清水理史の「イニシャルB」
有線/無線AP+無線ストレージ+USB 3.0 HDD
1台で3役をこなすPQI「PQI Air Bank」
(2013/4/16 06:00)
PQIから発売された「PQI Air Bank」は、有線/無線両対応のポータブルアクセスポイント、無線LAN経由でスマートフォンなどからアクセスできるポータブルストレージ、USB 3.0でPCと接続可能なUSB HDDと、3つの機能を搭載した複合ストレージだ。会議の席などでのデータ共有やスマートフォンやタブレット用のデータ保存先として、どこまで使えるかを検証してみた。
PQI Air Penでは物足りない人に
一般的な用途であれば、機能的にほぼ同等でありながら、圧倒的にコンパクトで軽い「PQI Air Pen」の方が断然便利だろう。
しかし、microSDHC対応で最大32GBまでのストレージと約2時間程度のバッテリー駆動時間が気になるのであれば、思い切って、「PQI Air Bank」を手にした方が幸せだ。
PQIから発売されているPQI Air Bankは、いわゆるポータブル無線ストレージに分類される製品だ。基本的な機能は、PQI Air Penとほぼ同等となっており、WAN側に有線LAN(10BASE-T/100BASE-TX)と無線LAN(自宅APや公衆無線LAN)を利用可能な「ポータブルワイヤレスアクセスポイント」、無線LANで接続したスマートフォンやタブレットから専用アプリを使ってデータの参照や保存ができる「ポータブルストレージ」、USBを利用してPCに接続することでストレージとして利用できる「USBストレージ」と、一台三役をこなす製品となっている。
スマートフォンやタブレットが普及する一方で、本体ストレージの制限から、どのようにデータを持ち歩くかに悩むシーンも増えてきたが、このPQI Air Bankを外部ストレージとして利用することで、写真や動画、音楽などを持ち歩いたり、外出先での打ち合わせや会議の席などで、他の参加者と通信環境とデータを共有するといった用途に活用できることになる。
今回は500GBのHDDを搭載したモデルを利用したが、1TBのモデルもラインナップしており、数百GBというメモリやクラウドでは厳しいサイズの大容量データを持ち運べるのが最大の魅力だ。
このジャンルの製品は、登場当初はインターネット接続ができなかったり、スマートフォンからアクセスするためのアプリが使いにくかったりと、今ひとつ完成度が高くなかった印象があるが、今回のPQI Air Bankでは端末間での直接バックアップなどの個性的な工夫も詰め込まれており、かなり実用的になったという印象だ。
有線LANポートを装備
それでは、製品を見ていこう。まずは外観だが、大きさは幅77×奥行き135×高さ20.5mmと、いわゆる2.5インチのポータブルハードディスクサイズを一回り大きくしたようなサイズとなっており、重量も250gと手に持つと、ズシリと、それなりに重さを感じるものとなっている。
デザインはシンプルで、今回のホワイトモデルでは、前面が光沢のあるホワイトで側面がシルバーのツートンカラーとなっており、「pqi」のロゴと無線LANやバッテリー状態を示すLEDが配置されるなど、シンプルな印象で好感が持てる。
インターフェイスは、PCへの接続と充電を兼ねるUSB3.0、無線LANアクセスポイント動作時にWAN回線として利用するための10BASE-T/100BASE-TXポート、電源ボタンとバックアップボタン(詳しくは後述)が搭載される。
本製品では、無線LANで接続したスマートフォンやタブレット、PCからのインターネット接続もサポートしているが、その回線として、無線LAN(自宅APや公衆無線LAN)だけでなく、有線LANも利用できる。出張先のホテルなど、有線LANが使える環境で、PCやスマートフォンなどを接続するための環境としても使えるのは大きなメリットだ。
バッテリーは容量は公表されていないものの、フル充電で連続8時間の動作が可能とされており、かなり長時間の利用が可能となっている。これなら長時間にわたって音楽や動画などを再生するといった用途にも十分に活用できるだろう。
専用アプリ「PQI Air Bank+」でアクセス
続いて、基本的な使い方を見ていこう。まず、PCからの使い方だが、これはUSB接続となるので、特別な操作は必要ない。付属のUSB3.0ケーブルを利用して、電源オフの状態のままPCに接続すれば、ストレージとして認識される(電源オンではUSB接続されない)。
標準でNTFSでフォーマットされているため、そのままデータを保存したり、フォルダを作成することなどが可能だ。ちなみに、USB3.0接続となるため、アクセス速度はかなり速い。以下は、PanasonicのLet's note AXからCrystalDiskMark3.0.1cを実行した値だ。参考のために、USB2.0接続でmicroSDをストレージとして利用するPQI Air Penの値も掲載するが、かなり違いがあることがわかるだろう。
続いて、スマートフォンやタブレットからの接続だが、まず、スマートフォンやタブレットで専用アプリ「PQI Air Bank+」をダウンロードする。同社では、今回の「PQI Air Bank+」だけでなく、「PQI Air Pen+」など、機種ごとに個別のアプリを用意している。利用できる機能は同じなので、複数利用することを考えると統一してほしい印象もあるが、現状は間違えないようにダウンロードする必要があるので注意しよう。
アプリを入手したら、スマートフォンやタブレットから無線LANでPQI Air Bankに接続する。本体側面の電源ボタンを長押しすると、電源がオンになり、無線LAN機能が有効になる。スマートフォンから「PQI Air Bank」というSSIDを指定して接続しよう。
