第116回:ブロードバンドテレビの魅力を探る その3
4th MEDIAとBBTVの操作性、画質を比較する



 2回にわたって、4th MEDIAとBBTVを比較しながらブロードバンドテレビの魅力を探ってきたが、最終回となる今回は操作性や画質について検証してみることにする。





起動時間が気になるSTB

 「ブロードバンドテレビって快適?」 もしも、まだブロードバンドテレビを使ったことがない人にそう聞かれたら、個人的には正直答えに困ってしまう。快適かどうかを判断するには、何らかの基準が必要になるが、何と比較するかによって結論が異なるからだ。

 たとえば、仕組み的にほぼ同様となるPCのストリーミングと比較したとしよう。この場合、ブロードバンドテレビは、十分、快適と言っていいレベルだ。わざわざPCを起動する手間がないうえ、家庭用テレビの大画面で映像を楽しめる。また、リモコンを使ってリラックスしながら見られるのも大きな魅力だ。

 しかし、家庭用のテレビやCATV、CS放送などと比較するとなると話は異なる。確かにブロードバンドテレビは、オンデマンドという既存の放送サービスにはない魅力を備えているが、肝心の操作性や画質などといった点が高いとは言い難いためだ。

 STBの起動時間などは良い例だ。ブロードバンドテレビを楽しむには、リモコンでSTBの電源をONにしなければならないが、この起動時間が長い。BBTVの場合は電源ケーブルを接続したときのみ回線状況のチェックや認証などのために3分以上の時間がかかるが、それ以降は20秒前後で起動するため、さほど遅いとは感じることはない。しかし、4th MEDIAのSTBは電源ONから起動するまでに、常に1分以上の時間がかかってしまう。

サービス名Plala.TV on 4th MediaBBTV
STB沖電気サムスン
初回起動---3分22秒60
通常起動1分2秒6720秒41
※BBTVのSTBは初回起動後、一旦電源がOFFになるため、続けて起動したときの時間を計測

 1分という数字だけ見れば短いようにも思えるが、実際に使うとなると、この時間は非常に長く感じる。OSの読み込みや認証などに時間がかかっているのだろうが、もう少し、短い時間で起動するようにしてほしいものだ。このあたりは、CATVやCS放送などのSTBとは比較にならないところだ。

 また、4th MEDIAで採用している沖電気製のSTBについては、外観のデザインも気になった。リビングなど人の目につく場所に設置する機器なのだから、もう少し家庭向けのデザインであったら、と思うところだ。それに比べて、BBTVが提供するサムスン製のSTBは4th MEDIAのSTBよりも家電的なデザインに感じられた。


上が4th MEDIAのSTBで、下がBBTVのSTB。サイズ的には4th Mediaの方が小さいが、デザインはBBTVが家電的




カラフルで楽しそうなBBTVのポータル

 続いて、実際の操作性について検証してみよう。まずはポータル画面だ。4th MEDIA、BBTVともに、STBが起動すると、放送サービスやオンデマンドサービスに移動するためのメニューが表示されたり、おすすめのタイトルなどを紹介するポータル画面が表示される。

 個人的には、BBTVのポータルの方が画面の色づかいがカラフルで、中央にプロモーションムービーが常に再生されるなど、ひと目みただけで楽しそうなイメージが伝わってきて好感が持てた。これに対して、4th MEDIAのポータルは、画面左側に各種メニュー、右側におすすめのタイトルと説明が表示されるといったように、画像と文字を中心としたシンプルな構成だ。また、ポータルでは音声も一切再生されないため、STBの起動から、ポータルが表示され、実際に映像を再生するまでの間、静寂の時間が続く。


カラフルな色づかいで、中央にプロモーションムービーが再生されるBBTVのポータル左側にメニュー、右側におすすめタイトルというシンプルな構成の4th MEDIAのポータル。静止画と文字のみで構成されるため、物寂しい印象だ

 好みの問題もあるだろうが、BBTVに比べて4th MEDIAは楽しさの演出が不足しているという印象だ。ポータルのクオリティは、ユーザーが楽しそうだというイメージを持つためには重要な点だろう。4th MEDIAという名の通り、新しいメディアを目指すのであれば、もっと動的で、楽しいイメージのポータルを期待したい。





画面操作はキビキビ感に欠ける

 続いて、実際に映像を見るための操作について検証してみよう。ここで気になるのは、画面表示のスピードだ。BBTV、4th MEDIAともに、若干リモコン操作に対する画面の反応が鈍く、方向ボタンを押して、メニューを移動させようとすると、一瞬遅れて画面上のフォーカスが移動する傾向がある。

 メニューの移動程度であれば許容範囲と言えるが、“遅い”と感じたのは画面を切り替えたときだ。たとえば、ポータルのメニューから放送サービスやオンデマンドサービスを選択すると、画面が切り替わるまで2~3秒のタイムラグが発生する。ネットワークを介して、画像や文字を読み込んで表示しているという仕組みを考えると、しかたがないところかもしれないが、全体的なキビキビ感に欠ける印象だ。

