第313回:DTCP-IP対応で地デジ番組のネットワーク配信対応
バッファロー USB接続 地上デジタルチューナー「DT-H50/U2」



 バッファローのPC向け地上デジタルチューナー「DT-H50/U2(DT-H50/PCIも同様)」が、ソフトウェアバージョンアップによって新たにネットワーク配信機能を搭載した。この機能を利用したネットワーク経由での地上デジタル放送番組の視聴を実際に試用した。





PCを地デジサーバーとして利用可能に

DT-H50/U2

 バッファローから発売されている「DT-H50/U2」は、USB接続のPC向け地上デジタルチューナーだ。地上デジタル放送用のチューナー1系統を搭載しており、「PCastTV for 地デジ」と呼ばれるソフトウェアを利用することで、PC上での地上デジタル放送の再生、ハードディスクへの録画ができるようになっている。

 実売1万3000円~1万6000円前後ながら、BDへのコピーやムーブ(ダビング10対応)にも対応しており、PC用の手軽な地デジ環境としても人気の製品だ。

 製品の発売は今年の7月とまだ新しい製品なのだが、9月18日に大きなバージョンアップが実施され、注目の新機能が搭載された。録画した地上デジタル放送のネットワーク経由での配信機能だ。

 DLNA対応機器による手軽なネットワーク配信が可能だったアナログ放送の番組に対して、地上デジタル放送の番組は暗号化の関係で、これまでネットワーク配信の敷居が高かった。DVDレコーダと家庭用テレビの組み合わせなど一部の環境では可能だったが、今回の対応により、これが汎用的な環境でも利用可能となった。

 これまでPCの地デジ環境はローカルで録画してローカルで見るという使い方が主だったが、これによりネットワークへと世界が広がったわけだ。


バッファローのUSB接続地上デジタルチューナー「DT-H50/U2」。ソフトウェアのバージョンアップにより、DTCP-IPによるネットワーク映像配信に対応した背面




アップデート+専用ソフトで実現

 ネットワーク配信への対応は、大きく分けて2つのステップが必要になる。1つは本体のバージョンアップ、もう一つは専用ソフトのインストールだ。

 まずはバージョンアップだがこれは簡単だ。同社のホームページからアップデートプログラムをダウンロードして実行すれば良い。あらかじめPCにDT-H50/U2を接続し、付属のCDからドライバとアプリケーションをインストールしておくことが条件だが、実行後、画面上の指示に従ってハードウェアの取り外しや装着などを行うことで、ドライバやアプリケーションをアップデートできる。


ネットワーク配信への対応には、まずアップデートが必要。アプリケーションおよびドライバを最新版へと更新する

 続いて専用ソフトのインストールだ。DT-H50/U2は基本的にローカルで地上デジタル放送を再生、録画するためのハードウェアとなるため、そのままではネットワーク経由で映像を配信できない。この役割を行うのが、新たに提供された「PCastTV MediaServer」と呼ばれる専用ソフトになる。

 このソフトウェアは、インストール自体は難しくないのだが、一点注意しなければならないのは1台のPCにしかインストールすることができない点だ。ダウンロード時にCDキーとシリアル番号の入力が必要になり、インストール後に再びCDキーを入力してインターネット経由での認証を行う必要がある。


配信ソフトウェアのダウロードにはシリアル番号とCDキーの入力が必要
配信ソフトウェアの「PCasTV Media Server」。インストール後、動作させるにはCDキーによるアクティベーション処理が必要となる

 この認証操作は一度実行すると、他のPCなどからもう一度実行することができない。認証しないと配信機能が有効にならないので、慎重にインストールすべきだろう。

 これにより、DTCP-IPによる通信が可能となり、暗号化された地上デジタル放送の番組をネットワーク経由で配信、同じくDTCP-IPに対応したプレーヤーで再生することが可能となるわけだ。





DLNAクライアントの互換性に注意

 肝心の再生に関してだが、これにはDTCP-IPに対応したDLNAクライアントが必要になる。
 DLNAクライアント製品は家電を含むハードウェアにしろ、ソフトウェアにしろ、いろいろな製品が発売されるようになってきたが、DTCP-IPに対応した製品となると、実はそれほど多くない。

 現状は、同じくバッファローから発売されているネットワークメディアプレーヤー「LinkTheaterシリーズ(LT-H90LAN、LT-H90WN、LT-H90DTV)」を利用するか、東芝の液晶テレビ「REGZA」シリーズの一部モデル、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」シリーズの一部モデルを利用するのが一般的な選択肢となるだろう。

