とまあ、ここまでは、Windows XPのWireless Zero Configの機能と大差はない。


どこでも無線LANを起動すると、近くのアクセスポイントが自動的にリストアップされる。WEPの暗号化の有無などもひと目で判断可能だ

 なお、話はそれるが、「どこでも無線LAN」に限らず、Windows XPのWireless Zero Config、その他のユーティリティなどを利用すれば、街中でアクセスポイントを容易に発見することができる。しかし、発見したアクセスポイント(特に他人や企業などが設置しているもの)に、無断で接続するとなれば、それは犯罪になりかねないので注意したい。今年から施行された不正アクセス防止法では「他人のID・パスワードなどを無断で使用する行為」を禁止している。無線LANのESS-IDも解釈によってはIDと言える。これを無断で使用すれば、問題がないと言い切れないからだ。

 話を元に戻そう。「どこでも無線LAN」とWireless Zero Configとの違いとなるのは、過去に接続したことがあるアクセスポイントを「お気に入り」に登録して管理することが可能な点だ。Wireless Zero Configの場合、過去に接続したことがあるアクセスポイントはESS-IDでしか参照することができない。しかし、「どこでも無線LAN」の場合は、アクセスポイントに対してメモを書き加えることが可能となっており、たとえば「自宅」や「新宿の喫茶店」などのように、場所などでアクセスポイントを管理することが可能となっている。


過去に接続したことがあるアクセスポイントは「お気に入り」で管理可能。どこのどのようなアクセスポイントなのかをメモとして書き加えておくこともできる

 とは言え、圏内に入れば自動的に接続されるので、アクセスポイントを積極的に管理する必要はないとも言える。ただし、企業のネットワークなどでは、定期的にWEPキーなどが変更される場合もあるので、このような場合は重宝するだろう。ESS-IDだけで管理する場合、たくさんのアクセスポイントが登録されていると、会社のアクセスポイントがどれなのかが判断しにくい。しかし、物理的な場所などでアクセスポイントを管理できる「どこでも無線LAN」であれば、このような設定変更も容易だ。

 また、少し変わった機能として、無線LANの接続時にVPNクライアントを起動するというオプションも用意されている。このオプションを設定しておくと、無線LANの接続が確立された後に、あらかじめ作成しておいたVPN接続(Microsoft VPNクライアントなどが利用可能)が自動的に起動され、シームレスにVPNでの接続が可能となる。それほど利用頻度が高い機能とは言えないが、ホットスポットから会社のネットワークにアクセスする必要があるケースなどでは便利だろう。ただし、現状のホットスポットは、VPNパススルーに対応していないことが多いため、実際に利用できる場所は限られる。


オプションでVPNクライアントの自動起動も設定可能。ただし、利用頻度はあまり高いとは言えない

ソースネクストの製品ならではの「スーパーTips集」も付属。無線LANに関する基礎的な知識を得ることができる

アクセスポイントに接続した際のログも参照することが可能。いつ、どのようなアクセスポイントに接続したのかを確認できる




Service Pack 1適用後のWindows XPの場合は要注意

 なお、「どこでも無線LAN」をWindows XPで利用する場合は、OSのバージョンに注意したい。つい先日、マイクロソフトからWindows XP用のService Pack 1がリリースされたばかりだが、これが適用されたWindows XPでは「どこでも無線LAN」が正常に機能しない。具体的には、対応する無線LANカードを装着していても、それをアプリケーションから認識できないのだ。

 これは、Service Pack 1で、Wireless Zero Configの仕様が一部変更されたせいだと予想される。Service Pack 1を適用すると、WEPによる暗号化が設定されていないアクセスポイントに接続するときに警告が表示されるなど、多少、Wireless Zero Configの使い方が変化する。内部的な変更もいくつか加えられているため、これに対応しきれなかったのだろう。製品の発売とService Pack1のリリースが重なったのは、運が悪かったとしか言いようがない。対策されたパッチの登場を期待したい。





本命はWindows XP以外のOSでの利用

 このように、「どこでも無線LAN」は、Windows XPで利用する限り、Wireless Zero Configとの差が少ないために、あまりメリットは感じられない。また、Service Pack 1が適用されている環境では、現時点では正常に動作しないという問題がある。この点を考えると、やはりWindows XP以外のOSでの利用が最適と言えるだろう。

 最近では、一部の無線LAN製品に完成度の高いユーティリティが付属している。たとえばアイ・オー・データ機器の「WN-B11/PCMH」などには、Windows XPのWireless Zero Configや今回の「どこでも無線LAN」とほぼ同機能のユーティリティが付属している。しかし、このようなユーティリティが付属していない製品も存在するうえ、付属していても使いにくいケースもある。


アイ・オー・データ機器の無線LANカード「WN-B11/PCMH」に付属するユーティリティ。アクセスポイントの自動検索や接続する場所ごとにプロファイルを切り替える機能など、かなり完成度の高いユーティリティとなっている

 Windows Meや2000などの環境で、しかも製品に使いやすいユーティリティが付属してないケースとなると、かなり利用環境は限られるが、このようなケースでは無線LANをより便利に使うために「どこでも無線LAN」の導入を検討する価値は十分にある。ホットスポットや会社など、今後、無線LANが利用できる環境が増えてくることを考えると、このようなユーティリティを試してみる価値はあると言えるだろう。


関連情報

2002/10/1 11:19


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。