テレワークグッズ・ミニレビュー

第126回

世界初のナトリウムイオンモバイルバッテリーは極寒にも酷暑にも強い!? じゃあ-10℃の冷凍庫で実験してみよう!!

まだ雪の残る北海道で写真家 中西敏貴さんにも触ってもらった

リチウムイオンと違って極寒でも弱くならないモバイルバッテリー

 先日、エレコムから世界初のモバイルバッテリーが発売された。モバイルバッテリーという存在が世に出て結構時間が経ったと思うが、このタイミングで何が世界初なのかと思ったら、リチウムイオン電池ではなくナトリウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーなのだと言う。

 モバイルバッテリーやPD関連というと、最近話題の製品は中国の企業ばかりが目立っていた中で、日本企業のエレコムからこうした世界初の製品が出たのは気持ちとしてはやっぱりうれしくなる。これはすぐにでも触ってみたい!! そう思った。

損傷しても発火しにくい安全なモバイルバッテリー

 まずは基本的なスペックを見ていくと、USB Type-CとUSB Type-Aをそれぞれ1ポートずつ持ったモバイルバッテリーで、USB Type-CポートはPD充電にも対応。1ポート接続時は最大45Wの出力が可能なので、多くの場合、ノートPCでの充電も可能だ。

世界初、ナトリウムイオン電池を使ったモバイルバッテリー

 USB Type-Aは最大18W給電が可能。接続機器を自動に見分けて最適な出力で最速に充電できるという。また、2ポート利用時は合計最大20Wでの出力が可能。

 容量は9000mAh。ただしリチウムイオンバッテリーと比べると電圧が3.0Vと低い(リチウムイオンは3.7V)ので、一般的なリチウムイオンのモバイルバッテリーだと7300mAh相当の容量ということになる。スマホを充電するのには十分だが、PCを充電するのにはやや心許ない容量と言えるだろう。

 リチウムイオンバッテリーと比べて優れている点は、なによりレアメタルであるリチウムやコバルトを必要としないことで、長期的視点でいえば、資源の不足や、それにともなう価格の高騰を避けることができ、将来性がある。レアメタルの採掘では環境問題や人権問題が語られることもあって、そうした部分でもメリットがあるだろう。

 短期的というか、すぐに感じられるユーザーのメリットとしては、まず安全性の高さが挙げられる。昨今モバイルバッテリーを起因とした火事がしばしばニュースになるが、リチウムイオンバッテリーは強い衝撃などによって損傷することで発火することがあるが、ナトリウムイオンバッテリーはそうした場合にも発火しにくく、安全性が高くなっている。

2024年に発生したリチウムイオンバッテリーによる火災。モバイルバッテリーが44件と最多(東京消防庁のWebサイトより)
モバイルバッテリーから出火した火災の事例(東京消防庁のWebサイトより)

 加えて、秒間300回、1日24時間温度を監視するThermal Protectionも搭載。過充電、過放電、過電流防止機能、短絡保護機能、温度検知機能の5つの保護機能を持たせていて、安心して使うことができる。UN38.3(国連勧告輸送試験)合格品で、機内持ち込みも可能だ。

 寿命が長いのも特長の1つ。一般的なリチウムイオンのモバイルバッテリーのサイクル寿命が約500回なのに対し、ナトリウムイオンバッテリーはその10倍、約5000回のサイクル寿命を持つ。市場想定価格は9980円と、同程度の容量のリチウムイオンバッテリーと比べると割高感があるが、寿命が10倍ならむしろコスパは優れる。

 そして高温や低温に強いというのもメリットで、なんと-35~50℃で使える(放電時)という。例えば冬場の屋外でやけにバッテリーの減りが早く感じたことはないだろうか? リチウムイオンバッテリーでは推奨の温度範囲が0~35℃と狭い上に10℃を下回るとエネルギー効率が悪化して、バッテリーの減りが早くなってしまうわけだ。

 ノートPCにしろスマホにしろデジカメにしろ、冬場に予想以上にバッテリーが減ってキモを冷やすことがあるが、他にもウィンタースポーツをやられる方などにとっても、これは結構重要なポイントになるんじゃないかと思う。

