手のひらサイズでスマホ対応 NECアクセステクニカ「AtermWR8165N」
NECアクセステクニカから、小型の無線LANルーター「AtermWR8165N」が登場した。IEEE802.11n/b/gの2.4GHz帯のみに対応(通信速度は最大300Mbps)した製品だが、手のひらサイズで扱いやすく、コストパフォーマンスに優れた製品だ。その実力を検証してみた。
●制限を目一杯に活用
クルマに例えるとすれば、軽自動車やコンパクトカーとでも言ったところだろうか。
NECアクセステクニカから登場した「AtermWR8165N」は、サイズやコストという限られたリソースの中、「できるだけのこと」がきっちりと実現されている製品だ。
手のひらに収まるほどのサイズは置き場所にまったく困らないほどコンパクトで、やわからな曲面の組み合わせで構成されたデザインもイヤミがなく、どこにでもマッチするものとなっている。
それでありながら、もはやNECアクセステクニカのお家芸とも言えるアンテナ内蔵がしっかりと実現されているうえ、テレビやゲーム機などの接続に便利な有線LANポートもほんの少しだが余裕のある3ポートが用意され(WAN×1/LAN×3)、無線も2.4GHzのみながらデュアルバンド、2x2 MIMO対応の300MbpsとIEEE802.11n/b/gの規格にきっちりと準拠している。
NECアクセステクニカのAtermWR8165N。コンパクトながら基本性能がしっかりとした無線LANルーターだ |
もちろん、同社のラインナップで言えば「スポーツカー」とも言える、450Mbps対応5GHz&2.4GHz同時利用の「AtermWR9500N」と比べれば、性能にはかなりの差があるのは事実だ。
実際、AtermWR8165Nの有線LANポートは100Mbps対応となるうえ、前述したように無線も混雑していない5GHz帯は使えないうえ、MIMOも2ストリームの300Mbps止まり。上位モデルに搭載されているUSBポートを活用した簡易NAS機能などの高度な機能も省かれるうえ、NECアクセステクニカ製品ではおなじみの「らくらく無線スタート」ボタンも背面の目立たない位置へと押しやられている。
しかしながら、軽自動車やコンパクトカーが、限られた排気量やサイズ、コストの中で、移動手段としての快適さを最大化するように設計されているのと同じように、AtermWR8165Nも、限られたサイズのとコストの中で、ユーザーがPCやスマートフォンなどの端末を無線LANで接続するうえでの「快適さ」が、むしろハイエンド機よりも念入りに仕込まれている。
パッと見、単に小さく、安いだけの製品に思えてしまうが、個人的には、こういった製品そのものが、開発者の苦労を代弁してくるような製品は、とても魅力的に感じられるところだ。
●小さくなった本体、見やすくなったQRコード
製品としての特長は、やはりサイズだろう。本体サイズは、76×109×34mm(横×縦×厚み)となっており、同社の従来モデル(AtermWR8160N)に比べて約60%も小型化されている。従来モデルと並べてみると、とても同じ系列のモデルとは思えないほどの変わり様だ。
それでありながら、前述したように、有線ポートはLAN×3、WAN×1という構成になっている。コンパクトな無線LANルーターの場合、有線ポートは、WAN×1+LAN×1の2ポートという構成が多いが、プラス2ポートの余裕があることになる。リビングなどに設置する場合、ネットワーク対応テレビ、ゲーム機、レコーダーなど、複数の機器を接続することができるのは、本製品ならではのメリットだろう。
有線LANが100Mbpsにしか対応しないのは残念ではあるが、接続する機器も100Mbps上限となるケースが多い家電と考えれば、実用上の問題もないだろう。
正面 | 側面 | 背面 |
従来モデルAtermWR8160N(右)との比較。約60%の小型化が実現されている |
なお、コンパクトなおかげで、堅く、重いLANケーブルなど、接続するLANケーブルによっては、本体の座りが悪くなることがある。台座があればもう少し違ったような気もするが、個人的には、粘着性の耐震マットなどを利用して設置することをおすすめする。
このほか、外観で特徴的なのは、背面の多くのエリアを占めるようになったQRコードだろう。筆者の知る限り、製品サイズに対してこんなに大きなQRコードが貼り付けられた機器は見たことがなく、賛否両論がありそうだが、実用性は結構高い。
NECアクセステクニカの無線LANルーターには、スマートフォンのカメラでQRコードを撮影することで無線LANの接続設定ができる「らくらくQRスタート」という機能が搭載されているが、QRコードは目立つようになっただけでなく、認識精度も高くなったようだ。
これまでの製品では、なかでも特にiOS向けの「らくらくQRスタート」を使ったときに顕著だったのだが、カメラで撮影してもなかなかコードが認識されない場合があった。これに対して、AtermWR8165Nでは、この認識精度が高くなったようだ。
