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大型アップデート「Windows 10 Creators Update」提供開始

 Microsoftは5日、開発コードネーム「Redstone 2」と呼ばれ、各種の新機能を搭載するWindows 10の大型アップデート「Windows 10 Creators Update」を「Windows更新アシスタント(Windows 10 Update Assistant)」を通じて提供開始した。Windows Updateでは、11日より提供が開始される予定となっている。

 Windows 10は、2015年7月末に最初のバージョン「1507」が提供された後、2015年11月にバージョン「1511」(開発コードネーム「Threshold 2」)、2016年8月にバージョン「1607」(開発コードネーム「Redstone 1」)の2つの大型アップデートがこれまでに提供されている。

Creators Updateのキーワードは“3D”、「ペイント」が一新して3Dに対応

 Windows 10 Creators Updateは、バージョン「1703」とされるアップデートプログラムで、ビルド番号は「15063.0」。新たに“3D”をキーワードとすることが表明され、「ペイント3D」アプリを搭載するなど、その名の通りクリエイター向けのプラットフォームを目指すとされている。

 「ペイント3D」では、3Dオブジェクトがいちから作成できるほか、2Dイメージを3Dオブジェクトにワンクリックで変換できる。また、作成した3Dオブジェクトをウェブプラットフォーム「Remix 3D」で共有できる。

 Creators Updateは、AR対応ヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」の動作プラットフォームでもあり、現実世界に3Dホログラフィックを重ねて表示するMR(Mixed Reality)プラットフォーム「Windows Holographic」をサードパーティーに提供することが6月に発表されている。これに対応したVRヘッドセットが299ドルからの低価格で、HP、Dell、Lenovo、ASUS、Acerといったパートナー各社から発売されることも明らかにされている。

「設定」画面に「アプリ」と「ゲーム」を追加

 Windows 10の「設定」画面には、新たに「アプリ」「ゲーム」の項目が追加された。アプリは、これまで「システム」にあった「アプリと機能」「既定のアプリ」「オフラインマップ」の各項目と、特定のウェブサイトへの関連付けを行う「Webサイト用のアプリ」の機能から構成される。アプリのインストールの項目では、「ストアのアプリのみ許可する」という設定項目も選択できる。

 「ゲーム」の項目では、新機能である「ゲームモード」などの設定が行える。ゲームモードには[Windows]+[G]キーで切り替えることができ、動作中のゲームを優先してCPUやGPUを割り当てるようになる。ゲームモードに切り替えると表示される「ゲームバー」からは、スクリーンショットの記録や、2016年8月にMicrosoftが買収した「Beams」の技術を用いたゲームプレー画面のリアルタイム配信なども行える。配信時の音質や動画記録時のビットレートなども設定可能だ。

 「システム」には、別のWindows 10 PCやWindows 10 Mobileスマートフォンの画面をPCに出力できる「このPCへのプロジェクション」や、デバイス間でメッセージを送信して「共有エクスペリエンス」の項目も追加されている。

「設定」にはコントロールパネル項目の多くを追加、Windows Updateの自動再起動抑止機能も

 また、スタートボタンの右クリックメニューから「コントロールパネル」にアクセスできなくなった。機能は依然として残されており、スタートメニューの「Windowsシステムツール」からアクセスできる。なお、これまではコントロールパネルのみで設定可能だった「ネットワークとインターネット」の項目や「Windows Ink」などが、「設定」画面に追加されている。

 このほか、「更新とセキュリティ」では、Windows Update適用後に再起動を行わない「アクティブ時間」を最大18時間に設定可能になったほか、再起動時に通知を表示するオプションが追加されている。さらに、Windows 10 Pro/Enterpriseでは、Windows Updateを最大で35日間停止するオプションなどが新たに追加された。

ディスプレイ設定などにも新たな項目が追加

 「アカウント」の「サインインオプション」には、Bluetoothでペアリングしたスマートフォンなどのデバイスの接続が切れた際に画面を自動的にロックする「動的ロック」の機能が追加された。また、動画再生が可能な「映画&テレビ」などのUWPアプリでは、小さな画面でオーバーレイ表示しての動画再生(映画&テレビアプリでは「ミニモード」)に対応した。

 「システム」の「ストレージ」には、空き容量に応じて一時ファイルやごみ箱の中身などの不要なファイルを自動的に削除する「ストレージセンサー」の機能が追加された。デフォルト設定はオフとなっており、手動で削除の操作を行うこともできる。