 一方で高温も実はリチウムイオンバッテリーの寿命を縮めてしまう原因になる。さらにリチウムイオンは高温になると発火の可能性もある。さすがに夏場の車内に放置するのは70℃ぐらいまで上がることもあるので危険だが、それ以外であれば、温度はほぼ気にしなくて良さそうで、先のサイクル寿命5000回もちゃんと使い切ることができそうだ。

 ということで早速買ってみたかったのだが、これがどこも予約中になってしまっていて手に入らない。

 まだ発売されていないのかと思ってメーカーに問い合わせたところ、発売はしているけど需要に供給が追いついていないらしく、生産は順次行っているもののお待たせしてしまっている状態とのこと。ただ、製品はぜひ使ってみて欲しいとのことで、送っていただけることになった。というわけで今回は提供品でのレビューとなる。

使い勝手は極めて普通。ただし大きい……

 さて、ご提供いただいておいてなんだが、初見の印象は「デカい」と思ってしまった。9000mAhという容量から想像するイメージよりもだいぶ大きい。ちょうど二つ折りの財布ぐらいのイメージだ。

 電池容量に対するサイズ感としては、ざっとリチウムイオンの倍ぐらいじゃないだろうか。手持ちの19200mAhのリチウムイオンバッテリーと体積的には同じぐらいだ。

手持ちのリチウムイオンバッテリーと比較してみた。写真左手が19200mAhのモバイルバッテリー、右手は9600mAhで充電器も一体になったモバイルバッテリー
寸法は高さ106mm、幅87mm、奥行き31mmほど

 ただし持ってみると重さとしてはそこまでではない。電池容量に対する重さはリチウムイオンより重いのだが、大きさが倍ぐらいあるのに対して重量比はそこまでではないので、一般的なモバイルバッテリーのずっしり感をイメージして手に取ると、大きさの割にはむしろ軽く感じる。

重量。公称350gとあったが実測では347g。見た目の大きさの割には重くない
19200mAhのリチウムイオンバッテリーは大きさは同じぐらいで重さは411g

 見た目としては派手派手しさはない。むしろ地味だ。最近のモバイルバッテリーだと残量を表示する液晶が付いているものもあるが、そういったものはなく残量は4つのLEDで表示されるのみ。

 実はこの地味なデザインは意図したものとのことだ。サイクル寿命5000回とかなり長く使われる製品になるので、長く使われても傷や汚れが目立ちにくいデザインにしているのだとか。

 加えて再生プラスチックを使っているという点もある。同製品は環境負荷を考慮していて、パッケージも全て紙でできていてプラスチックレスのパッケージとしている。リチウムやコバルトを使わない点も合わせて環境負荷を考慮したモノづくりということなのだろう。

 最近だとAnkerなどをはじめとした中国の一部ブランドがとても豪華なパッケージになっていて、見た目はいいが、箱を潰すのにも苦労するほどになっているのだが、そことは目指す方向が違うというわけだ。個人的には非常に好ましく思う。

残量はLEDインジケーターのよる表示のみとシンプル。だが、これも10倍の寿命を考慮したもの
パッケージは全て紙。本体は再生プラスチックを使用。10倍の寿命もあわせて環境負荷の少ない製品にしている

 実際の使い勝手としては、これまで使ってきたリチウムイオンバッテリーとの違いは感じない。PCに繋いでみたところちゃんと45Wで接続できたし、そこにスマホを繋いで2ポート同時に利用したら、PC側が15Wでの接続となった。複数ポート接続時はどちらも5V出力になるとのことなので、PC側が5V/3A、スマホ側が5V/1Aになっているのだと思う。

USB Type-CポートにノートPCを接続。45Wで接続できている
USB Type-AにiPhoneを繋ぐとPCの表示は15Wの給電となった

 電源ボタンを2回押しで低電流モードも使えるので、イヤホンなどの充電も可能。

 充電は一般的なPD充電器が利用可能で、推奨としては30W以上の充電器が望ましいとのこと。満充電までの時間は約2時間。充電をした状態でUSB Type-Aポートにスマホなどを繋げば「まとめて充電」もできる。