もちろん、光の加減や陰の影響などで、なかなか読み取れないこともあるのだが、本体がコンパクトなこともあり、蛍光灯の光の位置などを考慮しながら、向きなどを調整すれば、比較的、スムーズにQRコードを認識してくれる。
AppStoreの「らくらくQRスタート」の評価では、読み取りにくさが指摘されているが、AtermWR8165Nでは、向きなどをきちんと調整すれば、この読み取りにくさは解消されるはずだ。
QRコードが大きくなり、読み取りやすくなった | iOSでは、読み取った情報がプロファイルとして適用される |
なお、このQRコードは、同社の製品情報サイト内のページから、作成することも可能となっている。10月22日現在の時点では、生成画面で製品名を選ぶプルダウンメニューにAtermWR8165Nの機種名が表示されないが、従来機種「AtermWR8160N」を選んでおけば問題ない。選択して「作成」ボタンを押せば、PCの画面上にQRコードを表示できる。
QRコードは同社のWebサイトでも生成可能(初期出荷時設定) |
この画面は、キャプチャするなり、印刷しておくと、スマートフォンの接続などの際にとても重宝する。AtemWR8165Nの背面よりも、さらに大きく、クリアに表示できるうえ、わざわざAtermWR8165Nを設置した場所にまで行って撮影する手間もなくなる。初期セットアップの際などに一度作成しておくことをおすすめする。
ちなみに、上位モデルのAtermWR9500Nなどでは、設定画面からカスタマイズしたSSIDやパスワードなどのQRコードを表示することが可能だが、本製品では、前述したページから工場初期設定の値のみの生成が可能だ。上位モデルと同等の機能を搭載してもよかったようにも思えるが、ユーザー層を考えると、標準設定のまま利用することが多いはずなので、これでも問題ないだろう。
このほか、らくらく無線スタートやWPSを利用したセットアップも可能となっている。筆者宅の環境では、Windows 8ではWPSでの設定が問題なくできたものの、Windows 7ではPINコードの入力画面が表示されてしまったが、PCや4.0以上のAndroidであれば、こちらの設定方法の方が楽だろう。
●300Mbps通信は「優先」設定で
パフォーマンスについては、かなり優秀と言って良さそうだ。前述したように、有線LANが100Mbpsとなるため、上限速度は限られてしまうのだが、木造3階建ての筆者宅でのテストでは以下のように、1階の近距離では、ほぼ有線の上限となる速度で通信することができた。
GET | PUT | LINK | |
3F | 46.09 | 44.04 | 120-162 |
2F | 57.27 | 65.73 | 216-240 |
1F | 90.12 | 91.10 | 300 |
※サーバー:Synology DS1512+ FTPサーバー ※クライアント:VAIO Z(PCVZ219FJ)、Core i5-2410M/RAM4GB/128GB SSD/Windows 7 Home Premium 64bit |
長距離での速度も優秀で、1階にAtermWR8165Nを設置し、3階で計測した値でも40Mbpsで通信できている。小型の筐体に内蔵されたアンテナで、ここまでのパフォーマンスを実現できているのは高く評価したいポイントだ。
なお、今回のテストでは、AtermWR8165Nの無線LAN設定で、「デュアルチャネル機能」の設定を「使用する(優先)」に変更して計測している。出荷時設定では、「使用する(自動切替)」が選択されており、基本的には20MHz幅で接続される(最大速度は150Mbpsとなる)。40MHzで積極的に接続させたい場合は、「使用する(優先)」に変更しておくといいだろう。
ただし、2.4GHz帯の混雑状況が日増しにひどくなる現状においては、40MHzを無理に利用するよりも、20MHzで通信した方が実効速度が高くなるケースもある。特に長距離通信では、この傾向があるので、基本的には標準設定のままでかまわないだろう。また、PCではなく、スマートフォンやタブレット端末を中心に接続するのであれば、端末側で40MHz幅をサポートする機種はまだほとんどないため、この場合も標準設定のままでかまわないだろう。
40MHz幅を利用する場合は優先に設定しておく |
●見た目はカジュアルでも中身は充実
以上、NECアクセステクニカの無線LANルーター「AtermWR8165N」を実際に使ってみたが、小型で、カジュアルなイメージの製品のわりに、中身がしっかりと作られており、Atermシリーズらしい実直な製品という印象を受けた。
実売価格も4000円前後と、入手しやすい設定になっているのも大きな魅力だ。個人的には、無線LANは5GHzで使うことをおすすめしたいことに変わりはないが、スマートフォンやタブレット、ゲーム機などの接続がメインであれば、適度な価格としっかりとした基本性能を備えた本製品を利用するのもひとつの手だろう。
関連情報
2012/10/23 06:00
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