Windows Storage Server 2008R2搭載のビジネスNAS ロジテック「LSV-5S4MW」


 ロジテックから登場した「LSV-5S4MW」は、Windows Storage Server 2008R2を搭載したSOHO、中小環境向けのNASだ。OSの入れ替わり時期に登場した旧OSの製品となるが、ファイルサーバーとしてのシンプルな利用に適した、いわゆる「枯れた」製品だ。

2012ではなく2008R2

 ロジテックの「LSV-5S4MW」はWindows Storage Server搭載製品ということで、新世代のWindows Storage Server 2012搭載製品かと、期待した人もいるかもしれないが、今回取り上げるのは、残念ながら旧OSとなるWindows Storage Server 2008R2搭載の製品だ。

 と言っても、SOHOや中小規模の環境をターゲットにしたキューブタイプの4ベイNASとなると、その用途は、基本的にファイルサーバーとなるため、さほどOSのバージョンを気にする必要はないだろう。

Windows Storage Server 2008R2を搭載したロジテックのNAS「LSV-5S4MW」

 もちろん、最新のWindows Storage Server 2012であれば、ストレージスペースやSMB 3.0、ReFSなどの数々の新機能のメリットを享受することができるが、LSV-5S4MWがターゲットとする小規模な環境では、そこまでの機能は必要ないケースが多い。また、実用環境への導入ということを考えると、まだ登場して間もない技術を実環境に持ち込むことをためらうケースも少なくない。

 そういった状況を考えると、あえて「Windows Storage Server 2008R2」ベースのNASを選ぶメリットも見えてくる。シンプルにファイルを共有したい、大容量のファイルを保管しておきたいといったニーズであれば、いわゆる「枯れた」本製品を選ぶのも一つの手だ。


必要十分なハードウェア

 と言っても、本製品を単なるエントリーモデルと侮らない方が良い。ロジテックは、比較的、初期の段階から、マイクロソフト製のストレージサーバー向けOSを採用した製品をリリースし続けてきたメーカーだが、その経験を活かした完成度の高い製品に仕上がっている。

 まず、ハードウェアだが、4台のHDDを搭載可能なキューブタイプの筐体が採用されており、CPUにIntel Atom D525(DualCore 1.8GHz)、2GBのメモリを搭載している。ローエンドとは言っても、複数ユーザーでの同時利用なども想定された必要十分なスペックの製品と言えそうだ。

正面側面背面

 インターフェイスは、1000BASE-T/100BASE-TX対応のLANポート×2を搭載していることに加え、USB2.0×6、eSATA×2も搭載し、外付けドライブの接続にも対応する。USB3.0に対応しない点が残念だが、基本的に外付けHDDは、バックアップ用での利用がメインとなるため、USB2.0でも十分に対応できるだろう。

 また、上部にはディスプレイ出力用のVGAポートも搭載されており、ディスプレやUSBキーボード、マウスを接続することで、ローカルでの管理作業も可能となっている。

 搭載されるハードディスクは、今回の4TBモデル(LSV-5S4T/4MW)では、東芝ブランドの1TB HDD「DT01ACA100」が4台搭載されており、これがOSのソフトウェアRAID機能によって、RAID1(システム領域のCドライブ)とRAID5(データ領域のDドライブ)で構成されていた。なお、ホットスワップにも対応しており、万が一の交換も容易になっている。

VGAポートを搭載。キーボード、マウスを接続すれば、ローカルでの管理もできるHDDは東芝製1TB×4を搭載。システムがRAID1、データがRAID5で構成される。ホットスワップにも対応

 決して派手ではないが、特に欠点も見当たらない堅実な設計と言えそうだ。背面のファンも、静かな一般家庭では、若干、低い音程の排気音が気になるものの、オフィスではほとんど気にならないレベルに押さえ込まれている。季節的な影響もあるが、室温27度の環境下で、システム温度40度、CPU温度24度、HDD温度31~34度(ディスクによって異なる)に抑えられており、効率的に冷却ができている印象だ。

 用途を考えると、静音性よりも冷却性能を重視すべきなのは当然なので、ハードウェアとしての完成度は悪くない印象だ。


独自ツールを提供

 一方、ソフトウェアに関しては、冒頭でも触れたようにWindows Storage Server 2008R2を搭載していることが大きな特徴になる。

 ブラウザから設定可能なコンシューマー向けのNASと異なり、リモートデスクトップによる管理となるため、その違いは意識する必要はあるが、Windows Serverそのものの管理に慣れていれば、既存のサーバーの延長線上で管理ができるうえ、Active Directoryと組み合わせた管理ができるのは大きなメリットと言える。また、iSCSIにも対応しており、ターゲットとして利用することもできる。