本体への充電は30W以上のPD充電器で行う。本体を充電しながらUSB Type-Aで繋いだスマホに充電する「まとめて充電」も可能

冷凍庫で-10℃にして充電してみた

 と、これで終わってはなんなので、手持ちの冷凍庫を使って-10℃でどれぐらい稼働するのかを実験してみた。-10℃というと、リチウムイオンバッテリーなら適用範囲外だが、果たしてどれぐらい電気を引き出せるのか?

手持ちの冷凍もできる車載用冷蔵庫を使って-10℃の環境を作ってテストしてみた

 本当はちゃんとした電子負荷などを使うべきなのだが、持っていないので、今回はUSB電源で動くSwitchBotのサーキュレーターを使った。ここにエレコムのモバイルバッテリーをつなぎ、間にUSBのテスターを入れることで、バッテリーが空になるまでに実際に取り出せた電力量を測定する。

 まずは室温約22℃のなかでテストを開始。風量を最大、上下左右の首振り、そしてライト点灯と、電力消費が最大になるよう設定した。それとこのサーキュレーターは本体にもバッテリーを搭載しているので、関係ないとは思うが、本体内のバッテリーが空になるまで使ってからテストを行った。

サーキュレーターをモバイルバッテリーで駆動。風量は最大、上下首振りと照明もつけて最大負荷になるようにした
部屋の温度は約22℃

 途中で状況を確認すると、約8.9V、1.5Aほどが供給されていて、最終的にサーキュレーターが止まった時点でテスターを確認すると、1時間44分で23.14Whを使ったことになっていた。バッテリーの容量が27Whなので85.7%ほど取り出せており、これはなかなか良い結果だ。

約8.9V/1.5Aで給電されていた
常温時の結果。1時間44分で23.14Whが取り出せた

 次に-10℃でのテスト。まずは十分に冷やした冷凍庫の中にエレコムのモバイルバッテリーを入れて30分間放置し、モバイルバッテリーを十分に冷やしたところからテストを開始した。

まずは-10℃の中で30分放置してから計測を開始した
庫内からUSBケーブルを引っ張りだし、サーキュレーターを回す。冷気が漏れて庫内の温度が上がらないようテープですき間をふさいだ

 途中で確認すると、電圧は約8.8Vと先ほどとおおむね同じだったが、なぜか電流が1.9Aほどとさきほどの約1.5Aと比べると大きくなっていた。サーキュレーターの設定は変えていないのだが、やっぱりちゃんとした電子負荷を使えばよかったのかもしれない。

 そしてサーキュレーターが止まったところで結果を見ると、1時間11分で20.03Whの表示。時間が短いのはやはり消費電力が大きかったからだろう。なのでちょっと条件としては揺れてしまったが、結果的には常温時に取り出せた電力量と比較して約15%のダウンということになった。

途中の状況。電圧は約8.8Vと先ほどとあまり変わらなかったが、なぜか電流が1.9Aと多くなってしまった。やっぱりちゃんとした電子負荷装置を買うべきだった
-10℃での結果。1時間11分で20.03Whを取り出せた。22℃の時と比べて約15%ほどの低下だ

 というわけで、-10℃まで冷やすとさすがにまったく弱らないというわけではないようだ。15%ダウンを多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれだと思うが、冬場の屋外の撮影だと、カメラのバッテリーなどは文字通り半減する印象なので、リチウムイオンでは対応できない-10℃でも15%しか減らないというのは結構スゴいと個人的には思う。

極寒、酷暑、世界を股に掛ける自然写真家 中西敏貴さんに触ってもらった

 しかしだれにでもオススメできるかといえば、やはりネックになるのはその大きさで、少しでも荷物を少なくしたい、軽くしたいという人には、リチウムイオンのほうが向いていると思う。

