イベントレポート

MCEdu2016

夏休みの子供たちがマイクラ教育を体験、マイクラ愛あふれる同人展示即売会も

会場となった早稲田大学西早稲田キャンパス63号館

 子供から大人まで人気の、ブロックで世界を作っていくゲーム「Minecraft(マインクラフト、通称マイクラ)」について、教育や学習への活用を探るイベント「MCEdu2016」が、8月20日・21日に早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)で開催された。

 小学生を主な対象としたワークショップが中心であり、夏休み期間ということもあって、多数の子供が親に連れられて参加していた。また、仮想世界と社会に関する講演や、Minecraft関連グッズの同人展示即売会「M.O.D.S.(Minecraft Only Doujin Sokubaikai)2016」も行われた。

クラムボンの正体は? 小学生が宮沢賢治の世界をMinecraftで再現

スペシャルワークショップ「マインクラフトで作る夏休みの自由研究」

 21日には、スペシャルワークショップとして「マインクラフトで作る夏休みの自由研究」が2コマ、小学校4~6年生を対象に開かれた。

 そのうちの1つ「宮沢賢治の『やまなし』の世界をマイクラで作ろう!」は、2匹のカニが「クラムボンはわらったよ」「クラムボンは死んだよ」といった不思議な会話をする作品「やまなし」の世界を、Minecraft上でブロックを並べてビジュアル化するというものだ。

 小金井市立前原小学校校長の松田孝氏と、プログラミングスクールTENTO代表の竹林暁氏が解説・進行役となり、10人の参加者がPlayStation版のMinecraftで思い思いの世界を表現した。10人の中にはゲストとして子役タレントの豊嶋花さん(「あまちゃん」「ごちそうさん」など)も参加した。

プログラミングスクールTENTO代表の竹林暁氏(左)と、小金井市立前原小学校校長の松田孝氏(右)
題材となった宮沢賢治の「やまなし」
スペシャルワークショップ中の様子
PS4でPlayStation版Minecraftを使った

 簡単な説明の後は、さっそく子供たちがMinecraftの世界で作品を作り始めた。竹林氏と松田氏が「普通の授業だと飽きさせないようにしなければならないのに、Minecraftだと集中して主体的に取り組んでいる」「子供たちが自分でどんどん進めると、先生はやることがなくなる。先生の役割は『いいね』『すごいね』と声を掛けるようなファシリテーションぐらいになる」と実況解説していたように、みんな熱心に作品に取り組んでいた。

 1つの世界でのマルチプレイで、ある程度間隔を置いて作品を作ったため、互いの作品を遠目に見たり全体を俯瞰したりできる。「教科では小学校高学年で教わる座標の概念も、Minecraftの世界で体感できる」という解説もなされていた。1時間の制作時間の半ばでサーバーがダウンして、一部の参加者のデータが失なわれるというアクシデントもあったが、参加者たちは挫けずに作品を作り直していた。

 最後にそれぞれ、自分の作品について画面写真と言葉で1枚の紙にまとめた。

各自作品を作っている様子

 全員がほぼできたところで、竹林氏が各自の席へ行って作品を解説した。それぞれ独自の解釈でビジュアル化しており、特にそれぞれの解釈が見られたのが、やはりクラムボンの正体だ。クラムボン=水中から見た太陽として、水面に波が立って太陽が見えなくなるのを「死んだ」と解釈する作品や、クラムボン=亀として手足を引っ込めた姿を「死んだ」と解釈する作品、さらには2匹のカニが冒険物語の本を読んでいてその主人公がクラボンとした作品など、さまざまな解釈が表現された。さらに竹林氏が質問で話を引き出すのに答えて、それぞれ自分の物語を語る姿が印象的だった。

 また、表現技術においても、カニの泡の表現や、魚を捕えるカワセミの表現、日射しの表現、2匹のカニの違いの表現、カニの表面を表現するブロックの選択、ハサミを表現するための部品の使い方、ニッチなブロックの選択など、与えられた素材を用いて下手な大人より高度な表現をしていた。

