第32回:低価格化が進むIEEE802.11b対応無線LANルータ
NECアクセステクニカ「WARPSTARΔ WB7000H」を試す



 NECアクセステクニカから、IEEE 802.11b対応の無線LANルータ「AtermWB7000H」が発売される。すでに発売されているBR1500H、WA7500Hに続く、同社の新しいラインナップを形成する新製品だ。発売前だが製品版を試す機会を得たので、使用レポートをお届けしていこう。





新製品ラッシュを迎えたルータ市場

まもなく発売される「AtermWB7000HワイヤレスLANセット」

 今年の秋から冬にかけて、各社から続々とルータ、および無線LANルータの新製品が登場してきた。ルータ市場を全体的に見れば、今回の新製品の全体的なトレンドは、IEEE 802.11aへの対応、より高速なルーティングエンジンの搭載、高度なセキュリティ機能の実装、そして低価格化だと言えるが、ことIEEE 802.11b対応の無線LANルータに限っては、これらのうち高スループット化と低価格化が著しい。

 これまで、IEEE 802.11b対応の無線LANルータは、11Mbpsという無線LAN側の通信速度がボトルネックになることを考えて、あまり高スループット化が進まなかった。しかし、ユーザー側としては、無線LANのみでなく、当然、有線LANも併用することになる。しかも、ADSLの高速化、FTTHなどの普及といった回線側の高速化の背景もあり、高スループット化のニーズが高まってきている。このようなユーザーのニーズにこたえようというわけだ。

 また、有線ルータで、メーカー側が高スループット化のノウハウをある程度蓄積できた点も大きい。70Mbps、80Mbpsといった有線LANルータのルーティングエンジンをそのまま無線LANアクセスポイントに搭載すれば、高速な無線LANルータを設計することも難しくはない。これが、ようやく現実の製品として登場してきたわけだ。

 一方、低価格化に関しては、無線LANチップ自体の高集積化、低価格化などもひとつの要因としてあげられるが、何より市場の拡大が大きいだろう。ノートPCに無線LAN機能が内蔵されることが半ば当たり前になりつつあり、ユーザー側もあらゆるPCを無線LANで接続したいというニーズを持っている。ユーザーのニーズがあれば、ある程度の出荷台数が見込めるわけで、そうなれば今度は量産効果によって価格は下がってくることになる。また、ユーザー側が製品選びのポイントとして価格が重要な判断基準とすることを考えれば、メーカー側もコスト削減によって、これにこたえざるを得ないというわけだ。





高スループットエンジンを搭載

 このような市場動向の中、今回、NECアクセステクニカから登場したのが「WARPSTARΔ WB7000H」だ。位置づけとしては、同社がこれまでに販売していた「WARPSTARΔ WDR75FH」の後継と言えるが、機能的な面から考えると有線ルータの「BR1500H」の発展系とも解釈できるし、IEEE 802.11aに対応した無線LANルータ「WA7500H」の廉価版とも解釈できる、良い意味で中間的な位置づけを持つ製品だ。

 まず有線ルータ部分だが、これはBR1500などに搭載されているのと同様のルーティングエンジンを搭載している。BR1500Hは70Mbpsという高いスループットを誇る有線ルータだが、WB7000Hでもこれと同じ70Mbpsのスループットを実現している。もちろん、この値はメーカーがFTPによって計測した値となるので、実際にPPPoEで接続した場合の速度などは異なるが、これまでの無線LANルータに比べるとはるかに高速なスループットを実現している。ちなみに、Bフレッツ・ベーシックの回線に接続し、フレッツ・スクウェアで速度計測を行なったところ5回計測の平均で45.47Mbpsという数値が出た。この速度になるとパソコンの性能も影響してくるので、数値は参考程度にとどめてほしい。


フレッツ・スクウェア内で速度計測した結果。Pentium 4 1.6GHzを搭載するパソコンにWindows XPを使用した

 まあ、スループットに関しては、PCのベンチマークと同じで、その値が実際にどれだけ重要な意味を持つのか疑問ではあるのだが、遅いよりも速い方がよいのは事実なので、今回の高スループット化は歓迎すべき事だと言えるだろう。

