第421回:誰でも使えるAndroid端末&クラウドサービス
BIGLOBE「Smartia」


 BIGLOBEから、Andorid端末と情報配信サービスを一体化した「Smartia」の提供が開始された。スマートフォンやタブレットなどの登場で、一般層への普及へと弾みがかかるAndroidだが、さらに広い層への普及を狙った商品となる。実際に端末を使ってみた。

よく料理されたAndroid端末

 なるほど、「素材を活かす」というのは、こういうことなのか。「Smartia」を触ってみて、そう感じた。

 スマートフォンやタブレットなど、Androidを搭載した端末は今や数多く存在するが、それらを触ってみると、それぞれに味があることがわかる。

 同じAndroid端末でも、いわゆる素のままのAndroidを搭載した機種もあれば、UIを作り込んで独自性を演出する機種、Androidであることさえ謳わずにUIから機能まで完全に作り込んだ機種もあり、それぞれ操作感や使いやすさが、まるで異なる。

 もちろん、個人的な感覚や好みも大きく影響するが、素のままというのは面白みに欠ける一方で、演出に懲りすぎて、過度な作り込みが行われると、軽快感が失われたり、アップデートが容易ではなくなってしまう場合もあり、このさじ加減は非常に難しい。

 言わば、開発側に、Androidという素材をどう料理するかという腕前が試されているというわけだ。

BIGLOBEから提供が開始された「Smartia」。NEC製Androidタブレット「LifeTouch」にサービスを組み合わせた商品だ

 そういった意味では、今回、BIGLOBEから登場した「Smartia」は、Androidという素材をうまく料理した製品だと言える。本製品を使うのは、おそらくAndroid端末に不慣れなユーザー層だと思われるが、こういった製品を利用する相手の顔が開発者側に明確にイメージされているようだし、使いやすさを実現するために、過度な作り込みではなく、適度な「カスタマイズ」が施されている。

 その一方で、Androidという素材を楽しむ余地も残されており、いわゆるガジェッターと呼ばれる先進層の人たちに嫌われる要素も少ない。なかなか良いバランスで作り込まれたAndroid端末と言えそうだ。

7インチタブ+クラウドサービス

 では、具体的に、どのような点がうまく料理されているのだろうか?

 まずは、製品についてあらためて紹介しておこう。BIGLOBEのSmartiaは、NEC製のタブレット端末「LifeTouch」と、BIGLOBEのサービスやAndroid向けのアプリを組み合わせた統合サービスだ。

 端末となるLifeTouchは、Android 2.1を採用したタブレットで、7インチ、800×480ドットの抵抗膜式液晶を搭載し、CPUにARM Cortex A8、384MBのメモリ(ROM1024MB)、IEEE802.11b/gの無線LAN、300万画素のカメラを搭載した製品となっている。

 サイズは、幅220mm×高さ120mm×厚さ14mmで、重さは約370gとなっており、同じくAndroidを搭載したタブレットのGALAXY TABと比べると、幅が長いものの、重量はわずかに軽い程度で、ほぼ同サイズとなっている。タブレットとしては、アップルのiPadが有名だが、これよりもワンサイズ小さいクラスの製品と考えるといいだろう。

正面側面背面
手に持った様子。重量が370gなので、片手でも十分に持てるAndroid搭載スマートフォンとの比較。いわゆるタブレットサイズとなる

 このようなSmartiaで特徴的なのは、端末にサービスがシームレスに組み合わせられている点だ。

 端末の電源を入れ(購入直後は背面のメインスイッチ操作が必要)、タッチパネルの調整すると、ホーム画面が起動する。この状態では、ただの横画面のレイアウトのAndroid端末だ。

 しかし、ネットワークの設定をすると、その印象がガラリと変わる。設定メニューから無線LANを有効にし、「らくらく無線スタート」か「WPS」で無線LANに接続する。

利用する際はメインスイッチの操作が必要。背面のSDカードスロットのスイッチをオンにする起動直後はインターネットに接続されていないため何のサービスも利用できない
無線LANの接続設定はWPSと「らくらく無線スタート」に対応無線LANで接続すると、日付やカレンダー、ニュースなどが表示され、すぐに使えるようになる

 その後、ホーム画面に戻ると、ネットワーク経由で自動調整された正しい日付と時刻、ニュースのヘッドラインが表示される。右下にあるアイコンから「ニュース」を選べば、左半分がBIGLOBEのサイトから自動的に取得した最新のニュースの見出しが一覧表示され、タップすることでブラウザ経由でニュースを表示できるようになる。

ホーム画面。カレンダーはGoogleカレンダーと同期可能ニュース画面。BIGLOBEのニュースサイトから情報を取得

 また、「お買い物」からBIGLOBEのショッピングサイトにアクセスしたり、「おでかけ」をタップすることで、BIGLOBEの旅行やグルメ、地図情報サービスも利用でき、ここから行きたい場所の経路を簡単に調べることが可能となる。

 andronaviからのアプリのダウンロード、フォトアルバムとして使える「お届けフォト」など、事前の登録作業が必要なサービスもいくつか存在するが(BIGLOBE会員が専用サイト経由で購入すると自動設定や簡単な設定が可能)、基本的には、電源を入れて無線LANに接続するだけで、さまざまなサービスをすぐに活用することができるわけだ。

