第322回:低価格ながら150Mbpsの高速化を実現した「AtermWR4500N」
11nベースの技術「11nテクノロジー」で通信速度を高速化
NECアクセステクニカから、無線LANルータの新製品「Aterm WR4500N」が登場した。IEEE 802.11nの技術を応用することで、低価格機ながら150Mbpsという速度を実現しているのが特徴だ。その実力を検証してみよう。
●「デュアルバンド+α」の無線LANルータ
WR4500N |
NECアクセステクニカから新たに登場した「AtermWR4500N」は、いわゆる低価格帯の無線LANルータの“ちょっと上”を目指した製品だ。
現状、無線LANルータは、低価格帯のIEEE 802.11b/g製品(54Mbps)、中間に位置する2.4GHz帯のみ対応のIEEE 802.11b/g/n製品(300Mbps)、ハイエンドの2.4/5GHz対応IEEE 802.11a/b/g/n製品(300Mbps)に分けられる。今回取り上げるNECアクセステクニカのラインナップで言えば、低価格帯がWR1200H、中間がWR8100N、ハイエンドがWR8500Nという位置付けと言えるだろう。
今回のAterm WR4500Nは、このラインナップで言うところのAterm WR1200HとAterm WR8100Nの中間となる。あまり高い製品は手が出ないが、IEEE 802.11b/gよりも速く、遠くまで電波が届く製品を求めているユーザー向けの製品だろう。
WR1200Hと比較した際の大きな違いはその通信速度だ。WR4500Nの最大通信速度は150Mbps、IEEE 802.11gの理論値である54Mbpsの約3倍を実現している。
同社製品としては初となる速度だが、これはIEEE 802.11nドラフト2.0の技術を応用したものとなる。IEEE802.11nは、MIMOによる2ストリームの同時通信や2チャネル同時利用のデュアルバンド、さらに細かな通信効率の向上などによって、現状300Mbpsの速度を実現しているが、今回のWR4500Nでは、このうちMIMOを省いた1ストリームのみの通信であり、IEEE 802.11gの54Mbpsをデュアルバンド+通信効率化によって150Mbpsにまで高めたことになる。
ただし、この通信速度はIEEE 802.11nのプロファイルには含まれているものの、正式なIEEE 802.11nの規格となるかどうかは未定だ。このため、本製品では「11nテクノロジー」というあくまでも11nの技術を応用した製品であるという表現が用いられている。
NECアクセステクニカのAterm WR4500N。150Mbpsの通信に対応したミドルレンジモデル。アンテナ内蔵でスッキリとしたデザインに仕上がっている | WANポート×1、LANポート×4、ルータ/アクセスポイントモード切替スイッチなどを搭載。LAN、WANともに100BASE-TX対応となる |
●パフォーマンスも中間的
では、150Mbpsの実力はいかほどのものなのだろうか? 木造3階建ての筆者宅にて実際にテストした結果が以下のグラフだ。
親機 | 子機 | 規格 | 最大速度 | 1F | 2F | 3F | |||
GET | PUT | GET | PUT | GET | PUT | ||||
Aterm WR8100N | PC内蔵(AR5008X) | 2.4GHz 11n | 300Mbps | 53.3 | 75.3 | 44.1 | 68.2 | 36.8 | 37.8 |
Aterm WL300NU-G | 2.4GHz 11n | 300Mbps | 52.5 | 73.1 | 44.8 | 65.8 | 35.2 | 36.1 | |
Aterm WR4500N | PC内蔵(AR5008X) | 2.4GHz 11n | 150Mbps | 44.3 | 70.8 | 43.5 | 56.8 | 37.8 | 42.9 |
Aterm WL300NU-G | 2.4GHz 11n | 150Mbps | 43.2 | 68.2 | 42.9 | 45.8 | 33.5 | 38.4 | |
EeePC内蔵(AW-NE766) | 2.4GHz 11n | 135Mbps? | 36.1 | 36.6 | 27.3 | 21.5 | 21.8 | 12.1 | |
※サーバー:ATOM230/RAM2GB/HDD1TB/RealTek GigabitEther PCI NIC/Windows Home Server(IIS FTP) ※クライアント:富士通 LOOX R/A70/Core2duo SL7100/RAM4GB/HDD120GB/Windows Vista |
比較として、300Mbps対応のAterm WR8100Nでも計測し、さらにクライアント側も付属のUSB子機に加えて、ノートPC内蔵のアダプタでも計測している。
