第336回:アイ・オー・データ機器「HVL4-G2.0」
新ファームでREGZAからの録画やPCからのファイル共有に対応



 アイ・オー・データ機器から、LAN接続HDD「HVL4-G2.0」用の最新ファームウェアが公開された。東芝の液晶テレビ「REGZA」と連携したムーブ専用の機器から進化し、録画やPCからの利用にも対応してより使いやすくなった本製品を試した。


機能強化とともに値下げした「HVL4-G2.0」

 東芝の液晶テレビ「REGZA」のユーザー、そしてデジタル放送をバリバリ録画する相当なヘビーユーザーでなければ、少々手を出しにくい製品。アイ・オー・データ機器が2008年4月に発売した「HVL4-G2.0」のイメージは、このようなところだったのではないだろうか。

 そんな本製品が今回、より買いやすくなって再登場することになった。3月18日に従来価格の11万1615円から、7万5810円に大きく値下げされた点も大きいが、最大の特徴は何と言っても新ファームウェアによって、より柔軟な利用ができるようになった点だ。


HVL4-G2.0背面にはLANポートやUSBポート、電源スイッチ、リセットスイッチを備える

 同じく3月には、同社はDLNA 1.5やDTCP-IPに対応する「HVL1-Gシリーズ 」と呼ばれる新型のNASを発表したが、今回リリースされたHVL4-G2.0用のファームウェア「1.10」によって、新製品と同等の機能が利用可能になった。なお、「HVL1-Gシリーズ」と「HVL4-G2.0」は、「LAN DISK AV」という共通の愛称がつけられている。

 具体的に追加された機能は、以下の4点になる。

  1. 同社製地デジキャプチャボードからのダビング操作に対応
  2. コンテンツの再ムーブ機能の追加
  3. REGZAからの直接録画に対応
  4. [All Video]カテゴリなどからのコンテンツ削除に対応

 これに加え、6月に公開予定のファームウェアでは、「スカパー!HD」チューナーからの録画、東芝のHDDレコーダ「VARDIA」へのムーブにも対応する予定となっている。

 これまでの本製品は、DTCP-IPに対応したNASではあったものの、実質的には「REGZA」の内蔵HDD、もしくはUSB接続したHDDに録画したコンテンツのムーブ専用機器でしかなかった。しかし、今回のファームウェアによって、「REGZA」の録画先としても使えるようになり、さらに簡易的ながらPCからのファイル共有も可能となった。これにより、汎用的なNASとしての用途も広がったことになる。

 ムーブ専用機器に7万円と言われるとかなり躊躇するが、“プラス録画”“プラスPC”からの利用が可能なNASが、2TBで7万円台というのであれば、十分に購入を検討する価値がありそうだ。


最新ファームウェアで利用する

ファームウェアは設定画面から手軽にアップデート可能

 というわけで、従来版の「HVL4-G2.0を」お借りして、実際の機能をテストしてみた。

 まずは、最新ファームウェアへのアップデートだが、これは簡単に実行できる。ネットワークに接続した本製品の設定画面をPCもしくはREGZAのWebブラウザから開き、ファームウェアのアップデートを実行すれば良い。これで、サーバーに最新ファームウェアの有無が確認され、自動的にアップデート処理が開始される。ダウンロードと更新に若干の時間が必要になるが、自動的に行なわれるので以降は手間なくアップデートできるだろう。

 アップデートが完了すると、トップメニューに後述する「コンテンツ操作」というメニューが追加され、さらに詳細設定画面に「フォルダ公開」というメニューも追加されたことが確認できる。見た目の変化は小さいが、この2つの機能の追加はかなり大きな進化と言える。


アップデート前(左)とアップデート後(右)の画面。基本的なデザインは同じだが、「コンテンツ操作」などの機能がいくつか追加されている

 まずは、「フォルダ公開」から見ていこう。この機能は、文字通り、本製品のフォルダを外部に公開するかという設定だ。設定と言っても、公開を有効にするか(標準は有効)、無効にするかを選択するのみとなっているが、これにより、ネットワーク上にある他の機器から本製品の共有フォルダの参照が可能になる。

 試しに、ネットワーク上のPCから「\\[IPアドレス]」でアクセスしてみると、「disk1」と「contents」という2つの共有フォルダが表示。ファイルをコピーするなどの作業が問題なくできた。


新たに追加された「フォルダ公開」機能PCからも共有フォルダを参照可能だ

フォルダ共有機能が追加され、REGZAからの直接録画に対応した

 ただし、PCからの利用はあくまでも簡易的な機能となる。共有フォルダをユーザー側で作成できない上、アクセス制限の機能などもない。単純に標準で用意されている共有フォルダを参照できるのみだ。

 なぜ、簡易的な機能になっているのかというと、この機能はあくまでREGZAからの直接録画とDLNAによるメディア共有を目的にしたものだからだ。REGZAの一部機種では、ネットワーク上に接続したNASに番組を録画する機能を搭載しているが、この録画機能の保存先として利用するためにフォルダが「disk1」として共有されている。