クラムボン=太陽という解釈の作品
クラムボン=亀という解釈の作品
「日光の黄金は夢のように水の中に降って来ました」という言葉を表現した作品
カニや泡、魚、カワセミなどを表現した作品
カニと泡を表現した作品
カニや魚、カワセミを表現した作品
カニが本を読んでいて、その主人公がクラムボン、という解釈の作品
兄弟のカニの大きさを変えて表現した作品
3匹のカニに、ガラスブロックを組み合わせた泡、やまなしを表現した作品
カニのハサミのギザギザをレンガの階段を使って表現した作品
最後に自分の作品を説明した紙を持って記念撮影。前列中央は子役タレントの豊嶋花さん

 なお、スペシャルワークショップが開かれた会場の壁際にも、小学生による作品が展示されていた。

Minecraft内のロボットで初めてのプログラミング

 ワークショップでは、建築方法やレッドストーン(仕掛け)入門、Pythonによるプログラミング、MOD(拡張機能)作成、大人向け講座など、さまざまな講座が開かれた。その1つとして、小学3年生~中学生を対象に「ComputerCraftEdu」でプログラミングを体験する講座も、ビジュアルプログラミングコースとテキストプログラミングコースに分かれて20日と21日のそれぞれに開催された。

 ComputerCraftEduはプログラミング教育向けのMODで、プログラムで操作できるロボット(タートル)をMinecraftの中で使えるようにする。通常のテキストによるプログラミングのほか、プログラミング言語のキーワードなどの代わりにアイコンを並べるビジュアルプログラミングもできるようになっている。

「ComputerCraftEdu」によるワークショップの様子。参加者本人のほか、家族が一緒になって課題に取り組んだ
講師の齋藤大輔氏(早稲田大学)

 ビジュアルプログラミングコースに参加した子供たちに、講師の齋藤大輔氏(早稲田大学)がMinecraftの経験を聞くと、やはり全員が手を挙げた。一方、プログラミングの経験についてはほとんど手は挙がらなかった。

 まず、ComputerCraftEduを組み込んだMinecraftに全員がログインし、プログラミング画面で「1つ進む」「1つ戻る」といったアイコンを並べることで一連の動作を指定できるところを体験した。

 続いて、ブロックを置くアイコンと1つ進むアイコンを5組並べてブロックを5つ置く操作を紹介。しかし、「ブロックを100個置く場合は、100組並べることになって大変」ということで、FOR文による繰り返しを学んだ。さらにその応用として、ブロックを置くのと1つ昇るのと1つ進むのをFOR文で繰り返して、階段を作る方法を体験した。

 また、「目の前にブロックがあったら避ける」という課題を、IF文による条件分岐で実現する方法を解説。さらに、FOR文とIF文を組み合わせて、進んでいく途中にTNTがあったら回収するという、立派なプログラムを体験した。

プログラムで操作できるロボット(タートル)
進んで向きを変えるだけのプログラム。アイコンを並べてプログラミングする
FOR文による繰り返し
FOR文の応用で階段を作る
FOR文とIF文を組み合わせて、進んでいく途中にTNTがあったら回収するという立派なプログラムに

社会や教育についての講演も

 20日にはカンファレンスの枠も設けられ、バーチャル世界と社会や教育について論じる講演やパネルディスカッションがいくつかなされた。

デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏による講演「現実と情報そしてバーチャル」。アルビン・トフラーの「第三の波」を引き、バーチャル革命について語った
株式会社UEIの清水亮氏による講演「マインクラフトによって目覚める子供のクリエイティビティ」。自身の経歴や、Minecraftの利点などについて語った

マイクラ愛にあふれた同人展示即売会

 M.O.D.S. 2016では、25サークル/企業のブースが置かれ、Mincraftの世界をイメージしたグッズや、Mincraftの同人誌、ハードウェアやソフトウェア、商業出版物などが並んだ。

Minecraft関連グッズの同人展示即売会「M.O.D.S. 2016」
Minecraft風に電子工作することで、Minecraft用コンピューターを簡単に作れる製品「Piper」
Minecraftのようなキャラクターを紙工作で作る
家族で出展していたサークル。画面左下にあるのは本物の石炭
Minecraftに関する同人誌を並べるサークルも複数出展していた
Minecraft風の剣や盾などを木で作った展示
カードなどイラストグッズ
そのほか、さまざまなマイクラ愛にあふれたグッズが並んだ