なお、PQIのWebサイトからダウンロードできる取扱説明書には注意が記載されているが、このSSIDはセキュリティで保護されていないうえ、全製品でSSIDが共通となる。このため、出荷時状態のまま利用すると、公共の場所などで不用意に電源をオンにすると、第三者から勝手に接続され、ファイルを参照されてしまう可能性が高くなる。
無線LANの設定は、アプリのPQI Air Bank+か、PCから「http://192.168.100.1」にアクセスすることで変更できるので、SSIDの変更と暗号化の有効化、さらに管理者IDとパスワードも設定しておくことを強くオススメする。
実際のファイルへのアクセスは、PQI Air Bank+を利用する。フォルダ単位に加え、写真、ミュージック、ビデオなどジャンルごとにファイルを表示したり、アップロード、ダウンロードすることができる。
ファイルのアップロード、ダウンロードは複数ファイル指定することができるうえ、音楽ファイルを再生後、ホーム画面などに移動しても、バックグラウンドで音楽を再生することもきちんとできる。普段の利用で不満に思うことはなさそうだ。
ちなみに、対応するファイル形式は以下の通りだ。これらのファイルに関しては、アプリから直接ファイルを再生することができる。
文章ファイル | .pdf, .txt, .doc, .docx, .xls, .xlsx, .ppt, .pptx |
画像ファイル | .jpg, .png |
音楽ファイル | .mp3, .wav, .aif |
動画ファイル | .mp4, .mov |
文章ファイル | .pdf, .txt, .doc, .docx, .xls, .xlsx, .ppt, pptx |
画像ファイル | .jpg, .png, bmp, .gif |
音楽ファイル | .mp3, .mp4, .3gp, .wav, .ogg, .imy, .aif |
動画ファイル | .mp4, .3gp |
有線/無線LANで接続する
インターネット接続に関しては、有線であれば特に設定は必要ない。本体側面のLANポートを利用して、家庭内LANなどに接続すれば、無線LANで接続したスマートフォンなどのクライアントからインターネットに接続することができる。
無線LANで接続する場合は、アプリのPQI Air Bank+、もしくはPCのブラウザから設定画面を表示して接続先のアクセスポイントを設定する必要がある。残念ながらWPSには対応していないので、SSIDをスキャンし、暗号キーを入力するという方式となる。
なお、公衆無線LANなど、認証が必要な無線LANの場合でも、PQI Air Bank上にユーザーIDやパスワードを保存しておくことはできないため、アクセスポイントに接続後、クライアントとなるスマートフォンやタブレットからブラウザ経由でパスワードを入力して認証するという形式になる。
また、無線LANに関しては、2.4GHzのみのIEEE802.11n/b/g準拠となっているが、対応速度は公表されていない。接続してみた限りでは、72Mbpsでしかリンクしなかったため、MIMOなし、シングルバンドの対応ではないかと考えられる。
PQI Air Penとの組み合わせが便利
最後に、PQI Air Penとの連携機能に触れておこう。本製品には、バックアップ機能が搭載されており、ボタン操作のみで、PQI Air Penに保存されているデータをワイヤレスでPQI Air Bankにバックアップすることが可能となっている。
使い方は簡単で、PQI Air Bank側面のバックアップボタンを押し、その状態のままPQI Air Penのバックアップボタンを長押しする。すると、バックアップの状態を示すLEDがグリーンに点滅し、無線LAN経由でPQI Air PenのデータがすべてPQI Air Bankにコピーされる。
これはなかなか便利だ。面倒な設定をすることなく、データを自動的にコピーできるので、文字通りバックアップに活用するだけでなく、PQI Air PenユーザーとPQI Air Bankユーザーの間でのデータ転送用にも利用できる。
欲を言えば、すべてのデータではなく、特定のフォルダのデータのみを転送するようなモードがあれば、第三者とのデータのやり取りを安心して行なえるが、インターネットを介さず、大容量のデータをストレージtoストレージでやり取りできるというのは、もしかすると今後の需要がありそうだ。
第三者との共有を意識してほしい
以上、PQI Air Bankを実際に使ってみたが、大容量で長時間使えるパーソナルストレージが欲しいと考えているユーザーには便利な製品だ。USB3.0でも接続できるので、普段はPCの外付けHDDとして利用しておき、いざというときに持ち歩けるという手軽さもある。
ただ、このジャンルの製品に対しては、いつも言い続けていることであるが、第三者との共有というのをもう少し意識して欲しい。
会議の席などで、第三者と通信回線とファイルを共有するのであれば、無線端末同士の通信は遮断してほしいうえ(現状は通信可能)、ストレージの領域も自分が個人的に使う領域と第三者に公開してもかまわない領域を分割できるようにしてほしい。
また、アプリなしでも第三者とファイルをやり取りできるように、httpで単純にファイルをダウンロードできるURLをメールなどで送信できるような機能も欲しいところだ。
このほか、個人的に気になったのは、PCからのネットワークアクセス環境がhttpのみに限られている点だ。ファイルをコピーするには、前述した通り、USBで接続するしかなく、無線LAN経由ではHTTPでファイルを参照・ダウンロードすることはできても、アップロードすることはできない。
ポートをスキャンしてみると、FTPなども空いており、PCから接続を試みることはできるが、匿名でのアクセスができないうえ、アクセスするためのユーザ名やパスワードも不明となっている。
せめてFTPでも有効にしておいてくれれば、会議の席などで、PC、スマートフォン、タブレットの混在環境で、相互にファイルのアップロードとダウンロードができるのにと、惜しく感じられた。今後の機能強化を期待したいところだ。