イベントレポート
de:code 2017
最新バージョン「Edge 15」が大進化、応答速度3倍、高い電力効率を実現
IE11の搭載は後方互換性のため、標準ではEdgeの使用を推奨
2017年5月30日 06:00
日本マイクロソフト株式会社の主催による開発者向けイベント「de:code 2017」で、5月23日に行われたセッション「進化するEdge! Windows 10 Creators Update版の新機能から既存機能まで一挙紹介」をレポートする。
日本マイクロソフトの本間咲来氏(デベロッパーエバンジェリズム統括本部エバンジェリスト)は冒頭で、「Microsoft EdgeはWindows 10に強く紐付いており、OSアップデートに伴って進化する」と紹介。4月に提供が開始された大型アップデート「Windows 10 Creators Update」には、標準ウェブブラウザー「Microsoft Edge」の新バージョンである「15」が搭載されており、さまざまな機能強化が行われている。
応答速度がIE11の3倍に、高い電力効率も実現
Microsoft Edgeの強化点として、まず挙げられたのが、応答速度だ。ウェブアプリケーションにおける応答速度の指針となるベンチマーク「Speedometer」のスコアは、Windows 10の初期バージョン(1507)に搭載されているEdge 12では35.44だったが、November UpdateのEdge 13では37.83、Aniversary Update(1607)では53.92となり、Creators Update搭載のEdge 15では劇的に向上し、82.67に達した。これは「Internet Explorer 11との比較では3倍程度」とのことだ。
Edge 15では、デフォルトでFlashではなくHTML5を優先して表示するほか、背景タブやiframeで表示するコンテンツの効率も改善されているという。これによりバッテリー消費量を改善しており、Chrome 57やFirefox 52と比べてもより高い電力効率を実現している。また、フルスクリーンで動画を再生し続けた場合にも、Edgeは最も長く再生が行える。
さらに、カスタムチューニングされたアプリコンテナとして動作するため、セキュアである点もEdgeの特徴として挙げた。
最新ウェブAPIの多くも新たに実装
Edge 15では、多くの最新APIの実装も進んでいる。中でも、W3Cで標準化されている「Payment Request API」は、ブラウザー自体がクレジットカード決済用のインターフェースを提供するもの。「どのウェブサイトでも一貫性のある同じUIで決済システムを提供するほか、支払い方法や配送先情報は一度入力すれば、ほかのサイトであっても再度入力する必要はない」とのことだ。また、このAPIにより表示される内容は、「ウェブ開発者が触れない」ため、安全だという。
このPayment Request APIは、Edgeだけでなく「UWP、Desktop Bridge、Bot Flameworkなど、さまざまなMicrosoftのプラットフォームで利用できる」とのことだ。
WebVRは、ウェブブラウザー上でVRのアプリや言語が作成できるもの。「Babylon.js Playground」のウェブサイトでは、WebVRのサンプルコードが参照できる。
また、WebRTC 1.0は、ウェブブラウザー間でP2P通信により、リアルタイムにビデオ音声やデータをやりとりできる技術。これまでMicrosoft Edgeでは、Skypeなどでも採用している同種のリアルタイムコミュニケーション技術「ORTC API」を実装していたが、ChromeやFirefoxではWebRTCが採用されており、Edge 15ではこの流れに沿ったかたちとなる。
WebRTCについては「比較的簡単に実用できるAPI」としたが、Edgeは「一部癖のある実装」がなされており、STUNサーバーを指定するとエラーになる。この設定を削除してTURNサーバーを使う必要があるという。このほか、TURNS、URLSのスキーマの指定もできず、TURN、URLのみ使用が可能とのことだ。
このほか、正式採用に至っていない“実験的”なAPIについても、Edgeのアドレスバーに「about:flags」と入力すると表示される画面で、有効/無効を設定できる。
HTML5のアクセシビリティ仕様への対応に注力、テスト用VM環境提供も充実
Edge 15では、アクセシビリティに関する機能も強化されている。これはサティア・ナデラ氏のCEO就任後にMicrosoftが掲げる「Empower every person on the planet achieve more(地球上のすべての人がより多くのことを達成できるように)」との目標に沿ったもので、Edgeチームでは、「ウェブはすべての人が使えるようであるべきとの目標を掲げている」という。
HTML5にはアクセシビリティに関する各種の仕様が含まれているが、Edgeはこの実装度が100%で、ほかのブラウザーより高い。本間氏によれば「(アクセシビリティ仕様は)まず一番に実装するようにしている」という。
Microsoftでは、ウェブアプリやウェブサイトのテスト・動作確認用に利用できるVMのダウンロード提供も行っている。また、リモートデスクトップのようなかたちでブラウザーのテスト環境を提供している「BrowserStack」では通常、利用時間に対して課金が行われるが、2017年3月30日以降に登録したアカウントでは、Microsoft Edgeの環境をすべて無料で利用可能になったという。
IE11搭載の目的は後方互換性確保、グループポリシーの新設定項目も
Windows 10には、最新機能をサポートするEdgeとともに、後方互換性を維持する目的で、Internet Explorer(IE)が搭載されている。本間氏は「IE11の搭載は目的が違うので、日常的に最新機能を使うにはEdgeをお使いください」とコメントした。
Edgeでは、VBScriptやActiveX、Silverligntといった“レガシー機能”について「脆弱性の原因になるため」削除している一方、IE11には、後方互換性のためにまだ含まれている。
VBScriptについてはIE11でも非推奨で、今後のWindowsリリースでは、デフォルトで無効になる予定だという。ただし「インターネットゾーンおよび制限付きサイトゾーンに対するもので、イントラネットに対してはグループポリシーで許可を設定可能になる予定」とのことだ。
Flashの自動再生はMicrosoft Edgeではデフォルトでブロックされるが、Windowsのグループポリシーエディターで設定を指定可能となっている。
グループポリシーエディターは、Windows 10のPro以上で利用可能な機能。IEとEdgeの項目は、「管理用テンプレート」の「Windowsコンポーネント」内にある。各項目のサポートバージョンが1703以上と表示されるものがCreators UpdateのMicrosoft Edgeで新たに追加された項目で、アドレスバーのドロップダウン機能、終了時の閲覧データクリア、Flashの利用禁止やClick To Run構成、検索エンジンのカスタマイズ許可など、計9つある。なお、Aniversary Updateでは3つが追加されていたとのことだ。
アドレスバーのドロップダウン機能については、通常であれば、アドレスバーにフォーカスを持って行くとお気に入りや過去の履歴がドロップダウンで表示されるもの。この設定を変更後にEdgeを再起動すると、これが表示されなくなる。これにより、「Microsoftに情報を一切送らなくなるため、トラフィックを抑える効果がある」という。
このほか、IEでの閲覧内容を取得することで、「互換性テストを行う際の優先設定に有用」な企業向けツール「Enterprise Site Discoverty Toolkit」や、現在、プレビュー版の「Windows Defender Application Guard for Microsoft Edge」などの機能も紹介された。