 ちなみに、Windows Serverをファイルサーバーとして利用する場合と異なり、本製品で採用されているWindows Storage Serverでは、CAL(クライアントから接続するためのライセンス)は必要ない。コストダウンを目指して、既存のファイルサーバーから置き換えるという用途にも適しているだろう。

 もちろん、Windows Storage Serverを長らく扱ってきたメーカーだけあって、OSをインストールしただけというわけではない。

 オリジナルのツールが含まれたサポートディスクが同梱されており、ここからネットワーク上のサーバーを検索したり、共有フォルダーをクライアントにマウントしたり、設定を行なうためにボタン1クリックでリモートデスクトップできるツール「Logitec Host Setup」が提供される(このほかクライアントのフォルダを同期するためのツールも同梱される)。

サーバーの探索や設定用のリモートデスクトップ接続が可能な「Logitec Host Setup」

 また、サーバー上にも「ロジテックツール」と呼ばれるオリジナルのツールがいくつか搭載されており、障害発生時にメールを送信する「お知らせメール」、RAIDの状況やサーバーの温度をチェックできる「ステータスパネル」、RAIDの構成変更やリビルドを実行できる「RAIDビルダー」、ネットワーク上に同一製品を複数台設置したときに個体を判別するためにビープ音を鳴らす「名スコール」、フォルダの利用状況(容量)を確認できる「フォルダアナライザ」、バックアップツールなどがプリインストールされている。

 Windows Storage Serverの場合、ベースとなるOSがWindows Server 2008R2となるため、管理の方法やそれに使うツールは比較的自由に選ぶことができるが、こういった基本的な管理を行なうためのツールを標準で用意することで、はじめてWindows Storage Serverに触れる人でも迷わずに管理できるようにしているあたりはさすがだ。

サーバーにも各種管理用のツールが搭載されており、手軽に設定や管理ができるようになっている

 さらに、サーバーの機能を拡張するためのツールとして、「ServersMan@CAS」と「VVAULT Basic」も搭載されている。いずれも標準では有効になっていないため、インストール(VVAULT)や初期設定が必要だが、これにより外出先からのリモートアクセスや仮想ストレージ環境でのストレージ容量の統合(バックアップ用ディスクの統合)や簡易レプリケーションなどの構築が可能となる。

 たとえば、ServersMan@CASの場合であれば、アプリを起動し、ユーザー登録をすれば、外出先のPCからブラウザで「http://serversman.net/ノード名/MyStorage」にアクセスすることで、簡単にサーバー上のデータにアクセスできる。

 標準で公開されるフォルダがインストールフォルダの配下になるため、共有フォルダーに設定し直すなどの手間は必要だが、面倒なポートフォワードの設定などが一切不要なほか、サービスとして自動的に起動するようになっているうえ、スマートフォンなどからのアクセスも可能となっており、比較的簡単にリモートアクセス環境を構築することができる。

 社内のストレージ環境の強化に加え、災害対策などでリモートアクセス環境の導入も検討している場合は、悪くない選択肢と言えそうだ。なお、ServersMan@CASやVVAULTの使い方、ハードウェアの詳細なマニュアルは、PDFとして付属のメディアに保存されている。実際に利用する場合は、このあたりの文書をよく読んで設定するといいだろう。

ServersMan@CASを搭載。外出先からサーバー上のデータを参照できるiPadからアクセスした様子。ブラウザを利用してファイルの参照やアップロードが簡単にできる


シーケンシャルリードが高速

 パフォーマンスについては、Windows Server系のNASでは、よく見られる傾向だが、シーケンシャルリードがやたらと速く、88MB/sとなった。しかしながら、同じシーケンシャルでもライトは23MB/sで、ランダム512はリード36MB/s、ライト12MB/sとなっており、飛び抜けて速いというわけではなく、一般的なパフォーマンスと言えそうだ。

CrystalDiskMark3.0.1cの結果。クライアントにはCore i5 3570K/RAM8GB/Crucial RealSSD C300/Windows 8 enterprise 64bit 90日体験版を使用

 また、オプションとして最大5年間の保守サービス(http://www.logitec.co.jp/products/nas/hosyu.html)が提供されていたり、設置サービスなども利用することができる。サーバーにインストールすることが可能で、同社にて動作確認をしたサーバーアプリケーションの情報も公開されており、セキュリティ対策ソフトの利用やクライアント運用管理ソフトウェアの導入、ファイル暗号化ソフトの利用、電子ファイリングへの応用なども可能となっている。

 通常のWindows Serverと異なり、ライセンス上、インストールして利用できるソフトウェアは限られてしまうため、こういった情報が公開されているのは、非常にありがたいところだ。

 個人的な興味で言えば、冒頭でも触れた通り、Windows Server 2012ベースの製品を使ってみたいところではあるが、実環境に導入するということを考えれば、本製品のような堅実な製品を選ぶメリットが大きいだろう。




関連情報



2012/10/16 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。