第327回:WPSやホームグループなどWindows 7のネットワーク機能を検証
ネットワークがより手軽に使える3つの新機能
ベータテストが開始され、その実体が次第に明らかになってきたWindowsの最新OS「Windows 7」。そんなWindows 7の機能の中で、今回注目したいのがネットワーク機能だ。無線LANのWPS対応、ホームグループなどの機能を検証した。
●ライブラリ・WPSプッシュボタン・ホームグループ
パフォーマンスの高さなどから、ベータ版ながらもおおむね高い評価を得ているWindows 7。スペックの低いネットブックでも無理なく使えるようで、いつまでXPの時代が続くのかという心配もどうやら解消されそうだ。
Windows 7の機能については、すでにさまざまな媒体でレビューが行なわれているが、今回はその中からネットワーク関連の機能に注目しながら、その実力を検証していくことにする。
Windows 7の新機能のうち、ネットワーク関連で注目すべきなのは大きく分けて3つ。1つは「ライブラリ」、もう1つは「WPSプッシュボタン方式」、最後が最大の注目とも言える「ホームグループ」だ。それでは、各機能について見ていこう。
●共有フォルダもシームレスに扱えるライブラリ
まずはライブラリだが、これはどちらかというとファイル管理機能で、ネットワークと直接は関係がない。Windows 7ではPC上のデータを「ライブラリ」という単位で管理できるようになっており、たとえば「ピクチャ」ライブラリであれば、ユーザーごとの個別の「ピクチャ」フォルダとパブリックの「ピクチャ」など、複数フォルダをライブラリとしてシームレスに扱える。
注目すべきは、このライブラリにはローカルのフォルダだけでなく、ネットワーク上の共有フォルダも追加することができる点だ。これにより、従来はローカルと共有フォルダでアクセスする場所が違っていたファイルも、ライブラリからシームレスに扱えるようになる。
ただし、ライブラリに追加できるのは、Windows系のOSで共有されているフォルダ(インデックスが作成されているフォルダ)に限られる点が興味深い。このため、たとえばWindows Home Severの共有フォルダはOKだが、LinuxベースのNASはライブラリへの追加がNGなどという事態が発生する。
シームレスにローカルとネットワークのフォルダを扱えるという機能は、使ってみるとなかなか便利なため、もしかすると現状苦労しているWindows Home Severの普及に一役買う可能性があるかもしれない。深読みかもしれないが、実は非常に戦略的な機能なのではないかとさえ思えるほどだ。
Windows 7のライブラリ。複数のフォルダをまとめて管理できる | ライブラリへの追加画面。共有フォルダもWindowsベースなら追加可能 |
●WPSプッシュボタンでも設定可能
続いての注目点は、無線LAN機能の強化だ。無線LAN接続のための機能が強化され、接続が非常に楽にできるようになった。
通知領域に表示されるアイコンをクリックすると、近くに存在するアクセスポイントの一覧が表示され、その中から接続したいSSIDをクリックし、暗号キーを入力すればすぐに無線LANに接続可能となる。わざわざ接続のプロパティやユーティリティを起動する必要がないため、非常に手軽に設定できるようになった。
接続が簡単にできるようになった「ワイヤレスネットワーク接続」 |
しかも、WPSへの対応も大幅に強化された。WPSに関しては、Windows VistaでもPINコードによる設定がサポートされていたが、Windows 7ではこれに加えてプッシュボタン式での設定にも対応している。
もちろん、これらの設定を利用するには機器側がWPSをサポートしている必要があるが、筆者が試してみたところ、すでに発売されている無線LAN機器でもWPSによる設定を利用することができた。
具体的には、バッファローの「WZR2-G300N」でPINコード方式の設定が、KDDIがひかりone向けにレンタル提供している「Aterm BL190HW(NECアクセステクニカ製)」でプッシュボタン式の設定に成功した(BL190HWではボタン設定をWPSのみに設定する必要あり)。
いずれもWPSをサポートしている機種ながら、WZR2-G300NはPINコード、Aterm BL190HWはプッシュボタンと方式が異なっているのは、言わばWindows 7との相性の問題だ。PINコード、プッシュボタン、もしくは手動設定のいずれの設定が可能かは、Windows 7から接続先のSSIDを選択した際に、OS側で自動的に判断される。
つまり、現状は、WZR2-G300NはPINコード対応の機種、Aterm BL190HWはプッシュボタン対応の機種であると、Windows 7が判断したことになる。このあたりは、今後、アクセスポイント側が、WPS対応と同時にWindows 7対応を進めていくことで改善されていくことだろう。
このように、まだ対応は完全ではないが、OS標準機能でボタン方式による設定が可能になったのは非常に便利だ。内蔵無線LANでの接続が非常に楽になれば、もはやPCにユーティリティをインストールする必要もない。Windows 7で設定の敷居がぐっと下がれば、無線LANの普及もさらに加速することだろう。