 ファームウェアを更新した本製品をネットワークに接続すると、REGZAから録画先の設定で選択することが可能になる。この「disk1」を録画先として登録しておけば、地上デジタル放送などの番組をREGZAから直接本製品に録画できるわけだ。

 一方、「contents」フォルダは、DLNAによるメディア公開用として利用する。本製品はDLNA 1.5に対応しているが、この機能を利用して写真や音楽、映像(ムーブした地デジは別フォルダで管理される)を公開したい場合は、PCなどから「contents」フォルダにファイルをコピーしておけば良い。

 以上のように、PCからの利用を考えると少々物足りないと感じる人もいるかもしれないが、このあたりは考え方次第だろう。例えば、小さな事務所などでファイル共有に使いたいなら本格的な機能が欲しいが、家庭での利用を考えると、REGZAからの録画やムーブがメインで、PCからの利用はデジタルカメラで撮影した写真やビデオを保存しておくだけで良いというケースもある。

 こうした点を考えると、事前に用意されたフォルダにアクセス制限なしで使える本製品の共有機能でも、十分な場合もあることだろう。


「LAN DISK AVシリーズ」間でのムーブが可能に

 続いて、今回のバージョンアップでもう1つの注目点である、「LAN DISK AVシリーズ」間でのコンテンツの再ムーブ機能を見ていこう。

 これまでは、REGZAで録画した映像(内蔵HDDやUSB HDDなど)をムーブすると、著作権保護技術「DTCP-IP」によってDLNA対応機器で再生が可能になるものの、コンテンツ自体は本製品に保存されたままで、それ以上のムーブはできなかった。いわば、本製品がコンテンツの終着点だったわけだ。

 これに対して、新ファームウェアを適用すると、いったん、REGZAからムーブしたコンテンツを、さらにネットワーク上にある他の「LAN DISK AVシリーズ」へムーブできる。

 ムーブの方法は簡単だ。PCからブラウザを利用して設定画面を表示し、「コンテンツ操作」を選択すると、フォルダとタイトルが一覧表示されたファイル転送画面が表示される。ここでムーブしたいコンテンツを選択し、転送先としてネットワーク上の別の「LAN DISK AVシリーズ」を選べばコンテンツのムーブが実行される。

 長時間番組では、ムーブにそれなりの時間を要する(500MBの5分番組で2分前後)。ただ、複数コンテンツを一括選択してムーブができるので、夜間や外出前などに実行させると楽だろう。


コンテンツのムーブ画面。REGZAからムーブしたコンテンツは「dlna」フォルダに保存されている。これを選択してネットワーク上の他のLAN DISK AVシリーズに再ムーブ可能コンテンツは複数同時に選択可能。それなりに時間はかかるので、夜間帯などに実行するのが楽だろう

 こうした新機能によって、万一、1台目の機器の容量が上限に達した場合でも、機器の追加とムーブによってコンテンツを保存し続けることが可能になった。本製品はRAID 5対応で高い信頼性を確保してはいるものの、やはり長期間使っているとHDDの寿命なども心配になる。HDDの交換も可能だが、別の機器へのムーブによってコンテンツの長期保管が可能になるというのは大きなメリットだろう。

 なお、前述したように本製品では、REGZAからの直接録画に対応しているが、録画したコンテンツはそのままではネットワーク上にある他のDLNA対応機器で再生はできない。DTCP-IPを使って再生するためには、必ずムーブ操作によって暗号化の鍵管理をREGZAから本製品に変更する必要があるためだ。結果的にコンテンツの保存場所は同じ本製品の中にあるものの、必ずムーブ操作、それもREGZAからのムーブ操作が必要になる点には注意しよう。


DTCP-IPでの再生には必ずムーブ操作が必要。同じHVL4-G2.0内のコンテンツもムーブしなければ再生できないムーブしたコンテンツはDTCP-IP対応のテレビやネットワークメディアプレーヤーで再生可能。写真はソニーの「KDL-20J3000」

新ファームウェアの適用で、より使いやすい製品に

 以上、今回リリースされた新ファームウェアによって、本製品はかなり使いやすい製品に進化した。

 録画した番組を視聴して消すという使い方の場合、本製品は選択肢として考えられなかったが、直接録画への対応によって、このような使い方にも対応できるようになった。ムーブ操作は必要だが、録画した映像をDTCP-IPによってネットワークプレーヤーなど、他の機器でも再生できるようになるので、テレビの利便性がかなり向上するはずだ。

 また、もう少し待つ必要はあるが、スカパー!HDへの対応、VARDIAへのムーブなどにも対応する予定だ。USB接続型のHDDなどと比べると値は張るが、それだけの価値はじゅうぶんある機器と言えるだろう。


関連情報

2009/3/31 11:02


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。