 「システム」の「ディスプレイ」には、「夜間モード設定」の項目も追加された。設定した時間や日没後の時間に、画面の色温度を下げて赤みがかったように変更するもの。iOSなどにも搭載されている、いわゆるブルーライト低減の機能と言える。

 ディスプレイについては、DPIの異なるマルチディスプレイ環境で、デスクトップアイコンなどでのスケーリングが改善される。また、アプリごとのDPIスケーリング機能も拡張されており、高DPI環境に非対応のアプリでも、OS側の処理でスケーリングが行われる。例えばGDIで描画されるメニューバーとテキスト、スクロールバー、ナビゲーションバーなど、これまで拡大されなかったパーツもスケーリング処理されて表示される。

 複数のタイルを1つにまとめる「タイルフォルダー」の機能が追加された。Windows Phoneなどではすでに利用できたもので、タイルをドラッグして重ねると、「タイルフォルダー」が作成され、下に重ねたタイルが表示される。再びスタートメニューを表示すると、タイルが小型化されたフォルダーとして表示される。

Microsoft Edgeにはタブまわりの新機能

 Microsoft Edgeのバージョンは「40.15063.0.0」に、EdgeHTMLのバージョンは「15.15063」にアップデート。新たに「タブプレビューを表示」ボタンが「新しいタブ」ボタンの右横に、「表示中のタブを保存して閉じる」と「保存して閉じたタブ」のボタンが左上に追加された。

 タブプレビューは、開いているタブのサムネイル一覧をタブとページコンテンツの間に表示するもの。一方、表示中のタブを保存して閉じると、一時的に開いているタブを時系列順にストックし、後から開き直すことができる。

 また、ウェブページを共有する場合、これまでは画面左側からチャームが表示され、共有するアプリなど選択できたが、Edgeでウェブページを共有する場合、画面右上の「共有」ボタンを選んだ後、画面中央にダイアログボックスが表示されるように変更された。また、共有ボタンのアイコンデザインも変更されている。

 このほか、Creators Updateに搭載されるEdge新バージョンでは、Flashの自動再生がデフォルトで無効となった。これにより、HTML5をサポートしているサイトでは、デフォルトでHTML5が再生されるようになる。また、縦書き表示や音声読み上げにも対応するEPUBリーダー機能が搭載されたほか、オンラインショッピング用の「Payment Request API」や、ウェブブラウザー向けのVR用APIである「WebVR API」など、各種のAPIも新たにサポートしている。

Creators Updateのセキュリティ機能

 新搭載のアプリである「Windows Defenderセキュリティセンター」では、Windows Defenderのウイルス対策機能を利用している場合に、スキャン結果や脅威履歴を表示できるほか、サードパーティー製ウイルス対策ソフトを直接表示できる。また、Microsoft EdgeのSmartScreen機能や、ペアレンタルコントロール機能「ファミリーセーフティ」の設定なども行える。

 Windows 10 EnterpriseのMicrosoft Edgeには、CPUに実装された仮想化支援機能「Intel VT」や、仮想TPM機能を提供する「TPM 2.0」などのハードウェア機能を利用した仮想化技術によるセキュリティ保護機能「Windows Defender Application Guard(WDAG)」も実装されている。

 WDAGが有効化された環境では、Microsoft Edgeの見た目も変化し、ネットワークからブラウザーセッションを仮想化コンテナに隔離して、PCのOSやアプリ、ユーザーデータをマルウェア、脆弱性、ゼロデイ攻撃などから保護する。「Office 365」「Enterprise Mobility+Security(EMS)」を組み合わせたソリューション「Secure Productive Enterprise(SPE)」を利用している法人向けに提供される機能となる。

 法人向けには、PCハードウェアや、インストールされているソフトウェアに関するデータを収集・分析し、必要なドライバーやアプリの互換性を識別、Windowsを展開するためのスナップショットを作成できるWindows 10用の新しい展開ツール「Windows Upgrade Analytics」も提供される。

 Microsoftでは、テストに参加したOEMハードウェアパートナーの提供デバイスを第1段階として、順次、Windows 10 Creators Updateをロールアウトしていく。Windows Update経由での配信が行われていないPCでも、「Windows 10更新アシスタント」を実行すれば、手動での即時アップグレードが可能だ。Windows更新アシスタントは、「Windows 10のダウンロード」のウェブページで「今すぐアップデート」をクリックするとダウンロードできる。