結論から言えば、パフォーマンスとしてはAterm WR8100Nに比べると若干劣るものの、確実にIEEE 802.11gを凌ぐ値が得られた。テスト環境のせいかGETよりもPUTの性能の方が高いのだが、FTPによる計測でPUTで最大70Mbpsの速度を計測できている。
2階、3階での測定でも30~40Mbpsでの通信が可能であったので、パフォーマンス的には良好と言って良さそうだ。これなら、価格差を考えてもIEEE 802.11b/gの無線LANルータを購入するよりもお得感が高い。
とは言え、筆者宅もそうだが、最近は無線LANの普及が進んだためにデュアルチャネルで完全に空いている帯域を確保することが相当困難になってきている。今回のテストも、なるべく影響を受けないタイミングをねらって計測しているが、実際の速度は周囲の環境や利用状況によって異なる。
ユーティリティで電波の状況をチェック |
空いているチャネルの確保が難しい場合は、当然のことながらパフォーマンスは低下するので、あらかじめチャネルをチェックしてから、場合によっては5GHz帯を選ぶのも手だ。実際、筆者宅では普段5GHz帯(Aterm WR8500N)を利用しているが、こちらは近距離ではあるが100Mbps越えを実現できている。
ちなみに、今回のテストでは富士通の「LOOX R/A70」、およびAsusのネットブック「EeePC 901-X」も利用したが、両方とも問題なく接続することができた。また、時間の関係で値の計測はできなかったが、Intel製の「WiFi Link 5300AGN」でも接続を確認できた。
ただし、150Mbpsでリンクするかどうかは、ドライバや設定、さらに通信環境に左右される。たとえば、EeePCの場合、おそらくドライバの設定でガードインターバルの設定が800で固定されているか、通信状況の関係で「GI=400」でのリンクができなかったため、今回のテストでは135Mbpsでしかリンクしなかった。
また、OSのプロパティで確認すると300Mbpsと表示される場合もあるなど、正式規格ではないがゆえの混乱もあるようだ。
付属のユーティリティでの速度。150Mbps前後で通信できていることが確認できる | 内蔵無線LANなどをOSのプロパティで確認すると300Mbpsと表示される |
●セキュリティ対策はマルチSSID+無線LANオン/オフで対応
また、最近、何かと話題になっているセキュリティ機能だが、こちらも従来モデルと同様にマルチSSIDによって、WPAとWEPの2つのSSIDを利用できるようになっている。これにより、通常のPCはWPA、WEPにしか対応していないゲーム機はWEP側のSSIDに接続することができる。
ただし、残念ながらWPAとWEP間の通信を遮断することはできないため、継続的にWEPを使い続けることに対する注意は必要だ。
もちろん、無線LANの設定画面で、SSIDごとに無線機能を有効/無効に設定することもできるので、場合によってはWEP側の無線LANを無効にしてしまうこともできる。ゲーム機などを接続する必要がない場合は、無駄にWEPのSSIDを外部に公開する必要もないので、購入後、すみやかに無効にしてしまうと良いだろう。
マルチSSIDによるWPAとWEPの使い分けが可能。WEP側を無効にすることもできる |
このあたりの対策は、利便性とのバランスが難しく、どのような実装をすべきか悩ましいところではある。WPAとWEP間の通信を遮断したとしても、踏み台になる可能性も残るため、WEPでしかつながらない機器が世の中からなくならない限り、完全な対応というのはできない。
ただ、普段はWEP側を無効にしていて使うときだけ有効にするというのは、被害に遭う可能性を低めるという点である程度有効な手段なので、個人的にはボタンを押してから1~2時間だけWEP側のSSIDを有効にするといった対策も、暫定的な対処としては良いのではないかと考える。
●機能的には上位機種と同等でお得感あり
このように、150Mbpsという上限速度ながら、実際の通信速度は上位機種にも迫るAterm WR4500Nだが、機能的にも上位モデルとほぼ同じだ。
無線LANの接続設定に関しては「らくらく無線スタート」によるボタン設定が可能なうえ、「らくらくネットスタート」による回線に応じた動作モードの自動判別機能も搭載されている。また、ルータによるフィルタリングサービスとなる「インターネット悪質サイトブロック for BBルータ」も利用可能だ。
機能的には上位モデルとほぼ同じ。フィルタリングサービスも利用できる |
ハードウェアとしても、内部に2本のアンテナが内蔵されたスッキリしたデザインとなっており、部屋に設置しても違和感がない。
アンテナ内蔵でも、長距離での通信に強いロングレンジ設計となっており、フロアをまたがる場合でも実用的な速度での通信が可能となっている。あまり費用はかけたくないが、なるべく速く、遠くまで届く無線LAN機器が欲しいと考えいている人に最適な製品と言えそうだ。
関連情報
2008/12/9 11:02
-ページの先頭へ-