本日公開!「Windows Home Server Premium」
一般向けプレビュー版試用ガイド
“Vail”のコードネームで開発されていた、次期Windows Home Server「Windows Home Server Premium」の一般向けプレビュー版(英語版)が公開された。マイクロソフトのテスター向けサイト「Microsoft Connect」からダウンロードできる。その概要と基本的な使い方を紹介していこう。連休にインストールして楽しむためのガイドとなれば幸いだ。
●Windows Server 2008 R2ベースに進化
4月26日(日本では4月27日未明)、Windows Home Serverの次期バージョンとして開発が進められていた「Vail」こと「Windows Home Server Premium」の一般向けプレビュー版が公開された。
現行のWindows Home Serverは、Windows Server 2003(製品としてはSmall Business Server 2003)をベースに、使いやすい管理コンソール、ファイルやメディアの共有機能、ネットワーク経由でのクライアントバックアップ、リモートアクセス機能、アドインによる機能拡張などの機能を搭載した家庭向けのサーバー製品だ。
現行のWindows Home Serverのコンソール画面(左)。英語版での発売から現行のPowerPack3まで着実に進化してきた |
Acer Aspire easyStore H340、ASUS TS miniなどの専用機のOSとして採用されているほか、DSP版などでも販売されており、データの保存やバックアップなどの用途に幅広く活用されている。
2007年9月の国内発売以降、日本語版の登場、PowerPack1、PowerPack2、PowerPack3へのアップデートと着実に進化してきたが、今回のWindows Home Server Premiumの登場で、ついに次世代製品へと大きくステップアップすることとなった。
今回新しく登場したWindows Home Server Premiumは、従来製品の利便性はそのままに基本的なアーキテクチャも含め大きな進化を遂げた製品だ。
まず、ベースとなるOSだが、Windows Server 2008 R2へと変更された。Windows 7とも共通するアーキテクチャを持つ64bit版の最新サーバーOSを採用することで、高い安定性とパフォーマンス、そして最新のハードウェアへの対応が可能となった。
これまでのWindows Home Serverは、利用するハードウェアによってはドライバーのインストールに苦労したり、せっかく搭載した4GB以上のメモリを活かすことができなかったが、Windows Home Server Premiumなら、そんな心配も無用だ。
ベースとなるOSがWindows Server 2008 R2に進化。64bit版になったことで、4GB以上のメモリも利用可能になった |
機能的にも、数々の工夫が盛り込まれている。詳細はベータ版と一緒に配布されるレビューワーズガイドを参照してほしいが、主な特徴を挙げると以下の通りだ。
・サーバー管理機能の強化
- デザインが一新されたDashboard(旧コンソール)の採用
- サーバーのシステム・データバックアップ機能(スケジュール対応)
・クライアントの接続性の向上
- 「Launchpad」と呼ばれる新しいコネクタソフトウェアの採用
- ローカルアカウントとサインインアカウントの分離
- ホームグループのサポート
- メディアストリーミング(メディア共有)機能の互換性向上
・ストレージ性能の向上
- Drive Extenderの機能強化による信頼性とパフォーマンスの向上
・バックアップとリストアの利便性向上
- 32bit/64bit共通のリストアCD
- Windows 7の100MB領域を含むリストア時のボリューム自動構成
・リモートアクセスの刷新
- ユーザーインターフェイスのデザイン改善
- サーバー上の音楽、写真、映像ファイルのストリーム配信
・SDKの提供
デザインが一新されたサーバー管理ツール「Dashboard」 | ユーザー認証や各機能へのアクセスに利用する「Launchpad」 | 使いやすくなったリモートアクセス |
実際に使ってみると、これまでのWindows Home Serverで不便に感じていた部分がかなり改善されていることが実感できる。たとえば、Launchpadの採用で、クライアントのローカルに登録されているユーザー名とサーバー上のユーザー名を必ずしも一致させる必要がなくなったうえ、Windows 7のホームグループにも対応したため、ユーザーアカウントを意識せずにファイルを共有できるようになった。
リストアも地味だが非常に使いやすくなった。32bit/64bitを起動時に選択できるうえ、WinPE環境が最新になったおかげで、比較的新しいクライアントでも標準ドライバーでハードディスクやネットワークが認識されるようになった。もう、いざリストアというときに、ドライバーを保存したUSBメモリーを用意しなくて良い。
リモートアクセスでのストリーム配信機能も便利だ。サーバー上に保存されている映像をインターネット経由でリモート再生することができる。Windows Media Playerで再生可能なファイルであれば基本的に再生できるうえ、回線速度に応じてトランスコードされるなど、なかなかの高機能となっている。
このほか、SDKも同時に提供され、アドインなどの開発環境も充実することになる。二世代目に進化し、かなり実用性が高くなった印象だ。
●パブリックベータのインストール