バッファロー製無線LANルータを利用した際の接続画面。PINコードによる接続が可能だった | KDDIひかりone用の無線LANルータでは、WPSプッシュボタン式の設定が可能。問題なく接続することができた | Aterm BL190HWの設定画面。WPSプッシュボタンで設定する場合は、ボタン設定をWPSに設定しておく |
●「AlphaUser$」ユーザーで接続するホームグループ
最後のホームグループだが、これもホームネットワークの普及に一役買うことになりそうな重要な機能だと感じた。
Windows 7のインストール時の設定でも表示されるため、Windows 7を利用した人であれば見たことがある人も多いだろうが、ホームグループはネットワーク上のPCで手軽にファイルを共有するための機能だ。従来のWindows Vistaでも、パブリックフォルダの共有機能が存在したが、これと比べるとさらにシンプルかつ安全にファイルを共有することができる。
使い方としては、まずネットワーク上の1台のPCでホームグループを作成する(インストール時かネットワークセンターから)。すると、ランダムに生成されたパスワードが画面上に表示される。
このパスワードをネットワーク上の他のPCからホームグループへの参加時に入力することで、1つのグループとして設定され、参加したPC間でライブラリを共有することが可能となり、エクスプローラーの画面でホームグループという一覧からアクセスできるようになる。
ホームグループを利用することで、PC間で手軽にファイルを共有できる | ホームグループに参加するPCはエクスプローラーから手軽に参照できる |
一体どういう仕組みなのかと疑問に思うかもしれないが、基本的には従来のファイル共有の仕組みと何ら変わりはない。
ホームグループを作成したPCでコンピュータの管理からローカルユーザーを確認してみると分かるが、標準では登録されていなかった「AlphaUser$」というユーザーアカウントが新たに作成されていることがわかる。
要するに、従来のVistaなどではパスワード保護共有が有効になっているおかげで、ユーザー自らがネットワーク上のPCに相互に作成しなければならなかった認証用のアカウント(アクセス元PCのアカウントをアクセス先のPCに、その逆も)をWindows 7のホームグループでは自動的に作成してくれるというわけだ。
もちろん、ユーザーを認証するためにAlphaUser$のパスワードをすべてのPCで統一する必要があるが、これを認証用のパスワードから生成することで、統一していることになる。
試しに、AlphaUser$のパスワードを強制的に変更してみたが、やはり変更したPCへのアクセスができなくなったので、ホームグループでこのアカウントが使われていることはほぼ間違いないだろう(ホームグループを作成し直せば復旧する)。
ホームグループ作成後のローカルユーザー。標準では存在しなかった「AlphaUser$」が追加されている | 試しにAlphaUser$のパスワードを変更してみると…… | パスワードを変更したPCはホームグループの一覧からアクセスできなくなる |
なお、今回、ホームグループの動作を検証する中で、いくつかのトラブルが発生したので、その現象と解決方法を紹介しておく。
- ホームグループへの参加ができない
同一ネットワーク上に複数のホームグループが存在する(した)場合、パスワードを入力してもエラーで参加できない場合がある。電源が切れているPCを含め、すべてのPCでホームグループへの参加を終了してから、もう一度、新たにホームグループを作成して参加し直すことで改善される。 - ホームグループ上のPCが表示されない
しばらく待つと表示されることがある。もしくは、ネットワークセンターで現在のネットワークの場所を確認し、ホームネットワーク以外の場合はホームネットワークに変更。
ホームグループへの参加ができない場合、すべてのPCの参加を解除してから作り直す。セキュリティ対策ソフトの動作などにも注意 | ホームグループの一覧にPCが表示されない場合でも、ネットワークからはアクセス可能。仕組みとしてはAlphaUser$を使った認証となるため同じフォルダにアクセスできる |
●DLNA関連の機能にも今後は注目
以上、簡単ではあるが、Windows 7のネットワーク機能について検証してみたが、ライブラリにしろ、WPSにしろ、ホームグループにしろ、とにかくネットワークを手軽に利用できるようになったのは大きな魅力だ。
ここまで設定を裏方で自動処理されると、逆にトラブルが発生したときの原因究明や対処が難しくなりそうだが、それでも誰もが手軽にネットワークを使えるようになるメリットは大きい。
このほか、今回は検証できていないのだが、Windows 7ではDLNAガイドライン1.5相当のメディア共有機能が搭載されるという情報もあり、家電などとの連携にも大きな期待が持てる。このあたりは、また改めてレポートすることにしよう。
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2009/1/27 11:10
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