アプリ画面。Andronaviからのダウンロードとなるお買い物画面。BIGLOBEのショッピングサイトにリンクされる
おでかけ画面。地図やグルメ、旅行情報などを参照可能お届けフォトを利用すると、携帯電話などからメールで撮影した写真を送って端末上で表示することができる

 もちろん、これらの機能は、Android端末であれば、工夫次第でどの端末でも似たようなことが実現できる。しかし、Smartiaの場合、これらを一切の工夫なく利用できるのがポイントだ。要するに、ユーザーがやりたいことに到達するまでの手順が圧倒的に少なくて済む。

 このため、いわゆるAndroidの作法に慣れていない場合でも、すぐにいろいろなサービスを利用することができる。マーケットでアプリに迷い、設定に戸惑い、使ってみた結果、思ったことが実現できずにあきらめる……。

 誰もが、このような経験をしたことがあると思われるが、Smartiaであれば、少なくとも初期の段階で、こういったことに悩まされることはない。

 あたかも、Androidを使い慣れたユーザーの手によって、使いやすくカスタマイズされた端末を使っている印象だ。

文字入力も、ユーザー層を考慮して標準では英数字が携帯入力、日本語が五十音配列に変更されている

しっかりと確保された自由度

 このように、Smartiaは、これまでどちらかというとマニアックな製品だったAndroid端末を、誰でも使えるようにしたサービスと言えるが、かといってマニアックな完全に排除されているのかというとそうでもない。

 ウィジェットなどでホーム画面はカスタマイズされているが、基本的な構成はAndroidそのもので、機能的な制限がなされているわけではないうえ、設定項目にもすべてアクセスできる。

 初心者向けの組み込み系の端末の場合、サポート負担の軽減を考慮して、余計な機能を使えなくしたり、設定画面などにもアクセスできないように制限することが多いが、本製品ではこのような制限はない。

 よって、Androidマーケットからアプリをダウンロードしてインストールすることもできれば、設定画面からデバッグモードを有効にして、PCから画面をキャプチャすることもできる。

設定の変更も自由なうえ、アプリのダウンロードも制限はない

 場合によっては、ホーム画面を入れ替えるアプリなどを利用して、オリジナルのAndroid端末にしてしまうことさえできるだろう。

 つまり、純粋な7インチのAndroidタブレットとしても利用できるわけだ。オンラインのサービスとの連携が注目されるうえ、基本的にリビングなどに設置して使うと便利な機能が多いため、汎用的なAndroid端末として見ることを忘れてしまいそうだが、持ち歩いて利用することなども可能だろう。

 意外に自由な使い方ができるため、純粋にタブレットタイプのAndroid端末が欲しいと思っている場合にも、選択肢として検討する価値がありそうだ。

YoutubeやTwitterなどのアプリも搭載されており、汎用的なAndroidタブレットとしても十分に活用できる
ブラウザやメールも利用可能。縦表示にすると、Webはなかなか見やすい

Webサービスとの連携をもう一歩

 このように、Smartiaは、端末といい、サービスといい、なかなか興味深い製品と言えるが、もう少し、使いやすくなって欲しいと感じる部分もいくつかある。

 個人的にもっとも気になったのは、Webサービスとの連携だ。前述したように、Smartiaでは、BIGLOBEが提供しているニュースやショッピングサイトなどを利用できるのだが、これらは単純なWebサイトへのリンクに過ぎない。

 このため、たとえば、ショッピングサイトなどではリンク先のサイトが必ずしもSmartiaでの表示に最適化されていない場合がある。もちろん、外部サイトまで巻き込んで、どこまでサービスを作り込むかは難しい判断になるかと思われるが、ホーム画面の他のサービスがあまりにもシームレスに動作するだけに、ちょっとした部分に違和感を感じてしまう。

 また、Android端末の場合、Googleの音声検索が非常に便利なのだが、この機能がうまくサービスと連動していないのも残念だ。もちろん、ホーム画面の検索ウィジェットやGoogleマップなどから音声検索を利用することはできるが、「おでかけ」メニューにあるBIGLOBEの旅行やグルメ、地図などの検索では、音声検索を利用できない。

 誰でも使える端末、という観点で見ると、音声検索はあらゆる点で使えるようにして欲しい機能と言える。実際、本製品のマイクはなかなか感度が良く、すこし離れたところから音声検索を実行しても、きちんと言葉を認識してくれる。

 普段は、リビングで写真やニュースを表示しながら、何か調べたいときに音声で検索する、出かける前に地図や経路を音声で調べる、といった使い方ができれば、これは新しいライフスタイルの提案になるのではないだろうか?

 このほか、Youtubeなども、単にアプリのアイコンが用意されているだけで、特別な工夫がなされていない点も残念だ。ニュース画面などと同様に、動画の画面を用意して、おすすめの動画などを気軽に見られるようにしても良かったのではないだろうか。

 本製品のメリットは、ユーザーが使って便利だろうと思われることが、あらかじめ端末やサービス側で用意されているという点に尽きる。ここをもっと、ある意味「お節介」なまでに、追求しても良かったのではなかったかと感じた。今後の製品では、こうした部分の作り込みにも期待したいところだ。


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2010/12/21 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。