手に持ったときの大きさ。二つ折りの財布ぐらいだろうか

 それでも、安全性という部分は、昨今の出火の事件を見ていると気になるポイントで、たとえばタブレットや携帯ゲーム機の充電用として子供に持たせるのであれば、多少重くてもこちらのほうが安心できる。

 また、真夏や真冬に屋外で活動される人にもオススメだろう。真夏に海に遊びに行くとか、冬にスノボに行くときなどは心強いはず。特に寒い時期はスマホのバッテリーも弱りやすいので、モバイルバッテリーは欠かせないはず。

 そう考えると、レビューしたいと声を上げておいてなんだが、これをレビューすべきなのは、いつも空調の効いた部屋にいるインドア派な筆者じゃない気がしてきた。

 ではどんな人ならこの製品を使い倒せるのか? この製品をオススメしたくなる人は……? と考えたところで1人最適すぎる人を思いついてしまった。

自然写真家の中西敏貴さん

 それが、北海道の美瑛を拠点に活躍する自然写真家の中西敏貴さんだ。今ではカメラ好きなら多くの人がその名を知る有名な写真家だが、実は10年以上前、まだ今ほど有名になる前からお付き合いがあって、そんな縁もあって急なお願いにもかかわらず使ってみてもらうことができた。

 中西さんは真冬の北海道の-10℃以下で発生するダイヤモンドダストの撮影などを行うため、美瑛にいる間は毎朝、日出前から撮影に行き、1日2000枚以上の写真を撮っている。最近は海外での撮影も増えていて、パキスタンやサハラ砂漠での撮影など、極寒だけでなく酷暑でも撮影を行っていて、まさにこの製品をレビューするのに最適な人だと思う。

 実は依頼した直後にもパキスタンに行く予定があったので、あまり長くは触ってもらえていないが、コメントをいただけたので掲載したい。

 氷点下20℃にもなる環境下では、バッテリーの消費が早くなりますし、海外の僻地の撮影では電気がないこともあって、モバイルバッテリーによる充電は救いになります。

 キヤノン EOS R5 MarkIIはUSB接続による充電と給電に対応していて、特に給電についてはバッテリーを選ぶのですが、接続してみたところ、充電も給電も使うことができました。極寒での星空撮影やキャンプでの撮影などを行うことの多い写真家には、とてもよろこばれる製品だと思います。

まだ雪の残る北海道にて。キヤノン EOS R5 MarkIIでは、USB接続で充電も給電も使うことができた

 今年も海外撮影を多く予定しているので、飛行機に持ち込める点、寒さ、暑さに強い点、などを考えると、飛行機を使って旅をする際に選ぶバッテリーとしても最適ですね。

 特に環境に配慮したバッテリーというのも、自然を撮る写真家としてはうれしいところです。

 大きさについては事前に聞かされていましたが、確かに大きいですね。

 ただ、写真家としては多少大きくても良いのでカメラバッテリーを複数回充電できるくらい大容量のものが欲しいです。実は1月に行ったアルジェリアでも5日間電源を確保できない状況で、予備のバッテリーを持っていったものの最終日には足りなくなってしまって、ちょうどモバイルバッテリーがあればと思ったばかりです。

 自然写真家としてはとても気になる製品なので、ぜひ大容量化の展開も期待したい製品です。

中西さんの作例。こちらは拠点としている美瑛でのもの
こちらは流氷、氷点下数十℃という環境での撮影も多い
写真はサハラ砂漠。電気のない辺境の地での撮影も多い
こちらはパキスタンのフンザ

 とのことだった。

 確かにキヤノンのEOS R5やR7はUSB接続した外部バッテリーから給電することが可能になっている。特に冬の星景撮影などでは、長時間露光に寒さも加わってバッテリーには過酷で、極寒の中でもバッテリーが弱りにくいのは頼もしいだろう。特に予備の純正バッテリーを買うのが高いのでモバイルバッテリーを使っているという声もあって、そういったニーズにはちょうどハマりそうだ。

 今回は自然写真家の中西さんの声を聞いたが、ほかにも極寒酷暑でこんなバッテリーを待っていたというニーズはありそうで、今後のバリエーション展開も期待したいところだ。

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