第35回:待望の802.11a対応ワイヤレスLANコンバーター
ソニー PCWA-DE50を試す
家電製品のネットワーク化が進む中、初のIEEE 802.11a対応ワイヤレスLANコンバーターとなる「PCWA-DE50」がソニーから登場した。「PCWA-DE50」によって、はたして家電のワイヤレス化は進むのか、早速、同製品をテストしてみた。
●IEEE
ここ数カ月で、家庭用ゲーム機やハードディスクビデオレコーダーなど、家電製品のネットワーク化が急速に進んできた。もはや、家庭用ゲーム機でネットワークゲームを楽しんだり、ハードディスクレコーダーでiEPGの取得やPCへの映像転送などが行なわれることもそう珍しいことではなくなったわけだ。
しかし、このような家電の場合、ネットワーク化に際して、いくつか乗り越えなければならない課題がある。特にシビアなのが、配線の問題だ。現状、テレビとビデオの配線に苦労するようなユーザーがまだ多く存在するのに、そこに加えてネットワークの配線などが必要となれば、もはやパニックにもなりかねない。また、多くの場合、リビングなどに家電が設置されることを考えると、まさかリビングの中にズルズルとネットワークケーブルを這い回すわけにもいかないだろう。
このような状況の中、ソニーから発売されたのがIEEE 802.11aに対応した初のワイヤレスLANコンバーター「PCWA-DE50」だ。この製品は、もともと同社のPC「VAIO」シリーズ向けに開発されたものだ。同社は、PC戦略の主軸にVAIOのホームネットワーク機能を据えており、ルームリンク(PCNA-MR1)によって、家電との融合を目指している。具体的には、ルームリンクを家庭用のテレビに接続し、これとVAIOをネットワークで接続することにより、PCで録画したテレビ番組や音楽、画像など家庭用のテレビで再生可能にしているのだが、「PCWA-DE50」を利用することで、これをワイヤレス化することができる。
PCWA-DE50本体とACアダプタ。イーサネットポートはACアダプタ側に用意されており、本体からはイーサネットケーブルにより給電される(一般的なPoEと互換性はない) |
このように、「PCWA-DE50」は表向きはVAIO向けの製品となるが、実質的には単純なワイヤレスLANコンバーターとしても利用できる。PCはもちろんのこと、家庭用ゲーム機、他社製のネットワーク対応ハードディスクレコーダーなどに接続することもできるので、その応用範囲は広い。今回、製品を購入することができたので、早速、テストしてみた。
●なかなかうまく考えられている初期設定
まずは、初期設定だが、これは結構うまく考えられている。「PCWA-DE50」は、ブラウザを利用して各種設定が可能となっているのだが、初期設定をする際には、必ずPCと直結する必要があり、付属のユーティリティを利用する必要がある。
これは、IPアドレスがどのような値になっていても設定できるようにするためだ。実際に「PCWA-DE50」を利用したり、ブラウザで設定するためには、「PCWA-DE50」とPCに適切なIPアドレスが設定されていなければならない。しかし、これはユーザーの環境によって異なる。PCがDHCPに設定されている場合もあれば、特定のIPアドレスが固定で割り当てられている場合もある。
しかし、付属のユーティリティでは、どちらの環境でも設定できるように工夫されている。PCがDHCPの設定になっている場合、初期設定ではアクセスポイントに接続できないために、当然、DHCPサーバーからIPアドレスを取得できないが、この場合はAPIPA(Automatic Private IP Addressing)で割り当てられた「169.254.x.x」のアドレスを一時的に使って設定することが可能となっている。一方、PCに固定でIPアドレスが割り当てられている場合は、アクセスポイントにIPアドレスを設定するための画面が表示されるので、これに従ってIPアドレスを設定すれば、設定画面が表示されるようになる。もちろん、どちらの方法でも、初期設定でアクセスポイントに接続するための情報を登録してしまえば、あとは「PCWA-DE50」、PCともにDHCPでIPアドレスを取得できるようになる(アクセスポイントは自動検索可能)。
付属のユーティリティを利用すれば、ネットワーク上のPCWA-DE50を自動検索し、適切なIPアドレスを自動的に割り当てることができる。このあたりはよく考えられた仕様だ |