 まずは、LinkTheaterの「LT-H90WN」および「LT-H90LAN」でテストしてみたが、これは正式対応が謳われているだけあって、問題なく録画番組を再生できた。


正式対応となる同社製のLinkTheater LT-H90WN。IEEE 802.11nドラフト2.0対応のメディアプレーヤー背面

LT-H90WNを利用してPC上のPCasTV Media Serverへと接続。問題なく録画した番組を参照、再生できた

 続いて、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA KDL-20J3000」でテストしてみたが、こちらはサーバーおよびコンテンツまでは認識できるものの、肝心の再生がうまくできなかった。再生を開始しても、「再生できません」と表示されるため、DTCP-IPのデコードがうまくできないようだ。

 もちろん、DTCP-IPに対応していないプレーヤーの場合も再生は不可能だ。たとえば、PS3などはDLNAに対応しているものの、DTCP-IPには対応しておらず、TSファイルも認識しない。このため、コンテンツを参照しても「非対応データ」と表示される。


ソニーのBRAVIA KDL-20J3000を利用してみたが、コンテンツは参照できるものの、再生ができなかったDTCP-IPに対応していないPS3では、当然再生は不可。非対応データと表示された

 残念ながら、東芝のREGZAシリーズでテストすることはできなかったが、再生できる可能性はあるので、機会を見て再びテストしたいところだ。

 ちなみに、PCastTV MediaServerは、Cyberlink製のアプリケーションとなっているため、同社が扱っている「SoftDMA」などのDLNAクライアントで再生出来る可能性が高い。DTCP-IP対応のSoftDMAは東芝製のPCにプリインストールされているので、これを利用するという手もありそうだ。





有線LANでの利用を推奨

 このように、現状、最も確実なのは同じくバッファロー製のLinkTheaterを利用することだが、この場合はネットワーク環境に注意が必要だ。

 有線LANを利用するのであれば、サーバーとして利用するPCがよほど非力か、再生中にウィルススキャンやWindows Updateなどの余計なプロセスが起動しなければ、問題なく映像を再生することができるが、無線LANとなると環境次第となる。

 今回、木造3階建ての筆者宅において、同じ1階にアクセスポイントとLinkTheater(ドラフト11n対応の無線LANを内蔵したLT-H90WN)を設置した場合と、アクセスポイントは1階にLinkTheaterは2階に設定した場合とでテストしてみたが、後者の1階と2階でフロアをまたがる環境では27Mbps前後の速度でしかリンクできなかったため、映像を途切れ途切れにしか再生できなかった。

 では、速度が高ければ良いのかというと、同一フロアで270Mbps前後の速度でリンクさせた場合でも、ごくまれに映像が途切れる場合があった。

 映像再生の場合、単純に高い速度だけでなく、長時間に渡って安定した通信が要求される。しかし、チャネルの干渉や他のクライアントからの無線アクセスなどによって、どうしても連続した安定通信というのは難しい。17Mbpsというビットレートの地デジの場合、この影響が顕著に表れてしまうため、できれば無線ではなく有線での利用をおすすめしたいところだ。


フロアをまたがる環境では速度が十分でないため途切れ途切れの再生となる
同一フロアで高速な通信(270Mbpsリンク)が可能な場合でも連続して安定した通信ができないとスムースな再生は難しい

 なお、DT-H50/U2では、番組の録画先としてUSB接続の外付けハードディスクなども指定できるが、内蔵ハードディスク以外に録画した映像に関してはネットワーク経由で配信することはできない仕様となっている。このあたりも要注意のポイントだ。





再生環境とセットで揃えたい

 以上、バッファローのDT-H50/U2のDTCP-IPを利用した地デジ番組のネットワーク配信を試してみたが、課題はあるものの、汎用的なPCで地デジの配信ができるようになったこと自体は歓迎したいところだ。

 ただし、ネットワークの課題もあるが、やはり再生の互換性については実際に試してみないとわからない。最終的にはどのような機器だろうが意識せずにつながるようになるのが理想だが、現状はLinkTheaterのような確実に利用できる再生環境とセットで利用するのがベストだろう。

 また、個人的には、ぜひネットワーク経由での早送りや巻き戻し再生もサポートして欲しいところだ(現状はできない)。これができるようになれば、何とか有線の配線を取り回してでも、他の部屋での再生環境を整えたいと思わせる製品だ。


関連情報

2008/10/7 11:04


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。