では、実際の使い方を紹介しよう。現状のバージョンは英語版となるが、コネクタソフトやリモートアクセスのサイトなどの一部で日本語の表示も可能なため、実用も十分に可能だ。
まず、システム要件を確認しておこう。Windows Home Server Premiumのインストール要件は以下のようになっている。
CPU:1.4 GHz x64 processor
メモリ:1GB RAM
HDD:160GB以上
前述したように、64bitのWindows Server 2008 R2ベースとなったため64bit対応CPUが必須となるが、クロックは1.4GHzなので、ATOMでも対応可能だ(ノートPCやASUS TS miniなどATOM Nシリーズは64bit非対応なので不可)。
ただし、メディアストリーミング機能を利用する場合、映像のトランスコードに相当のCPUパワーが要求される。実際に試してみたところATOMなどではCPU負荷が相当に高くなるため実用性を考えるのであれば、デュアルコアCPUと2GBのメモリは必須だろう。
一方、対応クライアントだが、Windows XP SP3、Windows Vista SP2 32bit/64bit、Windows 7 32bit/64bitとなる。Windows XPもサポートされているので、ネットブックなどが存在する場合でも安心して利用できる。
実際のインストールだが、今回は、以下の構成のPCを用意してみたが、何の問題もなくインストールすることができた。ドライバーもWindows Server 2008 R2、もしくはWindows 7 64bit版のものが利用できるので、チップセットのINFやグラフィックドライバなどもメーカーサイトからダウンロードすることで簡単に適用できる。
MB :DG45FC
CPU :Pentium Dual-Core E6300 2.8GHz
RAM :8GB
VIDEO :オンボード G45
LAN :オンボード(Intel82567LF-2)
HDD :1TB(Seagate)
現行のWindows Home Serverに比べてインストール時間が大幅に短縮されたこともうれしいが、標準ドライバがかなり充実しているので、インストールに関してはさほど苦労しないだろう。
ダウンロードしたファイルからサーバーインストール用DVDを作成し、起動するとインストールが開始される。簡単な設定だけでインストールが可能。ディスクが自動的に初期化される点に注意 |
なお、インストール時にネットワーク接続が存在しないとエラーが発生する。LANケーブルを接続して再起動すればインストールが続行されるが、はじめから接続しておいた方が良いだろう。
また、既知の問題としてWestern Digitalの製品で採用されているAdvanced FormatのHDDにインストールしようとするとインストールに失敗するケースが報告されている。このほかの既知の問題や対処方法などは、リリースノートに記載されているので、事前に目を通しておくと良いだろう。
インストールが完了したら、基本的な設定をしておく。インストール時に日本語を選択することで、IMEがインストールされるが、タイムゾーンは米国のものが設定されている。まずは、これを日本に変更しておこう。
また、キーボードが101入力になってしまうことがあるが、これも「Microsoft USB Comfort Curve Keyboard 2000(106/109)」など、適当に106配列のキーボードのドライバに更新することで修正が可能だ。
言語やタイムゾーンの設定はDashboardの「General Setting」から変更できる。まずはタイムゾーンを日本に変更しておこう |
●クライアントを接続する
サーバーのインストールが完了したらクライアントを接続する。インストール直後でもクライアントからネットワークを参照することでサーバーが表示されるが、そのままではアカウントが登録されていないためアクセスできない。
クライアントの接続には、まずコネクタソフトウェアをインストールする。ネットワーク上のクライアントでブラウザを起動し、「http://サーバー名/connect」にアクセスする。すると、コネクタソフトウェアをインストールするためのリンクが表示されるので、クリックしてインストールしておこう。
クライアントからブラウザで「http://サーバー名/connect」にアクセス。コネクタソフトウェアをダウンロードしてインストールする | インストールが完了するとデスクトップにDashboardとLaunchpad、サーバーの共有フォルダーへのショートカットが作成される |
現状のWindows Home Serverでは付属のCD、もしくは共有フォルダからコネクタソフトウェアをインストールできたが、今回からはブラウザからのインストールとなる。ちなみに、実際にアクセスしてみるとわかるが、インストール用ページ、およびコネクタソフトウェアは日本語化されている。
インストールはウィザード形式で進められ、途中でサーバーのパスワードを入力する程度と簡単だが、PCに現状のWindows Home Serverのコネクタソフトウェアがインストール済みの場合はエラーが発生する。あらかじめ削除&再起動しておこう。なお、ネットワーク上に現行Windows Home Serverが存在すること自体は問題ない。リモートアクセスのポートフォワードなどは調整する必要があるが、LAN内に関しては併用も可能だ。
このほか、BIOSの時刻が正確でない場合にクライアントからの接続に失敗したり、クライアントのコンピューター名が日本語で設定されていると失敗するケースもあるので注意しよう。