 また、4th MEDIAの場合、リモコンのボタンの配置も気になった。画面操作は基本的にリモコンの方向ボタンと決定ボタン、戻るボタンを利用するが、このうち戻るボタンだけが、離れた場所に配置されているために押しづらいのだ。

 オンデマンドを再生する場合などは、ジャンルを選んでから元の画面に戻り、別のジャンルを選び直すという操作を頻繁に行なうことがあるのだが、戻るボタンの位置を確認しないと押せないため、この操作にストレスを感じてしまった。「ホーム」や「テレビ」、「ビデオ」などショートカットとして使えるボタンも用意されているのだが、こちらも配置的に使いづらいと感じた。

 これに対して、BBTVのリモコンは、方向ボタンの近くに戻るボタンが配置されていたり、よく使うボタンがリモコン中央部から上に集中して配置されており、直感的な操作ができた。リモコン本体が多少大きいのが難点といえば難点だが、使い勝手は悪くない。


BBTV(左)と4th MEDIA(右)のリモコン。4th MEDIAのリモコンは戻るボタンなどが見ながらでないと操作できなかった




機能は一長一短

 操作性は若干ながらBBTV有利という印象だが、機能的には4th MEDIAも負けてはいない。特に4th MEDIAで感心するのは、番組表が用意される点だ。ポータルから「番組表」を選ぶか、リモコンの「番組表」ボタンを押すと、現在、放送中の放送サービスの番組タイトルを一覧表示できる。数多くのチャンネルの中から見たい番組を探したい場合などは、圧倒的に便利だ。

 また、オンデマンド放送中の操作も豊富だ。2~8倍までの早送りと巻き戻し、1/2~1/16までのスロー再生、時間を指定したタイムサーチ機能なども利用できる。ユーザーインターフェイスはいまひとつな印象があるが、機能的には充実していると言えそうだ。

 ただし、唯一の欠点と言えるのが、購入済みのタイトルや購入中のタイトルをSTBから参照できない点だ。BBTVでは、購入履歴や現在レンタル中のタイトル、請求明細などを参照できるが、4th MEDIA(Plala.TV on 4th MEDIA)ではPCからWebページにアクセスしないと参照することができない。

 もちろん、他の家族に購入タイトルを見られたら困るというケースもあるかもしれない。しかし、せめて現在レンタル中のタイトルくらいは表示できるようにすべきだろう。オンデマンドのタイトルは、1回の課金で24時間視聴することができる。レンタル中のタイトルがわかれば、前日に家族の誰かが購入したタイトルをまだ見ていない他の誰かが見るという使い方もできるだろう。この点は、ぜひ改善してほしいポイントだ。





高画質であれば十分耐えうる画質

 さて、最後に気になる画質について検証してみよう。これは両者ともに、さほど良いとは言い難かった。もちろん、画質が高画質(4th MediaはMPEG-2 4.2Mbps、BBTVは4Mbps)に設定されていれば、シャープさに若干欠けるものの、視聴には問題ない画質と言える。しかし、標準画質(4th MEDIAはMPEG-2 2.5Mbps、BBTVは2Mbps)は、画面が見づらい時があった。

 具体的には、全体的にぼやけた印象の画面となり、動きの速いシーンや画面が切り替わるシーンでは、必ずと言って良いほどブロックノイズが発生してしまう。もともと筆者は画質には無頓着な方だが、標準画質の映像についてはさすがに気になってしまった。

 筆者宅の環境では、4th MEDIAをBフレッツで利用しており、BBTVも実効10Mbps前後の速度が出るYahoo!BB 45Mで利用できたため、幸いどちらも高画質での再生が可能だったが(BBTVは画質が自動設定で確認できないため、高画質であろうという予想ではあるが……)、回線速度が低い環境では、画質に満足できないユーザーもいるかもしれない。

 高画質のビットレートが4Mbps前後ということを考えれば、おそらく高画質での再生には回線の実効速度が6~8Mbps前後は必要なはずだ。これ以下の回線速度の場合は、画質も踏まえた上でブロードバンドテレビサービスの導入を検討するとよいだろう。





テレビの実力にはまだ及ばない印象

 このように、4th MEDIAとBBTVのサービスを比較しながら、ブロードバンドテレビについて検証してみたが、どちらのサービスもまだまだ実力不足という印象を受けた。BBTVは、STBにルータが同梱されていたり、ポータルや操作性の完成度も悪くはないレベルだと感じたが、いずれにせよ、どちらのサービスも前回解説したマルチキャストの問題や今回紹介したSTBの速度や画質など改善してほしい点も多くある。

 こういったサービスが普及するかどうかは、コンテンツの内容や数が重要視されるが、今回、実際に使ってみた限り、システム的な改善も必要だということを実感させられた。まだ始まったばかりのサービスに多くを期待するのも酷かも知れないが、今後はこういったシステム的な面の改善も期待したい。


関連情報

2004/9/7 11:22


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。