 この他、ルータの機能としては、UPnPへの対応、VPNパススルー、DMZへの対応(サブネットを分けることが可能)、IN/OUT側ともに詳細な設定が可能なパケットフィルタリング、必要に応じてポートを開け閉めするダイナミックポートコントロールなど多彩な機能を備えており、機能的な不足はまったく感じない。また、フレッツ・ADSLなどのマルチセッションにも、以前に本連載で紹介したPPPoEブリッジで対応できる。





機能はそのままにコストを削減

 無線LAN部分に関しては、規格、およびWEPの152bit対応状況が異なるだけで(IEEE 802.11bのWB7000Hは非対応)、IEEE 802.11aに対応したWA7500Hと設定項目的にはほぼ同じだ。同社の無線LAN製品は、ネットワーク名が不明な場合に子機からの無線検索に応答しない「ESS-IDステルス機能」がひとつのセールスポイントになっているが、この機能も当然搭載されており、アクセスポイント付近でWindows XPのWireless Zero Configや各種無線LANユーティリティを実行しても、アクセスポイントのESS-IDが表示されることがないようになっている。このあたりは、他社製の無線LAN製品には、まだあまり見られない同社ならではの特徴と言える。


「ESS-IDステルス機能」は無線LAN設定から“ネットワーク名が不明の場合の参照”を拒否にすることで設定できる

 また、WEBページでの設定に加えて、本体に添付されているユーティリティでの設定が可能な点も、これまでのWARPSTARΔシリーズと同様で、非常に簡単にセットアップ可能になっている。無線LANカードの装着から、アクセスポイントの設定、インターネットへの接続までウィザードに従って設定するだけで完了するので、このあたりは初心者には非常に心強い。このような機能面、使いやすさといった面では、現状、販売されている無線LANルータの中では間違いなくトップレベルだろう。


外部アンテナ接続用の穴は上部に設けられるが、蓋は一度取り外すと元に戻らなくなるタイプ

 ただし、既存のWARPSTARΔシリーズから変更された部分もいくつかある。まず、本体に内蔵される無線LANカードが取り出し不可能になった。これまでのWARPSTARシリーズでは、本体上部のフリップを開けることで、PCカードスロットから無線LANカードを取り出すことができたが、今回のWB7000Hではこの機構が採用されておらず、カードは常に装着された状態となった。また、本体を支える台座部分が同製品のシンボルである「Δ」形状ではなくなったり、本体前面のインジケーター部分がクリア素材でなくなったなど、外見が若干簡素化された。なお、本体には、外付けアンテナを装着するための穴を開けることはできるので、カードが取り出せなくても問題なく外付けアンテナを装着することは可能だ。

 とは言え、カードを取り出すことなど滅多にないうえ、外観の違いも全く気にならないので、これらの点はほとんど問題にならないだろう。むしろ、最初のセットアップ時に無線LANカードを装着する手間が省けるので、考えようによっては今回の筐体の方が効率的だと言える。このような変更によって、本体と無線LANカードのセットモデルとなる「ワイヤレスLANセット」で、発売前だが23,000円前後の予約価格を掲示している店が多い。ここ数カ月で登場した無線LANルータとほぼ同じ価格帯となるので、価格的な競争力も高いと言えるだろう。





IEEE 802.11b対応製品としてはお買い得だが

 このように、WA7000Hは、IEEE 802.11b対応の無線LANルータとしては、かなり高い完成度を持つ製品だと言える。しかしながら、無線LANの需要は、今後IEEE 802.11a、もしくはIEEE 802.11b/11aのデュアルへと移行していくことが明白だ。個人的には、IEEE 802.11b/1aのデュアル対応製品が登場するのを待ちたいところだが、今すぐに無線LANルータが必要という人にとって、現時点でかなり買い得度の高い製品だと言えるだろう。


関連情報

2002/11/5 11:19


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。