コネクタソフトウェアのインストールが完了したら、デスクトップ上の「Dashboard」アイコンをダブルクリックしてサーバーの管理画面を表示する。ホーム画面に「GETTING STARTED TASKS」として、バックアップやリモートアクセスの構成が表示されるが、最初はアカウントの登録をしておくと良いだろう。
「Users」タブを表示して「Add a user account」をクリック。ウィザードが起動したら、名前、ユーザー名、パスワードを入力する。
前述したように、Windows Home Server Premiumでは、サーバー上のアカウントとクライアントのローカルアカウントと必ずしも一致しなくてもいい。もちろん、一致させた方が共有フォルダーへのアクセスなどもスムーズだが、任意の名前を設定しておこう。
なお、ユーザーの説明に表示される名前、およびアカウント名に関しては日本語も設定可能だが、アカウントに日本語を使うことはあまりないのでおすすめしない。
まずはユーザーアカウントを追加。ユーザー名を指定後、共有フォルダーのアクセス設定やリモートアクセスの許可などを設定する |
●共有フォルダーを使ってみよう
ここまで設定できれば、とりあえずローカルでのファイル共有やバックアップが可能になる。
クライアントで「Launchpad」を起動し、登録したユーザーアカウントでサインインする。この状態でLaunchpadのリンクから「共有フォルダー」をクリックするか、デスクトップ上のショートカットを利用すると、サーバー上の共有フォルダーにアクセスできる。
「Music」、「Pictures」、「Recorded TV」、「Videos」などは従来のWindows Home Serverと共通だが、「Software」と「Users」が姿を消し、新たに「Documents」が追加された。ユーザーごとの個人フォルダーがなくなったのは残念だが、あくまでも共有するファイルをサーバー上に保存するという意図なのだろう。
Launchpadを起動して登録したユーザー名とパスワードを入力。サインインするとサーバーの資源を利用できる | サーバーをホームグループに参加させることも可能。この場合、共有フォルダーの利用に関してはアカウントの管理は不要となる |
なお、Dashboardの「General settings」から「HomeGroup」を選択すると、Windows 7で構成されたホームグループにWindows Home Server Premiumを参加させることができる。すでにホームグループでファイルを共有している場合は、使い慣れた環境のままでWindows Home Server Premiumを導入可能だ。
このほか共有フォルダーに保存したデータはメディアストリーミングによる配信も可能となっている。「Music」、「Pictures」、「Recorded TV」、「Videos」に関しては、標準でメディアが公開される設定になっており、ネットワーク上のWindows Media Player 12やDLNAガイドラインに準拠した機器などで、サーバー上のメディアを再生できる。
従来のWindows Home Serverに比べると、互換性がかなり向上しており、再生できるメディアが増えているが、それでも実際にどのファイルを再生できるかは環境次第だ。実際に、いくつかの形式の映像ファイルをサーバー上に保存し、手元のクライアントで再生できるかを確認してみたところ、以下のような結果になった。
・Windows Media Player :ローカルで再生可能ならリモートでも再生可能
・SONY Bravia KDL-20J3000 :再生不可
・TOSHIBA REGZA 42ZV500 :再生不可
・SONY PS3 :AVCHD/AVI/MP4/WMV/MPEG2再生可能
Windows Media Playerを利用するとほとんどの形式のファイルを再生可能 | PS3からも利用可能。再生できる形式も豊富 |
Windows Media Playerのメディアストリーミングと同等であれば、再生側の機器に合わせてフォーマットをトランスコードできるはずだが、リリースノートにも記載されているように、現在のベータ版では、MPEG2のエンコーダーおよびデコーダー、AC3のデコーダーが搭載されていない。ライセンスの関係だと思われるので製品版では解消されると思われるが、現状はすべてのメディアを再生できるというわけにはいかないようだ。
●リストアが楽になったバックアップ機能
前述したように、コネクタソフトウェアをインストールすると、共有フォルダーへのアクセスが可能になるが、これと同時にバックアップも自動的に有効になり、初回のバックアップが自動的に実行される。
コネクタソフトウェアのインストール後、クライアントの動作が重くなるので、何事かと思うかもしれないが、バックアップが実行されているので、しばらく放置しておくと良いだろう。
なお、バックアップの構成はDashboardの「Computers and Backup」からPCを選択して、「Customize Backup for this computer」を選択することで設定できる。標準ではクライアントに搭載されているすべてのドライブを対象として、0:00~6:00の間に自動的にバックアップが実行される。ただし、現状のWindows Home Serverではバックアップの時間が指定できたが、ベータ版ではこの機能は提供されない。将来的な実装が望まれるところだ。
バックアップの管理はDashboardの「Computers and Backup」で行う | 標準では全ドライブがバックアップ対象。対象から特定のドライブやフォルダを外すこともできる |