本体の設定はブラウザ経由で行なう。設定は非常にシンプルで、必要最低限の項目しか用意されていない。 |
他社製のこの手の製品では、初期設定をするためにPC側に一時的にIPアドレスを固定で割り当てなければならないことなどがあるが、この方法であれば、このような問題はない。PC側のIPアドレスを一切、変更することなく設定できる点は大きなメリットと言えるだろう。
ただし、PCの周辺機器として見た場合は、この方法でもかまわないが、家電製品だと考えた場合はもう少し工夫が必要になるかもしれない。たとえば、NECアクセステクニカの「Aterm ワイヤレスLANキット(イーサネットタイプ)」などは、イーサネット接続タイプの親機と子機がセットになって販売されているが、これは出荷状態で接続の設定が済んでいるために、実質的につなぐだけで無線LAN環境が構築できるようになっている。
もちろん、出荷時状態で接続の設定をする場合は、ユーザーがすでに構築している既存の環境とIPアドレスのサブネットが同じにならないと意味がないなどの問題もあるが、家電と組み合わせて利用することを考えると、これくらいのレベルにまで設定の難易度を下げなければならない可能性もある。ソニーは、IEEE 802.11a対応のアクセスポイントも発売しているのだから、このようなセット製品で、より簡単に設定できるような製品の展開も考えても良いのではないだろうか。
ちなみに、筆者の環境でのテストでは、アクセスポイントにNECアクセステクニカの「AtermWA7500H」を利用したが、他社製でも問題なく接続することができた。すでに、IEEE 802.11aの環境を構築している場合でも互換性は高いと言えるだろう。
●ビデオ映像の再生も快適
さて、実際の使用感だが、これはかなり快適だ。今回、同じくソニー製のルームリンクに「PCWA-DE50」を接続し、別の部屋にあるVAIOと接続してみたが、高画質(8Mbps)に設定されたビデオ映像やテレビのライブ放送を何の問題もなく家庭用のテレビで再生することができた。ビデオ映像が途中で途切れることなどもなく、実にスムーズな印象だ。
ルームリンクとの組み合わせにより、VAIOで録画したテレビ番組をワイヤレスで試聴可能。IEEE 802.11aなので、高画質で録画した映像も快適に再生することができた |
もちろん、利用する環境によっては、電波が届きにくいとこなどがあるかもしれないが、本製品はアセロスの第2世代チップセットを採用しているため、従来のIEEE 802.11a製品よりも電波の届く範囲が広くなっているという。1階と2階といったようにフロアが分かれていたり、建物の構造が鉄骨や鉄筋コンクリートなどの場合は電波が届きにくくなるかもしれないが、一般的な家庭ではほぼ問題にならないだろう。
ただし、アクセスポイント側でMACアドレスフィルタリングの設定をしている場合は、注意が必要となる。「PCWA-DE50」の場合、実際の通信に利用するのは、本体のMACアドレスではなく、接続した機器のMACアドレスとなる。つまり、アクセスポイント側には、「PCWA-DE50」のMACアドレスではなく、PCやルームリンクなどのMACアドレスを登録しておかなければならないことになる。これを間違えると、いつまでたってもアクセスポイントに接続できないので注意が必要だ。
また、「PCWA-DE50」は基本的に一台の機器にしか接続することができない。このため、複数の機器を接続したい場合でも、ハブを使って無線LANブリッジのように使うことはできず、必ず各機器に1台の「PCWA-DE50」が必要となる。他社製の802.11b対応ワイヤレスLANコンバーターの中には、ハブを利用して複数台の機器を接続できるような機器もあるので、この点は残念なところだ。
●ネットワーク家電との組み合わせに最適
このように、いくつか注意すべき点はあるものの、「PCWA-DE50」の完成度は高く、お買い得な製品だと言える。もちろん、もう少しすれば、他社からも同様の製品が登場してくるだろうが、少なくても現段階でIEEE 802.11aに対応したワイヤレスLANコンバーターは本製品しかない。今すぐ欲しいのであれば、良い選択肢だと言える。
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2002/11/26 11:17
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