一方、復元は非常に楽になった。ファイルに関しては同様にDashboardから「Restore files and folders」を選択することでファイル単位で復元できるが、改善されたのはシステム全体を復元するベアメタルのリストアだ。
冒頭でも触れたが、リストアCDから起動すると、32bit、64bitのどちらのWinPE環境を起動するかを選択できるうえ、ドライバも標準で多数搭載されているので、リストア時にサーバーが見つからないなどというトラブルも発生しにくい。
また、リストアの方法も賢くなり、まっさらのHDDに復元する場合などでも、Windows 7の100MBの領域含めパーティションを自動的に構成したリストアが可能となっている。場合によってはHDDの換装などにも活用できるだろう。
リストア時に32bit/64bitを選択可能。さらに空のHDDに復元する場合は自動的にパーティションも構成できる |
サーバーのバックアップに関しては、事前にHDDの追加が必要になる。サーバーに物理的にHDDを増設すると、「Server Storage」として利用するか、「Server Backup」として利用するかを選択できる。
「Server Storage」にするとDrive Extenderによって、共有フォルダーなどで利用するストレージ容量が自動的に拡張することが可能だ。Drive Extenderも機能が向上しており、複製処理のパフォーマンスが改善され、エラー訂正機能の搭載によって信頼性も向上している。
「Server Backup」を選択するとサーバー自身のシステム、およびデータのバックアップを自動的に実行することが可能となる。標準では12:00と23:00、一日に2回バックアップが実行されるので、サーバーが万が一起動しなくなってもバックアップからの復元が可能だ。
バックアップを利用するにはサーバーに接続したHDDをバックアップ用に割り当てる | バックアップはスケジュールで自動的に実行可能。標準では一日に2回バックアップが実行される |
●配信にも対応したリモートアクセス
最後にリモートアクセスについて紹介しよう。まず、設定だが、良くも悪くも従来と変わらない。Dashboardの「General Settings」にある「Remote Access」で「Turn on」をクリックすると、ウィザードに従ってルーターの設定などが試みられるが、相変わらずUPnPでの設定に成功する確率は低い。
NTT東日本 フレッツ光ネクスト ハイスピードタイプで利用している「PR-S300SE」で試してみたが、自動設定はやはり不可能で、現行のWindows Home Serverと同様に「ポート80/443/4125」の3つを静的NATでサーバーにフォワードする必要があった。このあたりは、もっともトラブルになりやすい点だけに、何とかスマートな設定方法になって欲しいところだ。
リモートアクセスの設定画面。ルーターの自動設定はうまくできないことが多い | 確実なのはサーバーのIPを固定し、ルーターで「80/443/4125」をポートフォワードすること |
ただし、一旦設定してしまえば、リモートアクセスはかなり快適だ。外出先からDynamic DNS(3つのプロバイダーが利用できるが日本ではhomeserver.comのみ利用可能)のアドレスを利用してアクセス後、アカウントを入力してサインインすると、AJAXを使ったホームページが表示される。このページはドラッグによって各パーツのレイアウトが変更可能となっており、よく使うページのリンクなども追加することが可能だ。
これまでと同等に、リモートアクセスや共有フォルダーへのアクセスが可能だが、新たに「メディアライブラリ」が追加されている点に注目だ。
メディアライブラリにアクセスすると、サーバー上のMusic、Photos、Videos(Recorded TVはサブフォルダとしてアクセス可能)のファイルがサムネイル表示され、クリックすることでインターネット経由で再生することができる。
再生にはSilverlightが必要だが、サーバー側で映像がトランスコードされ、最適な品質とサイズに変換されてから配信されるため通信速度が遅い場合などでも、スムーズに映像を再生できる。
デザインが一新されたリモートアクセスの画面。モジュールをドラッグして配置できる | メディアストリーミングによる音楽、写真、映像の配信も可能。サーバーでトランスコードされるためインターネット経由でもスムーズに再生できる |
配信できる映像形式については、基本的にサーバー側のWindows Media Playerで再生できる形式となるが、メディアストリーミングのところでも触れたように現在のベータ版にはMPEG2のエンコーダー、デコーダー、AC3のデコーダーが搭載されないため、一部の形式の映像は現状は配信できない。また、著作権保護されているデータ(たとえばサーバー上に装着したキャプチャユニットで録画した地上デジタル放送番組)なども配信できない。
現状はSilverlightがネックになりそうだが、個人的にはいろいろなスマートフォンでこの機能が使えるようになれば、面白いだろうと感じた。
以上、少々、長くなってしまった、一般向けにベータが公開されたWindows Home Server Premiumの概要を紹介した。SDKによって、アドインの増加も期待できそうなので、今まで以上の盛り上がりが期待できそうだ。この機会に試してみるといいだろう。
関連情報
2010/4/27 07:00
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